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4/13 海洋放射能汚染で魚を食べても大丈夫か?その16

今日は文科省のHPに海洋汚染のシミュレーションが掲載されました。

http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1780/2011/04/1304939_0412.pdf

今日は、これについて詳細に考察してみようと思います。

4月になってからこれまで、海洋のセシウム(Cs-137)のデータを逐一チェックしてきた私だからこそ、このシミュレーションをみても、その善し悪しがすぐに理解できると思っています。他の方の解説がもしあれば教えてください。比較してみたいと思います。

シミュレーションは、どんなシミュレーションでもそうですが、ある一定の仮定のもとに行っています。従って、まずその仮定が正しいかどうかを検証しておく必要があります。

このシミュレーションでは、抜粋すると、下記の仮定をしています。
『(1)東京電力(株)が公表している4/8までの海岸の海水放射能濃度をもとに保守的な想定シナリオを作成
(2)上記の海水放射能濃度が、8km四方に、海岸の1/100の濃度で開票面のみに拡散するものと保守的に仮定
(3)放射性物質の濃度は、原子力施設の排水濃度限度の何倍であるかを指標として表現する。
(4)発電所から大気中に放出された放射性物質の海面への降下は考慮しない。
(5)海水中の下層への拡散は考慮しない。
(6)4/8時点における福島第一原子力発電所から排出される水と同等の排出が4/11まで継続し、4/12以降は排出が停止したと仮定(4/12以降は排出を0(ゼロ)とした)。
(7)半減期(ヨウ素131は約8日、セシウム137は約30年)は考慮する。』

想定シナリオについてですが、(1)の想定は図1に記載されています。
文科省シミュレーション_図1

この想定は、東京電力が「1F南放水口付近(330m)」および「1F5~6放水口北側30m」で毎日測定して発表しているデータを足して2で割ったものとほぼ同じであることを自分でグラフを書いてみて確認しました。下のグラフはあまりきれいでないグラフですが、4/9以降のデータは4/8のデータと同じとする(6)と、上のグラフとほぼぴったりです。シミュレーションでは、一日2回の測定データを一つにまとめているのでしょう。また、私が気にしているセシウムでいうと、90Bq/L=90Bq/kgの何倍か?という基準で示しています(3)ので、200倍といったら90×200=18000Bq/kgになりますので、データには問題ないことがわかります。

文科省図1_検証

(7)の仮定は当然ですし、(2)、(4)、(5)は詳しいことはわかりませんが、そういう仮定だという理解で進めます。
「保守的」というところに関しては、このシミュレーションの仮定にもありましたが、どれくらいの放射性物質が流出しているのかがわからないので特にコメントしません。全体の流出量については別の時に考察したいと思います。ただ、今日は詳しくは述べませんが、その後流出が止まっていることを印象づけるデータが出てきており、私の印象では、そんなに「保守的」ではなく、現実的な予測に近いと考えます


次に海流の動きです。このような海流だそうです。

文科省図2

海流については全くの素人なのでわかりませんが、4/2時点の海流は、いわき市のあたりから北に向かって流れており、第一原発のあたりでは東に向かい、沖合100kmほどでは南に向かう親潮と合流しているようです。従って、原発からまず単純に拡散したとして、その後は沖合に広がり、そして海流に乗って南に向かうというコースをとることがこの図からは予想されます。


次に、実際のシミュレーションを見てみます。図3の前に図4から見てみましょう。
図4は、近海で東京電力及び文科省の実際の4/8までの測定データを反映させて、4/9及び4/11のデータをシミュレーションしています。それがどうだったかを実際のデータと比較すればこのシミュレーションの精度がある程度検証できます。
図4-1
図4-2

シミュレーションでは、下記のように記載があります。
「特に、福島第一原子力発電所の沖合では、徐々に拡散しながら沖へ移動するため、シミュレーション結果によると、同発電所30km沖合海域における放射能濃度は、同月4日~7日より4月9日~11日の方が高くなると計算される(4月9日に行った文部科学省の海域モニタリングの計測実績では、その傾向が見られた)。」

このシミュレーションでは、データは4/8までのものを用いて、あとは4/9~4/11は4/8と同じとし、4/12以降はピタッと放出が止まったという仮定を用いています。つまり、4/8までのデータで4/9と4/11のデータを予測しているわけです。それがだいたいあたっているのか、外れなのかでシミュレーションの精度も予想できます。

東京電力は、4/8~4/10は悪天候のために船を出すことができず、データが取れませんでした。11日のデータが昨日発表されましたが、HPには沖合15kmのデータはグラフしかなく、経産省の発表の中からデータを探すしかありませんでした(早く修正してくださいね)。下記のページで、本来4つの資料が必要なのですが、3つしか掲載されていません。昨日はグラフからデータを読み取って推定しました。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/11041206-j.html

話が脱線しますが、東京電力もやっと公表したデータをHP上で整理してまとめるようになりました。少しは進歩しましたね。
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/

さて、9日の予想については、文科省のデータを使うしかありません。
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/04/10/1304149_0410.pdf
ここでは、【3】でCs-137が44.2Bq/kgになっています。基準値90Bq/kgの0.5倍です。それ以外の奇数地点ではCs-137は検出限界以下です。ヨウ素131についても【3】で77.4Bq/kg(基準値が40Bq/kgなので約2倍)、それ以外は【5】【7】【9】で8-14Bq/kg(基準値の0.2倍から0.4倍)です。それ以外は検出限界以下です。【3】が高いというところは合っていますが、少し濃いめに予想している感じです。
図4-3


次に11日のデータです。また文科省のデータです。
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/04/12/1304149_0412.pdf

この日のデータは、偶数番のデータです。文科省は、奇数と偶数を交互に測定しているため、同一地点のデータは4日おきに測定となっています。【4】がCs-137(71.0Bq/kg:0.8倍)、I-131(88.5Bq/kg:2.2倍)以外は【6】【8】【10】のヨウ素131で12-13Bq/kg(約0.35倍)検出されただけで、後は不検出です。
シミュレーションでは、南の薄い広がりを考慮できておらず、やや北に偏りすぎている印象があります

東京電力の11日の沖合15kmのデータでは、セシウムのデータでいうと、上(北)から順に、760(8倍),200(2.2倍),160(1.8倍),40(0.4倍),35(0.4倍)、7.5(0.1倍)とどんどん低くなっています。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/110412f.pdf
シミュレーションでは、北の9番の濃いデータを予想できていませんが、15kmのデータは概して当たっています。ただし、文科省のデータでも述べたように、南への薄い広がりを考慮できていません。

ただ、あくまでシミュレーションですので、全体的には実測値と大きなずれはない、と判断してもかまわないと思います

図4-4


一番重要な今後のシミュレーションです。図3-1から3-5までを見てみましょう。
推移がわかるように、5つの図を縦に並べてみました。
図3-1
図3-2
図3-3
図3-4
図3-5

このシミュレーションでは、先の実測値を含めたJCOPETの予想ではなく、最初に行ったJCOPE2の予想であることに注意してください。従って、図4のデータよりも広がりが早い予想になっています。

以前NHKスペシャルで海流のシミュレーションを行っていました。詳細は「4/9 その11:追加」を参照のこと。
http://tsukuba2011.blog60.fc2.com/blog-entry-59.html
それと今回の予想が同じものかどうかわかりませんが、南に流れていって、黒潮とぶつかって太平洋に拡散するが、一部は複雑な海流のため、茨城県あたりの沿岸にも残るというものでした。

今回のシミュレーションでも、全体的には同じような動きをしています。また、NHKスペシャルのシミュレーションではわからなかった、濃度についてもここでは予想が出ています。海流に乗って徐々に拡散していくため、5月になれば、福島県から宮城県とやや北側が濃く、しかしそこでも0.1-1倍(Cs-137で9-90Bq/kg)に収まるという予想です。それ以外では0.1倍以下(Cs-137で9bq/kg以下)になるという予想です。

このシリーズでは前から主張しているように、生物濃縮を考えると、放射性セシウムの基準値500Bq/kgを超えないようにするにはCs-137の濃度は2.5Bq/kgを超えないというのが一つの目安です。そういう意味では、このシミュレーションでいうと、基準値90Bq/kgの0.03倍ですので、図3でいうと、おおざっぱにいって薄い色がかかっている地域(0.01倍~0.1倍)は危険だという判断ができます。ヨウ素の方が濃く出ているためか、感度が高いようなので、図3-1から図3-5で、どちらかの図で薄い色がついている地域は注意が必要です。図3-3が一番茨城県に近づく可能性があるので、このあたりは要注意ということです。
図3-3

被災地の福島、宮城沖ではしばらくは漁はできないでしょうから、この予想の通りならば、しばらく(1-2ヶ月)は漁をしなければ海水の濃度は減ってくるはずです。

私の住んでいる茨城県のことを考えると、4月中は汚染された海水が海流に乗って南下してくるので、その際にプランクトンやコウナゴのような小さい魚が汚染され、大きな魚には2-3ヶ月遅れて放射性セシウムが出てくる可能性は否定はできません。ただ、このシミュレーションからすると、出たとしても500Bq/kgを超えるかどうかというレベル(今、コウナゴで出ているくらい)だと思います。10000Bq/kgというような高い濃度は検出されないだろうと思います。うまくいけば、海で拡散して薄くなり、基準値を超えることはなく済むかもしれません。ただ、数量的な予想をするには、そもそもの流出した量がどれくらいなのか、という前提が当たっていないといけないので、現時点ではこれ以上の予想はできません。

私の今日のシミュレーションを見ての結論は、これまでの私の調査に基づく主張と合わせて、下記のようになります(今日の記事だけを読んでもわからない内容も入っていますが、過去のシリーズを読んでいただければわかります。)

・このシミュレーションはかなりいいシミュレーションができていると思う。
・福島県沖、宮城県沖では、今後数ヶ月は漁をしない方が無難だろう。
・放射性セシウムについては、海水の濃度が90Bq/L以下であっても、生物濃縮を考えると、2.5Bq/kg(この図では0.03倍)を超える場合は注意が必要である。
・図3-3にある薄い網掛けの地域の海域(0.03倍を超える可能性がある)では、シミュレーションの誤差も考慮すると4月中は要注意。従って、茨城県沖で今後(コウナゴのように小さい魚では早めに、大きな魚では2-3ヶ月後に)放射性セシウムで汚染された魚が出てくる可能性は否定できない。定期的なモニタリングを数ヶ月にわたって続けて行くことが重要である。


今日はとりあえずこのくらいにします。

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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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