H4エリアタンクの漏えい:E-1の地下水濃度が全β、H-3ともに急上昇!
今朝のニュース(リンクはNHK:Web魚拓はこちら)で、福島第一原発のH4タンクエリアからの漏洩事故の原因と影響範囲の観測のために掘られたE-1地点の地下水の全β核種の濃度が前日の61Bq/Lから6000倍以上の400,000Bq/Lにはね上がったということを報じていました。
これだけではなく、今夜の東京電力の記者会見中には同日の同じE-1のH-3(トリチウム)が790,000Bq/Lと過去最高になった事が判明しました。
今日はこの話を簡単に取り上げます。
本日の話題のE-1地点とH4タンクエリア、特に漏洩があったNo.5タンクとの関係をまず示しておきましょう。下の図で、上が海(東)、左が北です。図の下の方に見えるたくさんの白丸がH4エリアのタンクで、赤丸で囲ってあるのが漏えいしたNo.5のタンクです。E-1とE-2はNo.5タンクの北と南にそれぞれ設定されています。そして、E-1とE-2よりも東側、つまり海側にはE-3、E-4、E-5の3点が設置されています。さらにその東側にはE-6からE-8があります。地下水の流れは西から東(下の図では下から上)に流れています。
これらのさらに下流(東側)には地下水バイパスの揚水井があります。今年の春に東京電力が漁協に説明して、もう少しで汲み上げた地下水を海に放出するところまでいったものの、結局反対されて放出できずに終わった地下水バイパスです。
今年の8月に発覚したH4エリアのタンクNo.5からの漏えいでは、地下水が汚染されていることが懸念されており、その影響が地下水バイパスに広がることが一番問題となっていました(詳細は「汚染水タンクから最大300トンの漏えい!(5) 地下水バイパスもピンチ!」参照)。なぜならば、東京電力の計画では、地下水バイパスが稼働できれば建屋に流入する1日400トンの地下水が100トン減らすことができるとされていたからです。今回の漏えいによって地下水が汚染されてしまうと、地下水バイパスの計画は完全にボツになってしまう可能性があるのです。
E-1のH-3(トリチウム)と全β(これはSrをメインに含みます)の動きです。東京電力が10/15の第8回汚染水対策検討WGで示した資料から引用します。
(10/15 第8回汚染水対策検討WG 資料より)
上のグラフは縦軸が対数ですのでご注意下さい。目盛り一つ分下がると1/10になります。
E-1地点で9/8に測定が始まった当初は、H-3:4200Bq/Lに対して全β:3200Bq/Lとほぼ似たような数値でした。下の図をご参照下さい。
その後はH-3は急上昇して200,000Bq/L程度と比較的高い値をキープしており、一方で全βは徐々に低下してきていました。直近では、10/16に全βは61Bq/L、一方H-3は230,000Bq/Lでした。
それが、本日発表された10/17のデータでは、全βは一気に400,000Bq/Lと6000倍以上になり、H-3も790,000Bq/Lと前日の3倍以上になりました。
これは何を意味しているのでしょうか?E-1のH-3は測定開始当初から比較的高く、それが今回の漏洩事故によるものなのか、あるいは昨年3月のH4エリアよりもさらに上流のタンクエリアでの漏洩事故(100トンが地中に染みこんだとされます。詳細は「3/28 Sr入り汚染水による海洋汚染その3 本日の最新情報」参照)によるものなのか、はっきりしていませんでした。
今回の急上昇は、東京電力は今回の漏えいによってH-3よりも地中での動きの遅いSrなどが今になって検出されるようになったと考えているようです。まだ断定はできませんが、今日の時点ではその可能性が高いと私も思います。
ではなぜ昨日になって急に上がったのか?それは一つの可能性としては10/16の台風26号の影響が考えられます。近くの浪江町のデータでは、10/16に118mmの降雨がありました。これは9/15の台風18号の時の55.5mmよりもはるかに多い量です。
これによって地下水の水位が上がり、これまで地下水に到達していなかった土壌中のSrなどが地下水に溶け出して検出されたという考え方も一つあります。
ただ、この考え方だと、9/15の後にE-1のH-3が下がったことの説明はできません。9/15から9/16の台風の大雨の後、E-1のH-3は逆に下がっていたのです。私はむしろこの時は、雨で地下水の流れが速くなって汚染された水が洗い流されたのかと思っていました。
ただ、E-1の水位も測定されていますので同じ第8回WGの資料でみると、実は9/15の台風ではE-1の水位はあまり変化していませんでした。2-3日経って9/18頃から約50cmの地下水位の上昇があった程度です。
(10/15 第8回汚染水対策検討WG 資料より)
ということを考えると、台風は一つのきっかけになった可能性は高いですが、時期的にH-3よりも移動速度が遅いSrなどがようやく到達したという見方が出来るかと思います。
一方で、昨年3月の漏洩事故の影響が出てきた可能性というのもまだ完全には否定はできません。以前行われたボーリングコアのデータでは、一部汚染されていない区間(2~2.5mは水の通りにくい土という部分)の下に汚染があることが示されていました。ということは、上流から流れてきたものという可能性もまだ残っていると思います。
(10/15 第8回汚染水対策検討WG 資料より)
最後に、No.5のタンクの全βとH-3の濃度を確認しておきます。9/12に発表された資料にあるように、もともと漏えいしたタンクNo.5には全βが200,000,000Bq/L、H-3が2,400,000Bq/Lありました。
H-3は水と同じ挙動を示すため土壌中では早く移動し、Srなどはゆっくり移動するため、検出される濃度はこの比率のままにならなくてもおかしくはありません。ただ、10/17の790,000Bq/Lというのは、タンクの元々のH-3濃度の約1/3ですから、かなりの濃度であるということは間違いありません。
これから数日のE-1のデータの動きを見ていけばもう少し何かわかってくる可能性があると思います。今日はこれまでわかっているE-1の地下水に関するデータをレビューしてみました。
追記:このような記事もありました。
『・・・井戸の北側には、タンク内の水を出し入れするポンプ設備の配管などがあり、漏れた水で汚染された土壌を撤去しきれていなかった。井戸にはふたがされていた。
東電は濃度上昇の理由について、「汚染土に含まれる放射性物質が台風の雨で移動して地下水に影響した可能性がある」とみている。・・・』(毎日.jp)
10/18の記者会見の内容を確認していないので詳細は不明ですが、雨で汚染土からもれ出した放射性物質が地下水に流れ込んだという説もあるようです。
これらのさらに下流(東側)には地下水バイパスの揚水井があります。今年の春に東京電力が漁協に説明して、もう少しで汲み上げた地下水を海に放出するところまでいったものの、結局反対されて放出できずに終わった地下水バイパスです。
今年の8月に発覚したH4エリアのタンクNo.5からの漏えいでは、地下水が汚染されていることが懸念されており、その影響が地下水バイパスに広がることが一番問題となっていました(詳細は「汚染水タンクから最大300トンの漏えい!(5) 地下水バイパスもピンチ!」参照)。なぜならば、東京電力の計画では、地下水バイパスが稼働できれば建屋に流入する1日400トンの地下水が100トン減らすことができるとされていたからです。今回の漏えいによって地下水が汚染されてしまうと、地下水バイパスの計画は完全にボツになってしまう可能性があるのです。
E-1のH-3(トリチウム)と全β(これはSrをメインに含みます)の動きです。東京電力が10/15の第8回汚染水対策検討WGで示した資料から引用します。
(10/15 第8回汚染水対策検討WG 資料より)
上のグラフは縦軸が対数ですのでご注意下さい。目盛り一つ分下がると1/10になります。
E-1地点で9/8に測定が始まった当初は、H-3:4200Bq/Lに対して全β:3200Bq/Lとほぼ似たような数値でした。下の図をご参照下さい。
その後はH-3は急上昇して200,000Bq/L程度と比較的高い値をキープしており、一方で全βは徐々に低下してきていました。直近では、10/16に全βは61Bq/L、一方H-3は230,000Bq/Lでした。
それが、本日発表された10/17のデータでは、全βは一気に400,000Bq/Lと6000倍以上になり、H-3も790,000Bq/Lと前日の3倍以上になりました。
これは何を意味しているのでしょうか?E-1のH-3は測定開始当初から比較的高く、それが今回の漏洩事故によるものなのか、あるいは昨年3月のH4エリアよりもさらに上流のタンクエリアでの漏洩事故(100トンが地中に染みこんだとされます。詳細は「3/28 Sr入り汚染水による海洋汚染その3 本日の最新情報」参照)によるものなのか、はっきりしていませんでした。
今回の急上昇は、東京電力は今回の漏えいによってH-3よりも地中での動きの遅いSrなどが今になって検出されるようになったと考えているようです。まだ断定はできませんが、今日の時点ではその可能性が高いと私も思います。
ではなぜ昨日になって急に上がったのか?それは一つの可能性としては10/16の台風26号の影響が考えられます。近くの浪江町のデータでは、10/16に118mmの降雨がありました。これは9/15の台風18号の時の55.5mmよりもはるかに多い量です。
これによって地下水の水位が上がり、これまで地下水に到達していなかった土壌中のSrなどが地下水に溶け出して検出されたという考え方も一つあります。
ただ、この考え方だと、9/15の後にE-1のH-3が下がったことの説明はできません。9/15から9/16の台風の大雨の後、E-1のH-3は逆に下がっていたのです。私はむしろこの時は、雨で地下水の流れが速くなって汚染された水が洗い流されたのかと思っていました。
ただ、E-1の水位も測定されていますので同じ第8回WGの資料でみると、実は9/15の台風ではE-1の水位はあまり変化していませんでした。2-3日経って9/18頃から約50cmの地下水位の上昇があった程度です。
(10/15 第8回汚染水対策検討WG 資料より)
ということを考えると、台風は一つのきっかけになった可能性は高いですが、時期的にH-3よりも移動速度が遅いSrなどがようやく到達したという見方が出来るかと思います。
一方で、昨年3月の漏洩事故の影響が出てきた可能性というのもまだ完全には否定はできません。以前行われたボーリングコアのデータでは、一部汚染されていない区間(2~2.5mは水の通りにくい土という部分)の下に汚染があることが示されていました。ということは、上流から流れてきたものという可能性もまだ残っていると思います。
(10/15 第8回汚染水対策検討WG 資料より)
最後に、No.5のタンクの全βとH-3の濃度を確認しておきます。9/12に発表された資料にあるように、もともと漏えいしたタンクNo.5には全βが200,000,000Bq/L、H-3が2,400,000Bq/Lありました。
H-3は水と同じ挙動を示すため土壌中では早く移動し、Srなどはゆっくり移動するため、検出される濃度はこの比率のままにならなくてもおかしくはありません。ただ、10/17の790,000Bq/Lというのは、タンクの元々のH-3濃度の約1/3ですから、かなりの濃度であるということは間違いありません。
これから数日のE-1のデータの動きを見ていけばもう少し何かわかってくる可能性があると思います。今日はこれまでわかっているE-1の地下水に関するデータをレビューしてみました。
追記:このような記事もありました。
『・・・井戸の北側には、タンク内の水を出し入れするポンプ設備の配管などがあり、漏れた水で汚染された土壌を撤去しきれていなかった。井戸にはふたがされていた。
東電は濃度上昇の理由について、「汚染土に含まれる放射性物質が台風の雨で移動して地下水に影響した可能性がある」とみている。・・・』(毎日.jp)
10/18の記者会見の内容を確認していないので詳細は不明ですが、雨で汚染土からもれ出した放射性物質が地下水に流れ込んだという説もあるようです。
- 関連記事
-
- 福島原発 汚染水関係データを可視化 その3(11/4版:随時更新予定) (2013/11/04)
- H4エリアタンクの漏えい:E-1の地下水濃度が全β、H-3ともに急上昇! (2013/10/18)
- H4エリアのタンク漏洩事故:ボルトに見つかった開口部で最大300トンの漏れは説明できるのか? (2013/10/11)
↑日本ブログ村ランキングに参加しました。よかったらクリックお願いします。