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11/4 魚の放射能汚染の現状 11月初旬の実態のまとめ

 
7/10 魚の放射能汚染 7月上旬の実態のまとめ」で魚の放射能汚染の実態についてまとめて以来、このブログではあまり魚の放射能汚染の実態についてまとめてきませんでした。コンタンさんのようにしっかりまとめてくれる人もいたし、お米の放射能汚染の予想をしてしまったので、玄米の測定データのフォローに注力せざるを得なかったというところが実情です。

しかし、今も私のブログに「魚 放射能」というキーワードで検索して飛んで来ていただいている方がたくさんいる(GoogleYahooではいつも上位に「7月上旬の実態のまとめ」が来ていますので)ため、その方々に申し訳ないと思い、久しぶりにまとめます。なお、はじめの方にはExcelを使い慣れていない方のための解説がありますので、Excelがわかる方ははじめの方はとばして読んでください。

1.データの入手方法と自分で最新データを確認する方法

実は、7月にまとめをした時とは大きく環境が変わっています。何よりも、水産庁からこれまでのデータをExcelでダウンロードできるようになったので(このリンク先の「水産物の放射性物質の調査結果(一覧表)(11月1日現在)」を参照)、今ならばどなたでも自分で簡単にお望みの魚種についてデータを得ることができます

11/4水産庁1

たとえば、ここで「魚種等」の右についている下向きの「▼」を押して、出てきた画面の中から「すべて選択」というチェックボックスを外し、「サンマ」を含むものにだけチェックを入れます。

11/4水産庁1.5

そうすると、下の図のようにサンマを含む項目だけが簡単に抽出されます。

11/4水産庁2

このオートフィルタの機能、Excelを使いこなしている人には当たり前のことだと思いますが、知らないと意外に自分でオートフィルタをつけるのは難しいことなので、こうやって水産庁が使いやすくしてくれたのはいいことだと思います。

水産庁のHP以外では、以前からご紹介している「食品の放射能検査データ」もある特定の魚のデータを確認するにはいいツールです。なんといってもデータだけではなくてこんな風にグラフも書いてくれるのですから。暫定基準値越えがどのくらいあったのか、などが一目でわかります。

11/4野菜検査1

ただ、「食品の放射能検査データ」の欠点は、厚労省に報告された分類をそのまま用いて集計しているため、たとえばカレイはカレイでまとめて検索、ということができないのです。カレイについて調べようと思っても、カレイのデータは2検体。マガレイは68検体、マコガレイは123検体、・・・というように、バラバラに登録されています。しかも、登録された名前のあいうえお順で掲載されているため、カレイのデータについてまとめるのがすごく大変でした。

でも、今回の水産庁のExcelデータがあれば、次のようにすれば簡単です。まず、先ほどと同じで「魚種等」の右についている下向きの「▼」を押して、「テキストフィルター」の中から「指定の値を含む」を選択します。

11/4水産庁3

次に、出てきた画面で下のように「カレイ」と入力し「を含む」を選択、そして「AND」ではなく「OR」のラジオボタンを選択して、下の行には「ガレイ」を入力し、「を含む」を選択します。

11/4水産庁4

これでOKを押すと、下のように、「カレイ」あるいは「ガレイ」を含む魚のデータだけが抽出されました。画面の左下に「3475レコード中441個がみつかりました」と表示があり、ちゃんと必要なデータが抽出されていることがわかります。

11/4水産庁6

ここではExcel教室を行うのが目的ではないのでExcelの使い方はこれくらいにしておきます。あとはExcelの使い方を本なりWebで調べてみてください。これだけわかっていれば、自分の見たいデータを簡単に抽出することができると思います。

2.現時点でのまとめ-全体的な傾向について-

もし自分が興味を持っている魚が決まっているのであれば、たとえばサンマのデータが知りたい、という方は、ぜひとも上の1.で紹介した方法で確認することをお勧めします。この後で紹介するサイトでも、最新情報が出ていない場合もあるので、水産庁が更新しているデータをみる方が確実です。それに、自分でデータを確認できるようになれば、今度はあの魚も見てみよう、とか、いろいろと楽しめると思います。

そうではなくて、全般的な傾向を知りたい、という方は、まず基本的なこととして下記の傾向を理解しておいてください。これはチェルノブイリ事故の時のデータを元に海生研が2007年に発表していたグラフです。

このグラフは、海水と魚介類では、放射能のピークが半年から1年ほどずれるということを示しています。この傾向は、このあとで実際のデータで示しますが、今回の事故でも基本的には再現されています。

なお、グラフを見る際に注意してほしいのですが、下のグラフで縦軸の目盛りは、海水が10mBq/L、すなわち0.01Bq/L=0.01Bq/kg、魚はBq/kgです。従って、実際の数値としてはスズキやマダラ(最大0.3Bq/kg程度)の方が海水(最大8mBq/L)よりも30倍ほど高くなっているということに注意してください。海水の方が魚よりも高いと誤解しないようにしてください。(詳細は「まとめ4:海洋放射能汚染と魚介類への影響1:基本的な内容」を参照のこと)

11/4海生研1

今回の事故において、3月末から4月に起こった海水の汚染は5月終わり頃にはこれまでの検出感度では検出できなくなるくらいに低下しました。海水の汚染は5月でほぼ終息したといっていいでしょう。

しかし、魚介類への汚染、特に大きな魚への汚染はまだ続いており、来年以降にならないと収まらない可能性が高いということをこれから示します。なお、コウナゴ(イカナゴの幼魚)やシラスのように小さな魚では、早めにピークが来ていて、だんだんと落ち着いてきています。

自分の食べたい魚がもう下がりつつあるのか、上の図のスズキやマダラのようにまだ上がっている最中なのか、どのパターンにあるのかをつかんでおくことが重要と思います。

3.いくつかの事例の紹介

今回、「コンタンのブログ(水産物の放射能濃度のグラフ(その2) 9/30公表分まで)」からデータを引用あるいは参照してご紹介します。(※引用については、『商用目的・商用サイトを除き、図表の無断引用・転載はご自由にどうぞ。(但し出典を明記のこと。なお説明の追記など以外の無断改変は厳禁です。)』とのことです。)なお、現在最新版はこちらに作成中のようです。

コンタンさんは、このブログでもよくコメントをくれるのですが、いろいろなデータをこまめにデータを整理してくれています。私も何かのテーマの関連資料を調べたいときに利用させてもらっています。私のブログの右側の「おすすめのリンク」にもありますので、魚の放射能以外のエントリーも一度覗いてみてください。

なんで今回は自分でやらないの?という疑問を持つ方がいるかもしれませんが、すでに同じような手法で解析している人がいるのに敢えて自分で労力を割いて同じことをやるのは意味がないと考えるからです。それだけコンタンさんのまとめがよくできていることの証拠でもあります。

以下に、いくつかのグラフを引用して、大ざっぱな傾向を示します。ここでは、凡例もあるのでデータの色については特に解説しません。それについて知りたい方は元の「コンタンのブログ(水産物の放射能濃度のグラフ(その2) 9/30公表分まで)」を参照してください。

11/4シラス_110930_shirasu_graph

上の図は、シラスという小魚のデータですが、これは非常にわかりやすいデータです。5月に1000Bq/kg近くまで上昇した放射性セシウムが時間の経過とともに徐々に下がってきていることがはっきりとわかります。シラスに関してはもう問題ないでしょう。

同様に下がってきている傾向のあるものの中でわかりやすいものを紹介します。まずはホッキガイです。水色のデータに注目してください。

11/4ホッキガイ_110930_hokkigai_graph

続いて、海藻ですが、アラメです。

11/4アラメ_110930_arame_graph

シラスと同様、これらについては基本的に低下傾向にあることがわかります。ただ、シラスとは違って、9月末でまだ100Bq/kg程度汚染されています。


次にご紹介するのは、逆に今まだ上昇中のもの、あるいはピークが続いていると思われるものです。まずは底魚の代表、ヒラメです。

11/4ヒラメ_110930_hirame_graph

こちらは、シラスとは対照的に、時間の経過とともに上昇しているのがわかると思います。さきほどの海生研のグラフから考えて、ヒラメはおそらく数ヶ月はこのくらいの数値(100-300Bq/kg)が続くと私は予想します。

次は同じく底魚のカレイです。データがばらついていますが、どうみてもヒラメと同様のパターンです。絶対値としてはヒラメよりもやや低めで、100Bq/kg前後の数値を今後数ヶ月維持すると私は予想します。(11/5 元のブログの図が差し替えられたのでこちらも変更しました。)

11/5追記カレイ_110930_karei_graph

次はマダイです。この魚についてはデータが少ないのですが、傾向としてはヒラメと同じで上昇して来ています。絶対値としては50Bq/kgを中心にその前後の数値を今後数ヶ月維持すると私は予想します。

11/4マダイ_110930_madai_graph

マイワシです。この魚については、銚子港付近の魚のデータが多いためか、数値としては小さく、10Bq/kgです。マイワシについても、この程度の数値が数ヶ月続くと予想します。(大きな魚ではないので、もう少し早めにさがり始めるかもしれません。)

11/4マイワシ_110930_maiwashi_graph

最後はスズキです。チェルノブイリの時の海生研のデータにもあった魚です。データ数が少ないのですが、100Bq/kg程度の汚染がしばらく続くと予想します。

11/4スズキ_110930_suzuki_graph


以上、コンタンさんのブログにまとめてあった30以上の魚介類のデータの中で、比較的傾向のはっきりしているものについてご紹介しました。元のブログには他にもデータがあるのですが、ややわかりにくいのであえてここでは省略しました。しかし、全体的なパターンをイメージしながらそれぞれの魚についてグラフを見ていくと、よりわかってくると思います。興味のある方はぜひじっくりと見てください。

なお、上に書いた今後の予想は、あくまでも9月までのデータにもとづく私の個人的予想です。コンタンさんのコメントとは異なる可能性もあります。海生研のグラフでも、スズキは半年後をピークに徐々に減少に転じました。一方、マダラは1年後くらいまで上昇を続けました。今回、大型魚でのピークがいつになるのかは、もう数ヶ月データを見ていかないとわからないと思います。

まとめると、海水への汚染はほぼ終息したが、魚介類への影響はまだ続いており、少なくとも来年の前半までは影響が残るであろうということです。ただし、個別に見ると、ほとんど検出されない魚や、すでに終息に向かっている魚もありますので、自分の興味がある魚についてデータを確認する必要があるということです。データの確認の仕方も今回提示しましたので、この情報を用いて各自で判断していただきたいと思います。

最後に、ブログからデータを引用させてもらったコンタンさん(@Kontan_Bigcat)に感謝の意を表したいと思います。10月分のデータも現在更新中のようです。

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2012年3月3日 放射能とわたしたち  「質問と回答」他(その三)

 講座で出された質問と回答について報告いたします。よろしくお願い申し上げます。

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Re: No title

コンタンさん

私は今回、地区別の細かいデータまではみないで大ざっぱな傾向だけを見ました。あと、食物連鎖上の位置関係を把握していない場合があるので、的外れな部分もあるかもしれません。

継続的なまとめは大変でしょうが、可能な範囲でよろしくお願いします。

No title

すみませんが、先ほどカレイのグラフだけ訂正したので、差し替えてください。
(1,000を越すものがあったのに、グラフの上限が1,000になってました。)

こちらのエントリーを拝読して、増減の状況は、もうちょっと慎重に評価しなくちゃ
いけないな、と思いました。最新のエントリーでは、そのあたりがもう少しわかる
ようにしようと思っています。

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TSOKDBA

Author:TSOKDBA
twitterは@tsokdbaです。
3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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