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まとめ2:野菜などへの放射性物質混入の暫定基準値について

このシリーズには、これまで1ヶ月以上にわたって毎日いろいろと調べて書いてきたことをまとめていきます。
時間のない方はこのまとめシリーズをご覧ください。

ここでは、ほうれんそうなどの野菜への放射能汚染について、前半として「暫定基準値」とその測定方法についてまとめました。



暫定基準値とその測定方法

ここでは、ほうれん草などの野菜に対する、国が定めた暫定基準値というものについて確認しておきましょう。

経緯

厚労省は、3月17日に暫定基準値を定めました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001558e-img/2r9852000001559v.pdf

なぜ「暫定」なのかというと、これまで食品衛生法には、放射性物質で汚染されたような食べ物に関する規制がありませんでした。「想定外」だったためです。今回の原発事故で、厚労省はあわてて「原子力安全委員会により示された指標値を暫定規制値とし、これを上回る食品については、食品衛生法第6条第2号に当たるものとして食用に供されることがないよう販売その他について十分処置されたい。」と17日に各都道府県に対して指示を出しました。

その元になった原子力安全委員会の指標値とは、下記にある原子力安全委員会が出した「原子力施設等の防災対策について 」という「防災指針」のことです。なお、この防災指針では、国際放射線防護委員会(ICRP)の出した「ICRP Publication 63」等を元に50mSv/年という線量を基準とし、日本人の食品の摂取量などから算出したということです。

原子力施設等の防災対策について(原子力安全委員会)
http://www.nsc.go.jp/shinsashishin/pdf/history/59-15.pdf
(この23-25ページに、「5-3 防護対策のための指標」(3) 飲食物の摂取制限に関する指標というのが載っています。)

これを受け、3月20日、厚生労働大臣は、食品安全委員会委員長に対し「食品中の放射性物質について指標を定めること」について意見を求めたところ、3月29日、食品安全委員会委員長より、「放射性物質に関する緊急とりまとめ」が示されました。これを受けて、4月4日、薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会はこの基準値を当面の間は維持すべき、という見解を示しています。

薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000012bpc-att/2r98520000018kgi.pdf

経緯は以上です。

基準値

さて、3/17の暫定基準値で示された基準値です。ウランやプルトニウムについてもあるのですが、それはここでは省略します。

放射性ヨウ素(通常はI-131)
飲料水/牛乳・乳製品       300Bq/kg 注)
野菜類(根菜・芋類を除く)    2000Bq/kg
(魚介類             2000Bq/kgが後日追加された)
注:100 Bq/kg を超えるものは、乳児用調製粉乳及び直接飲用に供する乳に使用しないよう指導すること

放射性セシウム(Cs-134やCs-137の合計)
飲料水/牛乳・乳製品        200Bq/kg
野菜類/穀類/肉・卵・魚・その他 500Bq/kg

ここで注意して欲しいのは、放射性ヨウ素についてはカテゴリーが3つしかありません。その理由は、原子力安全委員会が定めた防災指針の中に附属資料14として一番最後の方に記載してあります。
なお、3つの食品カテゴリー以外の穀類、肉類等を除いたのは、放射性ヨウ素は半減期が短く、これらの食品においては、食品中への蓄積や人体への移行の程度が小さいからである。』

このことが原因となって、後に魚(コウナゴ)から放射性ヨウ素が4000Bq/kg検出された際、基準値がないためにあわてて4月5日に下記のように追加するという失態を演じていいます。I-131の半減期が短いので、考え方は正しいのですが、魚介類も入れておけばよかったのにと思います。
魚介類中の放射性ヨウ素に関する暫定基準値の取り扱いについて(4月5日)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000017z1u-att/2r98520000017z7d.pdf

また、この放射性ヨウ素においてつけられた注)も、元の「防災指針」には記載がありません。どこからこの数字を持ってきたのか、根拠が不明確です。

参考までに、厚労省のHPには、EUやアメリカの基準のURLも載っています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000016378.html

EUの基準
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=COM:2007:0302:FIN:EN:PDF

厚労省の基準と同じ書き方にして、日本よりも緩いところを青字、厳しいところを赤字にしました。(一部例外あり)
放射性ヨウ素(通常はI-131)
飲料水/牛乳・乳製品       500Bq/kg 注)
野菜類(根菜・芋類を除く)    2000Bq/kg
(魚介類             2000Bq/kgが後日追加された)
注:150 Bq/kg を超えるものは、乳児用調製粉乳及び直接飲用に供する乳に使用しないよう指導すること

放射性セシウム(Cs-134やCs-137の合計)
飲料水/牛乳・乳製品       1000Bq/kg
野菜類/穀類/肉・卵・魚・その他 1250Bq/kg

アメリカの基準
http://www.fda.gov/ICECI/ComplianceManuals/CompliancePolicyGuidanceManual/ucm074576

放射性ヨウ素(通常はI-131)
カテゴリーなし       170Bq/kg 注)

放射性セシウム(Cs-134やCs-137の合計)
カテゴリーなし        1200Bq/kg


※なお、EU及びアメリカの基準については、詳細を読まずに表の数値だけを抜き出してきたので、いろいろと例外事項などがあるかもしれません。あくまで原則的な基準ということで考えてください。正確には、上記に示したリンクをご参照ください。


測定方法(特に前処理法)

また、この厚労省の指示においてもう一つ注目して欲しいのは、
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001558e-img/2r9852000001559v.pdf
検査方法についての記述です。これも物議を醸しました。

『なお、検査に当たっては、平成14年5月9日付け事務連絡「緊急時における食品の放射能測定マニュアルの送付について」を参照し、実施すること。』

これはどういうものかというと、
緊急時における食品の放射能測定マニュアル
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001558e-img/2r98520000015cfn.pdf

これは厚労省自身が9年前に定めたものです。目的は、このように書いてあります。
『本マニュアルは、原子力関連テロ時や原子力施設の事故等緊急時において食品の放射能汚染に関して防災指針や緊急時モニタリング指針に基づいて対処する際に、それらの放射能測定を適切に行い評価することを通じて、食品衛生上の危害発生の防止、食品由来の放射線被ばく線量評価手法及び食品の安全の確認に資するため、環境試料である農畜水産食品における放射能の分析法に関するさらに詳細な実施方法を紹介することを目的とした。』

その中で試験方法にいろいろと記述してありますが、通常はゲルマニウム検出器というものを用いるのでそこを読んでいくと、下記のような記述があります。

第2章 食品中の放射能の分析 2 ゲルマニウム半導体検出器を用いたガンマ線スペクトロメトリーによる核種
分析法
食品中の I-131、Cs-137 放射能測定のための試料前処理法は、放射能測定法シリーズ 24「緊急時におけるガンマ線スペクトロメトリーのための試料前処理法」(平成4 年)*6に準じる。
*6:試料搬入時の注意点、試料の前処理法(葉菜等については試料相互間の汚染を防止するため水洗いはしない)、試料の保存方法等が記載されている
。 』

実は、「防災指針」でも『上記の対象物中の放射能濃度の定量に当たっては、以下の文部科学省放射能測定法シリーズを参照することを提案する』と記載があります。

では、この「緊急時における・・・・試料前処理法」はどういうものかというと、文科省が定めたものです。
http://www.kankyo-hoshano.go.jp/series/lib/No24.pdf

ここでは、以下のように記載があります。
『本マニュアルの基本的な要項を示す。
(中略)
④ 前処理を行うにあたり、試料相互間の汚染を防止するため、葉菜類は水洗いをしない。 』

『第7草 葉菜頬 7.3 試料の前処理方法
以下のようにして不用の部分を除く。
① 土、泥等を軽く払い落とす。このとき水洗いはしない。
② 食用としない根等の部位を取り除く。』

『参考
披ばく線量当量を評価するためには、日常の調理方法に準じ水洗等の処理を行い可食部のみを測定試料に調製することが望ましい。しかし、緊急時において水洗および水切り処理等を行うことは、高濃度に放射能汚染されている試料から他の試料への相互汚染を引き 起こす原因となる。このため、本マニュアルでは、迅速性、簡易性に重点をおくとともに、不必要な試料相互の汚染発生を防止するために水洗等は行わないことにした。』


しかし、厚労省は下記のような通達を出して、洗浄してから測定すること、という指示を出しました。そのため、現在では野菜などは洗浄(流水で約20秒)したあとに測定することになっています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000014tr1-img/2r98520000015is5.pdf

さらに、追加で細かい指示を下記のように出しています。どういうものはどうやって洗え、どうやって切ってサンプルとしろ、ということが記載してあります。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000019v70-img/2r9852000001a0nj.pdf


暫定基準値のまとめ

長くなりましたが、今回の厚労省の定めた暫定基準値についてまとめるとこういうことです。

厚労省は3月17日に、原子力安全委員会の出した「防災指針」に基づいて暫定基準値を定めた。この「防災指針」には、文科省の定めた「放射能測定法シリーズ」を参照するように記載があった。
      ↓
文科省(当時の科学技術庁)が1992年に定めた緊急時の測定における試料の前処理マニュアルというものがあった。そこでは試料の相互汚染を防ぐため、前処理で洗浄しないように、という記載があった。
      ↓
厚労省が2002年に緊急時のマニュアルを定めた際は、この文科省の前処理法に従うことと定めた。
      ↓
しかし、今回厚労省はあえてこの方法に従わず、測定前に洗浄するようにという指示を出した。
     

つまり、厚労省は、「防災指針」に基づいて基準値を定めました。しかし、基準値の前提となる測定方法の設定において、厚労省は理解できない行動を取りました。つまり、前処理方法として「防災指針」でも指定されており、厚労省が9年前に定めた緊急時の測定マニュアルでも定められている、文科省の前処理法(洗浄しないで測定)を無視して、敢えて洗浄してから測定するようにという指示を出しました

このことが、厚労省は数値を少なく見せるためにわざと洗ってから測定するように、という指示を出して測定方法を変更したのではないか?という勘ぐりを生んでいます。自らが9年前に決めた測定法のマニュアルでも、今回暫定基準値を決めるに当たって引用した原子力安全委員会でも、文科省の前処理方法を参照するようにということを決めており、ここには前処理方法を変更するだけの根拠は存在しません。論理的には洗ってから測定するということはできないはずです。もしそうするならば、それだけの根拠と提示するべきですが、一切提示していません。

敢えて厚労省側に有利な材料を一つだけあげるとすれば、食品衛生法に基づいての暫定基準値であるため、実際に食べる部分の放射能汚染がどれくらいあるのか、ということを測るのは理にかなっているとは言えます。このことは、文科省の前処理方法を記載したマニュアルにおいても、「参考」としてなぜ洗浄しないのか、という理由についてわざわざ言及してくれています。本来ならば洗浄した方が望ましいが、緊急時においては試料の相互汚染を防ぐことが優先されるために洗浄しないこととした、と記載されています。

ですが、消費者が実際に知りたいのは、たとえばほうれん草が実際にはどれだけ放射能で汚染されていて、でもその中でも可食部にはこれしか放射能はない、あるいは洗えばこれだけ減る、という情報です。決して、洗ったあとだけのデータを出して、基準値を超えていないから安全です、ということは聞きたくありません。

私は、今回の測定方法の設定において、その論理的根拠を明確に提示しなかったことが最大の失敗だったと考えています。明確に根拠を示して「・・・だから変更しても問題ないんだ」というか、「心配な人がいるだろうから、できれば洗う前と洗う後の両方のデータを取るように」、と指示を出すべきだったと思います。

ここでは詳細には触れませんが、土壌中の放射能汚染の測定方法についても、これまでは表土を採って測定していた(IAEAなどが行う国際標準)のに、今回急に5cmの深さの土を採って測るように、というように測定方法を変更したりしていることからしても、データそのものは変更できないため、高い数値が出にくい測定方法を考案してそれを標準の測定方法としているという可能性があります。だとすれば、巧妙な隠蔽工作ともいえます。

厚労省には明確な理由を説明して欲しいと思います。暫定なのですから、いつでも変更してもかまわないはずです。
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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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