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5/22 まとめ5:海洋放射能汚染2:これを理解すれば魚介類への汚染を予想できる!


ここでは、「まとめ4:海洋放射能汚染と魚介類への影響1:基本的な内容」の続きを書いていきます。主に海洋モニタリングのデータの読み方とその考え方を記載するつもりです。

これまでの日々の記事の中に詳細を記載した部分についてはそちらの引用とさせていただきます。


生物濃縮するのかしないのかの議論

さて、前回の「海洋放射能汚染と魚介類への影響1:基本的な内容」では、そもそも海水にはどれくらいの放射性セシウムが存在するか(1950年代の核実験の影響で約3mBq/L)とか、海水から魚介類へのCs-137の濃縮度がどのくらいか(50-100倍の濃縮)、という話をしました。

濃縮度については、水産庁の資料も図をつけて示しました。
私は資料中のグラフをみて欲しかったので資料を添付したのですが、言葉だけを読むと誤解を与えかねない表現がありました。

5/14 海洋放射能汚染:その47 水産庁が魚への濃縮の記述を修正」にその詳細は記載しましたが、水産庁の当初の表現では、「生物濃縮・蓄積はほとんどない」と書いてありました。それが表現がおかしいと抗議を受けて、5/11に「生物蓄積をしつづけるわけではない」と変更されました。

5/12水産庁修正1

問題になったスライドの一枚です。上の図(これは修正後です)で、右側のグラフを見たら「海水から動物プランクトンに行く段階で数十倍の濃縮が起こるけれども、その後はなぜかあまり生物濃縮がかからない」ことははっきりと読み取れますし、左の表にもはっきりと5-100倍と書いてあります。それにもかかわらずたとえ赤字で「食物連鎖を通じ、生物濃縮・蓄積はほとんどない」と書いてあったとしても、濃縮されることは誰の目にも明らかです。「ない」とは書いていないので、あくまでDDTやPCBと比較すれば濃縮係数が高くないという主張であることは理解できないといけません。

新聞やTVの記者がこのあたりをしっかりと読まずに書いてある言葉だけをみて「水産庁によると、魚介類への生物濃縮はない」という記事を書いたとしたら、その人の理解力不足であり、その人がウソを広めたとしかいいようがありません。多くの人はこの図を見ずに、記事に書かれた文字しか読まないからです。おかしいと思ったら、「水産庁によると、魚介類への濃縮はないということであるが、同庁の資料によると、セシウムで5-100倍の濃縮はかかることになっている」と記事にしないといけないのです

この件は、図に示されていることと違うことを結論の表現に使った水産庁もよくないのですが、しっかりとデータを示しているのですから、データを読まない方が悪いと私は感じました。SPEEDIの時のようにデータが一切出てこないのではなく、重要なデータはしっかりと開示した上で、それをまとめる表現が不適切だったというだけの問題と思います。むしろ受け取る側の能力の問題と思います。記者会見などでいわれたことをただ記事にする、というようなことをしているから、ちょっと調べればすぐにわかることさえ気がつかないのではないでしょうか?

私のブログの読者には、そのような勘違いをする人はいないと思ったのですが、このことが問題となっていたので、敢えてコメントしておきます。おおざっぱにいって海水濃度の50-100倍の濃縮がかかるという結論を頭に入れておいてください

なお、魚の種類による濃縮度に関しては、三重大学の勝川先生のブログも参考にしてください。私は専門家ではないので、細かい魚の種類による違いはここでは紹介しません。
http://katukawa.com/?page_id=4304


海水モニタリングのデータの読み方

さて、海水から魚介類への濃縮が50-100倍ということを説明しました。しかし、みなさんが実際に文科省や東京電力が発表するデータをみたとしてもこれだけではまだ理解できません。少し具体的なデータの読み方をご紹介します。海水モニタリングでどのような海域についてモニタリングしているかについては、「5/7 海洋汚染に対するモニタリング強化!その1」をご覧ください。

0522_0416文科省

以前は上の図のように、文科省の発表データは放射性セシウムについてはCs-137だけの発表でした。従って、Cs-134のデータはCs-137のデータから推測する必要がありました。幸いなことに、Cs-134とCs-137の比率は通常ほぼ1:1(確か48:52位の比率でした)なので、Cs-134のデータがなくても、Cs-137のデータを2倍するとだいたいの海水中の放射性セシウムの値が出すことができます。これは重要な事実なのでぜひ覚えておいてください

現在、東京電力や文科省では、以下の3つの核種について数値を発表しています。最近の文科省のHPのデータをご紹介します。

I-131(法令の基準値:40Bq/L)
Cs-134(法令の基準値:60Bq/L)
Cs-137(法令の基準値:90Bq/L)

0522_0427文科省

たとえば、上の図で、【8】の表層水のデータをみてください。Cs-134は不検出、Cs-137は10.5Bq/Lでした。検出限界は約10Bq/Lと記載してありますので、この【8】のCs-134は不検出とはかいてあってもゼロではないということがわかります。先ほど説明して重要なことなので覚えてください、と言ったと思いますが、Cs-134:Cs-137はほぼ1:1です。実際に、この日の他の地点のデータをみても、Cs-134:Cs-137の比率は1:1ではないですが、5:6(【S-4】中層)とか、9:10(【10】)くらいになっています。だから、【8】表層水のCs-134は、不検出と書いてありますが、7-9Bq/L程度はあり、従って、この地点の海水の放射性セシウムとしては、Cs-137の10.5Bq/Lと合わせて17.5-19.5Bq/Lぐらいであるということが読み取れます


一方で、厚労省が定めている、食品中の放射性セシウムに関する暫定基準値は500Bq/kgです。
厚労省HP
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000017z1u-att/2r98520000017z7d.pdf
ここで「放射性セシウム」といった場合に注意が必要なのですが、Cs-134とCs-137の二つのデータがあった場合、両者の合計を「放射性セシウム」のデータとしないといけないのです。一例を示します。

福島県HP(4/9公表)
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/mon230407-2.pdf

上のリンクにある表(一番上)では、コウナゴについてこう書いてあります。
ヨウ素-131 1700Bq/kg
セシウム-134 280Bq/kg
セシウム-137 290Bq/kg
単独では500Bq/kgを超えていませんが、「放射性セシウム」のデータとしては、280+290=570で、570Bq/kgという計算になります。従って、このコウナゴは暫定基準値を超えている、という判断がなされます。


魚介類への影響の予想

ここまでで、海水の放射性セシウムの濃度をどうやって計算するかということと、魚介類の放射性セシウムの濃度のデータについて読み方をご紹介しました。

さて、先ほどもお伝えしたように、現在は海洋モニタリング強化計画に従って「5/7 海洋汚染に対するモニタリング強化!その1」の海域の海水や海底土壌と、「5/7 海洋汚染に対するモニタリング強化!その2」での魚介類へのモニタリングが行われることになっています。5月の中旬から7月にかけてデータが出てくるはずです。

チェルノブイリの時の経験から、魚介類への影響としてはすぐに出てくるのではなく、「まとめ4:海洋放射能汚染と魚介類への影響1:基本的な内容」で記載したように、半年近く遅れて影響が出ることがわかっています。

魚介類のデータはこれからですが、50-100倍(ここでは100倍とします)の濃縮ということを考えると、簡単なシミュレーションができると思います。

ある海域の放射性物質の濃度がCs-134:5Bq/L、Cs-137:5Bq/L(放射性セシウムとして合わせて10Bq/L)を1ヶ月以上維持していたとします。その海域で3-6ヶ月後に取れる魚の放射性セシウムの濃度は、海水の放射性セシウムの濃度×100なので、10×100=1000Bq/kgになると予想できます

実は、「5/6 海洋放射能汚染で魚を食べても大丈夫か?その40」でまとめたように、福島第一原発から半径30km以内とその周辺(正確にはどこまでかはわかりませんが)は4月一ヶ月は確実に上記の濃度を満たしています(実際には10-30Bq/L)。おそらく5月になってからも現在の検出限界が10Bq/L程度なために検出できていないだけで、Cs-137が5Bq/Lという濃度は満たしている可能性が高いです。つまり、この海域にずっといる魚がいたとしたら、まず間違いなく数ヶ月後に1000Bq/kg程度の汚染が起こると言うことです。

ここで厚労省の暫定基準値が500Bq/kgということを思い出してください。(この基準値がいいかどうかというのは議論があり、実は今回の原発事故の前には、日本に輸入する食物の基準値は370Bq/kgという数値があったそうです。それを今回ゆるめた、と批判している人もいます。)この基準値の是非についてはここでは議論しませんが、マスコミが暫定基準値を超えたといって話題にして騒ぐのは500Bq/kgです。ですから、暫定基準値の500Bq/kgから逆に海水濃度をシミュレーションしてみましょう。

魚介類の放射性セシウムの濃度を500Bq/kgとすると、濃縮度100倍とするならば、500÷100=5Bq/kg=5Bq/L(おわかりとは思いますが、水1L=1kgなので、Bq/LとBq/kgは海水の場合同じと考えてもらってかまいません)というのが基準値を超えるために必要な海水の放射性セシウムの濃度です。先ほど注意したように、ここのデータとしては、Cs-134とCs-137の合計であり、ほぼ両者は等しいということがわかっています。ですから、Cs-134とCs-137が2.5Bq/Lの状態で長く続くと、その海域にいる魚は数ヶ月後には500Bq/kgを超えて、マスコミが大騒ぎするということになります。濃縮度を50倍とすると、Cs-134、Cs-137の濃度で2倍の5Bq/Lです。

検出限界はこのままでいいのか?

そういう視点で見たときに現在のモニタリングにおける検出限界というのは充分なのかどうかということを考えてみます。現在の検出限界は約10Bq/L、5/20に発表された初めての広域モニタリングデータでは、検出限界を下げて感度を上げるといっていた割に、I-131で4Bq/L、Cs-134で6Bq/L、Cs-137で9Bq/Lと期待はずれでした。

5/21 拡大海洋モニタリングによる初めてのデータ発表」でも書きましたが、この数値の設定は、法令の基準値を最初に示しましたが、基準値の1/10です。おそらく法令の数値が90だから1/10の9Bq/Lまで下げればいいよね、というあまり実用性のない設定をしてしまっています。これでは、全く意味がありません。なぜかもうおわかりですよね?最初のシミュレーションで示したように、Cs-134:5Bq/L、Cs-137:5Bq/Lの海水は、この検出限界では不検出となってしまいます。しかしながら、海水がこの濃度を保っていたとすると、魚介類には1000Bq/L検出されても全く不思議ではないということは、ここまで読んだ方はおわかりだと思います。そうすると、海水は不検出だったのになぜ?というばかげた議論が起こる可能性があります。

今からでも遅くありません。もし関係者が読んでくれていたら、検出限界をもっと下げて2.5-5Bq/LのCs-137やCs-134を検出できるように働きかけてください。官僚の考えることは総合的な判断ができていません。このままでは、海水からは不検出というデータがずっと続いて、大丈夫大丈夫という政府の発表があった後で、いきなり魚介類から基準値を超えた数値が出てマスコミが大騒ぎになるというシナリオも否定できません。

さきほど紹介した勝川先生のように、このことに気がついている人もいますので、ぜひ働きかけをお願いしたいと思います。関係する記事を紹介してこのまとめを終わりにしたいと思います。
http://katukawa.com/?p=4413


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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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