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6/11 食品の暫定基準値の考え方についてまとめました

食品の暫定基準値については、これまでいろんな方がすでにまとめられています。私はこれまでそのあたりの基準値についてはあまり深く言及しないというスタンスでやってきました。

でも、守谷市の20mSv/年をめぐる騒ぎの話を書き出したら、どうしてもこの話も避けては通れなくなってしまいました。

もともと土壌からの植物への移行やファイトレメディエーションの話を書いた後で、食品の暫定基準値についてもまとめようと思っていたので、ちょっと順番は逆になりますが、これを書いてしまうことにします。

でも、ファイトレメディエーションのヒマワリの話も早く書かないと、出番がなくなってしまいますので、明日にはヒマワリがなんでそんなに騒がれているのか、という話を「土壌放射能と植物」シリーズで書こうと思います。今日はヒマワリはあくまで予告のみで、暫定基準値の話をします。


1.参考にしたブログなど

さて、最初にも書きましたが、暫定基準値についてはすでにいろいろとわかりやすい説明があります。ですので、全く同じことを書いても仕方がありません。同じような内容になるとは思いますが、私なりの切り口と説明を加えたいと思います。また、以下に紹介するブログについては、部分的に引用してそれに対するコメントなども付け加えさせていただきます。

そこで、この記事を書くにあたって参考にしたブログをここでご紹介します。

(1)コンタンのブログ食品の暫定基準に対する疑念と不安が絶えない事情

今回、一番参考になったブログ。NHKかぶんブログのコメントでも紹介されたらしいです。この方は、いろいろなマップも作っていて、今後ぜひ参考にさせて(というか引用させて)もらおうと思っています。

(2)勝川先生のブログ
食品の放射性物質の暫定基準値はどうやって決まったか

そもそも内部被曝の限界を上げる必要があったのか?

基準値の決め方を後追いして確認してくれています。google documentでExcel表も公開してくれているので、計算式を自分でも確認できます。勝川先生のブログは、整理の仕方がわかりやすいので、特に引用してコメントを加えさせてもらおうと思います。

(3)産総研の岸本さんのブログ
基準値の根拠を追う:放射性セシウムの暫定規制値のケース
基準値の根拠を追う:放射性ヨウ素の暫定規制値のケース

twitterでも紹介されていました。勝川先生のブログもこの算出法をトレースしています。

その他
防災指針における飲食物摂取制限指標の改定について(2000年:pdf)
産総研のブログでも参考にしていた原典。

原子力安全委員会 「放射線防護の線量の基準の考え方」

team nakagawaのブログ

2.現在はいったい平常時?非常時?

実はここが一番重要なところです。コンタンさんのブログにはそこをしっかりと区別して書いてあります。そして、そのための理解に重要な図がこれです。

6/9原子力安全委員会基準の図

このことについては、「6/11 今は非常時?平常時?まずこれをしっかりと理解しましょう!」で詳細に解説し、「6/11 仮想記者会見を作ってみました。気楽に読んでください。」で少しかみ砕いて示しました。なので詳細は省略しますが、現在はまだ法的には「原子力緊急事態」が継続中です。ですから、平常時における、公衆被ばくの年間1mSvという基準は適用されなくてもかまわないことになっています。

そして、原子力安全委員会では、4/10の諮問を受けた会議において、議事録(速記録)にあるように議論の末、緊急時の20-100mSvのうちで下限の20mSv/年を目安とすることを決めました。

ここのところをよく理解しておかないと、どうして1mSv/年ではないの?という疑問にぶちあたって、わけがわからなくなります。


3.食品の暫定基準値がどうやって決まったか

では、現在は非常時である、という前提で、暫定基準値がどのようにして決められたのかを、確認していきましょう。

実は、この経緯は、上にあげたブログではしっかりと書かれたものがありませんが、食品安全委員会の資料に非常によくまとまっています。リンクをつけたpdfは現時点では6/8の更新分ですが、随時改訂・更新されているようです。時間のある方はこの資料もお読みになることをお勧めします。
(※本論とは関係ありませんが、ハイパーリンクの付け方について。私は今までリンク先のURLは文字に書いてそれにハイパーリンクをつけていましたが、URLは文字にはしないように変更しました。他の方のブログを読んでいて、私のようなハイパーリンクの付け方をしている人がいないことに気がついたので、今後はできるだけ普通のリンクの付け方に変更していきます。)

6/11 今は非常時?平常時?まずこれをしっかりと理解しましょう!」にも一部記載しましたが、時系列に従うと以下のようになります。

3/11 M9.0の地震発生
3/11 福島第一原発事故発生
3/11 原子力災害対策特別措置法(略称:原災法)に基づき、「原子力緊急事態宣言」を宣言。
3/11 原災法に基づき、原子力災害対策本部を設置。
3/12-15 1号機~4号機の爆発

3/17 厚労省が食品の暫定基準値を食品衛生法に適用し、都道府県に通知。
『厚生労働省は原子力安全委員会が定めた防災指針(「原子力施設等の防災対策について」)の指標値を食品衛生法に基づく暫定的な規制値とし、これを上回る食品については、食品衛生法第6条第2号に当たるものとして食用に供されることのないよう対応することとし、各自治体に通知しました。』(食品安全委員会資料より)

3/20 厚労相は、食品安全委員会に対し、「食品衛生法に基づき放射性物質について指標値を定めることに関する食品健康影響評価」について諮問した。

3/22 第371回 食品安全委員会で諮問内容について討議。7名の専門委員に加え、14名の専門参考人を招聘することを決定。 議事録(pdfがダウンロードされます)
3/23 第372回 食品安全委員会 14名の専門参考人も加えて議論開始。議事録(pdfがダウンロードされます)
3/25 第373回 食品安全委員会 ヨウ素に関してのレベルをとりまとめ 議事録(pdfがダウンロードされます)
3/28 第374回 食品安全委員会 セシウムに関してのレベルをとりまとめ 議事録(pdfがダウンロードされます)
3/29 第375回 食品安全委員会 緊急とりまとめを確定 議事録(pdfがダウンロードされます)

発表された放射性物質に関する緊急とりまとめのページ
放射性物質に関する緊急とりまとめ
放射性物質に関する緊急とりまとめのポイント
「放射性物質に関する緊急とりまとめ」の図解
3/30 原子力災害対策本部は、原子力安全委員会に助言を求める。
3/31 原子力安全委員会が問題ないと助言
4/1 『原子力災害対策本部は、この「緊急とりまとめ」及び原子力安全委員会の助言を踏まえ、当分の間、現行の暫定規制値を維持することが適当である旨の見解を示した。』(薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会の所見より)

4/4 厚労省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会「当面の所見」を発表し、暫定基準値維持を決定。

4/5 魚介類の放射性ヨウ素についての基準値が抜けていたため、厚労省は追加した。

4/8 厚労省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会は4/5の魚介類に対する放射性ヨウ素の基準値を追認

全部フォローするとこのようになります。

たくさんあるのでポイントをまとめましょう。

1.原災法に基づいて「原子力緊急事態宣言」が発令され、平常時から原子力緊急事態へと移行しました。

2.3/17に厚労省が「防災指針」にあった数値を暫定基準値として制定しました。

3.3/20に諮問を受けた食品安全委員会は、外部の専門参考人も含めて5回の会議を行い、3/29に緊急とりまとめを行いました。その内容は下記の3点です。
・放射性ヨウ素については、「年間50mSv とする甲状腺等価線量(実効線量として2mSv に相当)は、食品由来の放射線曝露を防ぐ上で相当な安全性を見込んだものと考えられた。」
・放射性セシウムについては、「ICRP の実効線量として年間 10mSvという値について、緊急時にこれに基づきリスク管理を行うことが不適切とまで言える根拠も見いだせていない。これらのことから、少なくとも放射性セシウムに関し実効線量として年間5mSv は、食品由来の放射線曝露を防ぐ上でかなり安全側に立ったものであると考えられた。」
・今回は既に定められている暫定規制値の妥当性について検討したものではなく、今後、リスク管理側(注:これは厚労省でという意味)において、必要に応じた適切な検討がなされるべきである。


4.それを受けて、3/31の原子力安全委員会の助言もあり、4/4に厚労省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会はこの暫定基準値を維持することを決定しました。

4.勝川先生のブログに対するコメント・補足

ということで、勝川先生の食品の放射性物質の暫定基準値はどうやって決まったかというブログのタイトルについては、決定したのは厚労省であるということです。食品安全委員会はあくまで試問を受けた内容について、緊急とりまとめを行っただけで、「今回は既に定められている暫定規制値の妥当性について検討したものではなく」としています。

では、厚労省はどうやって決めたかというと、「原子力施設等の防災対策について」といういわゆる「防災指針」に基づいて決めています。これは、原子力安全委員会が何回も改訂しながら定めているもので、現行のものは2010年8月に最終改訂されています。

実は、この防災指針には、参考資料14というのがあるのですが、ここには詳細な計算法がなく、実際には産総研の岸本さんなどが見つけてくれた資料(2000年)に基づき計算がされていることがわかりました。この細かい計算方法は、食品の放射性物質の暫定基準値はどうやって決まったかに詳しいので、ここではご紹介しません。

そこで使われている被ばくの上限は、ICRP(国際放射線防護委員会)勧告63(1992年)にある『1種類の食品に対して1年間に実効線量で10mSv』を元に原子力安全委員会で議論され、「実効線量5mSv/年(放射性ヨウ素による甲状腺等価 線量の場合は50mSv/年)」となっています。

勝川先生のブログ(これはまだベータ版で未完成とのことなので、私のコメントも入れてさらにいいものにしていただければと思います)では、以下のようにまとめられています。

『放射線から国民を守るための基本的な考え方は上の図のようになります。

1)まず国民がさらされる被曝の上限を定めます。この被曝量以上は国として強い措置をとって取り除くことになります。

2)外部被曝と内部被曝の合計が、被曝上限を超えないようにそれぞれの上限を定めます。

3)内部被曝は、セシウム、ヨウ素、プルトニウムなど、様々な核種によってもたらされます。また、被曝源も飲用水、野菜、魚など多岐にわたっています。それぞれの食品別・核種別の許容上限を、合計が内部被曝の上限を超えないように設定します。

4)食品別・核種別の内部被曝上限(mSv)を設定すれば、その内部被曝上限を守るには、食品の汚染がどこまで許容できるかが、年齢別に計算できます。

ここでは、1)から4)のプロセスを検証したいのですが、後述しますが、日本の場合は2)と3)の一部が抜けているように思えるのです。』

非常にわかりやすいまとめ方だと思います。特に4)の部分はgoogle documentも公開されていて、自分で確認したい人が後追いで検証できるようになっていてお勧めです。

そして、1)として3/25の第373回食品安全委員会の議事録抜粋が紹介されています。ただ、どうして5回の議論のうちでここだけから抜粋されたのかがわかりません。第371回から第375回までの議事録を全て読まないと食品安全委員会の議論の流れはわかりませんし、勝川先生は食品安全委員会の位置づけを誤解されているような気がします。そこで、各回の議事録にはすでにリンクをつけましたが、読む人も少ないでしょうから簡単に解説します。必要と思うところは議事録から引用します。

第371回(3/22)は、まだ専門参考人が参加していないため、あまり実質的な議論は行われていません。

第372回で、ICRPやWHOやIAEAなどの機関がいろいろな基準を定めているがどれを参考にしようか、という議論になり、ICRPの基準をWHOも取り入れているのでICRPを参考にしましょうということになりました。

第373回では、食品安全委員会に諮問された内容と、委員会では緊急に何をまとめるつもりなのか、ということが議事録で示されています。そして、放射性ヨウ素については50mSvで問題ないということがまとまりました。

第374回では、前回までに決まらなかった放射性セシウムの基準についてとりまとめました。そしてとりまとめ案のたたき台を元に手直しをしています。

第375回では、前回までの議論を受けて事務局がとりまとめた案の最終的な修正作業です。

では、第373回の議事録から、食品安全委員会に諮問された内容と、委員会では緊急に何をまとめるつもりなのか、ということを引用します。

『○ 坂本評価課長 事務局からでございますが、規制値とか基準値を決めるのはリスク管理側(注:厚労省のこと)ということになりまして、その根拠となる科学的な値を出すのが当委員会という、前回お配りした資料にありました評価と管理の分離ということになっております。』

『○ 坂本評価課長 それで前回御議論いただきまして、現実に測定されているもの、現実に指標値を超えたもの等が出ているということを踏まえて緊急的に取り組むべきものは、この放射性ヨウ素と放射性セシウムということで御議論いただいて、そちらに関しての整理をしているというところでございますので、例えばまとめ方で、対象物質の概要のところで、なぜ、その二つについて先に緊急的にまとめたとか、その辺は御議論を踏まえた文章を入れることが必要かと思っております。』

『○ 遠山専門委員 少し確認ですが、今の厚労省からの諮問の書類、前回の資料1になりますが、それの2ページ目になりますか、「食品衛生法第6条第2号の規定に基づき定める放射性物質の指標値について」というタイトルの文書で、評価依頼の内容は、3行目のところに放射性物質について指標値を定めることとなっていますね。それで、先ほどのどういう表記をするかというときに、Svにするとなりましたが、するとヨウ素131については
何とかSvというような形で書こうということになると理解してよろしいんでしょうか。
○ 小泉委員長 この指標値を定めることというのは、厚労省の話なのです。
○ 遠山専門委員 それに対して諮問するわけですね。
○ 小泉委員長 厚労省が指標値を定めたいので健康影響評価をしてくださいという依頼なのです。評価依頼の目的は、今は暫定なので、今後指標値を定めたいためにリスク評価をしてくださいという諮問なんです。よろしいですか。うちでの目的ではありません。』

厚労省と食品安全委員会の位置づけは下記のようになっています。
スライド16.JPG

つまり、暫定基準値を決めるのはリスク管理機関の厚労省です。食品安全委員会はあくまで『その根拠となる科学的な値を出す』だけなのです。そして、『評価依頼の目的は、今は暫定なので、今後指標値を定めたいためにリスク評価をしてくださいという諮問』なので、緊急的なとりまとめとしては、『現実に指標値を超えたもの等が出ているということを踏まえて緊急的に取り組むべきものは、この放射性ヨウ素と放射性セシウム』について被曝線量の限度をSvの単位で解答しましょう、ということをこの会では確認しています。

勝川先生は、よくわからない点として
『「放射性ヨウ素と放射性セシウムの上限について5mSv/yearという基準で安全だ」とされているのですが、議事録を読む限り、「公衆被曝の上限の議論で、5mSvを支持した委員が2名いた」というのが私の理解です。全体の上限であった5mSv/yearがいつの間にか各核種グループの上限にすり替えられているような印象をうけます。5mSvをそれぞれの核種グループの上限とするのが適切か否か、ご存じの方は情報提供をお願いします。この点が個人的に違和感が残っています。』
としています。『全体の上限であった5mSv/yearがいつの間にか各核種グループの上限にすり替えられている』と感じるのは、諮問の趣旨と目的が共有されていなかったからです。委員長と事務局側の意向は上に書いたようなことを議論して解答したかったけど、参考人はその趣旨をよく理解していなかったため、自分たちが基準値を決めるのだと思って議論をしていたので、いつの間にか最後にすり替えられたような印象があるのです。

ただ、勝川先生の持つ疑問はもっともなことで、それに対する答は私も見つけられていませんが、第375回の議事録に勝川先生の疑問に対しての委員会の方針が書かれています。

『○ 遠山専門委員 24ページの(3)の共通する事項のところに相当するのではないかと思うんですが、今回の検討対象は放射性ヨウ素と放射性セシウムなんですが、総量として何Svなのかというか、トータルとして何Svまでを基準にするかという辺りのことを書いておかなくていいのかどうか。書いておいた方がわかりやすいのではないか。そうではないと、これからいろいろほかの核種などが出てきたりする可能性もあるわけですが、そういうときにどんどん足し算になってくるとまずいような気がしますので、先ほど来お話があるように、100 mSvまではほとんど影響がないということであれば、そういう前提で一定の数値を入れておく方がむしろわかりやすいかなという気がしますが、いかがでしょうか。
○ 小泉委員長 いかがですか。では、遠山先生、共通事項に入れるのであれば文章を考えておいていただけますか。
○ 熊谷委員 トータルで核種全部を合わせて幾らがリミットになるのかというのは、次に長い時間をかけてリスク評価を行うことにもなっておりまして、恐らくそこで原著論文も全部集めて精査した上で恐らくうまくいけばですけれども、範囲として示すことになるかもしれませんが、いずれにしてもそういう値について述べることになろうと思います。
それにトータルと見ていい数値というのは、24ページの9行目からざらざら書いてあるのがそこの部分になろうかと思います。今、恐らく書けるのはこのくらいかなという感じではいるんですけれども、もしこれで不足があれば加えていただいてもいいかと思いますが、そういう雰囲気できていまして、いかがでしょうか。』

つまり、今回はあくまで緊急とりまとめであり、放射性ヨウ素と放射性セシウムについてのみとりまとめるが、今後も継続的に食品安全委員会で議論を行うのでその中で各種全部を合わせていくらが上限かを示す予定であるということです。ちなみに、「24ページの9行目からざらざら書いてある」というのはこのような記述です。

『放射性物質は、遺伝毒性発がん性を示すと考えられるが、今回の検討では、発がん性のリスクについての詳細な検討は行えておらず、また、100 mSv 未満の低線量域での放射線の人体への影響については、ほぼ影響がないことを示唆する報告及び何等かの影響を示唆する報告の双方がある状況である。ICRP は、Publication 63(1992)において、「任意の1種類の食料品に対して、ほとんどいつでも正当化される介入レベルは、1 年のうちに回避される実効線量で10 mSv である」としている。ICRP は放射線の分野における国際的な組織であり、その提言は一定の根拠を有し、緊急時のリスク管理措置の参考になるものと思われるが、入手できた資料からはその根拠について確認できていない。』

他の議事録を見てもそうなのですが、ここにいる委員の中では、年間100mSvを超えた場合は間違いなく発ガン率が上がるが、年間100mSvまでは放射線によるガンの死亡の影響というのは確認できていない、というのがコンセンサスとしてあるようです。確かに、ここについてはまだ学者の間でも議論がなされており、京大の小出先生などはBEIR-VIIの例を出して100mSv以下であっても確実に影響があると言っています(このあたりはケミストの日常参照のこと)。どちらが正しいのか、まだ決着がついていない(というか完全な証明がされていない)ようです。

さて、勝川先生のブログに戻ります。「基準値を計算してみよう」では
『それでは、セシウム、ストロンチウムに配分された5mSvがどのように配分されるかをみてみましょう。食品を5つのカテゴリーに分けて、それぞれに1mSvずつを割り振っています。1年間に、肉・卵・魚介類その他に起因するセシウム・ストロンチウムの内部被曝を1mSvに抑えるような基準が選ばれます。というかこの時点で、すでにICRPの公衆被曝目標なのですから、何かおかしい気がします。』
とありますが、ここは平常時と緊急事態の違いを理解していないため、このようなコメントになったものと思います。ここではあくまで緊急時の議論なので、平常時よりも高い数値が出てきてもしかたがないのです。

ただし、その前にある
『ヨウ素は甲状腺50mSv/yearなのですが、これは全身だと2mSv/yearに相当するようです。セシウム・ストロンチウムで5mSv/year、ウランが5mSv/year, プルトニウムが5mSv/yearとなっております。それぞれ別腹ですから、この時点で最大で17mSv/yearの内部被曝を許容していることになります。これに外部被曝が加わるわけです。先ほどの会議で、「5mSv/year~10mSv/yearなら問題ない」といっていたのは、被曝量全体だったはず。ならば、5mSvをそれぞれのグループに配分するのが筋だと思うのですが、私の理解不足でしょうか。日本の放射線防護は、被曝上限を定めて、それをトータルで守るような方法になっていないようです。文科省は外部被曝だけで20mSv、厚労省は内部被曝だけで17mSv許容しています。省庁横断的に、国として、国民を被曝から守るためのグランドデザインの作成が急務と感じます。』
については私も同感です。ただし、厚労省は、上記に書いたように100mSv以下であればはっきりとしたデータでガンになるとは確認されていないので問題ない、という考えでいる可能性はあります。

なお、この点については、コンタンさんのブログにFDAの考え方が紹介されています。

『米FDA基準では、そうならない理由をこう説明している。

「DILs基準は、それぞれの放射性核種または放射性核種のグループごとに、独立して適用される。

なぜなら、それぞれは違った種類の事故に適用されるからだ。」』(以下省略)

途中で紹介した食品の放射性物質の暫定基準値はどうやって決まったかには、原子炉事故の場合、PWR型(加圧水型原子炉:今回の福島はBWR(沸騰水型))で出力(燃焼度)がこれくらいならばどういう核種がどれくらい放出されるか?というシミュレーション結果などやチェルノブイリの事故をもとにこういう事故では何が出るか?ということを算出しているようです。詳細は理解できていません。


最後に、第373回議事録より私が非常に共感を覚えた部分を紹介します。
『○中川専門参考人
しかし仮に原発が収まれば、どうも収まらないような兆しがあって、3号機は格納容器が破損しているなどという情報があるようですけれども、そうすればヨウ素にしても年の単位になるでしょうし、セシウムはどの道30年、土壌にはあるわけです。
一方、少し共通認識をしたいと思うんですが、今の公衆の被曝限度は1mSvです。その1mSvをどうしようかというのが最終的なゴールになる。この会のものではないかもしれませんが、全体的にはこの公衆の1mSvという被曝限度をどうするかという議論になるはずで、それを考えると、まず確定的影響を考える必要はもちろんないわけですし、胎児の被曝についても50mSvになるということには到底行かないわけです。
今は公衆被曝限度の1mSvを大幅に上げなさいと言っているわけです。このこと自体、この委員会で検討するべきことでないことは私は重々わかっているんですが、最終的にこういった議論をしなければいけない。そうでなければ生きていけない。緊急時でありますので、国民が今、平時と思っているかどうかはともかく、現実にはこれはどう見ても緊急時であります。したがって、ここに書いてあるような、例えば和文の下から2番目のパラグラフに、その場合、委員会は1年間に1~20mSvの範囲の参考レベルを選択し、つまり場合によっては20倍に上げて、そして長期的には元の1mSvに戻せ。これをICRPが言っているわけです。こうせざるを得ないような状況だと思います。そのときに、この委員会としては、この上げ幅に相当する食品の規制値の変更、増加となった場合のリスク評価をするということがよろしいのではないでしょうか。つまり、何倍かに上げたときに一体、人体影響が、発がんの影響がどれだけ出るのか。それはわからないのかという議論をすべきではないかと思っております。』

中川専門参考人というのは、team nakagawaのブログや、@team_nakagawaのtwitterで有名です。この中川専門参考人の意見というのが、私が強調したいことをそのまま代弁して言ってくれています。「6/11 今は非常時?平常時?まずこれをしっかりと理解しましょう!」で書いたことそのままです。

本当は、この後にコンタンさんのブログにあったように事故収束後の長期対策の基準というものについて書きたかったのですが、長くなってしまったことと、日本ではまだ食品安全委員会も含めて何も動きがないようなので、この記事では省略させていただきます。いずれ何かの機会に取り上げることになると思います。今の暫定基準値はいつまでも維持されるものではなく、この秋か、遅くても来年には改訂されるべきものと考えています。そしていずれは公衆被ばく(外部被ばくと内部被ばくを合計して)が1mSv/年という平常時の基準に戻していく必要があります。

超大作になってしまいましたが、おつきあいありがとうございました。


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コメント

1/2

以下は、現在見られる混乱の原因と考えられるものです。

飲食物摂取制限は、瞬間的な放出を想定し、周辺住民の被ばくを低減する観点で考えられてきたもので、大事故・国土の狭さ・長期間・広範囲・遠隔地域等は考慮していなかったようです。

また、現行法令では公衆被曝限度の取り扱いが詰められておらず、公衆被曝限度と介入(飲料水摂取制限等)は、現実的に、十分併用できると考えていた節があります。

ここ最近は、2007年勧告の取り入れ議論の最中でしたが、現存被曝状況についても、十分議論されていたとは思えません(2007年に緊急被曝状況・現存被曝状況という考え方が勧告されました)。

つまり、現在でも公衆被曝限度は有効であり、原子力緊急事態宣言が指し示すものは、好ましくはないがやむを得ない行動(事業者の行為は違法状態であり、放射線損害の低減のために公的機関が介入する必要がある)ということだと思います。

2/2

特に参考と思われるものについて、アドレスをまとめてみました。私もしっかりと読み込めていませんが、もし時間があれば読んでみて下さい。

・『飲食物摂取制限に関する指標』の概略です
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-03-03-06

・事故前の指標の原典『原子力施設等の防災対策について』P.23-4
原子力安全委員会が、防護対策の指針全般についてとりまとめたものです
http://www.nsc.go.jp/info/20100823.pdf

・現行法の基礎的な考え方「放射線緊急時における公衆の防護のための介入」
『ICRP1990年勧告(Pub.60)の国内制度等への取入れについて(意見具申)』
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/81009.htm

・「緊急時における公衆被ばくに適用する参考レベルについて」
『ICRP2007年(Pub.103)の国内制度等への取入れについて-第二次中間報告-』
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/index.htm

・現在は、ICRP Pub.111も参考にしているだろうと思います。
http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15092,76,1,html

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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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