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6/12 ヒマワリが土壌の放射性セシウムを除去という説の真偽を確認しました。

 
先週一週間は、思いもよらない方向に足を突っ込んでしまいました。ですが、昨日食品の暫定基準値の考え方について一通りまとめたので、あの関係の話は少し置いておいて(いただいたコメントへの対応は時間をかけてもします)、今日は本来書きたい話に戻ろうと思います。

前回、「6/4 ファイトレメディエーション(Phytoremediation)って何?Csをなくせるの?」で書きましたが、土壌中の放射性セシウムの除去というのが大きな課題になっています。農水省も参加して現在福島で行われている実験でも、ヒマワリやアマランサスを植えるという実験をするようです。

なぜヒマワリなのか?ネットでもヒマワリが土壌の放射性セシウムを減らすのに有効という話がありましたが、その信憑性についてしっかりと解説をしたものが少ないようです。検索すると、日本テレビ系の「特命リサーチ200X」というTV番組の話や、寒地土木研究所(札幌市)のサイトが出てきます。

今回は、その大元の実験について解説します。

1.実験結果の紹介

いろいろ調べていくと、ヒマワリで非常にいい成績を残した論文は一つだけ見つかりました(他にもあるかもしれませんが、ネットに出ていた『米ラトガーズ大学のスラビック・デュシェンコフ博士』という名前に合致するのはこれだけのようでした)。
これは、Environ. Sci. Technol.という雑誌に1997年(1997, 31 (12), pp 3468–3474)に載った論文の一つの実験結果です。この論文では、植物を用いてウラン(U)を水道水などの水から除去できるかどうかということを調べています。

6/12ヒマワリ図2

その結果、ヒマワリとマメ(Beans)やカラシナ(Indian Mustard:Brassica juncea)を比較すると、ヒマワリは水耕栽培の実験で24時間以内にウランを95%以上吸収したという実験結果が得られました。上の図2(Fig.2)です。ここではヒマワリはcv.SF-187という品種とcv.Mammoth giantという品種の二つを用いていて、二つともいい吸収率を示しました。確かに他の植物より吸収がいいことがわかります。

6/12ヒマワリ原著Fig3

そこでヒマワリについてさらに実験をすることにしました。今度はウラン(U)だけではなく、ストロンチウム(Sr)とセシウム(Cs)も同時に実験してみました。その結果が上の図(Fig.3)です。

実験では、750mlの水の中に、U:600μg/L、Cs:200μg/L、Sr:200μg/Lを加えておいて、時間を追って一部の水をサンプリングし、その中のUやCsの濃度を測定するということをしています。測定は、放射能を測定するのではなく、ICP-MSといわれる質量分析計を使っています。そういう意味では放射性セシウムを使ってはいませんが、植物や動物は放射性セシウムと普通のセシウムを見分けられませんので、放射性セシウムを用いても同じ実験結果が得られるはずです。

結果は、上の図にあるように、Uの吸収が一番よく、1時間で90%近く水からヒマワリに吸収されました。一方、Csは、Uほど速く吸収されませんでしたが、24時間後には3μg/Lにまで減少しました。ほぼ1.5%にまで減少したということです。

この論文では、ヒマワリによるUの吸収をメインに調べていますので、Csに関する実験結果はこれだけです。
ですが、この実験でわかったことは、以下のことです。

・ヒマワリの苗(発芽4週間というのでどれくらいの高さでしょうか?)を水に漬けておくと、水中のCsが24時間で98%程度吸い上げられた。
・比較に用いたUやSrも96時間ではほぼ100%ヒマワリに吸収された。
・Uを用いた実験では、ヒマワリやカラシナや豆よりも吸収率が高いことがわかっている。

2.Phytotechという会社

実はこの論文は、アメリカにある(あった?)Phytotech Inc.という会社が行った実験結果です。『米ラトガーズ大学のスラビック・デュシェンコフ博士』ということで調べていったのですが、大学からPhytotech社に移ったようですね。

この会社は、ハワイ大学のHPにバイオレメディエーションの会社の一つとして紹介されているのですが、そこに載っている会社のURLは存在しません。従って、会社自体はもう別の会社に買われたか名前を変えたものと思います。

ウクライナのチェルノブイリの近くで、放射性セシウムを水中から根に吸い上げられるかどうかを調べる実験をしたということで、「青空と麦穂」さんのブログでは12日間で水中の濃度の8000倍も濃縮したということらしいですが、そのことに関する具体的なデータはわかりませんでした。

会社なので、大学とは違ってあまりデータを論文にはしていないのだと思います。しかし、おそらくは上で紹介した実験とほぼ同様の実験結果であったと思います。上の論文では、放射性セシウムを用いていないので、放射性セシウムが根や茎にどれだけ移行したか、ということはわかりません。おそらくウクライナで行った実験では、報告されているようなデータが出たのでしょう。しかしそれは、あくまで水耕栽培に近い状態での実験であり、土壌を用いた実験ではありません

3.チェルノブイリの土壌を用いた実験ではヒマワリは?

なぜ土壌での実験と水耕栽培の実験は同じ実験として扱えないのでしょうか?実は、セシウムに限らず、カリウム、アンモニウムなどのイオンは、水中で存在しているのと同じようなイオンの形で存在しているもの(イオン交換態とか置換態とよばれる)以外に、有機物と結合した状態や、鉱物と結合して植物が利用できない状態のものがあるからです。日本土壌肥料学会によると、『半分以上の Cs-137 が粘土画分に存在しており、また、土壌への吸着の強さや様式で分けると、K、NH4 等の陽イオンと置き換わることができるイオン交換態(置換態とも言う)が 10%、有機物との結合態が 20%、粘土鉱物等との強固な結合態が 70%との報告がある』ということで、植物が利用できる形のセシウムは、わずか30%程度だということなのです。雲母などの鉱物と結合してしまうと、植物は利用できないからです。

ですから、水耕栽培でうまくいったからと言って、土壌中での実験でも同じような結果が出るとは限りません。
実際、ウクライナから取ってきた土壌(表面から15cmまで)中でいろいろな作物を育ててみて、放射性セシウムの移行係数を計算している論文があります。

Slavik Dushenkov, Alexander Mikheev, Alexei Prokhnevsky, Michael Ruchko, and Boris Sorochinsky
Environ. Sci. Technol., 1999, 33 (3), pp 469–475
Phytoremediation of Radiocesium-Contaminated Soil in the Vicinity of Chernobyl, Ukraine

この論文では、チェルノブイリ原発から約10kmのところにあるウクライナで1996年、すなわちチェルノブイリ事故の10年後に行われました。ヒマワリ(Helianthus annuus)以外にトウモロコシ(Zea mays)、エンドウマメ(Pisum sativum)、カラシナ(Brassica juncea)、アオゲイトウ(Amaranthus retroflexus)など16種類の植物を用いて実験を行っています。

6/12ヒマワリ表1

その結果が上の表です。わかりにくいですね。どうも事前の実験で、アマランサスというケイトウの仲間がセシウムの吸収に良さそうだということがわかっていたようです。そのため、アマランサスの仲間がたくさん入っています。

この実験では、二つの指標を用いています。一つは、bioaccumulation coefficientで、生物濃縮係数という意味です。植物中のCs濃度/土壌中のCs濃度で求められます。従って、1を超える場合もありますし、高ければ高いほどより多くのCsを土壌から吸収できるということを示しています。
一方で、植物の生育量というのも重要です。あまり大きくならない植物では全体として土壌からのCs吸収が大きくなりません。従って、植物の生育量×生物濃縮係数で、全体のCsの除去される量が計算でき、上の表ではそれをもう一つの指標として、その多い順に並べています。

それによると、ヒマワリ(Helianthus annuus)は下から3番目です。トウモロコシにも負けています。最初の水耕実験で勝っていたカラシナ(Brassica juncea)には勝っていますが、一番よかったアオゲイトウ(Amaranthus retroflexus)の全体量で約1/10、生物濃縮係数でも1/6しかありません。

他にも似たような土壌での実験の報告がありますが、ヒマワリが放射性セシウムの除去によいというデータは土壌を用いて行った実験では示されていないようです。

農水省の農地土壌除染技術開発 第1回会合のプレスリリースにあったように、農水省の実験でも、ヒマワリとアマランサス(アオゲイトウの仲間)を植えて実験するようですので、8月頃には結果が出てくるそうです。その結果を見ればはっきりすると思いますが、おそらくヒマワリはあまりいい結果を生まないのではないかと私は予想しています。むしろアマランサスの方が期待できると思っています。

まとめです。

・ヒマワリは、水耕栽培の実験(土壌を用いない実験)においてはセシウムを効率的に吸収するという報告がある。(その点でネットのウワサは間違いではない)
・一方、土壌での実験結果では、ヒマワリは放射性セシウムの除去においてすばらしい成績を残しているわけではない。
・アマランサスというケイトウの仲間は、比較的放射性セシウムの土壌から吸収においてヒマワリよりもはるかにいい成績を残している。

従って、ヒマワリが土壌からの放射性セシウムの吸収に優れているという説は、正しいとは言えない。ただし、福島の土壌ではチェルノブイリとは異なる結果になる可能性もあるので、やってみる価値はある。



最後にこの関係で参考にしたサイトをご紹介しておきます。

東大理学部 有田研究室

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6/12 ヒマワリが土壌の放射性セシウムを除去という説の真偽を確認しました。 | 3.11東日本大震災後の日本

ヒマワリによるファイトレメディエーションは効果なし

ヒマワリで放射性セシウムによる環境汚染を浄化しようという試みが浪江町などで実施されていたわけだけど、 「DASH村」のヒマワリ栽培 放射性セシウム吸い上げを期待 http://www.j-ca ...

コメント

ヒマワリは放射性セシウム吸収するが除去.分解不可

放射能が「現実には鉛をも通過し」他あらゆる物質を通過することは
周知のところです。
これは
人間を含む【地表に存在するあらゆる物質が放射能を吸収】して
しまぅといぅことです。


当方も、2011年後半に「寒地土木研究所(札幌市)のサイト」を
拝見しましたが、ひまわりが放射性セシウムを文化可能などとは、
ひとことも述べられていません!


地表において
放射能を吸収してしまう物質ばかりのところへ
さらに放射能の【吸収時間】や【吸収率】を取り上げていますが


*最終的には
*この【吸収時間】や【吸収率】が
*【放射能を除去し分解】するとなってしまぅのは一体何でしょー





高師小僧

「高師小僧」という鉄細菌か、植物体由来の「褐鉄鉱」があります。

 そういえば、医療や牛等について、プルシアンブルーという鉄のキレートの原理でセシウムを吸着させることは行われているようです。

 時々、思うのですが、植物についても、同様なメカニズムで、セシウムが鉄のキレートで集まり、数百年後には、セシウムのを含む鉄キレート由来の植物の根の周りに筒のような「褐鉄鉱」が出来るのでしょうか?

ヒマワリの移行率 結果がで始めています

9月10日の福島民報新聞に飯館村で実験したヒマワリの移行率が載っていました。
移行率は、1.5%~1%だったようです。やはり土壌では吸収率は、低いと思われます。

Re: 質問です

しおさん

本日「8/18 福島原発から大量にまき散らされたセシウムなどの再循環の現況と課題」という記事を書いたのでそれも参考にしてください。

土壌からのセシウムの吸い上げ効果の高い植物を用いても、それを焼却して体積を減らしてからどこかに埋めるなり保管する必要があります。実験レベルで行うことは必要ですが、取り込んだひまわりの処分方法を考えずにそれを実地でおこなうのは問題があります。刈り取ったひまわりをそのままどこかに埋めたら全く意味がありません。

No title

yasさん

お返事が遅くなってしまいました。
私も土壌中の鉱物や元素の専門家ではないのですが、土壌肥料学会のHPなどを読むと、一度鉱物にセシウムが結合してしまうと、その反応は不可逆的であり、生物が利用できるいわゆる置換態ではなくなってしまうということなので、通常の微生物は取り込めないのではないかと思います。

もし微生物が雲母と一緒にセシウムを取り込んで、それを植物が再利用できるならば、チェルノブイリにおいても微生物の作用でいつまでもセシウムが利用できる形になっていたはずですが、現実はそうではありません。

この論文でも、すでにチェルノブイリ事故から10年以上経過しているため、利用できるセシウムはかなり少なかったようなコメントがありました。

質問です

 いくつか疑問に思ったのですが、放射能の除去のためにこの方法を活用するのなら、放射性物質を取り込んだひまわりないし、これらの植物の処分はいかにすればよろしいのでしょうか?なにぶん素人なもので。すみません。お教えいただければ幸いです。

質問

大変興味深く読まさせて頂きました。 一点気になることがあって雲母に結合したセシウムは植物は吸収できなくなると書いてありましたが、土壌内の微生物が雲母のセシウムを取り込み排便もしくは菌の死骸を、植物が取り込むという流れができるのでは無いかと想像しやすいのですが、TSOKDBAさんはどう思いますか?

Re: 質問ですが

tiger3さん

コメントありがとうございます。

一度雲母などと結合してしまったセシウムは、基本的にはもう二度と植物が利用できなくなるようです。特に、年月が経つとそのような形態のセシウムがほとんどになってしまうため、できるだけ早いうちにセシウムを植物で吸収させようという試みが行われています。

植物による違い、そのうちに書こうと思っているのですが、今は放射能汚染水が一日を争うかも、という状態のため、そちらを優先させてもらっています。次の週末にでも続きを書けたらと思っています。

また時々遊びに来てください。

質問ですが

詳細なレポートありがとうございます。色々な項目を読ませていただき、大変参考になります。
さて、ヒマワリが土壌からの吸収についてあまり効果がない、という結果であるというのはよくわかりました。また、多くのセシウムは鉱物と結びつき、植物が利用できる状態ではなくなるということも。

そこで、質問なのですが、ということは、セシウムの多くは畑にあっても、植物に取り込まれないのか(多くが吸収されたあとで)、結びついた鉱物から再び放出され、吸収されることに少しずつなっていくのか、どうなのでしょうか。

また、最近の週刊誌によると、植物によって、良く吸収するもの、あまり吸収しないものとあるようですね。その辺りも教えてくださるとうれしいです。

まとまりのない文で失礼とは存じますが、コメントさせていただきました。
今後のご活躍を心から願っています。

プロフィール

TSOKDBA

Author:TSOKDBA
twitterは@tsokdbaです。
3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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