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7/3 土壌中の放射能はどれだけ植物に移行するのか?

諸般の事情で後回しになってしまいましたが、「6/12 ヒマワリが土壌の放射性セシウムを除去という説の真偽を確認しました。」の続きを書くことにします。

もともとこのシリーズは、構想として「6/2 まとめ6:このブログの全体像の整理と今後の構想について」に書いたように、

(1)Phytoremediaionについて
(2)ヒマワリがCsを除去って本当?
(3)農水省が発表した、土壌からジャガイモ、サツマイモへの移行は?
(4)本当に放射能汚染除去に優れているのは何?
(5)まとめ

のような感じで書いていくつもりでした。(4)(5)はどうなるかわかりませんが、今回の(3)は予定通り、移行係数の話を書こうと思います。最初にお断りしておきますが、今回はヒマワリの時のような「なるほど!」という話ではありません。



(1) 移行係数とは

5/27、農水省はHPに「農地土壌中の放射性セシウムの野菜類と果実類への移行について」というまとめを発表しました。

ここには、いろいろな作物についてこれまで発表されている文献データを調査し、それをまとめたものが記載されています。ここでの視点は、どういう作物は土壌中の放射性セシウムを取り込みやすいので注意しないといけないのか、ということでまとめられています。つまり、前回のヒマワリの時とは違い、放射性セシウムを取り込みにくい方が食べてもより安全だ、ということです。

でも、実は「6/12 ヒマワリが土壌の放射性セシウムを除去という説の真偽を確認しました。」で紹介したヒマワリやアマランサスと、これからご紹介するイモやキャベツなどは同じ「移行係数」という指標を見ています。土壌から放射性セシウムを除去しようとする場合には移行係数の高いものを選ぶべきだし、食べるものでは移行係数を以下に低くするか?という考え方をします。見方が違うので、同じ移行係数の使い方が高い方が望ましいか、低い方が望ましいか?ということが違ってくるだけなのだという事をご理解いただきたいと思います。
(なお、ここではストロンチウムは取り上げません。セシウムに絞った話にさせていただきます。)

それでは、農水省のHPに別添としてまとめられた表を見てみましょう。その前に、「移行係数」とは何か?ということをまず定義しておかないといけません。

移行係数=〔農作物中のセシウム137濃度(生鮮※、Bq/kg)〕/〔土壌中のセシウム137濃度(乾土、Bq/kg)〕

数式が出てきていきなりわけがわからなくなったかもしれませんが、そんなに難しいことではありません。

たとえば、ある土壌中の放射性セシウムの濃度が100Bq/kgとします。その土壌で育てたニンジンを生のまま(これは乾燥させないでということです)ミンチにして測定器にかけたら放射性セシウムの濃度が0.37Bq/kgだったとします。

その場合、移行係数は0.37/100=0.0037ということになります。

ここで、生のままと書いたのは、農水省が計算している移行係数では、農作物は全て生鮮状態のもので測定するという事になっているからです。文献などでは、乾燥させてその状態で測定しているものもあるのですが、国際原子力機関の報告書と「食品成分データベース(日本食品標準成分表2010)」の水分比を用いて「生鮮重当たり」の濃度に換算しています。

わかりやすい例でいうと、このブログではこれまでさんざんご紹介してきたように、お茶の葉の放射性セシウムの濃度を、生葉で測るのか、乾燥させた荒茶で測るのか、という違いです(「7/2 お茶からの放射能(放射性セシウム)検出について最終的なまとめ」参照)。お茶葉の場合は、乾燥させると5倍くらい放射性セシウムの濃度が上がりました。それぞれの作物について、その比率、すなわち水分含量が異なるので、その比率を計算してお茶でいう生葉の状態に合わせています。

それでは、農水省の出した移行係数を表にしましたので見てみましょう。

7/3農水省移行係数1

ここで、幾何平均値というのと算術平均値という言葉が出てきました。算術平均値というのは普通の平均値のことです。幾何平均値(データがn個あるとき、データ値の積のn累乗根)というのは、対象とするデータが1~10000のように大きくばらついているような時に用いる平均値の取り方です。このような場合は、単純に算術平均をとってしまうと、全く外れた値を平均としてしまう可能性があるため、幾何平均値が使われます。移行係数は、同じ植物を対象にしていても文献によって、あるいは土壌の条件によって100-1000倍のばらつきがあるものなので、この幾何平均値という平均の取り方は妥当だと思います。

また、それだけバラツキがあるため、最小値と最大値も掲載されています。この数値が発表された時、NHKなどは最大値で報道を行っていました。これもリスクを最大限にとって考えるということでは一つの方法だと思います。

でも、これを見てもよくわからない、という方がほとんどだと思います。ご心配なく。私も最初そうでしたから。

農水省のHPにあるまとめや、そのほかの文献、サイトなどから集めてきた情報を元に、もう少しかみ砕いて説明します。とはいえ、はっきりした結論が得られないのが今回のお話しなので、そこは予めご了承下さい

(2)移行係数というのはどれくらいのものなのか?

この係数がいったいどれくらいなのかは感覚としてもっておく必要があります。まず、定義から考えて、移行係数が1だとすると、土壌中のCsが全て作物中に移行してしまうことになります。そこまでは行かないだろうということは容易に想像がつきます。ではどれくらい?

下記の表は、IAEAが1982年にまとめた農作物への移行係数からとってきたものです(文献A)。NPKといった肥料にも使われるP(リン)の移行係数は1×10(0)=1、すなわち全てほぼ等濃度で移行するというデータに対し、Csは3×10(-2)=0.03、すなわち3%くらい3%くらいの濃度でしか移行しないということです。

7/9追記:移行係数は全量の何%という考え方とは違うというご指摘をいただきました。確かに移行係数は1を超える場合もあり得るので、表現を訂正しました。

7/3移行係数1

次の資料も、最後に出典を紹介する文献Aからとってきたものです。さきほどのIAEAの資料も含め、米国NRC、DOEなどのいくつかの資料から移行係数を抜き出してきてくれている貴重な資料です。ついでに他の元素も載っていましたので、比較のために掲載しておきます。C(炭素)は移行係数5という報告もあれば、0.001という報告もあり、どちらを信用していいか迷ってしまいますが、Cs(セシウム)については多くの報告がほぼ0.01前後で落ち着いています。

7/3移行係数2

ところが、Csの移行係数は全ての植物を平均してしまうと0.01前後なのか、と思うと、必ずしもそうではないところがややこしいところです。今回の農水省のデータでも、わざわざ

気候が日本の気候に近い地域で実施された圃場試験のデータに基づいて、野菜類17品目と果実類4品目について、セシウム137の土壌から農作物への移行係数の最小値、最大値、平均値を取りまとめました。』

と記載してあります。実は、文献Aや文献B(この二つの文献は最後に紹介します)のように網羅して調査した報告書がすでに存在するため、全体的なCsの移行係数を知りたければ、過去の報告書をあさってまとめれば済むだけのことです。ところが、移行係数というのは、最初に数千倍の幅があるといったように、土壌の性質によっても大きく異なります。ですから、アメリカやヨーロッパのデータをそのまま日本の土壌に当てはめるわけにはいかないようです。

一例を下記の比較から見てみましょう。これは文献Bからの抜粋で葉菜類についてまとめたものです。「日本のデータ」というのは、放医研の内田らが調べたデータです。「世界全体のデータ」というのは、文献Bでまとめるにあたって、IAEAなど日本以外のデータも含めてまとめたデータです。実はこの二つは100倍近く数字が違うのです。土壌の性質などが違うのでしょうね。

たとえば、キャベツ。

農水省の発表したデータ     0.00092
日本のデータ(放医研 内田ら) 0.00024
世界全体のデータ          0.016

日本のデータと世界全体のデータは100倍近く違いますが、福島の土壌に近いものとして農水省が選んだのは、やはり日本のデータ+αでした。日本のデータに近い数値になっています。

従って、絶対値については先ほど見てきたような、移行係数0.01~0.1という事が日本の土壌、特に福島近辺には当てはまらない可能性があります。ですから、絶対値で考えるのではなく、同じ表に並んでいるものの中でどれが移行係数が高くてどれが低いか、という程度の利用しかできないと考えておいた方が良さそうです。

そういう目で見ると、葉菜類については、ほうれん草は比較的移行係数が高いということが二つの表から読み取れます。ただし、農水省の発表したデータではそれほど高くありません。また、カラシナは農水省のデータでも、世界全体のデータでも非常に高いというデータが出ていますので、これは要注意といっていいと思います。

7/3移行係数4

次に葉菜以外の作物です。
ジャガイモを例にとります。

農水省の発表したデータ     0.011
日本のデータ(放医研 内田ら) 0.0009
世界全体のデータ          0.0078

こちらは、農水省のデータが一番移行係数が高い結果になっています。

ジャガイモとサツマイモについては、農水省のデータでは、最大値が0.13と0.36と非常に高かったために注意が必要とされましたが、全体の平均値としてそこまで高いわけではありませんでした。ただ、世界全体のデータで見ても、最大値は27とか38とか土壌中からかなり濃縮されるような結果も出ている事は確かなので、条件によっては移行係数が高くなる可能性があるということは注意しておいた方が良さそうです。

7/3移行係数5

(3) 結局どんなことが読み取れるのか?

データの幅がありすぎるため、明確な結論を得るのは難しい、というのが一つの結論ではありますが、それではご紹介する意味もなくなってしまうので、簡単にまとめていきます。農水省のHPに記載してあることも抜粋してご紹介します。

その前に、文献Bのまとめを抜粋してご紹介します。

ここでは、主に日本のデータが揃っている作物についてはそちらを優先して、全体としての移行係数を下記のようにまとめています。Csの場合のデータは以下の通りです。

米類  :0.0008
葉菜類 :0.0004
非葉菜類:0.0003

つまり、文献Bでは全体的には移行係数は0.0001~0.001だという結論を出しています。今日は触れませんでしたが、農水省は米の移行係数については4月の段階ですでに0.1という指標を出しています。ずいぶん違いますね。

7/3移行係数3

一方、農水省のHPにはまとめとして下記のようなことが書いてあります。これについてはこれまでにすでに説明しました。

『1.気候が日本の気候に近い地域で実施された圃場試験のデータに基づいて、野菜類17品目と果実類4品目について、セシウム137の土壌から農作物への移行係数の最小値、最大値、平均値を取りまとめました。最小値と最大値とが大きく異なる場合が多いため、平均値としては幾何平均値(データがn個あるとき、データ値の積のn累乗根)を用いました(メロン、ブドウを除く)。
2.イモ類を除く野菜類と果実類における移行係数の最大値は0.1未満、幾何平均値は0.05未満でした。
3.イモ類の移行係数の最大値は0.36と他の野菜より大きい値を示しましたが、幾何平均値は0.05未満であり他の野菜類と同程度でした。
4.キャベツとジャガイモについては、データが50程度存在したため、米の場合と同様の方法で指標値を算出したところ、キャベツで0.0078、ジャガイモで0.067でした。』

農水省の作成した表をもう一度よく見ると、次のような傾向があることが読み取れます。明確な傾向ではないので、参考程度にしてください。

・葉菜の中では、アブラナ科の作物が移行係数が高い傾向にある。特にカラシナは他にも高いというデータが出ているため、要注意。アブラナ科の作物は、ヒマワリのようにファイトレメディエーションを行おうとした場合でも移行係数が高い傾向が報告されていたので、このデータは正しい可能性があります。

・根菜類(ジャガイモ、サツマイモ、テンサイ)は移行係数が高い。これは他の統計でも同じような傾向が見られるので注意した方がいいかもしれない。

・果菜類は移行係数が低い。

・樹木類は移行係数が低い。これは、根が深いところにまで張っているということと関係があると思います。放射性セシウムは地中5cm程度までにしか浸透しないといわれているので、深いところに根を張る植物はあまり影響を受けないのだと思われます。



ということで、今回は明確な傾向が得られなかったのが残念です。土壌による移行係数の違いが大きすぎて、この程度の考察しかできないということなのです。前回のヒマワリについても、文献的には土壌での成績はあまりいいものではないが、福島の土壌ではどうなるかはやってみないとわからない、と書きました。それは今回ご紹介したように、その土地でのデータを出してみない限り確かなことは言えないからです。

ですが、今後もう少し突っ込んで移行係数の話は調べてみたいと思います。そのうちに福島でのデータも出てくることでしょう。次回がいつになるかわかりませんが、ご期待下さい。


この記事を書くにあたって参考にした資料:

(文献A) 環境パラメーターシリーズ 土壌から農作物への放射性物質の移行係数
http://www.rwmc.or.jp/library/other/file/kankyo1.pdf

(文献B) 安全研究センター 生物圏評価のための土壌から農作物への移行係数に関するデータベース
http://jolissrch-inter.tokai-sc.jaea.go.jp/pdfdata/JAEA-Data-Code-2009-003.pdf

東大理学部 有田研究室
http://metabolomics.jp/wiki/Doc:Radiation/Agriculture

日本土壌肥料学会HP
http://jssspn.jp/info/file/4012.pdf

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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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