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7/18 ドイツの大腸菌による食中毒はエジプトのマメ科植物の種が原因?(2)


ドイツを中心に欧州で大きな問題となった大腸菌O104の問題、ひとまずは落ち着いたのでこの問題に対して簡単なまとめをしておこうと思います。

前回「7/7 ドイツの大腸菌による食中毒はエジプトのマメ科植物の種が原因?(1)」ではO157のような大腸菌の簡単な解説をしましたので、今回は(2)として欧州での一連の騒動と現在の状況について、そして次の記事で(3)として今回のO104がこれまでの菌にない性質を持っていることを解説しようと思います。

前回書いたように、今後は少しずつ原発事故以外の話も取り上げていきたいと思います。


今回の欧州での大腸菌騒動は、5月にドイツで始まりました。ちょうどその前に日本では焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件で腸管出血性大腸菌O117が問題となっていましたので、日本での報道のスタンスは「欧州でも大腸菌による食中毒」「日本とは違う大腸菌」といった日本の食中毒と同様の食中毒、といった報道が多かったような印象を私は持っています。

しかし、日本での「焼肉酒家えびす」の食中毒事件と、欧州での食中毒事件は性質が違います。日本でのO117による事件は、食中毒を起こさないようにするための基本を業者が守っていなかった事が原因です。「えびす」だけの問題なのか、東京の卸業者の問題なのか、という論点はありますが、危険性は予知できたにもかかわらずそれを怠ったという過失があります。なぜやるべき事をやらなかったのか?今後の再発防止のためにはどうしたらいいのか?ということが議論の中心でした。

一方、欧州での食中毒は、誰に過失があったのか?といわれてもそれが確定していないのが現状です。エジプトのマメ科植物が原因であるというヨーロッパ(EU)の欧州食品安全庁(EFSA)の報告はありますが、本当にエジプト産の「コロハ(フェヌグリーク)」というマメ科植物の種子からO104が検出されたのかというと、そこまで決定的な証拠はありません。フェヌグリークの種を出荷する際に農場で大腸菌が付着して、それをサラダのような形で充分に加熱せずに食べたことがきっかけになったというのが現在のEUの見方です。しかし、エジプト政府はそれに反論しています。

エジプトから出荷されたフェヌグリークの種から現段階ではO104:H4が検出されていません。あとでご紹介するように、確かに調査していくと一番怪しいのですが、エジプトの業者と言い切っても大丈夫なのかどうか?それこそ風評被害にならないか?というリスクはありますが、EFSAはこれで間違いないと判断しているようです。

事実関係の整理

まずはWHOのリポートでこの一ヶ月の動きのポイントを追って整理してみましょう(WHOのリンク先は英語なので注意)。次いで、EFSAがなぜフェヌグリークの種子だと断定し、それはエジプトから来たと判断したのかをご紹介します。

5月27日のWHOリポートでは、下記のように記載されています(要点のみ記しています)。
・ドイツで3人の女性が死亡し、276人が溶血性尿毒症症候群(HUS)と呼ばれる症状が出た。
・今回の流行は二つの点で特殊である。一つは流行が広がるのが以上に速い点、もう一つは大人の発症率が高い点である。
・ドイツでは、キュウリ、レタス、トマトが感染源の可能性があるとして食べないようにと指導した。

5/31のWHOリポートでは、欧州の9カ国でHUS患者(400人)およびHUSにまで至らなかったものの腸管出血性大腸菌(EHEC)の感染者が1243人も出たと報じています。
・9カ国とは、オーストリア、デンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウエイ、スペイン、スウェーデン、スイス、英国。
・ほとんどの患者が、発病する前の潜伏期間中にドイツ北部に旅行していた。

6/2のWHOリポートでは、原因菌がO104:H4と特定されたこと、この菌は人から検出されているが、腸管出血性大腸菌の原因菌としては報告がないことが記されています。

6/8のWHOリポートでは、さらに増えた感染者、死者の数と、ドイツのコッホ研究所(Robert Koch Institute)が新規患者の発生は収まりつつあるという発表をしたと伝えています。
・病原菌と接触してから発病するまでの潜伏期間は3-4日(2-10日)であること。
・ドイツで689人のHUS患者(18人死亡)と1959人のEHEC(非HUS患者のこと:6人死亡)
・患者の69%が女性で78%が20才以上の大人。

6/10のWHOリポートでは、ドイツが発表した感染源の特定について触れています。
・原因はマメ類と新芽野菜(スプラウト:もやしなど)であり、これらを生では食べないようにという指示が出た。
・キュウリ、レタス、トマトがを食べないようにとしていた指示は取り消された。

6/21のWHOリポートでは、新規患者の発生が明らかに減ってきて、流行のピークは越えたということを報告しています。
・全世界で856人のHUS患者(28人死亡)と2841人のEHEC(非HUS患者:12人死亡)

6/28のWHOリポートでは、フランスとスウェーデンで新たに患者が発生したことを伝えています。
・6/24、フランスで8名のHUSが発生。3名からO104:H4を検出。
・6/28、スウェーデンで1名の患者からO104:H4を検出。

7/1のWHOリポートでは、フランスの新たな患者から検出された菌の遺伝子解析と、患者が何を食べたかの結果を記しています。
・フランスで新たに発生した患者は、5/1以降ドイツには行っていない。
・食生活の調査から、マメや発芽野菜を食べていてそれが原因になった可能性がある。
・6/30にフランスの患者から検出されたO104:H4の遺伝子解析の結果、類似した株であるとわかった。
・これらの結果は、ドイツの食中毒と共通する何かが原因の可能性を示唆している。

そして、7/5にEFSA(欧州食品安全庁)が、エジプトの「コロハ(フェヌグリーク)」というマメ科植物が感染源の可能性が高いと発表しました。


これらを読む限り、5月下旬から6月のドイツは大騒ぎだったろうということが予想されます。もちろん、日本とドイツでマスコミの報道の仕方も違うと思うのですが、全部で41人もの死者と3900人の患者(7/15現在)が出た大事件だったわけです。しかも大人の女性に多いということですから、社会的なインパクトは非常に大きなものだったはずです。この中で日本にいる我々にとって関係ありそうなポイントを二つほど指摘しておきます。

(1)風評被害の問題
まず、5月の下旬にドイツではキュウリ、キャベツ、レタスなどが感染源として疑われ、食べないように指示が出ました。これに関連して、スペインのキュウリが感染源だという噂がたち、スペインのキュウリは風評被害で売れなくなりました。これは後になって間違いだったとわかったので、まさしく風評被害でした。そのため、CNNの記事にあるように、後に補償問題が出てきました。

なお、これは日本の野菜類に放射能が含まれているから売れ行きが悪いということとは性質が違います。低レベルの放射能による健康への影響は、ガンになるというデータと影響がないというデータが両方有り、科学的には決着がついていないというのが実態です(100mSv/年を超える放射能については「影響がある」と決着しています)。このような現状であれば、放射能で汚染されているものはできる限り摂取を少なくするということは当然のことと思います。従って、明らかに放射能が含まれている野菜類を「安全」といってはいけないのです。それを言っていいのは検出限界を示した上で、検出限界以下の数値のものだけです。いずれは全てのものに放射能レベルを表示して、消費者が判断して買う、といった時代が来るようになるでしょう。

(2)O104の食中毒を防ぐためには
今回、日本ではO104の食中毒は起こっていません。ですが、食中毒の防止法はO157でもいわれていることと同じです。大腸菌は75℃、1分以上の加熱で死ぬため、しっかりと火を通してから食べるということ。しっかり洗うことなど、「7/7 ドイツの大腸菌による食中毒はエジプトのマメ科植物の種が原因?(1)」でご紹介したまとめをしっかり守っていれば問題ないはずです。

どうやって原因を特定できたのか?

原因の新芽野菜(スプラウト)について、6/10の発表が今回の食中毒の原因に大きく迫る第一歩でした。これにより、キュウリなどは「シロ」と判定され、後の補償という話にまでつながっていきます。そして、6月下旬に発生したフランスのケースによって両者に共通するエジプトの業者を特定できるようになりました。この程度の情報についてはWHOリポートにも書いてあるのですが、その詳細については、EFSAの資料やドイツのコッホ研究所の資料を読み込んでいかないと、マスコミが報じているレベルの話しかわかりませんでした(どちらもリンク先は英語です)。私の知る限り、日本語ではこの経緯を説明している資料はなく、せいぜいこの資料くらいしか見つかりませんでした。

では、主にEFSAの報告書からどうやってフェヌグリークの種子と同定したのか、そこを簡単にご紹介していきます。

ドイツでは、EFSAがタスクフォースチームを結成し、食中毒になった約4000人に、潜伏期間と思われる期間にどこに行ったのか、何を食べたのか?ということを聞き取り調査していきました。その結果、これらの患者は一部の例外を除いてドイツ北部に行ったことがあることが判明しました。

また、ドイツ北部の流通機構の調査も行い、原因と思われる野菜をどこから入手したかということで全部で41のグループに分けられるということがわかってきました。そして、Niedersachsenにある新芽野菜(sprout)を生産する企業Aが全ての発端であると考えるとつじつまが合う(リンク先は英語)ことも判明しました。企業Aが下の図で緑色の点、流通業者は黒い点、赤が41ヶ所のスーパーや食料品店です。

7/18スプラウト41

この企業Aが出荷していた新芽野菜は、Spicy MixtureとMild Mixtureがありました。この両方に含まれていたのは、レンズマメ(lentil)とフェヌグリーク(fenugreek)だけです。さらにフランスで使われていた3つの新芽野菜(フェヌグリーク、カラシ、キバナスズシロ)にも含まれていたのは、フェヌグリーク(fenugreek)です。こうして、フェヌグリークが一番あやしいということが浮かび上がってきたのでした。

7/18スプラウト2

こうしてフェヌグリークがあやしいとわかったら、企業Aがそれをどこから入手したのか、という流通を調べていきました。そして、エジプトの業者から輸入したということが判明しました。あとは、下記の流通経路において、下から上にたどる(trace back)だけでなくて、下にたどる(trace forward)を行い、他にも被害がないかどうかを確認していく作業が必要です。この作業はかなり膨大になるため、現在も進行中のようです。

7/18流通ルート

そして、EFSAの発表に基づき、7/5、EUとしてエジプト産の種子、果物、胞子の輸入を一時的に(10月まで)禁止するという措置を発表しました。エジプトの業者が扱ったフェヌグリークの種子からはO104:H4は検出されていませんが、確かに疫学的な状況証拠はこのフェヌグリークが一番可能性があると示しています。ここではご紹介しませんでしたが、コッホ研究所の資料にはもっと細かいことも記載してあります。興味のある方は読んでみてください。

今回EFSAの資料を読んでいって、こうやってどのように食中毒の原因がこれだと特定したか、ということがしっかりと情報公開されているのはすばらしいことだと感じました。特に今回のように、エジプト産のフェヌグリークが原因だということを発表するには、それなりの根拠がないと国際問題に発展しますから、慎重に調査したはずです。

でも、日本で同じ事があったとしても、こういう経緯までを厚労省が一般に公開するでしょうか?おそらくしないでしょう。「焼肉酒家えびす」の一件ではどういう報告書が公開されているか確認していませんが、EUの食中毒事件とは性質が違うためにこのような情報公開はされていないはずです。

日本のマスコミでも、何人死亡したとか表面的な数字だけを取り上げるのではなく、どうやってフェヌグリークと突き止めたのか、その手法について取材して報告してくれるマスコミがあってもいいと思います。日本ではこのような情報が公開されているかどうかということも含めて取材したら充分に取り上げる価値はあると思います。今回調査してみて、ちゃんと情報を取りに行けばわかるのに、表面的な報道しかされていないことに改めて気づかされました。

次の記事では、この大腸菌O104の特殊な性質について説明したいと思います。

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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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