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7/18 ドイツの大腸菌による食中毒はエジプトのマメ科植物の種が原因?(3)

 
この記事は、「7/7 ドイツの大腸菌による食中毒はエジプトのマメ科植物の種が原因?(1)」と「7/18 ドイツの大腸菌による食中毒はエジプトのマメ科植物の種が原因?(2)」の続きです。

今回は、O104の特殊な性質について解説しようと思います。ちょっと聞き慣れない言葉もいっぱい出てきますが、できるだけわかりやすく説明します。自分の大腸の中でどんなことが起こっているのか、ちょっと覗いてみるつもりで読んでみてください。


まず、近年は新聞などでもあまり説明もなく腸管出血性大腸菌と言っていますが、大腸菌のほとんどは無害で病原性はありません。そして、病原性のある大腸菌には下記のようにいくつか種類があります。まずはその種類と英語の略号をお示しします。

(1) 腸管病原性大腸菌(enteropathogenic Escherichia coli:EPEC)
(2) 腸管組織侵入性大腸菌(enteroinvasive Escherichia coli:EIEC)
(3) 腸管毒素原性大腸菌(enterotoxigenic Escherichia coli:ETEC)
(4) 腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli:EHEC)
(5) 腸管付着性大腸菌(enteroaggregative Escherichia coli:EAEC)

この中で、今日覚えておいて欲しいのは、(4)の腸管出血性大腸菌です。O157で有名になりましたよね。また、「焼肉酒家えびす」で起きたのはO117、ドイツなどで40人以上死亡したのはO104です。このO104といった番号の意味については「7/7 ドイツの大腸菌による食中毒はエジプトのマメ科植物の種が原因?(1)」で解説してあります。

腸管出血性大腸菌の多くはベロ毒素(Vero toxin)という毒素タンパク質を生産します。このタンパク質は菌体外に分泌されます。そして腸管の細胞に取り込まれるとタンパク質合成を止めてしまうので、その細胞が死んでしまい、出血性の下痢をおこすのです。さらに一部は血液に乗って体内をめぐります。このベロ毒素に感受性の高い細胞が腎臓の細胞です。腎臓の細胞がベロ毒素でやられてしまうと、溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こして、最悪の場合は死に至ります。

少し脱線しますが、ベロ毒素のベロって何?ということも解説しておきましょう。ベロ(Vero)細胞というアフリカミドリザルの腎臓由来の細胞があります。この細胞は、日本人の安村美博さんが1962年に作り出した細胞で、ウイルス研究には非常によく用いられています。この細胞では多くのウイルスを増殖させることができるからです。

Vero細胞は腎臓由来の細胞なので、ベロ毒素に対して感受性が強く、死にやすいのです。そこで、このベロ細胞に対して毒性を示す毒素ということで、ベロ毒素という名前をある研究者がつけたのでした。ベロ細胞は何も悪くないのに、たまたまこの毒素に感受性があるということで名前をつけられてしまったのです。

さて、ベロ毒素には、ベロ毒素1(Verotoxin1;VT1)とベロ毒素2(Verotoxin2;VT2)の二つがあります。二つはよく似た構造をしています。そして、ベロ毒素1は志賀赤痢菌(Shigella)が産生する志賀毒素(Shiga toxin;Stx)と同じであることが後の研究でわかりました。

そのため、ベロ毒素産生大腸菌(Vero toxin-producing E. coli)はVTECと呼ばれることもありますし、志賀毒素産生性大腸菌(Shiga toxin-producing E. coli)という意味でSTECと呼ばれることもあります。英語の資料を読んでいると、腸管出血性大腸菌(EHEC)の中でもベロ毒素産生大腸菌は、EHECともVTCEともSTECとも書かれますが、どれもほぼ同じ意味です。

ここでまたちょっと脱線しますが、どうして赤痢菌と大腸菌が同じ毒素を産生するの?と疑問に思う人もいるでしょう。実は、こういう細菌では、遺伝子を格納している染色体以外に、プラスミドと呼ばれる核外遺伝子を持っていたり、菌に感染するウイルスであるファージと呼ばれるものが染色体に入り込んでいることが多いのです。そして、プラスミドやファージは大腸菌間のみならず他の近縁の菌にも移動して、遺伝子を運ぶことができるのです。

有名な例が薬剤耐性です。多くのプラスミドには薬剤耐性遺伝子が入っています。このプラスミドを近づいてきた菌と接合して伝達することにより、薬剤耐性が他の菌にも獲得されるのです。おそらく、ベロ毒素も赤痢菌と大腸菌のどちらがもともと持っていたのかはわかりませんが、ベロ毒素産生の遺伝子はファージに保有されていることがわかっており、このファージが赤痢菌と大腸菌の間を移動して同じ毒素タンパク質を生産できるようになったのでしょう。

さて、わざわざファージや接合による遺伝子の獲得(水平伝播ともいいます)の話を持ち出してきたのは、O104の性質と関係があるからです。

今回のO104を遺伝子解析したグループがあり、それによって、このO104の性質がわかってきました。EFSAの資料(1)およびEFSAの資料(2)に詳細な遺伝学的性質が載っています。

実は、今回のO104:H4の株は、ベロ毒素を産生するVTEC=STECとしての性質と、腸管付着性大腸菌(EAEC)としての性質を併せ持っていたのです。腸管付着性大腸菌というのは、大腸菌が腸管壁に付着するためのタンパク質を生産することができるのです。そして腸管に付着して増えるので、長い間下痢を起こします。ただし、腸管付着性大腸菌は毒素は産生しません。

今回のO104:H4が非常に病原性が強かった理由の一つとして、腸管壁に付着しやすい性質のため、ベロ毒素が効果的に血液中に吸収され、腎臓への移行が高くて、溶血性尿毒症症候群(HUS)が高頻度で観察されたという可能性があります。

O104:H4による食中毒は過去にもドイツで二度(2001年)、韓国で一度(2005年)起こっています。しかし、遺伝子的解析によると過去のO104:H4とは若干違うということです。一番大きな違いは、今回のO104:H4は、既存の14種類以上の抗生物質に対して耐性を持っていました。通常、ベロ毒素産生大腸菌は、抗生物質耐性ではありません。しかし、この菌はESBL(extended spuctrum β-lactamase)と呼ばれる抗生物質耐性遺伝子を持っていることがわかりました。

つまり、この菌は、腸管付着性大腸菌がベロ毒素産生能力と、抗生物質耐性を身につけたこれまでにない新たな大腸菌としての性質を持っている可能性があるのです。

先ほど述べたように、プラスミドやファージという形で菌の間では遺伝子のやりとり(水平伝播)は頻繁に行われているようです。今後も、既存の遺伝子に組み合わせによって、新たな性質を持った菌が出現してくる可能性は否めません。そういう意味では、これは日本でも起こりうることであり、我々の対応策としては、基本的には菌をつけない、増やさない、殺すといった3原則なのです。

最後に、腸内細菌について全体的なまとめをしておきます。下の図にあるように、人間の腸内には100兆個もの細菌がいるといわれています。一般の人にわかりやすく説明するため、善玉菌、悪玉菌などと説明することがありますが、分類学的にはこのような分類はありません。腸内細菌は多くの種類があり、そのバランスも重要です。食事によって、腸内細菌のバランスが変わるため、食生活が重要なのです。

大腸菌以外に、いわゆる善玉菌のビフィズス菌や乳酸菌がいて、悪玉菌といわれるクロストリジウム菌などもいます。大腸菌のほとんどは病原性はありません。人にとって無害です。しかし、大腸菌の中にも人に対して病原性のある大腸菌がいます。これらは大きく5種類に分類されています。その中の一つ、腸管出血性大腸菌は、O157が非常に有名ですが、それ以外にも「焼肉酒家えびす」のO117などもあります。

今回のO104:H4は、O157などの腸管出血性大腸菌の性質と、腸管付着性大腸菌の性質を併せ持ち、さらに抗生物質耐性能を獲得した特殊な菌であるということです。このような菌が日本で猛威をふるわないことを願います。

7/18腸内細菌説明


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これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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