スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

7/20 今年の米の放射性セシウムによる汚染具合を予想する!前編

 
7/4 茨城県の麦の放射能汚染状況は?」で麦の放射能データを見ていった時に、大麦の放射性セシウムがほとんど必ず検出されていることに驚きました。小麦に関してもほぼ同様の傾向が見られます。ほとんどの野菜は不検出が多く、時々数値が検出される程度のと野菜が多いのに、麦類については(小麦では不検出もいくつかでてきましたが)ほとんどのサンプルで放射性セシウムが検出されるというのは私にとっては驚きでした。また、同時に秋に収穫されるコメについても同じ事がいえるかもしれない、という危惧が芽生えました。

ちょうど先週末からtwitterでは稲わらの話から稲の移行係数が話題になっていました。そこで、これまでわかっている情報から、今年のコメの放射性セシウムの濃度がどれくらいになるか、予想できないものかといろいろと調査、分析を行いました。この話は今年のコメの放射性セシウムの濃度を予想するのが最終的な目的です。

そのためには、まず過去の解析データが豊富に存在する小麦とコメのデータを解析しておく必要があります。前編としては、過去のデータから小麦とコメの比較と、今年の小麦の情報を解析しました。後編では、その解析に基づいて、今年のコメの放射性セシウムの濃度を予想します。この記事は前編です。

もしも考え方などに間違いがありましたら、ぜひご指摘下さい。よろしくお願いします。


まず、以後の話を進めて行くにあたり、移行係数という考え方を理解しないといけません。この言葉を初めて聞いた方は、「土壌放射能と植物シリーズ」の「7/3 土壌中の放射能はどれだけ植物に移行するのか?」を読んでからこちらに戻ってきてください。

今年の小麦のデータを、7/14までの分を「食品の放射線検査データ」のサイトで抽出したところ、全部で48件ありました。7/7迄の段階で調べた時は、1検体以外は全て数値が検出されていたのですが、7/14に福島県のデータが追加されたところ、なぜか「不検出」が6件も追加されてしまいました。

このそれぞれの数値と、各地の環境放射線データとは合致するかと思ったのですが、いくつかのポイントで合致していません。このことは早川先生のブログでも検証されています。早川先生の作成した(等値線を引いた)マップと土壌汚染データを合わせるとぴったりと傾向が合いますが、麦(大麦&小麦)のデータを合わせてもうまく合わない点がいくつかあります。

例えば、ひたちなか市の小麦(玄麦)の放射性セシウムの濃度は112Bq/kgですが、ひたちなか市は環境放射線データが茨城県の中でも高くない(0.18μSv/h)なのに、他の茨城県の小麦よりもかなり高く出ています。実はひたちなか市の二条大麦や六条大麦でも同じように異常な高い値がでているので、ひたちなか市の農地には市役所や市内の学校よりもずっと放射能が高いホットスポットのような所があるのではないか?ということを予想させます。この小麦のサンプルを取った土壌の放射性セシウムの濃度をぜひ測定して欲しいと思います。
それ以外にも、福島県のデータはなぜか低めに出ているような気がします。萩原さんの作図を参考にしてください。

次に、48件のデータを下記の方法・条件で移行係数を試算してみました。「6/8 Bq/kg→Bq/m2→μSv/hの変換についての簡単なまとめ」でご紹介したとおりです。

・市町村、あるいは同じ市町村の学校の環境放射線データ(μSv/h)を探してくる。
・μSv/h→Bq/m2の換算は、×282000で行う。(早野先生のツイートより)
・Bq/m2→Bq/kgの換算は、÷65で行う。これは文科省が深さ5cmの場合に示した換算式。

その結果、平均で玄麦の移行係数は0.062、最小値0(不検出)、最大値0.331(千葉県長南町)となりました。この記事の一番最後に計算に用いた数値を表で示します。なお、小麦のセシウムが不検出(ND)の場合は0としました。

・ひたちなか市の例で挙げたように、市役所や学校の環境放射線データをそのまま流用していいかどうかには議論の余地があると思いますが、それ以外にはデータがないので利用させてもらいます。
・また、換算法については、いくつかの係数が知られているようです。μSv/h→Bq/m2は×500000くらいの数値を使っている人もいます。また、Bq/m2→Bq/kgの換算は、深さ5cmならば÷65でいいのですが、最近は15cmに統一されたようなので、その場合はもう少し大きな数値で割るはずです(正確な数値がわかりません)。
どれを取るかによって、移行係数の絶対値は数倍ずれることはご了承下さい。ただし、この係数の差によるずれはせいぜい数倍です。

さて、こうやって移行係数をとりあえず算出してみたわけですが、「7/3 土壌中の放射能はどれだけ植物に移行するのか?」でも書いたように、移行係数というのは文献によっても100-1000倍の開きがあるのが普通です。従ってだいたいこの程度、ということがわかればいいくらいの目安だと考えておく必要があります。今算出した0.062という移行係数は、「安全研究センター 生物圏評価のための土壌から農作物への移行係数に関するデータベース」では穀類は0.0008ですので、むしろやや高いかな、と思いました。後編でも述べますが、玄米の移行係数が0.1というのはかなり高い設定と思います。


上記で今年の玄麦の移行係数をかなり乱暴なやり方ですが、試算してみました。実は、コメと小麦については、過去の核実験やチェルノブイリ事故における長期間の解析データが揃っています。それを参考にして、今年の小麦のデータの位置づけを考えることができるのです。それをこれからご紹介していきます。以下にご紹介するもので特に断りがなければ「わが国の米、小麦および土壌における90Srと137Cs濃度の長期モニタリングと変動解析」から引用しています。

まず、皆さんご存じの方も多いと思いますが、私たちが放射能にさらされたのは初めてではありません。1950-1960年代には下の図に示すように、米ソの核実験が地上で頻繁に行われましたし、1986年には有名なチェルノブイリの事故がありました。そして、放射性セシウムも1960年代にはかなりの量が降り注いでいました。

7/20核実験

これまでの核実験による降下物の影響を考える際、1960年代前半のように頻繁に降下物の影響を受けている場合(土壌からの影響もある)と、1986年のチェルノブイリによる突発的な事故による爆発の場合、それから1986年を除く1980年代以降の主に土壌からの吸い上げのみを考えればいい3つのパターンがあることがわかります。

年代降下物土壌(畑)土壌(水田)
1960年代前半約1000Bq/m230-50Bq/kg30-50Bq/kg
1986150Bq/m220Bq/kg   20Bq/kg  
1980年代以降<1Bq/m210-20Bq/kg10-20Bq/kg
7/22追記・訂正 畑の土壌の放射性セシウムのデータが間違っていたので訂正しました。畑も水田もほぼ同じです。

上の表において、土壌のデータはこのグラフから読み取っています。

7/20土壌Cs

今年の場合はどのパターンが一番近いかというと、3月に大量放出があり、それ以降の大量の放出はないことから考えると、季節的にもチェルノブイリのあった1986年が一番近いと思います。そこで、1986年の場合のデータを確認しながら小麦(玄麦)の移行係数を見ていきましょう。

7/20玄米玄麦Cs

1986年4月26日に起こったチェルノブイリ原発事故により、5月になってから日本にも放射性物質が飛んできました。麦の出穂に関係する3月から6月の降下物(Cs-137)の量は、地域によって差があるものの、おおざっぱに言って150Bq/m2程度でした(東京:179、仙台:158、つくば:135、大阪:80、秋田:431;本文中の記述より)。これを、先ほどのBq/m2→Bq/kgの換算式に入れると、150÷65=2.3で2.3Bq/kgになります。

これに対して、1986年には土壌に20Bq/kg程度の放射性セシウムがすでに積もっていたことが先ほどのグラフからわかります。ですから、土壌に降り積もった分としては、チェルノブイリによる土壌放射性セシウムの約10%にしかならなかったということです。Csの場合は何年も経つと植物が利用できる置換態が少なくなってしまいます。新しい降下物の方が植物は利用しやすいので多少プラスするにしても、土壌からの吸い上げ分(間接汚染)については、1986年は約10-15%程度の増加にしかならなかったはずです。

ここで上の玄米と玄麦の1986年のCs-137のデータを見てみます。コメの出穂時期にはチェルノブイリからの降下物は3-6月の1%以下になってしまったということなので、玄米は前年とほとんど変わりありません。ところが、玄麦のCs-137は、前年の0.05Bq/kg程度から一気に7Bq/kg程度にまで上昇しています。そしてまた翌年には0.05Bq/kg程度に低下していますので、玄麦はチェルノブイリからの降下物の影響を非常に大きく受けて、それが玄麦の放射性セシウムの濃度に影響していることが確認できました

さらに詳しく見ると、開花(出穂)の時期に近いかどうかでCs-137の取り込まれ方が違うことも明らかになりました。出穂の近かったつくばでは135Bq/m2の降下物に対して約8Bq/kg、立川では179Bq/m2の降下物に対して15.5Bq/kgです。比較的出穂まで時間があった札幌でも、79Bq/m2の降下物に対して2.5Bq/kgのCs-137が取り込まれています。このように、麦は降下物があると非常に取り込みやすいということがチェルノブイリの1986年の解析から明らかになりました。おおざっぱな計算で、全国平均で約150Bq/m2の降下物として、7Bq/kgのCs-137が玄麦に取り込まれたという事になります。

7/20麦出穂日

先ほどの計算をあてはめてみると、750Bq/m2の降下物で35Bq/kgのCs-137が玄麦に取り込まれることになります。しかし、一番下に示す表では、麦のどの産地も最低でも10000Bq/m2程度の降下物はあったことになりますが、麦の放射性セシウムはせいぜい100Bq/kgです。従って、1986年の計算よりも取り込まれる効率は1/10程度低いと考えないとつじつまが合いません。

2011年の福島では、大量の降下物があったのは3/15と3/21と言われています。ただし、この時の放射能は、雨で降下した以外はプルームという放射能の風に乗って低空を流れていっただけ(らしい)なので、チェルノブイリの時のような空から降ってくる状態とは、Cs-137の密度や接触時間なども違っているのでしょう。

また、移行係数で考えると、1986年は土壌のCs-137が20Bq/kgで、玄麦のCs-137が7Bq/kgとすると、移行係数は0.35となります。実際には土壌からの移行はほとんど寄与しておらず、直接汚染(葉や茎の地上部からの汚染)なのですが計算上はこういう数字になります。今年のお茶葉の場合と同じようなパターンだと思えばいいです。

ちなみに、1986年の玄米の移行係数は、土壌のCs-137が20Bq/kgで玄米のCs-137が0.14Bq/kg程度ですので、0.007となり、玄麦の移行係数の1/50程度ということになります。前年の1985年や1987年は、玄米の移行係数は玄麦の移行係数の3-5倍でした。

7/20チェルノブイリ麦

つまり、今までの話をまとめると上の図のようになります。1986年のチェルノブイリ事故の際は、小麦については土壌から吸収するよりも降下物の影響の方が圧倒的に大きかったということです。コメについては、コメの出穂時期にはほとんど降下物がなかったので、あまり降下物の影響を受けず、この年だけは玄麦>玄米になったということがわかります。

実は、今年の場合もほぼこれに近いパターンになるのではないかというのが私の予想です。その話は後編に書きたいと思います。今日はもう遅くなったので明日か、今週末にでも書く予定です。それまでにコメントがあれば必要に応じてこの前編も修正します。


最後に、今年の麦のCsのデータと移行係数を計算した結果を載せておきます。

7/20小麦表-1


関連記事
にほんブログ村 科学ブログへ ブログランキング・にほんブログ村へ
↑日本ブログ村ランキングに参加しました。よかったらクリックお願いします。

コメント

高根山農園

日中は炎天下で草刈など、読むだけでも訓練してないと大変、ボ~とした頭で必死に拝見しております。

小麦は自家用に少し栽培、昨年11月種蒔今年6月収穫しました。コンバイン・脱穀機無し、全て手作業の上石臼です。採りたて挽きたて打ち立て焼きたてのパン・チャパティーは満足のいくものです。コスト玄麦1kg一万円。

命あるもの、命ある食べ物が日本社会からどんどん消えています。輸入食料・スーパーの食品は「死体」に見えます。毎日の食卓に野菜フルコースは、感動と喜びです。食べることが喜び感動なのは、生物学的にあたりまえのことですが、皆忘れてしまいました。腐らないミカン・野菜があります。

いつか安全なところで家庭菜園をしてみてください。

プロフィール

TSOKDBA

Author:TSOKDBA
twitterは@tsokdbaです。
3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

FC2カウンター
ブログランキング
にほんブログ村 科学ブログへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
↑日本ブログ村ランキングに参加しました。よかったらクリックお願いします。
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
ふくしまの恵み(全量全袋検査の結果)

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

検索フォーム
カテゴリ
RSSリンクの表示
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
こちらにもぜひご記入を!
読んだ感想を是非お聞かせください。
無料アクセス解析
おすすめのリンク
QRコード
QR
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。