8/3 ネットは大騒ぎ!放射性物質を取り込む糸状菌と土壌の放射線量低下の関係は?
本日、ツイッターで大騒ぎになった話題はなんと言ってもこの福島民報の記事でしょう。
「放射性物質を取り込む糸状菌のバクテリアを発見した飯舘村長泥の水田の放射線量が大幅に下がったと発表した。」
30μSv/hだった放射線量が7/28には一桁台に下がっていたそうです。
ここまでは事実なのでしょうが、その後の文章が大騒ぎを引き起こしています。
8/6追記:元の文章はHPからは削除されたようですが、ありがとウサギさんのコメントにあるようにWeb魚拓が残っていますのでそちらで確認できます。
長いですが関係する部分をHPから引用します。
『南相馬市、飯舘村で微生物を活用した除染実験に取り組んでいる田崎和江金沢大名誉教授(67)は2日、放射性物質を取り込む糸状菌のバクテリアを発見した同村長泥の水田の放射線量が大幅に下がったと発表した。南相馬市役所を訪問し、桜井勝延市長に報告した。
水田の表面は毎時30マイクロシーベルトの高い放射線量だったが、7月28日には1桁台に下がっていた。水田では無害のバリウムが確認されており、田崎名誉教授はバクテリアの代謝によって放射性セシウムがバリウムに変わったとみている。
金沢大低レベル放射能実験施設で水田の土1キロ当たり447ミリグラムのバリウムを検出した。バリウムは通常、土壌からは検出されないという。今後の除染実験に使用するため、バクテリアの培養も行っている。
(以下略)』
この、「放射性セシウムがバリウムに変わったと見ている」が大騒ぎの原因です。これまでの科学の常識では、生物が元素を変換できるということは知られていないからです(それができれば錬金術も可能になりますから)。さっそくツイッターでの騒ぎをまとめてくれた人がいるのでそれもご覧下さい。
この記事に関しては、記者が先生の言ったことをよく理解できずに誤って解釈して書いた可能性が高いと私は思います。そう思った理由の一つは、この菌を糸状菌と書いてありながらそれをカビと書かずにバクテリアと書いてある点です。通常、糸状菌というのはカビのことです。もちろん、バクテリアの中にも放線菌というカビのような形状をしたバクテリア(原核生物)もいますが、そうならば糸状菌とは書かずに「放線菌というバクテリアの一種」と書くはずです。カビという言葉は一般的に知られているので、カビならカビと書くと思います。
この田崎和江金大名誉教授は、5月の北国・富山新聞の報道では、タンザニアでウランなどの放射性物質を吸着する糸状菌を見いだしていますし、これまでにも微生物の環境修復能力を最大限に引き出すための研究を行っています。従って、田崎先生のやろうとしていることは確かなことだと思います。
従って、先ほども書いたように、福島民報の記者が正しく理解して記事を書いたのかどうか?だと思います。田崎先生が本当に菌の代謝によってセシウムがバリウムに変わったと言ったのかどうか?そこが事実関係としては一つのポイントです。
水田の土1kgあたり447mgのバリウム(Ba)を検出したことについては、もしこれがセシウムから変換したものであれば、その放射能は1.4テラBq/kg(=1.4兆ベクレル/kg)の土壌に匹敵するそうです。先ほどのツイッターのまとめの中で計算してくれた人がいます。
Akira Okumura「ちなみに100kBqのCs137は100000毎秒×(30×365×24×60×60秒)÷ln(2)×137/6e23=0.00003mgしかありません。つまり447mg/kgのBaを検出して、主張が本当だとしたら、最低でも1.4TBq/kgの土壌があったことになる。」
つまり、447mgのバリウムは放射性セシウムから変換されたと言うことはあり得ないということです。
そうすると、放射線量が低下したという一番気になる事実はどうなのか?ここについてはどういう実験を行っているのか?雨で流れ出していないのか?このあたりが何も書いていないので現段階では何とも言えません。
とにかく、このようなニュース一つだけでは信憑性が薄いので、いずれ学会誌「地球科学」に発表されるそうですから、それを読んでから評価しても遅くないと思います。
ただ、微生物を用いて土壌の放射能を低減させるということは、「6/4 ファイトレメディエーション(Phytoremediation)って何?Csをなくせるの?」でも少しだけ触れましたが、Bioremediationという考え方で行われています。従って、田崎先生の見つけた糸状菌が放射性セシウムを取り込みやすい菌であれば、この菌を用いて土壌の改良に使える可能性はあります。いずれにせよ、もっと詳しい情報がないとわかりません。いずれまた情報がわかった時にフォローしたいと思います。
(この記事は、ネットで利用できる情報だけを元に書きました。田崎先生の文献などは確認していませんので、間違った情報も含まれているかもしれません。ネットで話題になったことの紹介記事ということで、その点はご容赦下さい。)
8/6追記:元のニュース記事は福島民放のWebから削除されました。やはり記者の勘違いだったのでしょう。ただ、可能ならば「地球科学」に発表されたらチェックしたいと思います。記者の思いこみだけでは土壌中のバリウムの量は数値で出てきませんので、それを測定していてわざわざ記者に教えたということは田崎先生も本当にそう思っていた可能性も否定できないからです。
『南相馬市、飯舘村で微生物を活用した除染実験に取り組んでいる田崎和江金沢大名誉教授(67)は2日、放射性物質を取り込む糸状菌のバクテリアを発見した同村長泥の水田の放射線量が大幅に下がったと発表した。南相馬市役所を訪問し、桜井勝延市長に報告した。
水田の表面は毎時30マイクロシーベルトの高い放射線量だったが、7月28日には1桁台に下がっていた。水田では無害のバリウムが確認されており、田崎名誉教授はバクテリアの代謝によって放射性セシウムがバリウムに変わったとみている。
金沢大低レベル放射能実験施設で水田の土1キロ当たり447ミリグラムのバリウムを検出した。バリウムは通常、土壌からは検出されないという。今後の除染実験に使用するため、バクテリアの培養も行っている。
(以下略)』
この、「放射性セシウムがバリウムに変わったと見ている」が大騒ぎの原因です。これまでの科学の常識では、生物が元素を変換できるということは知られていないからです(それができれば錬金術も可能になりますから)。さっそくツイッターでの騒ぎをまとめてくれた人がいるのでそれもご覧下さい。
この記事に関しては、記者が先生の言ったことをよく理解できずに誤って解釈して書いた可能性が高いと私は思います。そう思った理由の一つは、この菌を糸状菌と書いてありながらそれをカビと書かずにバクテリアと書いてある点です。通常、糸状菌というのはカビのことです。もちろん、バクテリアの中にも放線菌というカビのような形状をしたバクテリア(原核生物)もいますが、そうならば糸状菌とは書かずに「放線菌というバクテリアの一種」と書くはずです。カビという言葉は一般的に知られているので、カビならカビと書くと思います。
この田崎和江金大名誉教授は、5月の北国・富山新聞の報道では、タンザニアでウランなどの放射性物質を吸着する糸状菌を見いだしていますし、これまでにも微生物の環境修復能力を最大限に引き出すための研究を行っています。従って、田崎先生のやろうとしていることは確かなことだと思います。
従って、先ほども書いたように、福島民報の記者が正しく理解して記事を書いたのかどうか?だと思います。田崎先生が本当に菌の代謝によってセシウムがバリウムに変わったと言ったのかどうか?そこが事実関係としては一つのポイントです。
水田の土1kgあたり447mgのバリウム(Ba)を検出したことについては、もしこれがセシウムから変換したものであれば、その放射能は1.4テラBq/kg(=1.4兆ベクレル/kg)の土壌に匹敵するそうです。先ほどのツイッターのまとめの中で計算してくれた人がいます。
Akira Okumura「ちなみに100kBqのCs137は100000毎秒×(30×365×24×60×60秒)÷ln(2)×137/6e23=0.00003mgしかありません。つまり447mg/kgのBaを検出して、主張が本当だとしたら、最低でも1.4TBq/kgの土壌があったことになる。」
つまり、447mgのバリウムは放射性セシウムから変換されたと言うことはあり得ないということです。
そうすると、放射線量が低下したという一番気になる事実はどうなのか?ここについてはどういう実験を行っているのか?雨で流れ出していないのか?このあたりが何も書いていないので現段階では何とも言えません。
とにかく、このようなニュース一つだけでは信憑性が薄いので、いずれ学会誌「地球科学」に発表されるそうですから、それを読んでから評価しても遅くないと思います。
ただ、微生物を用いて土壌の放射能を低減させるということは、「6/4 ファイトレメディエーション(Phytoremediation)って何?Csをなくせるの?」でも少しだけ触れましたが、Bioremediationという考え方で行われています。従って、田崎先生の見つけた糸状菌が放射性セシウムを取り込みやすい菌であれば、この菌を用いて土壌の改良に使える可能性はあります。いずれにせよ、もっと詳しい情報がないとわかりません。いずれまた情報がわかった時にフォローしたいと思います。
(この記事は、ネットで利用できる情報だけを元に書きました。田崎先生の文献などは確認していませんので、間違った情報も含まれているかもしれません。ネットで話題になったことの紹介記事ということで、その点はご容赦下さい。)
8/6追記:元のニュース記事は福島民放のWebから削除されました。やはり記者の勘違いだったのでしょう。ただ、可能ならば「地球科学」に発表されたらチェックしたいと思います。記者の思いこみだけでは土壌中のバリウムの量は数値で出てきませんので、それを測定していてわざわざ記者に教えたということは田崎先生も本当にそう思っていた可能性も否定できないからです。
- 関連記事
-
- 11/13 微生物による放射性セシウム9割除去のニュース 今回は本物! (2011/11/13)
- 8/8 放射性量低下と糸状菌の関係再び。またもWebから記事は削除。 (2011/08/08)
- 8/3 ネットは大騒ぎ!放射性物質を取り込む糸状菌と土壌の放射線量低下の関係は? (2011/08/03)


↑日本ブログ村ランキングに参加しました。よかったらクリックお願いします。