8/4 田んぼに放置された稲わらから異常に高い数値が出た理由
昨日のツイッターにおいて仕入れた興味深い情報なのでご紹介します。東北大学の堀田昌寛先生(@QEnergyTeleport)が宮城県北部に行って実地で調査した結果、稲わらの放射性セシウムがなぜこんなに高い値が出たのかわかったということでした。
稲わらから土壌以上に遙かに高い数値が出ていることについては、私も非常に気になっていて、「7/27 稲わらの放射性セシウム計算方法はどうして4.4で割るのか?」で書いたように濃縮されたというクローズアップ現代で紹介していた説で納得していました。
でも、この堀田先生の話を聞くと、濡れて吸収して、乾いて、を繰り返さなくても高い値が出ることは説明できるということがわかりました。ただ、地域によっては堀田先生の話に濃縮が合わさって高くなった可能性もあります。
(1)稲わらで異常に高い放射性セシウムが検出された理由
@QEnergyTeleportの堀田先生のツイートからまとめますと以下のようになります。
秋田県北部の堀田先生が行ったところでは、昨年は天候が悪かったため、ほとんどのわらは乾燥して屋内に取り込んだが、一部の乾燥できなかったわらはそのまま田んぼで干していたそうです。稲わらを敷く際、土が見えないくらいに田んぼにびっしりと敷き詰めて敷いていたそうです。
そこへ原発事故で放射能をかぶってしまったのです。
その後、稲わらをロールにするときは、250m2の面積から稲わらを集めて、1m立方程度の稲わらロール(約90kg)を作ったそうです。
堀田先生の計算では、環境放射線が0.13μSv/hだったので、Bq/m2に直すと21KBq/m2になるということでした。この計算のやり方がよくわからないのですが、とりあえずこの数値を信じると、250m2から稲わらを集めるということなので、21KBq/m2×250=5250KBq。それが稲わらロールが約90kgに入っているので、5250K÷90=58KBq/kg、すなわち58000Bq/kgという数値が出てくるのです。
実際には、ここからは20000Bq/kgの稲わらが検出されたそうです。数倍の誤差は仕方がないことなので、この計算でほぼ高濃度の稲わらができることが説明できるというわけです。
この土地の土壌の放射性セシウム濃度はわかりませんが、21000Bq/m2とすれば、65で割ると323Bq/kgという数値が出てきます。300-400Bq/kgの土地で、計算上58000Bq/kg、実際は20000Bq/kgの稲わらが出てきたということで土壌の100倍近く汚染された稲わらができるということが現地に行って聞き取り調査をした堀田先生のおかげでわかりました。
8/7追記:実際に堀田先生と一緒に行った津田さんのブログがアップされていました。
高濃度の放射性セシウムが検出された稲わらについていちいち計算しませんが、中にはこの計算方法以上に高い数値が出ているところもあるかもしれません。その場合は、クローズアップ現代で解説していたように、何回も吸収して濃縮されたということも合わさって起こった可能性があります。
さて、μSv/h→Bq/m2の換算ですが、私は以前「6/8 Bq/kg→Bq/m2→μSv/hの変換についての簡単なまとめ」で282000をかければよい、と書きました。これは、早野先生のツイートでそういっていたのでそれをそのままお伝えしたのですが、最近の早野先生の説明では、Cs-134とCs-137が1:1の場合は1/(3.8×10(-6))=263157で、約263000ということでした。
堀田先生はCs-134とCs-137の換算係数を書いてくれているのですが、Cs-134とCs-137が1:1だとすると1/(3.1×10(-6))=322580なので、0.13μSv/hならば0.13×322580=41935で約2倍になります。まあ、でもここは今日の話の本筋ではないので、μSv/h→Bq/m2の換算において約263000という説と、約323000という説が二つあると覚えておいてもらえばいいと思います。以前ご紹介した282000はちょうどその中間あたりですので、どれを使っても大きな違いはありません。
(2)土壌の放射性セシウム濃度はそんなに高くないはず
今私が危惧しているのは、政府の発表に信頼がなくなっている現状で、これまで問題ないとされていた稲わらから50000Bq/kgとか100000Bq/kgという放射性セシウムの数値が出ているため、多くの人がこれがそのまま土壌汚染の数値だと思ってしまう懸念があるということです。そうすると、今まで発表していた土壌の数値はウソだ、ということになってしまいます。
実際、土壌の放射性セシウムの濃度は、100mも離れたら数倍違う可能性もあるのですが、100倍高い数値が出る可能性は少ないはずです(二次的に集積した場所は除く)。従って、これまで測定していた数値自体はウソではないと思います。(放射性セシウムは地表面付近にしかないのに、深さ15cmまで土壌を取るということで見かけの数値を少なくしようとしている可能性はありますが、どこも同じ測定方法で測定しているはずなので、他の地点との比較では相対値としては合っているはずです。)
今後、米の放射性セシウム濃度が測定されてきます。安全を見越して移行係数を0.1と発表しているので、稲わらで検出された20000Bq/kgが宮城県北部の土壌の放射性セシウム濃度だと思っている人は、この土地では20000×0.1=2000Bq/kgの放射性セシウム入りの米がとれると思っている可能性があります。
しかし、宮城県北部でそのような高い放射性セシウム濃度が米(玄米)から出ることはまずあり得ないと私は思っています。(考え方は「7/23 今年の米の放射性セシウムによる汚染具合を予想する!後編」を参照のこと。)今は、牛肉のセシウム汚染のショックからか、米も放射性セシウムで汚染されているに違いない、という雰囲気がありますが、意外に汚染されていないのではないかと私は個人的には予想しています。冷静になって考えるべきです。
今年の米でもし暫定基準値を超える米が出てくるとしたら、以下のケースだけだと思います。基準値を超えた場合はぜひその土地の土壌も測定して欲しいです。そうすれば何が問題なのかはっきりします。
・高濃度に汚染された稲わらを大量に田んぼに鋤き込んでいた場合:この場合は土壌の放射性セシウム濃度が周りの土壌よりも数倍から10倍高くなります。
・汚泥由来で高濃度に汚染された肥料などを知らずに加えていた場合。
・もともと報告されている土壌の放射性セシウムの濃度がデタラメだった場合。報告では、5000Bq/kgを超える水田の土壌は福島市や郡山市などではなかったということですから。
8/7追記:福島県の原発付近の場合は、降下物の影響を受ける可能性があります。詳細は「8/7 小麦の放射性セシウムデータのまとめと米データの最新の予想」に記載しました。
なお、今年の稲の作付け制限を行われている警戒区域などは、土壌の放射性セシウム濃度が10000Bq/kgを超えることはざらにあるので、もしここで試験的に作っていたら高く出る可能性がありますが、これは出荷されないので問題ありません。
@QEnergyTeleportの堀田先生のツイートからまとめますと以下のようになります。
秋田県北部の堀田先生が行ったところでは、昨年は天候が悪かったため、ほとんどのわらは乾燥して屋内に取り込んだが、一部の乾燥できなかったわらはそのまま田んぼで干していたそうです。稲わらを敷く際、土が見えないくらいに田んぼにびっしりと敷き詰めて敷いていたそうです。
そこへ原発事故で放射能をかぶってしまったのです。
その後、稲わらをロールにするときは、250m2の面積から稲わらを集めて、1m立方程度の稲わらロール(約90kg)を作ったそうです。
堀田先生の計算では、環境放射線が0.13μSv/hだったので、Bq/m2に直すと21KBq/m2になるということでした。この計算のやり方がよくわからないのですが、とりあえずこの数値を信じると、250m2から稲わらを集めるということなので、21KBq/m2×250=5250KBq。それが稲わらロールが約90kgに入っているので、5250K÷90=58KBq/kg、すなわち58000Bq/kgという数値が出てくるのです。
実際には、ここからは20000Bq/kgの稲わらが検出されたそうです。数倍の誤差は仕方がないことなので、この計算でほぼ高濃度の稲わらができることが説明できるというわけです。
この土地の土壌の放射性セシウム濃度はわかりませんが、21000Bq/m2とすれば、65で割ると323Bq/kgという数値が出てきます。300-400Bq/kgの土地で、計算上58000Bq/kg、実際は20000Bq/kgの稲わらが出てきたということで土壌の100倍近く汚染された稲わらができるということが現地に行って聞き取り調査をした堀田先生のおかげでわかりました。
8/7追記:実際に堀田先生と一緒に行った津田さんのブログがアップされていました。
高濃度の放射性セシウムが検出された稲わらについていちいち計算しませんが、中にはこの計算方法以上に高い数値が出ているところもあるかもしれません。その場合は、クローズアップ現代で解説していたように、何回も吸収して濃縮されたということも合わさって起こった可能性があります。
さて、μSv/h→Bq/m2の換算ですが、私は以前「6/8 Bq/kg→Bq/m2→μSv/hの変換についての簡単なまとめ」で282000をかければよい、と書きました。これは、早野先生のツイートでそういっていたのでそれをそのままお伝えしたのですが、最近の早野先生の説明では、Cs-134とCs-137が1:1の場合は1/(3.8×10(-6))=263157で、約263000ということでした。
堀田先生はCs-134とCs-137の換算係数を書いてくれているのですが、Cs-134とCs-137が1:1だとすると1/(3.1×10(-6))=322580なので、0.13μSv/hならば0.13×322580=41935で約2倍になります。まあ、でもここは今日の話の本筋ではないので、μSv/h→Bq/m2の換算において約263000という説と、約323000という説が二つあると覚えておいてもらえばいいと思います。以前ご紹介した282000はちょうどその中間あたりですので、どれを使っても大きな違いはありません。
(2)土壌の放射性セシウム濃度はそんなに高くないはず
今私が危惧しているのは、政府の発表に信頼がなくなっている現状で、これまで問題ないとされていた稲わらから50000Bq/kgとか100000Bq/kgという放射性セシウムの数値が出ているため、多くの人がこれがそのまま土壌汚染の数値だと思ってしまう懸念があるということです。そうすると、今まで発表していた土壌の数値はウソだ、ということになってしまいます。
実際、土壌の放射性セシウムの濃度は、100mも離れたら数倍違う可能性もあるのですが、100倍高い数値が出る可能性は少ないはずです(二次的に集積した場所は除く)。従って、これまで測定していた数値自体はウソではないと思います。(放射性セシウムは地表面付近にしかないのに、深さ15cmまで土壌を取るということで見かけの数値を少なくしようとしている可能性はありますが、どこも同じ測定方法で測定しているはずなので、他の地点との比較では相対値としては合っているはずです。)
今後、米の放射性セシウム濃度が測定されてきます。安全を見越して移行係数を0.1と発表しているので、稲わらで検出された20000Bq/kgが宮城県北部の土壌の放射性セシウム濃度だと思っている人は、この土地では20000×0.1=2000Bq/kgの放射性セシウム入りの米がとれると思っている可能性があります。
しかし、宮城県北部でそのような高い放射性セシウム濃度が米(玄米)から出ることはまずあり得ないと私は思っています。(考え方は「7/23 今年の米の放射性セシウムによる汚染具合を予想する!後編」を参照のこと。)今は、牛肉のセシウム汚染のショックからか、米も放射性セシウムで汚染されているに違いない、という雰囲気がありますが、意外に汚染されていないのではないかと私は個人的には予想しています。冷静になって考えるべきです。
今年の米でもし暫定基準値を超える米が出てくるとしたら、以下のケースだけだと思います。基準値を超えた場合はぜひその土地の土壌も測定して欲しいです。そうすれば何が問題なのかはっきりします。
・高濃度に汚染された稲わらを大量に田んぼに鋤き込んでいた場合:この場合は土壌の放射性セシウム濃度が周りの土壌よりも数倍から10倍高くなります。
・汚泥由来で高濃度に汚染された肥料などを知らずに加えていた場合。
・もともと報告されている土壌の放射性セシウムの濃度がデタラメだった場合。報告では、5000Bq/kgを超える水田の土壌は福島市や郡山市などではなかったということですから。
8/7追記:福島県の原発付近の場合は、降下物の影響を受ける可能性があります。詳細は「8/7 小麦の放射性セシウムデータのまとめと米データの最新の予想」に記載しました。
なお、今年の稲の作付け制限を行われている警戒区域などは、土壌の放射性セシウム濃度が10000Bq/kgを超えることはざらにあるので、もしここで試験的に作っていたら高く出る可能性がありますが、これは出荷されないので問題ありません。
- 関連記事
-
- 8/15 東大と福島県の共同研究の解説(1)土壌セシウムのデータ (2011/08/15)
- 8/4 田んぼに放置された稲わらから異常に高い数値が出た理由 (2011/08/04)
- 7/25 速報!福島県広野町の小麦から630Bq/kg、南相馬から480Bq/kg (2011/07/26)


↑日本ブログ村ランキングに参加しました。よかったらクリックお願いします。