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8/7 小麦の放射性セシウムデータのまとめと米データの最新の予想

 
※これは昨年(2011年)に書いた記事です。今年のものではありませんのでご注意下さい。

7/20 今年の米の放射性セシウムによる汚染具合を予想する!前編」「7/23 今年の米の放射性セシウムによる汚染具合を予想する!後編」で今年の米の放射性セシウム量がどれくらいになるか、予想してきました。

その根本的な考え方は、米の「移行係数」を当てにしない、ということです。土壌の放射性セシウム量に係数を出してかけ算をすればいいと思う人が多いのですが、土壌によって移行係数は違うことがありますし、肥料のあげ方によっても違うことがわかっています。そんな複雑なことをいろいろと計算するのではなく、そういうことは小麦に聞こう!というのが私の提案です。生態系の複雑なことを計算しようとするのではなく、生物のことは生物に聞け、ということです。

小麦は、畑で作られるため、田んぼとは多少条件が違いますが、米と比較するだけの過去のデータもあります。小麦と米の放射性セシウムデータの関係をだいたい把握しておけば、今年の小麦のセシウムのデータを指標にすることによって、今年の米の放射性セシウム量はだいたい予測できるはずです。
7/23麦とコメ1
従って、小麦のデータはしっかりと解析しておく必要があります。以前は48検体のデータが出た段階で小麦の移行係数を仮に算出しましたが、データが増えて123件にもなりましたので、再度詳細に見直しました。新たにわかったことも含めて解説します。


1.小麦の最新データの解析

小麦の放射性セシウムのデータは、厚労省のサイト、および「食品の放射能検査データ」にありますが、私は「食品の放射能検査データ」から取ってきています。また、昨日知ったのですが、農水省にも「農産物に含まれる放射性セシウム濃度の検査結果(随時更新)」というサイトができたことを知りました。このサイトは、各都道府県ごとにデータを地図上に示してくれているので、参考になります。

8/6現在で、123件のデータが掲載されています。最近は、東北地方のデータが増えました。それにより、宮城県や福島県で「不検出」のデータが増えました。以前は土壌の放射性セシウムのデータと結構相関があるかと思っていたのですが、どうもそれだけでは説明できない可能性が高くなってきました。

なぜならば、後で詳細はご紹介しますが、小麦の放射性セシウムのデータが発表された地区の環境放射線データから、土壌の放射性セシウムのデータを換算して計算すると、見かけ上の移行係数が計算できます。しかし、福島県では土壌のデータが高いはずなのに不検出であったりして、予想よりもかなり低い数値が多く観測されているのです。

この解釈として、元の環境放射線データ、あるいは土壌のデータが間違っているという可能性もありますが、もう一つの可能性として、東北地方と南関東では気温の差があるために地上部に直接ふりかかった直接汚染の量が違うということが考えられました。

考察に利用した計算用のExcel表はこちら。→小麦の移行係数(ダウンロードされます)

どうしてそう考えられるのかは、農水省のマップを若干加工したものを見てもらったらわかりやすいと思います。数値はあまり気にせず、私が追加した色分けを見ていただければと思います。元の図は、大麦のデータも掲載してあります。また、8月に発表されたデータはまだ掲載されていないので私が追加しました。また、以後の解析では大麦のデータは採用していません。

例えば、千葉県では下の図にあるように、「検出せず」という小麦のサンプルは一つもありません。「検出せず」は私が青く囲んでいるのですが、青いエリアがないことでわかると思います。注目していただきたいのは、環境放射線データから考えても土壌の放射性セシウムは少ないはずなのに、100Bq/kg以上のオレンジのサンプルが半分近くあることです。

8/7小麦千葉県

一方、茨城県では、青い「検出せず」がいくつかあり、緑色(50Bq/kg以下)が多いことがわかります。また、いくつかのサンプルは100Bq/kgを超えています。

8/7小麦茨城県

次に福島県です。福島県では、青いエリアが多いことがわかります。福島県の内部だけで比較すると、計画的避難区域と思われる広野町と南相馬市で暫定基準値近くと非常に高く、郡山市などで高めに出ているというのは、これまでのセシウム降下量と比例しているように思えるのですが、これまで比較してきた茨城県や千葉県と比べて福島県全体のセシウムの降下量が低いとは思えません。

8/7小麦福島県


ということは、単にセシウム降下量=土壌の放射性セシウム濃度が小麦の放射性セシウムに反映しているのではないということです。「7/23 今年の米の放射性セシウムによる汚染具合を予想する!後編」で直接汚染と間接汚染という考え方を示しましたが、小麦の放射性セシウムデータを県ごとに比較してみると、土壌から根を通じて吸い上げる間接汚染以外に、小麦の地上部に直接降りかかった直接汚染があるということをはっきりと示しています。そうでないと、土壌の放射性セシウムの量だけで説明しようとしても、千葉県で「検出せず」が一つもないということは説明できません。

そこで、これまで報告のある11の都県について、原発からの放射能プルームのあったと思われる3/15と3/20の最高気温を気象庁のデータで調べました。その結果、小麦のデータをつきあわせるとおおざっぱに3つに分類できることがわかりました。数値は、県内の複数地点の気温の平均を算出しています。まだ出穂には早い時期でしたが、生育には気温が関係するのは間違いないので、気温との相関があるのではないか、と考えたわけです。

8/7小麦のグループ

(1)二日間の最高気温の平均が10℃以下の宮城県、福島県、山形県
(2)二日間の最高気温の平均が10℃-15℃の栃木県、群馬県、茨城県、長野県
(3)二日間の最高気温の平均が15℃以上の千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県

3月の中旬の気温が10℃以下で寒かった地域と、15℃以上で暖かくなってきている地域では、麦の生育状況も違っているはずです。同じように放射性セシウムの降下があっても、それを吸収しやすかった千葉県と、温度が低いために小麦の生育がまだそれほどではなく、あまり吸収しなかった福島県の違いが小麦の放射性セシウムの違いに反映されていると考えられます。

移行係数はあてにしないといいましたが、見かけ上の移行係数を全123検体について計算してみました。詳細は先ほどのExcelデータにありますが、
(1)の移行係数は、63件で平均は0.024 最高は0.346(南相馬市)
(2)の移行係数は、32件で平均は0.051 最高は0.183(笠間市)
(3)の移行係数は、28件で平均は0.089 最高は0.346(市原市)

となっています。(1)と(3)、(1)と(2)の間には統計的な有意差がつきますので、(1)の3県は直接汚染による影響をあまり受けていないということが言えそうです。


話がわかりにくくなってしまいました。ここまでの話をまとめます。

1.小麦の123件のデータを詳しく見ていきました。その結果、土壌の放射性セシウム量が低いと予想される千葉県の方が小麦では福島県よりも高めに出ていることがわかりました。

2.また、小麦のとれた地域の環境放射線データから換算して見かけ上の移行係数を出してみると、移行係数が0.2を超えたのは全部で5件でした。そのうち最高気温の高い(3)の地域が3件、残りは(1)の中でも原発から30km以内と思われる地域でした。原発近くの2件を別枠で考えると、南の方が移行係数が高めに出ています。

3.その理由として、直接汚染(葉などに吸着したセシウムの吸収)は暖かい千葉県の方が寒い福島県よりも多かったためと考えられます。
※3月の放射性セシウムの降下時の最高気温の高い(15℃以上)千葉県や神奈川県では地上部の生育が進んでおり、最高気温の低かった(10℃以下)福島県や宮城県では生育が遅れていたと考えられます。



2.小麦のデータから米のセシウムの予想

つまり、小麦のデータを見る限り、関東は3月下旬の放射能プルームで葉などの地上部が汚染されて高めに出たが、地上部の汚染を差し引くと(1)の東北地方のように移行係数は0.024程度になるということです。しかも、先ほど少し述べたように、原発近くの2サンプルは別枠で考えた方がいいのでそれを差し引くと、(1)の61サンプルの移行係数の平均は0.013になります。これが、土壌から吸収した間接汚染にあたる小麦の移行係数と考えてもいいでしょう。実数でいうと、123件の小麦の放射性セシウムの平均は34.8Bq/kgですが、(1)のうち2検体を除いた61サンプルで計算すると17.2Bq/kgになります。

最初に移行係数は小麦に聞こう!と言ったのは、今年の小麦のデータ、つまり数十年前のデータではなく、今回の福島原発の放射能で汚染された実際のデータをまずは確認しましょうということだったのです。今年の小麦の123件の移行係数は平均では0.046(前回の0.062よりも下がりました)、地上部からの汚染を除くと0.013程度だろうということです。実際の数値で言うと、放射性セシウムの平均で17.2Bq/kgです(不検出はゼロとして計算)。

7/23 今年の米の放射性セシウムによる汚染具合を予想する!後編」で示したように、1960年代前半の玄米/玄麦=0.2という比率があります。これをさらにかけると福島県を除いた米の放射性セシウムの平均値としては、17.2Bq/kg×0.2=3.4Bq/kgとなります。仮にこれを考慮しないとしても17.2Bq/kgです。

ただし、先ほど除外した南相馬市(480Bq/kg:移行係数0.346)と広野町(630Bq/kg:移行係数0.338)の小麦のデータは別に考える必要があります。この二つは、私が計算した土壌のデータは1866Bq/kgと1388Bq/kgだったのですが、実際はもっと高い可能性があります。そうであれば移行係数はもっと低くなるのですが、それを言い出したらきりがないので、原発から近いために3月以降も降下物が降り続いているため、直接汚染で高くなった可能性を考えておきます。実際、文科省のデータを見ても、福島市だけは6月になっても降下物が観測されていますので、この可能性は高いと思います。

広野町は計画的避難区域に入っているはずなので米は作付け制限を受けていると思いますが、原発からの距離が30km付近で土壌の放射性セシウム濃度が高いのに制限を受けていない地域もあると思います。そのような地域では、土壌の放射性セシウム濃度がかなり高く、なおかつ原発からの降下物の影響を受けていると、上記の(福島県を除いて3.4Bq/kg)計算は成立しません。

つまり、「7/23 今年の米の放射性セシウムによる汚染具合を予想する!後編」で前提条件として示したものが成立しない地域があるかもしれないいうことです。千葉県の小麦で、それほどのセシウムの降下量がないと予想されるのに105Bq/kgもあった市原市のように、7月までは少ないながらも降下物が降り続いていた福島県の原発の近くでは、米の放射性セシウムは高めの数値が出る可能性があります。


最後に今年の米の放射性セシウムデータについて、再度まとめておきます。

基本的には前回の予想と大きく変わるものではありませんが、福島県で、現在も時々降下物が検出されるような地域については、千葉県の小麦が高めに出たように、高く出る可能性があることは言及しておく必要があります。

1.米の放射性セシウムは、一般に予想されているような、移行係数0.1で単純に計算して出てくるような高い数値はほとんど出ないと予想します。特に福島県外では、検出限界値の設定にもよりますが、不検出になるサンプルが多いと考えています。平均値で言うと3.4Bq/kg程度。100Bq/kgを超えるようなサンプルはめったにないと思います。

2.ただし、私のアンケートを見る限り、約4割の人は不検出でないと食べないと言っています。仮に私の予想通りになっても、10-30Bq/kg程度の数値のサンプル必ず出ると思います。その時の報道のされ方によっては必要以上の買い控えが起こる可能性がありますので、発表と報道は慎重にお願いしたいと思います。

3.福島県の中では、地域によって違う(詳細はデータがないため予想不可能)のですが、降下物が今も観測されるような地域では、福島県外とは違って高めの数値が出る可能性もあります。特に、作付け制限をギリギリで受けなかったような地域は土壌のセシウム濃度も高いですし、降下物の影響を受けやすいので暫定基準値ギリギリの数値が出てもおかしくないと思います。それでも麦の場合で広野町で630Bq/kgですから、これを超えることはないと考えています。

4.その他予想外のファクターとしては、高濃度に汚染された稲わらを田んぼに鋤き込んでいた場合や、汚泥由来でセシウムで汚染された肥料を大量に加えていた場合は高めに出ることもあり得ます。この場合は、ぜひ該当する土壌の放射性セシウム濃度を測定して欲しいと思います。それが来年に向けての貴重なデータとなるはずです。

5.最後に、検査の仕方と数値の発表の仕方についてです。測定サンプルが大量にあるため、牛肉と同様に簡易検査を認める可能性があります。その場合は50Bq/kgの検出限界値になってしまうので、不検出といっても5Bq/kgなのか、50Bq/kgなのかがわかりません。予備調査はおおざっぱでいいとしても、本調査においてはゲルマニウム検出器でしっかりとデータを取り、不検出の場合も検出限界値を明記して発表をお願いしたいと思います。私の行ったアンケートを見ても、不検出の場合でもいくつ以下なのかを明記して欲しいという意見がありました。予備調査で設定する一定水準以下(200Bq/kg以下)などという表示で売ろうとしたらかえって売れなくなることは間違いありません。サンプル数が多いのはわかりますが、そこはよく考えて対応して欲しいと思います。


以上、私の個人的な予想をご紹介しました。

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コメント

No title

上海IIさん

コメントありがとうございました。いつもツイッターでは参考にさせてもらっています。「不検出」を価値あるものにするためにも、検出限界値も低く設定して欲しいです。千葉県のように20Bq/kgで「不検出」と言われても消費者の反応はどうなるか微妙だと思います。まあ、千葉県は情報公開はしっかりしているので好感もてるのですが。

Re: No title

ponさん

3月中旬の小麦の状態がはっきりとわからないので間違っているかもしれないのですが、これは土壌中からの吸い上げを反映しているのではなく、地上部の吸収の差を反映していると私は考えています。

今年であれば、地表から5cm程度を除去してしまうのが一番効果があると思います。ただし、どこへ持って行くのかを決めることが先決です。

コメについては、今年のデータを見て、もし土壌からの移行係数がかなり少ないという結果が出れば、来年以降はさらに減るでしょうから場所によってはそのまま作付けしても大丈夫かもしれません。ただ、ほとんどの消費者が納得できるのは検出限界2Bq/kg程度で不検出という状況でしょうから、そこまで低くなってくれるかどうかですね。

No title

セシウムの溶解度が温度で違うのが原因ということでしょうか。
関東ローム層の陽イオン吸着力がどの程度なのか。これも気になります。
早めに植物に吸着させて除染して、作付をするべきなのか。
土壌に数百年吸着させたままにして徐々にバリウムになるのを待ちつつ、作付するべきなのか。
意見が分かれる所だと思います。
除染した方が安全なのは確かですが、現実できるのかというと。
それと、いっそ農地を放棄して、西日本の休耕地・限界集落で再起を図るのも手かな。

No title

いつもながら、精緻な考察、勉強になりました。
お米の検査は麦と同じく、ロット単位で全ロットと聞いています。検出限界もたぶん10Bq/kgは確保されるんじゃないかなと思うんです。なんとか機材を揃えて万全の体制で臨んでほしいですわ。日本人全体の被曝総量という点では、圧倒的に米が大事ですから(2番目がたぶん牛乳)。

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TSOKDBA

Author:TSOKDBA
twitterは@tsokdbaです。
3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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