8/14 文科省の海洋モニタリングのデータ(6回目)と今後の計画
昨日(8/13)文科省は5月に発表された海洋モニタリングとしては最後になる6回目の結果をHPに発表しました。
この方法でのモニタリングはこれで最後になります。これまでの6回の結果と、今後の計画についてまとめます。
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この方法でのモニタリングはこれで最後になります。これまでの6回の結果と、今後の計画についてまとめます。
文科省の発表している海水のデータについては、言うことは一つしかありません。「検出限界値が高すぎるので、もっと感度を上げて欲しい」ということです。私のブログを読んでこられた方ならば何度も聞いたことがあると思います。
過去の記事を読んでない方のために解説します(またか、と思った方にはごめんなさい)。現在の文科省が発表しているデータは最近私が4・6・9(I-131:4Bq/kg、Cs-134:6Bq/kg、Cs-137:9Bq/kg)と呼んでいるおきまりのパターンです。これには二つ問題点があります。
まず一点目です。これはそれほど目くじらを立てる事ではないかもしれませんが、データの信頼性の担保という意味で重要です。
放射能の測定は、測定する度に検出限界値が微妙にずれるものなので、本来は毎回違う検出限界値をつける必要があります。しかし、文科省の発表ではワンパターンでI-131:約4Bq/kg、Cs-134:約6Bq/kg、Cs-137:約9Bq/kgと記載されています。つまり、測定毎の検出限界値を記載していないということです。8/10までの東京電力の発表を見てもらえればわかりますが、毎日微妙に数値が変わっています(たとえば8/9のpdfの2ページ目、3ページ目、4ページ目、あるいは8/8と8/9の1ページ目を比較してください)。つまりこれは測定した際に算出された検出限界値を記載されているということです。
データが数値として求まっている場合はあまり関係ないのですが、特に「不検出」の場合は検出限界値をしっかりと記載する必要があります。いつも4・6・9(I-131:4Bq/kg、Cs-134:6Bq/kg、Cs-137:9Bq/kg)というのは、その日の検出限界値を記載していないということで、実験データを正しく公表していないということを意味します。となると、発表されているデータそのものの信頼性も?になってきてしまいます。文科省は、発表している検出限界値についてしっかりと説明する必要があります。
次に二点目です。これが多くの労力をかけるだけの価値があるかどうかを決める重要なポイントです。
文科省が行っている海洋モニタリングでは、沖合30kmとかそれ以遠の海水のデータを計測しています。従って、東京電力の行っている沿岸での測定とは違い、放射性セシウム(Cs-134やCs-137)で10Bq/L以下の低めの数値になることは5月の時点で予想されていました。
しかし、海水のモニタリングは魚介類への影響を見るために行うものですから、魚介類への濃縮係数を100倍とすると、仮に海水ではCs-137とCs-134が2.5Bq/Lずつ(合わせて5Bq/L)でも、濃縮係数が100倍とすると、魚介類では500Bq/kgになってしまいます。つまり、現在の暫定基準値を元に考えるならば、海水中の2.5Bq/LのCs-137を測定できないといけないのです。
そして、それはゲルマニウム検出器を用いて2Lのマリネリ容器を用いれば可能なのです。厚労省がHPで示している「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」では、11ページから12ページに下記のような記載があり、2Lのマリネリ容器を用いれば、「1時間の測定で1Bq/Lの検出は充分に可能である」と書いてあります。

緊急時に多核種を検出する場合は感度が悪くなりますが、現在のようにほぼ検出できる核種がわかっている場合は表2の平常時で考えればいいはずです。液体なので、下の表の牛乳と同じと考えればかまいません。別の「緊急時におけるガンマ線スペクトロメトリーのための試料前処理法」にも海水では1時間で0.8Bq/L、10分でも2Bq/LのCs-137を検出できると書いてあります。ただし、小型容器(50mmφ×50mm)を用いると、1時間の測定でもCs-137で10Bq/Lまでしか測定できません。おそらく現在の文科省の測定ではこのタイプで行っているのでしょう。

前置きがかなり長くなりましたが、海洋モニタリングの結果はほとんどが不検出なので、データ自体について説明する必要性はあまりないのです。8/13に発表されたデータも、全てが下記のように不検出です。

また、8/2に発表された、(独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)が採水し、(独)日本原子力研究開発機構が分析しているデータも同様に全て不検出でした。

過去のデータでも、1回目にC1とD1で放射性セシウムが6-10Bq/L検出されただけで、あとは全て不検出でした。
でも、本当に他の「不検出」だったところでも1Bq/L以下だったか?というと、おそらく答はNoだと思います。6回目はわかりませんが、少なくとも1-2回目は2Lのマリネリ容器で1Bq/Lの検出をできるように測定していれば必ず数値が検出できたと私は信じています。実際に、H1とI1の中間近くに位置すると考えられるいわき市勿来沖5kmにおいては、福島県の測定においてデータが出ています。表層水のCs-137では、5/24で3.74Bq/L、6/27で1.52Bq/Lを検出しています。7/11には不検出(ND)になりましたが、6月までは1Bq/L以上をしっかりと検出できています。
つまり、今回の海洋モニタリングにおいては、かなりのお金と労力をかけながら、検出感度を1Bq/L以下にしなかったために、貴重なデータを得る機会を逃してしまい、ムダな測定を延々と続けたということです。
このような現況について、当然のことながら専門家も声を上げています。日本海洋学会は、7/25に提言を行っています。
ここでは、私が主張していることと同じような趣旨の内容をもっと専門家らしい言葉で述べてくれています。
この提言が効いたからかどうか、8/2に発表された「総合モニタリング計画」においては、以下のように検出限界値を下げて感度を高くして測定を続ける、とあります。
『○海域モニタリング
・海水中の放射性物質の濃度の測定を前面海域(半径 30 km 圏内)、沿岸(宮城、福島、茨城沿岸)、沖合(海岸線から概ね 30~90 km 圏内)、広域外洋(海岸線から概ね 90~280 km 圏内)について、関係機関が分担し引き続き実施する。調査にあたっては、分析核種、調査地点数、頻度を精査する一方で、検出下限値を下げる。また、前面海域及び沿岸、沖合において、海底土汚染分布の把握に向けて海底土に含まれる放射性物質の濃度等を測定する。
このほかに、遠洋(280 km 以遠)を含む海水のモニタリングに関し、水産庁の行う調査の際に採水された試料の提供を受けて、海水に含まれる放射性物質の濃度を測定する。また、日本近海等における放射性物質の分布と長期的な挙動を引き続き監視するため、海水及び海底土に含まれる放射性物質の濃度を測定する。〔定期的に実施(遠洋を含むモニタリングについては随時実施)〕(文部科学省、環境省、原子力事業者、水産庁、海上保安庁)
・福島県内の重要港湾において海水の放射性物質の濃度を測定するとともに、海面漁場において海水及び
海底土の放射性物質の濃度を測定する。〔定期的に実施〕(福島県)
・水産物のモニタリングに関して、水産物中に含まれる放射性物質の濃度について測定する。〔随時実施〕
(水産庁、都道県、漁業組合) 』
頻度については多少落としてもかまわないのですが、ここに記載してあるように検出下限値を下げて、最低でも1Bq/L程度のCs-137でも検出できるようにして欲しいと思います。日本海洋学会の提言では、もっと高感度の測定方法を用いればmBq/Lでも検出できるということです。これは実際、「5/30 海水の放射能を「0.1mBq/Lの感度で測定」はやはり本当だった!」において北海道大学の渡邊准教授がやっていることです。ここまでできるかどうかはわかりませんが、最低でも1Bq/L以下に検出下限値を下げて欲しいです。もう現在では1Bq/Lでも「不検出」の連続かもしれません。
ともかく、この新しい総合モニタリング計画に基づいて具体的にどのような測定を行っていくのかを明らかにして欲しいです。
過去の記事を読んでない方のために解説します(またか、と思った方にはごめんなさい)。現在の文科省が発表しているデータは最近私が4・6・9(I-131:4Bq/kg、Cs-134:6Bq/kg、Cs-137:9Bq/kg)と呼んでいるおきまりのパターンです。これには二つ問題点があります。
まず一点目です。これはそれほど目くじらを立てる事ではないかもしれませんが、データの信頼性の担保という意味で重要です。
放射能の測定は、測定する度に検出限界値が微妙にずれるものなので、本来は毎回違う検出限界値をつける必要があります。しかし、文科省の発表ではワンパターンでI-131:約4Bq/kg、Cs-134:約6Bq/kg、Cs-137:約9Bq/kgと記載されています。つまり、測定毎の検出限界値を記載していないということです。8/10までの東京電力の発表を見てもらえればわかりますが、毎日微妙に数値が変わっています(たとえば8/9のpdfの2ページ目、3ページ目、4ページ目、あるいは8/8と8/9の1ページ目を比較してください)。つまりこれは測定した際に算出された検出限界値を記載されているということです。
データが数値として求まっている場合はあまり関係ないのですが、特に「不検出」の場合は検出限界値をしっかりと記載する必要があります。いつも4・6・9(I-131:4Bq/kg、Cs-134:6Bq/kg、Cs-137:9Bq/kg)というのは、その日の検出限界値を記載していないということで、実験データを正しく公表していないということを意味します。となると、発表されているデータそのものの信頼性も?になってきてしまいます。文科省は、発表している検出限界値についてしっかりと説明する必要があります。
次に二点目です。これが多くの労力をかけるだけの価値があるかどうかを決める重要なポイントです。
文科省が行っている海洋モニタリングでは、沖合30kmとかそれ以遠の海水のデータを計測しています。従って、東京電力の行っている沿岸での測定とは違い、放射性セシウム(Cs-134やCs-137)で10Bq/L以下の低めの数値になることは5月の時点で予想されていました。
しかし、海水のモニタリングは魚介類への影響を見るために行うものですから、魚介類への濃縮係数を100倍とすると、仮に海水ではCs-137とCs-134が2.5Bq/Lずつ(合わせて5Bq/L)でも、濃縮係数が100倍とすると、魚介類では500Bq/kgになってしまいます。つまり、現在の暫定基準値を元に考えるならば、海水中の2.5Bq/LのCs-137を測定できないといけないのです。
そして、それはゲルマニウム検出器を用いて2Lのマリネリ容器を用いれば可能なのです。厚労省がHPで示している「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」では、11ページから12ページに下記のような記載があり、2Lのマリネリ容器を用いれば、「1時間の測定で1Bq/Lの検出は充分に可能である」と書いてあります。

緊急時に多核種を検出する場合は感度が悪くなりますが、現在のようにほぼ検出できる核種がわかっている場合は表2の平常時で考えればいいはずです。液体なので、下の表の牛乳と同じと考えればかまいません。別の「緊急時におけるガンマ線スペクトロメトリーのための試料前処理法」にも海水では1時間で0.8Bq/L、10分でも2Bq/LのCs-137を検出できると書いてあります。ただし、小型容器(50mmφ×50mm)を用いると、1時間の測定でもCs-137で10Bq/Lまでしか測定できません。おそらく現在の文科省の測定ではこのタイプで行っているのでしょう。

前置きがかなり長くなりましたが、海洋モニタリングの結果はほとんどが不検出なので、データ自体について説明する必要性はあまりないのです。8/13に発表されたデータも、全てが下記のように不検出です。

また、8/2に発表された、(独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)が採水し、(独)日本原子力研究開発機構が分析しているデータも同様に全て不検出でした。

過去のデータでも、1回目にC1とD1で放射性セシウムが6-10Bq/L検出されただけで、あとは全て不検出でした。
でも、本当に他の「不検出」だったところでも1Bq/L以下だったか?というと、おそらく答はNoだと思います。6回目はわかりませんが、少なくとも1-2回目は2Lのマリネリ容器で1Bq/Lの検出をできるように測定していれば必ず数値が検出できたと私は信じています。実際に、H1とI1の中間近くに位置すると考えられるいわき市勿来沖5kmにおいては、福島県の測定においてデータが出ています。表層水のCs-137では、5/24で3.74Bq/L、6/27で1.52Bq/Lを検出しています。7/11には不検出(ND)になりましたが、6月までは1Bq/L以上をしっかりと検出できています。
つまり、今回の海洋モニタリングにおいては、かなりのお金と労力をかけながら、検出感度を1Bq/L以下にしなかったために、貴重なデータを得る機会を逃してしまい、ムダな測定を延々と続けたということです。
このような現況について、当然のことながら専門家も声を上げています。日本海洋学会は、7/25に提言を行っています。
ここでは、私が主張していることと同じような趣旨の内容をもっと専門家らしい言葉で述べてくれています。
この提言が効いたからかどうか、8/2に発表された「総合モニタリング計画」においては、以下のように検出限界値を下げて感度を高くして測定を続ける、とあります。
『○海域モニタリング
・海水中の放射性物質の濃度の測定を前面海域(半径 30 km 圏内)、沿岸(宮城、福島、茨城沿岸)、沖合(海岸線から概ね 30~90 km 圏内)、広域外洋(海岸線から概ね 90~280 km 圏内)について、関係機関が分担し引き続き実施する。調査にあたっては、分析核種、調査地点数、頻度を精査する一方で、検出下限値を下げる。また、前面海域及び沿岸、沖合において、海底土汚染分布の把握に向けて海底土に含まれる放射性物質の濃度等を測定する。
このほかに、遠洋(280 km 以遠)を含む海水のモニタリングに関し、水産庁の行う調査の際に採水された試料の提供を受けて、海水に含まれる放射性物質の濃度を測定する。また、日本近海等における放射性物質の分布と長期的な挙動を引き続き監視するため、海水及び海底土に含まれる放射性物質の濃度を測定する。〔定期的に実施(遠洋を含むモニタリングについては随時実施)〕(文部科学省、環境省、原子力事業者、水産庁、海上保安庁)
・福島県内の重要港湾において海水の放射性物質の濃度を測定するとともに、海面漁場において海水及び
海底土の放射性物質の濃度を測定する。〔定期的に実施〕(福島県)
・水産物のモニタリングに関して、水産物中に含まれる放射性物質の濃度について測定する。〔随時実施〕
(水産庁、都道県、漁業組合) 』
頻度については多少落としてもかまわないのですが、ここに記載してあるように検出下限値を下げて、最低でも1Bq/L程度のCs-137でも検出できるようにして欲しいと思います。日本海洋学会の提言では、もっと高感度の測定方法を用いればmBq/Lでも検出できるということです。これは実際、「5/30 海水の放射能を「0.1mBq/Lの感度で測定」はやはり本当だった!」において北海道大学の渡邊准教授がやっていることです。ここまでできるかどうかはわかりませんが、最低でも1Bq/L以下に検出下限値を下げて欲しいです。もう現在では1Bq/Lでも「不検出」の連続かもしれません。
ともかく、この新しい総合モニタリング計画に基づいて具体的にどのような測定を行っていくのかを明らかにして欲しいです。
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