8/18 福島原発から大量にまき散らされたセシウムなどの再循環の現況と課題
福島原発事故からすでに5ヶ月が経ちました。
6月頃からいろいろな形で放射性物質の再循環が問題視されてきました。このブログでも取り上げようと思いつつ、なかなかまとめる時間をとれないまま、今になってしまいました。
すでに浄水場、焼却場、肥料などいろいろな形で個別に話題にはなっているのですが、全体を網羅する形でまとめようとすると膨大な範囲の知識が必要です。かといって、いつまでも後回しにするわけにも行かないので、現時点で私がフォローできる範囲で現状と課題について一度まとめてみようと思います。
放射性物質と通常の汚染物質の違い
福島第一原発から大量にばらまかれ、雨や雪によって降下した放射性物質。現在はストロンチウムの測定がほとんど行われていないので、もっぱらセシウムの測定が行われています。半減期が長いため、チェルノブイリでも問題になっているのはCs-137(30年)とSr-90(29年)です。ここでもデータがあるセシウムについて話をしていきますが、ストロンチウムはセシウムの1/10~1/100程度なので、セシウムの量を押さえておけばそこから推論することはできます。
放射性物質の場合、通常の化学物質と違って問題なのは、簡単には減らないということです。DDTとかダイオキシンとか、公害として問題になった化学物質は、生体内で代謝されることによって別の化学物質となり、その生理作用を失います。ですから、微生物等を用いて分解するということもできるのです。しかし、放射性物質の場合は、その性質からして、化学反応では減ることがありません。ヒマワリを植えて土壌からセシウムを除去しようという話もありましたが、ではその植えたヒマワリをどうするのか?燃やして体積を減らした灰にして処分するしかないと思いますが、その後のことを考えないと、結局土壌から別の場所に移動しているだけなのです。
放射性物質は、放射線を出すことでしか減っていきません。そしてその消滅は、半減期というものが決まっています。セシウムの中でも半減期の長いCs-137であれば、半減期は約30年ですから、大量にばらまかれたCs-137をどこかに集めてそれを埋めるとか隔離するということをしないといけません。ウランやプルトニウムと違い、何万年もの半減期があるわけではないので、どこかに数100年近く保管しておければ、その後は放射能の心配をしないで済みます。それでも人の一生よりも長い数100年のレベルが必要です。
チェルノブイリの事故から25年経ってもいまだにセシウムやストロンチウムによる汚染が残っていることを考えると、これから少なくとも30年はこの問題に向き合って行かないといけないということがわかります。
放射性物質の循環
さて、家の庭や道路、公園などに降り注いだセシウムはどこへ行くのか?考えてみましょう。
・土壌に吸い込まれる。(土壌への蓄積:農作物を考えると長期的な課題)
・さらに雨が降って地表から洗い流され、下水へと流れていく。(河川や下水道処理施設へ)
・いろいろなものに付着して、最後はゴミとなって廃棄される。(焼却場へ)
・河川から水を引いてきて上水を作る際には、浄水場にも蓄積します。(浄水場へ)
その他、
・野菜や肉に吸収されて、人や家畜が食べ、内部被曝する。(内部被曝の問題)
・人や家畜の排泄物が汚泥となる(汚泥→肥料、セメント)
などなど、3月からすでに5ヶ月が経ち、すでにいろいろな形で循環を始めています。今あげた例が全てではなく、抜けている部分もあると思いますが、すでに問題が明らかになってきているポイントを挙げると以上のようになります。
現状と課題
それでは、現在は下記のそれぞれについて現状がどうなっていて、どのような対応が取られているのか、一つずつ見ていきましょう。
1.浄水場(上水道は厚労省が管轄です)
厚労省の資料にあった図がわかりやすいのでそれを利用して説明します。

事故直後の影響:上の左側の図になりますが、3/23の金町浄水場からの放射性ヨウ素の検出は、まだ多くの方が記憶にあると思います。あれは、あとでわかったことですが、3/21頃の放射能プルームが南向きの風に乗ってやってきて、雨で降下したことによるものでした。
放射性物質放出の減少以降の影響:今は、上の図でいうと右側のイメージになります。3月にばらまかれた放射性物質は、すでに雨によって移動し、川に流れ込んでいます。そこから引いてきている浄水場にも放射性セシウムなどを含んだ泥という形で少しずつ流れ込んできています。
浄水場では、大きく分けると、沈殿・濾過・消毒という3つの工程を経て飲める水にしています。下の図で、1~8が沈殿、9-10が濾過、11が消毒です。

この過程で沈殿・あるいは濾過されて生じた浄水発生土が放射性セシウムなどを大量に含んでいることがわかり、現在その処理が問題になっています。8月現在で、14都県で浄水場から発生した汚泥9万2000トンが行き場を失って処分に困っているという状況があります。
厚労省が7月12日現在でまとめた資料では、14都県の浄水場において放射性物質の濃度を測定済みの浄水発生土は49250トンありました。その中でも一番多かったのは100-8000Bq/kgの33950トンでした。この8000Bq/kgという数字の区分の意味についてはあとで説明します。


しかし、各自治体には未測定の浄水発生土がまだ54631トンもあります。そして、測定した浄水発生土についても、その処分方法が決まっているかどうかという観点で分類すると、下の表の一番左の欄にあるように、37286トンはまだ処分方法が決まっていないのです。すでに埋め立てや再利用されたり、処分方法が決まっている浄水発生土は約12000トンしかありません。未測定の約54600トンと合わせて約92000トンが処分方法が決まっていないのです。


東京都の場合は、全て埋め立てができたので、浄水場に仮置きという浄水発生土はありませんが、他の多くの県では浄水場に保管しているものがかなり残っています。

これは、減ることがなく、今後もどんどん増えていくので、早急に対策を取る必要があります。
なお、各地の浄水発生土の状況についてはコンタンさんのブログにまとめてあるので、興味のある方はご覧下さい。
2.下水道(下水道は国土交通省が管轄です)
まず最初に下水道で何をやっているのかを再確認しておきましょう。
東京都の「東京都の下水道2010」を一通り読んだら、下水道とそこから生ずる汚泥や焼却灰についての理解が非常に深まりました。ここから役に立つ部分を引用しながら基本的な解説をしていきます。

まず上の図は、(上水道を含めて)下水道の環境中での役割を示しています。これはみなさんご存じのことと思いますが、家庭や工場で出た汚水や雨水は下水道管を通って水再生センター(自治体によって名前は違うかもしれません)に集められます。そこで下水の浄化処理をして、処理後の水は川や海に流し、生じた汚泥を脱水して焼却するというのが下水道の役割です。
その具体的な方法が下の図に書かれています。下水道管は、自然に流れるように傾斜をつけていますが、そうするとどんどん深くなってしまいます。そこで、所々にポンプ場を設けて、地表近くまで汲み上げます。水再生センターにおいては、土砂類を沈殿させた後、微生物を含む活性汚泥で有機物を分解処理し、沈殿させます。そして最後に大腸菌などを塩素で消毒して川や海に流すのです。消毒の前にリンや窒素を除去する高度処理というものを行う場合もあります。
(見にくい方はクリックで拡大してください)

東京都区部の水再生センターにおいては、13の再生センターがあり、そこで生じた汚泥をそのまま処理する場合と、東部スラッジセンターあるいは南部スラッジセンターに汚泥を運んで処理する場合があります。2009年の実績として、都区部だけで、毎日2591トンの脱水汚泥が発生し、そのほとんど(2398トン)を毎日焼却しています。東京都区部だけで、年間で約90万トンの脱水汚泥が生じます。

スラッジセンターなどでは、汚泥を脱水して水分含量を76%程度にまで減らします。その後で焼却炉において焼却するという処理をして、生じた熱は冷暖房に使用し、灰は52%がセメント原料に、32%が人工軽量骨材に、13%がアスファルトフィラーに、4%が無焼成ブロックとして再利用されています。

灰の利用方法は別のページにもっと詳細がありましたので紹介します。

・軽量骨材原料(25%):下水汚泥の焼却灰を、人工軽量骨材の原料の一部に使用しています。なお、人工軽量骨材は軽量コンクリートの材料として利用されています。
・セメント原料(21%):セメントの主な原料は、石灰石、粘土、シリカ質原料、鉄原料等で構成されています。下水汚泥の焼却灰には、一般にこの粘土材料と同様の成分が含まれているため、セメント原料の一部として利用されています。
・スーパーアッシュ(6%):土木工事等で大量に用いられる粘土材料(ベントナイト※)の替りに利用
・スラジライト(2%):下水汚泥の焼却灰を原料として、水、バインダー(結合剤)を加えた後、混練、造粒、乾燥させたものを約1,050℃で焼成し、製造します。屋上緑化の土壌材料などに利用します。
・埋め立て(46%):いまだに半分は埋め立てています。上の資料には埋め立てが半分とは書いていなかったですよね。全部再利用しているのかと思ったのに・・・・
ということで、これは東京都区部の例を示しましたが、地方では下水道が整備されていないところもあり、別の処理も行われています。こうやって下水汚泥を焼却して処理していたのですが、その下水汚泥に高濃度のセシウムが蓄積してしまったため、こちらも処理が行き詰まってきたのでした。
では、放射性セシウムが浄水場や下水処理場に濃縮してきたので、その処理が近隣住民だけでなく作業者にとっても問題となり、政府がどういう対策を取っているのかを見ていきましょう。
6/16に原子力災害対策本部は、公共下水道汚泥や集落排水汚泥などの処理について、「放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取扱いに関する考え方」を決定しました。概要は以下のようなものです。

簡単に説明すると、浄水発生土や下水汚泥などの放射性物質を測定し、その濃度に応じて以下のように対応をするというものです。ここで先ほどの8000Bq/kgや10万Bq/kgという区分が出てきています。この数値は、周辺住民および取り扱い作業者の安全を確保するという目的で設定したものです。
・10万Bq/kg超:放射線を遮蔽出来る施設での保管
・10万Bq/kg~8千Bq/kg:仮置、または安全性を個別に評価して埋立処分
・8千Bq/kg以下:跡地を居住等の用途にしないこととした上で、埋立処分
しかし、8000Bq/kgを超えた汚泥などを埋め立てられる管理基準を持った施設が少ないこともあって、現実には多くの自治体でその処分に困っているというのが実情です。先ほどの記事によれば、下水汚泥、焼却スラグ2万7000トンの処分先が決定してないということです。
東京都のスラッジセンターについては、脱水汚泥の焼却時に出口でバグフィルターでトラップされている「はず」ですが、もしこれがなされていないと、大気中に放射性セシウムが放出されている可能性があります。当然のことながら行政は認めないでしょうが、しっかりと監視していないと、気づかぬうちに二次汚染が起こっていたということはあり得ます。下記の参考資料にはその疑惑を追及する記事が載っています。このシリーズの2回目の【2】の記事です。
参考資料:どうなる放射能汚染物の処理シリーズ:【1】すべては燃やしてからで本当によいのか(このシリーズは無料会員登録しないと読めません。【1】~【4】までありますが、個人的には全て必読!と思います。)
3.ゴミ焼却場
浄水場、下水処理場と来たら、最後はゴミ焼却場です。
ゴミ焼却場については基本的な事項の説明は省略します。みなさんよくご存じの方が多いと思うので、というか、本音を言うとゴミの分類から始まるとそれだけでも自治体によっていろんな方法があるので、代表例をあげられそうにないからです。環境問題でみなさんお勉強していると思うので省略させてください。
環境省の一般廃棄物焼却施設における焼却灰の測定及び当面の取扱いについてには、焼却場で出てくる灰についての放射性物質の基準を設けています。基本的には8000Bq/kgを超えるかどうか、という点で分類しています。東京都が測定した都内の焼却場では、主灰(燃やしたごみの燃えがらのことで、焼却炉の底から排出される灰のこと)は問題ありませんでしたが、飛灰(ろ過式集じん器などで捕集した排ガスに含まれているダスト(ばいじん)のこと)は8000Bq/kgを超えるセシウムが含まれている場合もありました。従って、8000Bq/kgを超える灰は一時保管後に埋め立て処分するということになりました。
『(2)当面の取扱い
今回の東京二十三区清掃一部事務組合による焼却灰の放射能濃度の調査の結果を受け、環境省において早急に焼却灰の処理方法を検討することとしている。検討結果がまとめられるまでの間、焼却灰の取扱いは下記のとおりとする。
ア 8,000Bq/kg を超える主灰又は飛灰については、一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)に場所を定めて、一時保管する。一時保管の方法は、「福島県内の災害廃棄物の処理の方針」(平成23 年6月23 日)に準拠する。
イ 8,000Bq/kg 以下の主灰又は飛灰については、一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)に、埋立処分する。念のための措置として、可能な限り、飛灰と主灰の埋立場所を分け、それぞれの埋立場所が特定できるように措置する。』
こちらについても、基準の8000Bq/kgを超えた焼却灰について、多くの自治体で保管しているものの、いずれはパンクするということで早急な対策が求められています。
4.肥料、汚泥、セメント
これまで、放射性セシウムの再循環において大きなトラップポイントとなる、浄水場(上水道)、下水処理場(下水道)、ゴミ焼却場(廃棄物)について概略を見てきました。それぞれについて現在多くの自治体で問題となっていますが、政府としては、6月に出した「放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取扱いに関する考え方」以上のものは出していません。あとは地方自治体でやってね、と丸投げしているのに近い状態です。そのため、放射性セシウムが入っているために取引き先が受け取ってくれずに、通常のリサイクルシステムがストップしそうになっているという現状があります。
それはそれで大きな問題なのですが、一般市民としてはこの放射性セシウム(やその他の放射性物質)の再循環が我々にどのような影響をもたらすのかを知っておく必要があります。そこで必要なのは、これらの処理で生じた汚泥や灰がその後でどこに行くのか?ということの知識です。だから私は下水道の処理の所で脱水汚泥を燃やした灰が何に利用されているかを詳しく記載していたのです。
これらの汚泥を再利用の方法としていくつかの方法があり、それらの中でもいくつかはすでに対応方法が決められていますのでそれをご紹介します。ニュースにもなっていたのでご存じの方もいると思いますが、この知識は重要です。
セメント:他の原料と混ぜた状態で100Bq/kg以下ならばセメント材料に利用できる。(6/16 「放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取扱いに関する考え方」に記載してあるといろいろなサイトで書いてあります。私は100Bq/kgという数値は見つけられなかったのですが、記者会見か何かで数字を言ったのだと思います。)
農水省関係
汚泥肥料:原料汚泥中の放射性セシウム濃度が200 Bq/kg以下の場合については、汚泥肥料の原料として使用できる。(6/24「肥料に利用する放射性物質を含む汚泥の取扱いについて」より)
※汚泥肥料は、一般消費者向けとしてはほとんど流通しておらず、主に農家に直接販売される肥料です。また、重量の割には価格が低く、使用量がトン単位であるため、あまり広域流通していません。
肥料や飼料:肥料・土壌改良資材・培土中に含まれることが許容される最大値は、400Bq/kg(製品重量)
(8/1「放射性セシウムを含む肥料・土壌改良資材・培土及び飼料の暫定許容値の設定について」より)
肥料については、7月に市販の肥料から高濃度の放射性セシウムが検出されたとして話題になりましたよね。
他にもあるかもしれませんがとりあえずここではこれだけにしておきます。
5.河川(河川については国土交通省が管轄のようです。)
現況:福島県の河川の汚染の現状については、「8/2 環境省が行った福島県の河川および川底の結果。川底のセシウムは雨で流されて河口へ!」で紹介しました。環境省が福島県の河川の測定で明らかにしたように、川の水は普段はほとんど汚染されていません。しかし、川に流れ込んだセシウムは、川底に蓄積しています。おそらく川底のコケなども汚染されていることでしょう。そういうコケを食べるアユなどは、かなりセシウムで汚染されていることがわかっています。一方、川底に沈んでいるセシウムも、大雨などで増水すると、水流が増大しますので、また舞い上がって下流に流れていきます。おそらく最終的にはほとんどが河口まで流れて堆積していくものと思われます。現状では測定されているのは福島県だけですが、最終的に川に集まってきますので、土壌がそれなりに汚染されている近辺の県(宮城県、栃木県、茨城県)でも、川底だけでも放射性セシウムの濃度を定期的にモニタリングとして測定しておいた方がいいと思います。
対応:河川の水質にはほとんど影響していないため、特に問題なしとして何も対策は発表されていないように思います(国土交通省のHPにはなし)。なお、川の魚介類については、暫定基準値を超えたものについては出荷制限がかかっています。
川から取水しているところでは、おそらく普段から行っていると思いますが、増水して川の水が濁っている時は取水しないという対策が必要だと思います。この時の水は放射性セシウムを含んでいる可能性が高いからです。
6.海洋
海洋汚染については、これまで「http://tsukuba2011.blog60.fc2.com/blog-category-5.html」や「海底土の汚染シリーズ」に紹介していますので特にここでは触れませんが、浄水場(上水道)、下水処理場(下水道)、ゴミ焼却場(廃棄物)でトラップできなかったものの多くは、土壌から雨水などを経て川へ、そして海へと流れ出していきます。残念ながら、河口付近の海底土を調査してくれている所はないようですので、その汚染がどのように広がっているのかはモニターできていません。
最終的に、魚介類がどのように汚染されているのかでチェックするしかないようです。
まとめ
かなり長くなりましたので、全体をまとめます。下の図を参考にしてください。

1.福島第一原発事故からすでに5ヶ月が経過しました。大量に撒き散らかされた放射性物質(特に測定されて実態が比較的把握されている放射性セシウム)は、すでに再循環を始めています。その認識が必要です。
2.放射性物質は通常の環境汚染物質と違い、生物で変換して無毒化するということができません。最近、「除染」という言葉がよく出てきますが、集めて保管なり埋めるなりして、100年以上減衰させない限り本当の意味の除染にはなりません。それ以外の方法は、単に別の場所に移動させているだけです。
3.現在のシステムにおいて、放射性物質を集めて濃縮することができるものは、上の図で黄緑色で囲んだ浄水場(上水道)、下水処理場(下水道)、ゴミ焼却場(廃棄物)です。ここで放射性物質の体積を減少させて、2.で決めた保管場所か埋蔵場所に置いていくしかありません。ただし、ここでの作業は放射性物質が濃縮されますので、作業員の健康管理、および近隣住民への被ばくがないように注意が必要です。現在の下水処理場やゴミ焼却場は、放射性物質を扱うことを前提に作られていないので、放射性セシウムをきちんとトラップできているのかどうかは疑問です。
4.一般住民としては、それ以外にもセメントなどの建材、肥料にもそれぞれに定められた基準値以下の放射性セシウムは入り込んでいるという可能性を考慮しておく必要があります。それ以外にも、すでに意外な所から放射性セシウムが入り込んでいる可能性はあります。森林においては、針葉樹の葉などに蓄積しているという話もありますので、ハイキングなどに行く際は事前にそのあたりの環境放射線濃度を確認してから行った方がいいと思います。
5.食品への放射性セシウムの取り込みは、取り込みやすい食品とそうでない食品がありますので、「食品の放射能検査データ」などの情報をこまめにチェックして傾向をつかんだ方がいいと思います。このブログでも一度「7/10 野菜・肉類の放射性セシウム汚染状況の簡単なまとめ」で取り上げましたが、そのうちにまた整理したいと思います。
6.最終的には放射性セシウムであれば、土壌の雲母などに吸着して植物なども利用できない形態になってそのまま減衰していくか、河川を通じて海に流れ込んで、そこで希釈されると同時に海底に沈んでいきながら減衰するという形になると思いますが、現在の環境リサイクルシステムでトラップできたものは、置き場所を早急に決めて、そこにどんどんまとめていくということが必要です。
以上、全体的な話をまとめてみたので、個々の話題については概略的なことしか触れられませんでした。皆さんのコメントがあれば、それを受けてまた突っ込んだ議論をしてみたいと思います。
福島第一原発から大量にばらまかれ、雨や雪によって降下した放射性物質。現在はストロンチウムの測定がほとんど行われていないので、もっぱらセシウムの測定が行われています。半減期が長いため、チェルノブイリでも問題になっているのはCs-137(30年)とSr-90(29年)です。ここでもデータがあるセシウムについて話をしていきますが、ストロンチウムはセシウムの1/10~1/100程度なので、セシウムの量を押さえておけばそこから推論することはできます。
放射性物質の場合、通常の化学物質と違って問題なのは、簡単には減らないということです。DDTとかダイオキシンとか、公害として問題になった化学物質は、生体内で代謝されることによって別の化学物質となり、その生理作用を失います。ですから、微生物等を用いて分解するということもできるのです。しかし、放射性物質の場合は、その性質からして、化学反応では減ることがありません。ヒマワリを植えて土壌からセシウムを除去しようという話もありましたが、ではその植えたヒマワリをどうするのか?燃やして体積を減らした灰にして処分するしかないと思いますが、その後のことを考えないと、結局土壌から別の場所に移動しているだけなのです。
放射性物質は、放射線を出すことでしか減っていきません。そしてその消滅は、半減期というものが決まっています。セシウムの中でも半減期の長いCs-137であれば、半減期は約30年ですから、大量にばらまかれたCs-137をどこかに集めてそれを埋めるとか隔離するということをしないといけません。ウランやプルトニウムと違い、何万年もの半減期があるわけではないので、どこかに数100年近く保管しておければ、その後は放射能の心配をしないで済みます。それでも人の一生よりも長い数100年のレベルが必要です。
チェルノブイリの事故から25年経ってもいまだにセシウムやストロンチウムによる汚染が残っていることを考えると、これから少なくとも30年はこの問題に向き合って行かないといけないということがわかります。
放射性物質の循環
さて、家の庭や道路、公園などに降り注いだセシウムはどこへ行くのか?考えてみましょう。
・土壌に吸い込まれる。(土壌への蓄積:農作物を考えると長期的な課題)
・さらに雨が降って地表から洗い流され、下水へと流れていく。(河川や下水道処理施設へ)
・いろいろなものに付着して、最後はゴミとなって廃棄される。(焼却場へ)
・河川から水を引いてきて上水を作る際には、浄水場にも蓄積します。(浄水場へ)
その他、
・野菜や肉に吸収されて、人や家畜が食べ、内部被曝する。(内部被曝の問題)
・人や家畜の排泄物が汚泥となる(汚泥→肥料、セメント)
などなど、3月からすでに5ヶ月が経ち、すでにいろいろな形で循環を始めています。今あげた例が全てではなく、抜けている部分もあると思いますが、すでに問題が明らかになってきているポイントを挙げると以上のようになります。
現状と課題
それでは、現在は下記のそれぞれについて現状がどうなっていて、どのような対応が取られているのか、一つずつ見ていきましょう。
1.浄水場(上水道は厚労省が管轄です)
厚労省の資料にあった図がわかりやすいのでそれを利用して説明します。

事故直後の影響:上の左側の図になりますが、3/23の金町浄水場からの放射性ヨウ素の検出は、まだ多くの方が記憶にあると思います。あれは、あとでわかったことですが、3/21頃の放射能プルームが南向きの風に乗ってやってきて、雨で降下したことによるものでした。
放射性物質放出の減少以降の影響:今は、上の図でいうと右側のイメージになります。3月にばらまかれた放射性物質は、すでに雨によって移動し、川に流れ込んでいます。そこから引いてきている浄水場にも放射性セシウムなどを含んだ泥という形で少しずつ流れ込んできています。
浄水場では、大きく分けると、沈殿・濾過・消毒という3つの工程を経て飲める水にしています。下の図で、1~8が沈殿、9-10が濾過、11が消毒です。

この過程で沈殿・あるいは濾過されて生じた浄水発生土が放射性セシウムなどを大量に含んでいることがわかり、現在その処理が問題になっています。8月現在で、14都県で浄水場から発生した汚泥9万2000トンが行き場を失って処分に困っているという状況があります。
厚労省が7月12日現在でまとめた資料では、14都県の浄水場において放射性物質の濃度を測定済みの浄水発生土は49250トンありました。その中でも一番多かったのは100-8000Bq/kgの33950トンでした。この8000Bq/kgという数字の区分の意味についてはあとで説明します。


しかし、各自治体には未測定の浄水発生土がまだ54631トンもあります。そして、測定した浄水発生土についても、その処分方法が決まっているかどうかという観点で分類すると、下の表の一番左の欄にあるように、37286トンはまだ処分方法が決まっていないのです。すでに埋め立てや再利用されたり、処分方法が決まっている浄水発生土は約12000トンしかありません。未測定の約54600トンと合わせて約92000トンが処分方法が決まっていないのです。


東京都の場合は、全て埋め立てができたので、浄水場に仮置きという浄水発生土はありませんが、他の多くの県では浄水場に保管しているものがかなり残っています。

これは、減ることがなく、今後もどんどん増えていくので、早急に対策を取る必要があります。
なお、各地の浄水発生土の状況についてはコンタンさんのブログにまとめてあるので、興味のある方はご覧下さい。
2.下水道(下水道は国土交通省が管轄です)
まず最初に下水道で何をやっているのかを再確認しておきましょう。
東京都の「東京都の下水道2010」を一通り読んだら、下水道とそこから生ずる汚泥や焼却灰についての理解が非常に深まりました。ここから役に立つ部分を引用しながら基本的な解説をしていきます。

まず上の図は、(上水道を含めて)下水道の環境中での役割を示しています。これはみなさんご存じのことと思いますが、家庭や工場で出た汚水や雨水は下水道管を通って水再生センター(自治体によって名前は違うかもしれません)に集められます。そこで下水の浄化処理をして、処理後の水は川や海に流し、生じた汚泥を脱水して焼却するというのが下水道の役割です。
その具体的な方法が下の図に書かれています。下水道管は、自然に流れるように傾斜をつけていますが、そうするとどんどん深くなってしまいます。そこで、所々にポンプ場を設けて、地表近くまで汲み上げます。水再生センターにおいては、土砂類を沈殿させた後、微生物を含む活性汚泥で有機物を分解処理し、沈殿させます。そして最後に大腸菌などを塩素で消毒して川や海に流すのです。消毒の前にリンや窒素を除去する高度処理というものを行う場合もあります。
(見にくい方はクリックで拡大してください)

東京都区部の水再生センターにおいては、13の再生センターがあり、そこで生じた汚泥をそのまま処理する場合と、東部スラッジセンターあるいは南部スラッジセンターに汚泥を運んで処理する場合があります。2009年の実績として、都区部だけで、毎日2591トンの脱水汚泥が発生し、そのほとんど(2398トン)を毎日焼却しています。東京都区部だけで、年間で約90万トンの脱水汚泥が生じます。

スラッジセンターなどでは、汚泥を脱水して水分含量を76%程度にまで減らします。その後で焼却炉において焼却するという処理をして、生じた熱は冷暖房に使用し、灰は52%がセメント原料に、32%が人工軽量骨材に、13%がアスファルトフィラーに、4%が無焼成ブロックとして再利用されています。

灰の利用方法は別のページにもっと詳細がありましたので紹介します。

・軽量骨材原料(25%):下水汚泥の焼却灰を、人工軽量骨材の原料の一部に使用しています。なお、人工軽量骨材は軽量コンクリートの材料として利用されています。
・セメント原料(21%):セメントの主な原料は、石灰石、粘土、シリカ質原料、鉄原料等で構成されています。下水汚泥の焼却灰には、一般にこの粘土材料と同様の成分が含まれているため、セメント原料の一部として利用されています。
・スーパーアッシュ(6%):土木工事等で大量に用いられる粘土材料(ベントナイト※)の替りに利用
・スラジライト(2%):下水汚泥の焼却灰を原料として、水、バインダー(結合剤)を加えた後、混練、造粒、乾燥させたものを約1,050℃で焼成し、製造します。屋上緑化の土壌材料などに利用します。
・埋め立て(46%):いまだに半分は埋め立てています。上の資料には埋め立てが半分とは書いていなかったですよね。全部再利用しているのかと思ったのに・・・・
ということで、これは東京都区部の例を示しましたが、地方では下水道が整備されていないところもあり、別の処理も行われています。こうやって下水汚泥を焼却して処理していたのですが、その下水汚泥に高濃度のセシウムが蓄積してしまったため、こちらも処理が行き詰まってきたのでした。
では、放射性セシウムが浄水場や下水処理場に濃縮してきたので、その処理が近隣住民だけでなく作業者にとっても問題となり、政府がどういう対策を取っているのかを見ていきましょう。
6/16に原子力災害対策本部は、公共下水道汚泥や集落排水汚泥などの処理について、「放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取扱いに関する考え方」を決定しました。概要は以下のようなものです。

簡単に説明すると、浄水発生土や下水汚泥などの放射性物質を測定し、その濃度に応じて以下のように対応をするというものです。ここで先ほどの8000Bq/kgや10万Bq/kgという区分が出てきています。この数値は、周辺住民および取り扱い作業者の安全を確保するという目的で設定したものです。
・10万Bq/kg超:放射線を遮蔽出来る施設での保管
・10万Bq/kg~8千Bq/kg:仮置、または安全性を個別に評価して埋立処分
・8千Bq/kg以下:跡地を居住等の用途にしないこととした上で、埋立処分
しかし、8000Bq/kgを超えた汚泥などを埋め立てられる管理基準を持った施設が少ないこともあって、現実には多くの自治体でその処分に困っているというのが実情です。先ほどの記事によれば、下水汚泥、焼却スラグ2万7000トンの処分先が決定してないということです。
東京都のスラッジセンターについては、脱水汚泥の焼却時に出口でバグフィルターでトラップされている「はず」ですが、もしこれがなされていないと、大気中に放射性セシウムが放出されている可能性があります。当然のことながら行政は認めないでしょうが、しっかりと監視していないと、気づかぬうちに二次汚染が起こっていたということはあり得ます。下記の参考資料にはその疑惑を追及する記事が載っています。このシリーズの2回目の【2】の記事です。
参考資料:どうなる放射能汚染物の処理シリーズ:【1】すべては燃やしてからで本当によいのか(このシリーズは無料会員登録しないと読めません。【1】~【4】までありますが、個人的には全て必読!と思います。)
3.ゴミ焼却場
浄水場、下水処理場と来たら、最後はゴミ焼却場です。
ゴミ焼却場については基本的な事項の説明は省略します。みなさんよくご存じの方が多いと思うので、というか、本音を言うとゴミの分類から始まるとそれだけでも自治体によっていろんな方法があるので、代表例をあげられそうにないからです。環境問題でみなさんお勉強していると思うので省略させてください。
環境省の一般廃棄物焼却施設における焼却灰の測定及び当面の取扱いについてには、焼却場で出てくる灰についての放射性物質の基準を設けています。基本的には8000Bq/kgを超えるかどうか、という点で分類しています。東京都が測定した都内の焼却場では、主灰(燃やしたごみの燃えがらのことで、焼却炉の底から排出される灰のこと)は問題ありませんでしたが、飛灰(ろ過式集じん器などで捕集した排ガスに含まれているダスト(ばいじん)のこと)は8000Bq/kgを超えるセシウムが含まれている場合もありました。従って、8000Bq/kgを超える灰は一時保管後に埋め立て処分するということになりました。
『(2)当面の取扱い
今回の東京二十三区清掃一部事務組合による焼却灰の放射能濃度の調査の結果を受け、環境省において早急に焼却灰の処理方法を検討することとしている。検討結果がまとめられるまでの間、焼却灰の取扱いは下記のとおりとする。
ア 8,000Bq/kg を超える主灰又は飛灰については、一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)に場所を定めて、一時保管する。一時保管の方法は、「福島県内の災害廃棄物の処理の方針」(平成23 年6月23 日)に準拠する。
イ 8,000Bq/kg 以下の主灰又は飛灰については、一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)に、埋立処分する。念のための措置として、可能な限り、飛灰と主灰の埋立場所を分け、それぞれの埋立場所が特定できるように措置する。』
こちらについても、基準の8000Bq/kgを超えた焼却灰について、多くの自治体で保管しているものの、いずれはパンクするということで早急な対策が求められています。
4.肥料、汚泥、セメント
これまで、放射性セシウムの再循環において大きなトラップポイントとなる、浄水場(上水道)、下水処理場(下水道)、ゴミ焼却場(廃棄物)について概略を見てきました。それぞれについて現在多くの自治体で問題となっていますが、政府としては、6月に出した「放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取扱いに関する考え方」以上のものは出していません。あとは地方自治体でやってね、と丸投げしているのに近い状態です。そのため、放射性セシウムが入っているために取引き先が受け取ってくれずに、通常のリサイクルシステムがストップしそうになっているという現状があります。
それはそれで大きな問題なのですが、一般市民としてはこの放射性セシウム(やその他の放射性物質)の再循環が我々にどのような影響をもたらすのかを知っておく必要があります。そこで必要なのは、これらの処理で生じた汚泥や灰がその後でどこに行くのか?ということの知識です。だから私は下水道の処理の所で脱水汚泥を燃やした灰が何に利用されているかを詳しく記載していたのです。
これらの汚泥を再利用の方法としていくつかの方法があり、それらの中でもいくつかはすでに対応方法が決められていますのでそれをご紹介します。ニュースにもなっていたのでご存じの方もいると思いますが、この知識は重要です。
セメント:他の原料と混ぜた状態で100Bq/kg以下ならばセメント材料に利用できる。(6/16 「放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取扱いに関する考え方」に記載してあるといろいろなサイトで書いてあります。私は100Bq/kgという数値は見つけられなかったのですが、記者会見か何かで数字を言ったのだと思います。)
農水省関係
汚泥肥料:原料汚泥中の放射性セシウム濃度が200 Bq/kg以下の場合については、汚泥肥料の原料として使用できる。(6/24「肥料に利用する放射性物質を含む汚泥の取扱いについて」より)
※汚泥肥料は、一般消費者向けとしてはほとんど流通しておらず、主に農家に直接販売される肥料です。また、重量の割には価格が低く、使用量がトン単位であるため、あまり広域流通していません。
肥料や飼料:肥料・土壌改良資材・培土中に含まれることが許容される最大値は、400Bq/kg(製品重量)
(8/1「放射性セシウムを含む肥料・土壌改良資材・培土及び飼料の暫定許容値の設定について」より)
肥料については、7月に市販の肥料から高濃度の放射性セシウムが検出されたとして話題になりましたよね。
他にもあるかもしれませんがとりあえずここではこれだけにしておきます。
5.河川(河川については国土交通省が管轄のようです。)
現況:福島県の河川の汚染の現状については、「8/2 環境省が行った福島県の河川および川底の結果。川底のセシウムは雨で流されて河口へ!」で紹介しました。環境省が福島県の河川の測定で明らかにしたように、川の水は普段はほとんど汚染されていません。しかし、川に流れ込んだセシウムは、川底に蓄積しています。おそらく川底のコケなども汚染されていることでしょう。そういうコケを食べるアユなどは、かなりセシウムで汚染されていることがわかっています。一方、川底に沈んでいるセシウムも、大雨などで増水すると、水流が増大しますので、また舞い上がって下流に流れていきます。おそらく最終的にはほとんどが河口まで流れて堆積していくものと思われます。現状では測定されているのは福島県だけですが、最終的に川に集まってきますので、土壌がそれなりに汚染されている近辺の県(宮城県、栃木県、茨城県)でも、川底だけでも放射性セシウムの濃度を定期的にモニタリングとして測定しておいた方がいいと思います。
対応:河川の水質にはほとんど影響していないため、特に問題なしとして何も対策は発表されていないように思います(国土交通省のHPにはなし)。なお、川の魚介類については、暫定基準値を超えたものについては出荷制限がかかっています。
川から取水しているところでは、おそらく普段から行っていると思いますが、増水して川の水が濁っている時は取水しないという対策が必要だと思います。この時の水は放射性セシウムを含んでいる可能性が高いからです。
6.海洋
海洋汚染については、これまで「http://tsukuba2011.blog60.fc2.com/blog-category-5.html」や「海底土の汚染シリーズ」に紹介していますので特にここでは触れませんが、浄水場(上水道)、下水処理場(下水道)、ゴミ焼却場(廃棄物)でトラップできなかったものの多くは、土壌から雨水などを経て川へ、そして海へと流れ出していきます。残念ながら、河口付近の海底土を調査してくれている所はないようですので、その汚染がどのように広がっているのかはモニターできていません。
最終的に、魚介類がどのように汚染されているのかでチェックするしかないようです。
まとめ
かなり長くなりましたので、全体をまとめます。下の図を参考にしてください。

1.福島第一原発事故からすでに5ヶ月が経過しました。大量に撒き散らかされた放射性物質(特に測定されて実態が比較的把握されている放射性セシウム)は、すでに再循環を始めています。その認識が必要です。
2.放射性物質は通常の環境汚染物質と違い、生物で変換して無毒化するということができません。最近、「除染」という言葉がよく出てきますが、集めて保管なり埋めるなりして、100年以上減衰させない限り本当の意味の除染にはなりません。それ以外の方法は、単に別の場所に移動させているだけです。
3.現在のシステムにおいて、放射性物質を集めて濃縮することができるものは、上の図で黄緑色で囲んだ浄水場(上水道)、下水処理場(下水道)、ゴミ焼却場(廃棄物)です。ここで放射性物質の体積を減少させて、2.で決めた保管場所か埋蔵場所に置いていくしかありません。ただし、ここでの作業は放射性物質が濃縮されますので、作業員の健康管理、および近隣住民への被ばくがないように注意が必要です。現在の下水処理場やゴミ焼却場は、放射性物質を扱うことを前提に作られていないので、放射性セシウムをきちんとトラップできているのかどうかは疑問です。
4.一般住民としては、それ以外にもセメントなどの建材、肥料にもそれぞれに定められた基準値以下の放射性セシウムは入り込んでいるという可能性を考慮しておく必要があります。それ以外にも、すでに意外な所から放射性セシウムが入り込んでいる可能性はあります。森林においては、針葉樹の葉などに蓄積しているという話もありますので、ハイキングなどに行く際は事前にそのあたりの環境放射線濃度を確認してから行った方がいいと思います。
5.食品への放射性セシウムの取り込みは、取り込みやすい食品とそうでない食品がありますので、「食品の放射能検査データ」などの情報をこまめにチェックして傾向をつかんだ方がいいと思います。このブログでも一度「7/10 野菜・肉類の放射性セシウム汚染状況の簡単なまとめ」で取り上げましたが、そのうちにまた整理したいと思います。
6.最終的には放射性セシウムであれば、土壌の雲母などに吸着して植物なども利用できない形態になってそのまま減衰していくか、河川を通じて海に流れ込んで、そこで希釈されると同時に海底に沈んでいきながら減衰するという形になると思いますが、現在の環境リサイクルシステムでトラップできたものは、置き場所を早急に決めて、そこにどんどんまとめていくということが必要です。
以上、全体的な話をまとめてみたので、個々の話題については概略的なことしか触れられませんでした。皆さんのコメントがあれば、それを受けてまた突っ込んだ議論をしてみたいと思います。
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