8/16 宮城県登米市のコメのセシウム 土壌と稲地上部の関係が初めて明らかに!
昨日、宮城県登米市は、HPにコメの放射性セシウムの調査結果を発表しました。これは独自調査ということです。
特筆すべきことは、この調査結果には土壌の調査結果も同時に記載してあったことです。
登米市の6地区について、水田土壌、稲体のデータが記載してあります。今日は時間があったのでわざわざ電話して確認したのですが、この稲体というのは茎から上の地上部全体のことを指します。つまり、玄米にある放射能はこの数値よりもさらに低くなるという前提で数値を見てください。登米市の方にも、この表現は誤解する人もいるので玄米ではないということを明記しておいた方がよいとお伝えしました。
残念ながら、検出下限値については手元に資料がないということでしたので、次回の更新時には必ず検出下限値を記載するようにお願いしておきました。でも、放射性セシウム(Cs-134とCs-137の合計)として2.1Bq/kgという低い数値が出ているので、それ以下であることは間違いありません。
今回の独自調査では、同じ田んぼの土壌の放射性セシウムのデータも記載してありました。これも担当者に稲体を取った同じ田んぼかと確認しましたので、単に地区が同じ別の田んぼということはないはずです。1対1に対応していると考えていいはずです。
従って、土壌の放射性セシウムが稲体への移行がどれくらいであるか、という移行係数が求めることができます。それを計算したのが上の表の一番右の部分です。6地区のうち、稲体の放射性セシウムが検出限界以下だった米山町を除いて5地区の平均で、0.050です。
繰り返しますが、これはあくまで土壌から稲体(まだ緑色の茎から穂の部分までを含む)への移行係数です。玄米部分への移行係数は、いろいろなデータがありますが、土壌肥料学会のHPによれば約12-20%ということです。下記に引用します。
『5.吸収されたセシウムのイネ体内での存在割合
Cs-137とKはイネ体内では比較的類似した挙動を示す。作物に吸収されたCs総量のうち玄米に移行した割合は12~20%(津村ら1984)である。糠部分で白米より高い濃度にあることが知られており(Tsukadaら, 2002b)、白米のCs-137濃度は玄米に比べ30~50%程度低い(駒村ら, 2006)。
可食部へのCsの移行が少ない場合であっても、稲ワラ等の非可食部の処理をどうするかは重要な問題である。例えば、イネの場合、白米とそれ以外の部位のCs存在比率は7 : 93との報告がある(Tsukadaら, 2002b)。非可食部の家畜への給与、堆肥化、鋤込み、焼却等の処理により再び放射性Csが食物連鎖を通じて畜産品に移行し、あるいは農地に還元される等の可能性がある。第一義的には放射性Csの吸収抑制対策の確立が重要であるが、非可食部の処理についても考えておく必要がある。』
これを用いて計算すると、玄米への移行係数はCs総量の20%としても、0.050×0.2=0.01となります。同じ土壌肥料学会のHPでは白米は全体の7%という記載がありますので、白米としては0.050×0.07=0.0035となります。
8/17追記:コメントをいただいたように、この計算方法は間違っていました。稲体全体の移行係数から玄米の移行係数を換算するという作業を今までやったことがなかったため、Bq/kgで計算すべきところをBqで計算してしまいました。(これまでの予想は、移行係数を使わずに小麦のセシウム量からそれに比べてコメは何分の一程度、という計算をしていましたので、このような間違いはしていません。)
昔の資料ですが、「イネにおける放射性核種の分布と土壌からの移行率」という資料がありますのでそこから計算します。

今回の登米市の稲体は、根を除いた全てとして、乾燥重量で96%、Cs含量で97%です。玄米は、白米+ぬかとして、乾燥重量で38%、Cs含量で17%です。白米は乾燥重量で34%、Cs含量で7%です。そこから計算すると、玄米の重量あたりのCs濃度は稲体の44%(0.45÷1.01=0.44)、白米は20%になります。稲体の移行係数を0.05とすると、玄米は0.022、白米は0.01になります。なお、注意して欲しいのは、米ぬかは重量比あたりのCs濃度は高いので、白米の約10倍になります。

(追記ここまで)
やはり、私が「7/23 今年の米の放射性セシウムによる汚染具合を予想する!後編」で予想した数値(『移行係数としては予想は出すのはふさわしくないのですが、敢えて出すとすれば、玄麦で0.062、玄米でその1/10として0.0062、白米でその1/3として0.002でしょうか』)は、大きくは外していないということが実証されつつあります。(8/17追記:計算し直すと約3倍高くなっています。これくらいのズレは予想していましたが、この程度で収まって欲しいです。)
最終的には収穫した段階でのデータを見ないとわかりませんが、今までの予備調査のデータを見ても、福島県以外はおそらくこれと同じくらいの移行係数で考えて問題ないでしょう。あとは、福島県の中でも警戒区域や計画的避難準備区域の近くで、セシウムの降下物が時々あるような地域は、地上部から吸収することによって高く出る可能性があります。小麦でも同じような傾向がありました(「8/7 小麦の放射性セシウムデータのまとめと米データの最新の予想」参照)ので、そこだけは要注意です。
土壌と稲の両方を測定して結果を公開するという登米市の情報公開の姿勢は非常にすばらしいものです。これに検出下限値を明示した形を、各自治体のスタンダードにして欲しいものです。
移行係数以外は(Bq/kg) | 稲体の放射性ヨウ素 | 稲体の放射性セシウム | 土壌の放射性ヨウ素 | 土壌の放射性セシウム | 土壌から稲体への移行係数 |
登米市東和町 | 検出せず | 3.7 | 検出せず | 105 | 0.035 |
登米市登米町 | 検出せず | 2.9 | 検出せず | 67 | 0.043 |
登米市中田町 | 検出せず | 11.6 | 検出せず | 170 | 0.068 |
登米市豊里町 | 検出せず | 2.1 | 検出せず | 53 | 0.039 |
登米市米山町 | 検出せず | 検出せず | 検出せず | 59 | |
登米市南方町 | 検出せず | 8.0 | 検出せず | 123 | 0.065 |
平均 | 0.050 |
残念ながら、検出下限値については手元に資料がないということでしたので、次回の更新時には必ず検出下限値を記載するようにお願いしておきました。でも、放射性セシウム(Cs-134とCs-137の合計)として2.1Bq/kgという低い数値が出ているので、それ以下であることは間違いありません。
今回の独自調査では、同じ田んぼの土壌の放射性セシウムのデータも記載してありました。これも担当者に稲体を取った同じ田んぼかと確認しましたので、単に地区が同じ別の田んぼということはないはずです。1対1に対応していると考えていいはずです。
従って、土壌の放射性セシウムが稲体への移行がどれくらいであるか、という移行係数が求めることができます。それを計算したのが上の表の一番右の部分です。6地区のうち、稲体の放射性セシウムが検出限界以下だった米山町を除いて5地区の平均で、0.050です。
繰り返しますが、これはあくまで土壌から稲体(まだ緑色の茎から穂の部分までを含む)への移行係数です。玄米部分への移行係数は、いろいろなデータがありますが、土壌肥料学会のHPによれば約12-20%ということです。下記に引用します。
『5.吸収されたセシウムのイネ体内での存在割合
Cs-137とKはイネ体内では比較的類似した挙動を示す。作物に吸収されたCs総量のうち玄米に移行した割合は12~20%(津村ら1984)である。糠部分で白米より高い濃度にあることが知られており(Tsukadaら, 2002b)、白米のCs-137濃度は玄米に比べ30~50%程度低い(駒村ら, 2006)。
可食部へのCsの移行が少ない場合であっても、稲ワラ等の非可食部の処理をどうするかは重要な問題である。例えば、イネの場合、白米とそれ以外の部位のCs存在比率は7 : 93との報告がある(Tsukadaら, 2002b)。非可食部の家畜への給与、堆肥化、鋤込み、焼却等の処理により再び放射性Csが食物連鎖を通じて畜産品に移行し、あるいは農地に還元される等の可能性がある。第一義的には放射性Csの吸収抑制対策の確立が重要であるが、非可食部の処理についても考えておく必要がある。』
8/17追記:コメントをいただいたように、この計算方法は間違っていました。稲体全体の移行係数から玄米の移行係数を換算するという作業を今までやったことがなかったため、Bq/kgで計算すべきところをBqで計算してしまいました。(これまでの予想は、移行係数を使わずに小麦のセシウム量からそれに比べてコメは何分の一程度、という計算をしていましたので、このような間違いはしていません。)
昔の資料ですが、「イネにおける放射性核種の分布と土壌からの移行率」という資料がありますのでそこから計算します。

今回の登米市の稲体は、根を除いた全てとして、乾燥重量で96%、Cs含量で97%です。玄米は、白米+ぬかとして、乾燥重量で38%、Cs含量で17%です。白米は乾燥重量で34%、Cs含量で7%です。そこから計算すると、玄米の重量あたりのCs濃度は稲体の44%(0.45÷1.01=0.44)、白米は20%になります。稲体の移行係数を0.05とすると、玄米は0.022、白米は0.01になります。なお、注意して欲しいのは、米ぬかは重量比あたりのCs濃度は高いので、白米の約10倍になります。

(追記ここまで)
やはり、私が「7/23 今年の米の放射性セシウムによる汚染具合を予想する!後編」で予想した数値(『移行係数としては予想は出すのはふさわしくないのですが、敢えて出すとすれば、玄麦で0.062、玄米でその1/10として0.0062、白米でその1/3として0.002でしょうか』)は、大きくは外していないということが実証されつつあります。(8/17追記:計算し直すと約3倍高くなっています。これくらいのズレは予想していましたが、この程度で収まって欲しいです。)
最終的には収穫した段階でのデータを見ないとわかりませんが、今までの予備調査のデータを見ても、福島県以外はおそらくこれと同じくらいの移行係数で考えて問題ないでしょう。あとは、福島県の中でも警戒区域や計画的避難準備区域の近くで、セシウムの降下物が時々あるような地域は、地上部から吸収することによって高く出る可能性があります。小麦でも同じような傾向がありました(「8/7 小麦の放射性セシウムデータのまとめと米データの最新の予想」参照)ので、そこだけは要注意です。
土壌と稲の両方を測定して結果を公開するという登米市の情報公開の姿勢は非常にすばらしいものです。これに検出下限値を明示した形を、各自治体のスタンダードにして欲しいものです。
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