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8/17 検出限界値と定量下限値の違い

 
先週あたりから発表されているコメの放射能データにおいては、ほとんどの自治体の発表において「定量下限値」という言葉を使っています。これまで私が海洋放射能データなどでよく使ってきた「検出限界値」と「定量下限値」というのは違うということを昨日改めて確認しました。詳しい説明はこの資料に書いてあるのですが、一般の人にはわかりにくいと思うので、私が理解した範囲で説明します。もし違っていたらどなたかコメント下さい。


検出限界値と定量下限値の違いについて

検出限界:測定誤差の3倍です。つまり、放射能は自然放射線によるバックグラウンドがあるため、何もサンプルを入れなくても測定したら値が出てきます。測定というのは必ず誤差を含むので、バックグラウンドを何度も測定して、その測定による測定誤差を求めます。標準偏差σなどで表します。そのバックグラウンドの測定誤差の3倍を検出限界値としています。水道の例でいうと、東京都水道局のHPにわかりやすい例がありますので、その説明を用いて解説します。ここでは単位はBq/kgです。

測定値測定誤差測定誤差の3倍との比較結果の表示
(例1)100±5100>15100
(例2)1.5
±0.21.5>0.61.5
(例3)0.04±0.020.04<0.06ND(不検出)

『上の表で、例1の場合、測定値が100、測定誤差が5という結果が出ました。この場合は、測定誤差の5の3倍が15です。測定値100は15より大きな値であり、正確な値として、そのまま100と表示します。
 例2の場合も、同様に測定値の1.5は測定誤差0.2の3倍である0.6よりも大きい値であり、正確な値として1.5と表示します。
 例3の場合は、測定値が0.04、測定誤差が0.02であり、測定誤差の3倍は0.06になります。測定値の0.04は測定誤差の3倍の値0.06より小さな値ですので、そのまま数値を表示すると正確さを欠く可能性があり、「ND(不検出)」と表示します。』(東京都水道局HPより)

上記は水道の例ですが、コメや野菜の場合でも、検出限界値はこのように決まります。測定値が出ていてもND(不検出)になる場合があるということです。

定量下限:通常、測定誤差σの10倍だそうです。上の水道の例でいうと、例3では、測定誤差が0.02ですので、その10倍の0.2が定量下限と考えればいいようです。つまり、検出限界値以上で検出はできているけれども、定量性という意味では信頼性が低い値の範囲があり、例3でいうと0.06-0.2の範囲にある場合です。定量下限値以下は定量性がないので「検出せず」とする場合があるようです。ただし、早野先生のこのツイッターの説明によると、σの10倍では不十分だという説もあるようです。
https://twitter.com/#!/hayano/status/103329579854336000


コメのセシウムのデータは定量下限値が20Bq/kg?

以上、検出限界値と定量下限値の違いを説明しましたが、今一番気になっているコメの結果の話に戻ります。今回「8/17 昨日の埼玉県、千葉県、茨城県のコメはセシウム不検出」でご紹介した茨城県、千葉県、埼玉県は「定量下限」という言葉を用いていました。従って、各自治体が正しく理解してその用語を使用していれば、測定誤差σの10倍を定量下限としていると思います。ただ、測定機関が出してきたデータにおける検出限界値をそのまま用語だけ変えて「定量下限値」としている可能性もあります。

今後、私のブログにおいては「検出限界」という用語と「定量下限」という用語は区別して使用していきます。これまではほとんど検出限界という言葉を使用してきましたので混乱はあまりないと思いますが、定量下限という用語を見たときに検出下限という使い方をしてしまったときもあったと思います。今後はそのような混乱をしないようにしていきたいと思います。

なお、今回の定量下限値になぜ20Bq/kgという設定が多いか?ということについては、江川紹子さんがいろいろと問い合わせをしてツイッターにまとめてくれていますので、参考にしてください。厚労省の「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」では穀類の分析目標レベルは50Bq/kgですが、国が依頼している日本食品分析センターでは乳製品が20Bq/kgなので茨城県は日本食品分析センターの基準に合わせたそうです。

今後もこの基準で測定する自治体が多い気がしますが、私は「8/6 お米の放射能に関する意識調査のアンケート、途中経過発表!」でもご紹介したアンケートの結果などを見ていて、もっと低い定量下限値で測定して欲しいと思います。昨日「8/16 宮城県登米市のコメのセシウム 土壌と稲地上部の関係が初めて明らかに!」でご紹介した登米市のように、2Bq/kgでも検出される感度で「検出せず」ならば、みんな納得すると思います。ただ、20Bq/kgの感度を1Bq/kgに下げようとすると、10分の測定が3時間になるとのことなので、物理的に難しいという事情があるのでしょう。


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コメント

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補足させてください。

先ほどのコメントに補足させてください。

お米の定量下限20Bq/kgを検出限界で言いかえると・・・と書きましたが、そもそも別の概念で、言い変えることはできないような気もしてきました。的はずれだったらご指摘ください。

定量下限値について勉強中

いつも貴重な情報をありがとうございます。
うちのお米の検査を考えていて、ただいま、定量下限値について勉強中です。

検出限界:測定誤差σの3倍
定量下限:測定誤差σの10倍(諸説はあるが10σと考える)

ということは、お米の定量下限20Bq/kgは、検出限界で言いかえると6Bq/kgとなりますよね。セシウム137+134の定量下限40Bq/kgと、検出限界12Bq/kgでは同じなのに、受ける印象が違うように思います。

科学的に正しい表記は検出限界より定量下限で、新潟県の表記がベストなのでしょうか?

以下、転載します。

定量下限値とは・・・
分析方法で分析種の定量が可能な最小値、分析期間が測定に基づき証明できる最小値です。なお、検出限界値は、測定において検出できる最小値であり、放射能の特性として、同じ機器で測定しても、検体毎に検出限界値は変動するもので、定量下限値より当然低い値となります。

No title

はじめまして。
9/20~22の宇都宮市の降下物のデーターにhttp://www.pref.tochigi.lg.jp/kinkyu/documents/koukabutu20110924.pdf
セシウム134が330ベクレル検出され
セシウム137が検出されずと公表されました。

全国的に見て134が出て137が検出されずというのは見た事が無く
ちょっと疑問に思い問い合わせたところ

その日のセシウム137の検出下限値は277MBq/km2でした。
との返答がありました。

検出下限値。このブログを見てもスッキリしません。

検出下限値が277MBq/km2と言う事は、0~276MBq/km2は検出されずになるということですよね?

私の周りの人達も同じ様な考えです。

お忙しい所申し訳ありませんが、
そんな私達にも分かり易く教えて頂けるとありがたいです。

Re: No title

sige2gさん

ご指摘ありがとうございます。訂正しました。
最近、細かいチェックが行き届かなくなっているため、誤字や変換ミスなどもそのままになっているケースもあるかと思います。今後も気がついたらぜひ教えてください。

No title

いつも貴重な情報ありがとうございます。
こまかいことですが、上記表の測定誤差「5」が「0.5」となっておりますので、訂正のほどよろしくお願いいたします。

プロフィール

TSOKDBA

Author:TSOKDBA
twitterは@tsokdbaです。
3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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