8/21 「放射能防御プロジェクト」の発表と関東の土壌汚染の実態
8月の上旬に、「放射能防御プロジェクト」というサイトが発表したデータが話題になりました。
首都圏(東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県、茨城県)の約150ヶ所の6月頃の土壌のデータを測定し、まとめたものです。この発表は、いろいろなところで反響を呼んでいましたのでご存じの方も多いと思いますが、知らない方もいるかと思うので、ご紹介をしたいと思います。
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首都圏(東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県、茨城県)の約150ヶ所の6月頃の土壌のデータを測定し、まとめたものです。この発表は、いろいろなところで反響を呼んでいましたのでご存じの方も多いと思いますが、知らない方もいるかと思うので、ご紹介をしたいと思います。
この「放射能防御プロジェクト」がどういうものかについては、サイトの紹介欄を見ていただければわかりますが、Facebookの「福島第一原発を考えます」が母体となっているそうです。
ここでは、深さ5cmまでの土(砂場は15cm)を取って、それを厚労省の「緊急時における食品の放射性物質測定マニュアル」に準じてγ線スペクトルメーターによる核種測定を行っています。検出限界は1Bq/kgということです。なお、この検査費用15000円は全て土壌採取した市民の自腹だそうです。
I-131、Cs-134、Cs-137の測定を行い、I-131はほとんど不検出でしたので、Cs-134とCs-137の合計を求めています。それをチェルノブイリの時の分類に従って仮に分けたらどうなるか?という仮定の下にマップ上で色分けをしてくれています。説明をわかりやすくするために引用させてもらいますがそれが下記の図です。茶色、赤、オレンジはそれぞれチェルノブイリの時の第一区分(強制避難区域)、第二区分(一時移住区域)、第三区分(希望移住区域)を示します。黄色はその区分には入らないけれども、日本の法律による放射線管理区域を示します。この色分けであれば、緑と黒は問題なし。黄色以上はそこそこ汚染されているということを示します。


このデータの実際の数値を示した表はこのリンク先にあります。
見ていただけばわかるように、東京都においても、江戸川区臨海町の植え込みで3693Bq/kgと高い値を示していますし、都心に近い千代田区六番町でも739Bq/kgを示しています。
東京都は土壌調査を行っていないようなので、比較をすることができません。茨城県の例で見ると、茨城県は4月にコメの作付けが可能かどうかを確認するために土壌調査を行っていますので、そのデータ(○)と比較します。(私がつけた赤い●の位置は大ざっぱなものです。)

4月の時点の土壌調査が深さ5cmなのか、15cmなのかはっきりわからないので、そのまま比較していいのかどうかわかりません(もし4月の調査が深さ15cmで行っているならば、深さ5cm以上にはセシウムはほとんど浸透していませんので今回の5cmの深さよりも低く(1/3程度に)出るはずです)。ここでは同じ5cmと仮定します。
他の県のデータでも同じような比較ができると思いますが、茨城県を例にして今回のデータをどう読むべきか?という注意点です。
まず、上の図において、4月に茨城県が行った○のデータの確認ですが、最大でも496Bq/kgです。その最大値は龍ヶ崎市です。次は稲敷市の484Bq/kgです。それ以外は、多くの場所で100-200Bq/kgです。
今回の6月の結果●と4月の土壌調査の結果○が同じ市内あるいは近隣の市にあるデータで比較してみます。すると、同じ龍ヶ崎市では、4月の494Bq/kgが6月の687Bq/kgと1.5倍くらいの増加になっています。つくば市では、4月の154Bq/kgが、6月では、1492Bq/kgあるいは1881Bq/kgと10倍以上になっています。茨城県6ヶ所の測定で、最低でも674Bq/kgです。
私は、この違いはべつにおかしなことではないと考えています。まず第一に、同じ市内でもちょっと離れれば降り注いだ放射性物質の量は数倍~10倍違うということはあるということが判明していること。実際、今回の結果で、東京の文京区小石川でも、2500Bq/kgのところから1丁目離れただけで25Bq/kgと100倍も違っています。どちらも同じ植え込みということです。
次に、4月と6月では2ヶ月も経っています。2ヶ月の間に風も吹きますし、雨も降ります。それによって降下したセシウムの再循環が起こっています。このことは「8/18 福島原発から大量にまき散らされたセシウムなどの再循環の現況と課題」に詳細に書きましたので読んでいない方は是非お読みください。また、雨どいの下とか、吹きだまりとかにはセシウムがたまりやすいのでガイガーカウンターで測定しても高く出る、ということは広くいわれていることですので、これくらいの違いが出てきてもおかしくないと思います。
何を言いたいかというと、まずはこの「放射能防御プロジェクト」が行った調査結果が6月時点の現実であるということ。これを受け入れる必要があります。2ヶ月経った8月の現在は、また違った分布になっているかもしれません。
次に、行政が発表しているデータが低いのではないか?という疑問については、その可能性もありますが、かならずしもそうだとはいいきれないということです。すでに放射性セシウムの再循環が起こっていて、濃いところと薄いところが出てきています。今回測定しているのは、比較的濃く出るといわれているところが多いので、高めに出ても不思議ではありません。
行政が測定すると低く出るという可能性に関しては、記者会見のビデオの中で言及がありました。小学校の校庭のデータを4ヶ所測定しても、その中で一番低いデータだけを発表しているというのです。その真偽については私はコメントできませんが、可能性としてはありうると思います。また、先に書いたように、茨城県の農用地では深さ15cmの土を取っていればそれだけで1/3近くに数値は下がります。
なお、今回の調査でどうして植え込み、公園、庭など、どちらかというと高めに出るということがわかっている場所を選んでいるかというと、それは子供が行きやすい場所だからだそうです。子供の安全ということを考えればその選択は納得できます。
今回の「放射能防御プロジェクト」の発表を見て感じたのは、たとえば国内土壌汚染調査のページにあるような「東京都内でも、セシウムが6万ベクレル!」という数字にあわてることはありません。都内全てがこのような高い数値の訳ではないですから。
しかし、東京都においても降下したセシウムが雨や風で特定の場所に集積し、そのために一部の場所ではかなり高い数値が出ているのは間違いないようです。気をつけないといけないのは、たまった放射性セシウムなどが再び風によって舞い上がり、それを吸い込むことによる内部被曝をする可能性があるということです。
そういう観点では、東京都区部でも念のために風の強い日にはマスクをするといった自衛策をとる方が安心かもしれません。
チェルノブイリの区分との比較がありましたが、この区分の設定は何年か経ってCs-134の影響がほとんどなくなった時にCs-137の数値を元に設定されたものなので、単純にCs-134とCs-137の数値を合計したものを当てはめていいのかどうかには議論があるところと思います。チェルノブイリの時にどのような対策が行われたのか、あまり調べていませんので、この点についてはコメントを控えます。
ともかく、市民が力を合わせてこのような汚染調査マップを作ってくれたことには敬意を表したいと思います。本来はこれは東京都などの行政が行うべき仕事であったと思います。
ここでは、深さ5cmまでの土(砂場は15cm)を取って、それを厚労省の「緊急時における食品の放射性物質測定マニュアル」に準じてγ線スペクトルメーターによる核種測定を行っています。検出限界は1Bq/kgということです。なお、この検査費用15000円は全て土壌採取した市民の自腹だそうです。
I-131、Cs-134、Cs-137の測定を行い、I-131はほとんど不検出でしたので、Cs-134とCs-137の合計を求めています。それをチェルノブイリの時の分類に従って仮に分けたらどうなるか?という仮定の下にマップ上で色分けをしてくれています。説明をわかりやすくするために引用させてもらいますがそれが下記の図です。茶色、赤、オレンジはそれぞれチェルノブイリの時の第一区分(強制避難区域)、第二区分(一時移住区域)、第三区分(希望移住区域)を示します。黄色はその区分には入らないけれども、日本の法律による放射線管理区域を示します。この色分けであれば、緑と黒は問題なし。黄色以上はそこそこ汚染されているということを示します。


このデータの実際の数値を示した表はこのリンク先にあります。
見ていただけばわかるように、東京都においても、江戸川区臨海町の植え込みで3693Bq/kgと高い値を示していますし、都心に近い千代田区六番町でも739Bq/kgを示しています。
東京都は土壌調査を行っていないようなので、比較をすることができません。茨城県の例で見ると、茨城県は4月にコメの作付けが可能かどうかを確認するために土壌調査を行っていますので、そのデータ(○)と比較します。(私がつけた赤い●の位置は大ざっぱなものです。)

4月の時点の土壌調査が深さ5cmなのか、15cmなのかはっきりわからないので、そのまま比較していいのかどうかわかりません(もし4月の調査が深さ15cmで行っているならば、深さ5cm以上にはセシウムはほとんど浸透していませんので今回の5cmの深さよりも低く(1/3程度に)出るはずです)。ここでは同じ5cmと仮定します。
他の県のデータでも同じような比較ができると思いますが、茨城県を例にして今回のデータをどう読むべきか?という注意点です。
まず、上の図において、4月に茨城県が行った○のデータの確認ですが、最大でも496Bq/kgです。その最大値は龍ヶ崎市です。次は稲敷市の484Bq/kgです。それ以外は、多くの場所で100-200Bq/kgです。
今回の6月の結果●と4月の土壌調査の結果○が同じ市内あるいは近隣の市にあるデータで比較してみます。すると、同じ龍ヶ崎市では、4月の494Bq/kgが6月の687Bq/kgと1.5倍くらいの増加になっています。つくば市では、4月の154Bq/kgが、6月では、1492Bq/kgあるいは1881Bq/kgと10倍以上になっています。茨城県6ヶ所の測定で、最低でも674Bq/kgです。
私は、この違いはべつにおかしなことではないと考えています。まず第一に、同じ市内でもちょっと離れれば降り注いだ放射性物質の量は数倍~10倍違うということはあるということが判明していること。実際、今回の結果で、東京の文京区小石川でも、2500Bq/kgのところから1丁目離れただけで25Bq/kgと100倍も違っています。どちらも同じ植え込みということです。
次に、4月と6月では2ヶ月も経っています。2ヶ月の間に風も吹きますし、雨も降ります。それによって降下したセシウムの再循環が起こっています。このことは「8/18 福島原発から大量にまき散らされたセシウムなどの再循環の現況と課題」に詳細に書きましたので読んでいない方は是非お読みください。また、雨どいの下とか、吹きだまりとかにはセシウムがたまりやすいのでガイガーカウンターで測定しても高く出る、ということは広くいわれていることですので、これくらいの違いが出てきてもおかしくないと思います。
何を言いたいかというと、まずはこの「放射能防御プロジェクト」が行った調査結果が6月時点の現実であるということ。これを受け入れる必要があります。2ヶ月経った8月の現在は、また違った分布になっているかもしれません。
次に、行政が発表しているデータが低いのではないか?という疑問については、その可能性もありますが、かならずしもそうだとはいいきれないということです。すでに放射性セシウムの再循環が起こっていて、濃いところと薄いところが出てきています。今回測定しているのは、比較的濃く出るといわれているところが多いので、高めに出ても不思議ではありません。
行政が測定すると低く出るという可能性に関しては、記者会見のビデオの中で言及がありました。小学校の校庭のデータを4ヶ所測定しても、その中で一番低いデータだけを発表しているというのです。その真偽については私はコメントできませんが、可能性としてはありうると思います。また、先に書いたように、茨城県の農用地では深さ15cmの土を取っていればそれだけで1/3近くに数値は下がります。
なお、今回の調査でどうして植え込み、公園、庭など、どちらかというと高めに出るということがわかっている場所を選んでいるかというと、それは子供が行きやすい場所だからだそうです。子供の安全ということを考えればその選択は納得できます。
今回の「放射能防御プロジェクト」の発表を見て感じたのは、たとえば国内土壌汚染調査のページにあるような「東京都内でも、セシウムが6万ベクレル!」という数字にあわてることはありません。都内全てがこのような高い数値の訳ではないですから。
しかし、東京都においても降下したセシウムが雨や風で特定の場所に集積し、そのために一部の場所ではかなり高い数値が出ているのは間違いないようです。気をつけないといけないのは、たまった放射性セシウムなどが再び風によって舞い上がり、それを吸い込むことによる内部被曝をする可能性があるということです。
そういう観点では、東京都区部でも念のために風の強い日にはマスクをするといった自衛策をとる方が安心かもしれません。
チェルノブイリの区分との比較がありましたが、この区分の設定は何年か経ってCs-134の影響がほとんどなくなった時にCs-137の数値を元に設定されたものなので、単純にCs-134とCs-137の数値を合計したものを当てはめていいのかどうかには議論があるところと思います。チェルノブイリの時にどのような対策が行われたのか、あまり調べていませんので、この点についてはコメントを控えます。
ともかく、市民が力を合わせてこのような汚染調査マップを作ってくれたことには敬意を表したいと思います。本来はこれは東京都などの行政が行うべき仕事であったと思います。
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