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8/31 水産庁が発表した魚のストロンチウムのデータ:初めてマダラから検出

 
8/30、水産庁は魚のストロンチウムのデータを公開しました。これは前回(6月)の発表に続いて2回目です。初めて魚(マダラ)からストロンチウム(Sr)が検出されました。私のブログでの紹介は、「6/28 Srのデータがいくつかでてきたのでご紹介します。」以来です。


水産庁は、独立行政法人 水産総合研究センターに水産物のストロンチウムの測定の実施を依頼しました。その結果が今回発表されたものです。

マダラ、アカガレイ、カタクチイワシ、マイワシ、ゴマサバについてデータが発表されています。それぞれ、下記の図にあるように、10-15kmの沖合で捕られた魚です。

8/31水産庁Sr

採取日Sr-89Sr-90セシウム
マダラ4月21日不検出0.0334
アカガレイ4月22日不検出不検出3.3
カタクチイワシ5月26日不検出不検出17.2
マイワシ6月22日不検出不検出19.2
ゴマサバ7月1日不検出不検出4.5
検出下限値は、Sr-89:0.03~0.04、Sr-90:0.03でした。また、ストロンチウムについては魚体丸ごとの測定です。ヨウ素については不検出なので省略しています。

マダラで0.03Bq/kgと検出下限値ギリギリで検出されています。このマダラの場合、放射性セシウム(Cs-134とCs-137の合計)は34Bq/kgでしたから、Sr/Cs=0.001前後です。全ての魚でほぼ同じくらいのSr/Cs比であると考えれば、今回測定した魚のうちもっとも放射性セシウム量が多いマダラでしか検出されなかったのも無理はないかもしれません。

『なお、文部科学省「環境放射線データーベース」による2000年から東京電力福島原子力発電所事故発生前の2010年まで間の我が国周辺海域の魚類中のストロンチウム90の濃度幅は、検出下限値以下~0.094 Bq/kgの範囲でした。』という記述もありました。ほとんどストロンチウムは出ていないのだと主張したいのでしょう。

今回のデータを見て、水産庁なりに工夫をしていることはわかります。放射性セシウムも、3.3Bq/kgでも検出していますので、文科省が海水で行っているような高い検出限界ではありません。

データの公開方法についても、これは前回から変わっていませんが、採取日や魚体丸ごとを測定した(注: 放射性セシウム及びヨウ素の測定は筋肉部で行った)などということをしっかりと公開しています。4月の頃のほとんどセシウムが蓄積していない魚を用いても意味がない、という指摘についても、6月や7月の魚を用いています。ただ、結果的に前回の発表に比べて放射性セシウム量が少なくなっているというのは、測定する魚種と時期を間違えています。

このマダラの1検体のデータだけでは、一般的に魚介類でのSr/Cs比がどれくらいになるのかを見いだすことは難しいです。

当初の予想では、チェルノブイリの例から、Sr/Cs比は0.01~0.1程度という予想がありました。ただ、その後のデータでは、土壌中ではSr/Cs比は0.001以下が多いのですが、海水中では0.1を超える場合もあり、どの数値が魚介類に反映されるのかがはっきりしていませんでした。

水産庁は、できるだけ低いセシウムの数値の魚でストロンチウムを測定して不検出として、安心させたいのでしょうが、それでは意味がありません。ストロンチウムが10Bq/kg以下だった4月のカレイよりも、セシウムの高い(100Bq/kgを超える程度の)現在のカレイで再度測定して欲しいです。できれば、暫定基準値越えも出ているような、ヒラメ、アイナメ、メバルなどで測定をして欲しいです。セシウムの量が多い魚で、セシウムについても魚体丸ごとの測定を行い、ストロンチウムの量を出してもらえれば、Sr/Cs比がどれくらいなのかだいたい予想できます。それによって、セシウム量は最大でこれくらいだからストロンチウム量も最大でもこれくらいだろう、という見積もりができるのです。セシウム量が少ない魚でストロンチウムが不検出でした、というデータを繰り返してもあまり意味はありません。

水産庁へのお願いとしては、もう一度放射性セシウム量の多い魚を選んでストロンチウムを測定してください。測定が大変なのは承知していますので時間はかかってもいいので、Sr/Cs比が算出できるような魚を選んでください。前回はこの魚をやったから次はこれ、というような発想で魚種を選択するのは止めてください。

放射性セシウム量が500Bq/kg程度の魚で測定しても、Srが不検出であれば、Srはほとんど魚には移行しない、と考えてもいいと思いますが、これまでに測定している魚のセシウム量では不十分です。

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コメント

Re: 脳外科病院で大盛り食事と節電地域の夢庵にて

智太郎さん

暫定基準値は見直されてもっと小さい値になるでしょう。今年中に見直されるのかどうかわかりませんが。食品安全委員会の答申を受けて、厚労省で検討していることと思います。

Re: 濃縮前かあるいは

Slight_Brightさん

お褒めの言葉、ありがとうございます。ニュースはその日のうちに、を目指しているのですがなかなかそうも行かないのが実態です。

いつもツイッターでは参考にさせてもらっています。togetterのまとめ、初めて読みましたが、4月はじめの段階であれだけのまとめをしていたのはすごいですね。お時間があれば、ストロンチウムの濃縮のメカニズムも調べていただければありがたいです(^o^)。でも、誰かすでにまとめているのではないですかね?

脳外科病院で大盛り食事と節電地域の夢庵にて

報道による穀類の日本の放射線許容量暫定基準値では、放射性ヨウ素:未設定 で、放射性セシウム:500 Bq/kg で、ウラン:100 Bq/kg で、プルトニウム及び超ウラン元素 :10Bq/kg ですが、【チェルノブイリ基準:40ベクレル】で危険。絶対に食べてはいけない。とでしたが、【日本基準:500ベクレル】 では、ただちに、健康に影響を及ぼす値ではない。という報道で国民はマスメディアと組んだ政府に騙されている気がしてなりません。

濃縮前かあるいは

毎度の事アップデートのはやさに感心する事しきりです。

Srに関しては勝川先生も指摘する様に、取り込みの傾向の高い福島近海の(昆布類でしたっけ?)ものでと言うのももっともなのと、生物濃縮が進んだ場合筋肉と骨で60倍違うことからも、その時期や測定方法の公開など課題は多いですね。

http://katukawa.com/?p=4422

下記まとめで突っ込まれているので、ストロンチウムの濃縮のメカニズムも調べんとアカンかなぁ(泣)。

http://togetter.com/li/121700

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Author:TSOKDBA
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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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