9/9 半減期8日のヨウ素131が奥州市で8月に急に検出されたわけは?
昨日のツイッターではヨウ素の話題で持ちきりだったようです。私は昨日はあまりフォローしきれなかったのですが、今日になっても続いているので、何がネットでは言われていて、真実は何なのか?わかる範囲で調べてみました。
まずはこの記事が、ネットで何が問題になっているのかを理解するのにわかりやすいと思います。この記事がよくツイートされています。
「東京で大異変…ヨウ素が急上昇!何が起きているのか」
簡単に説明すると、8月になって、下水汚泥から放射性ヨウ素が検出されるようになった、それまでは不検出なのに、最近検出されたということは、また新たに放射能が検出されたのではないか?という疑惑を生んでいる、真実は何なのだろうか?ということです。
東大の早野先生は、これは甲状腺治療に使われている医療用のヨウ素131であるとして、togetterというツイッターのまとめを紹介しています→http://togetter.com/li/156686。
そして、そういう質問が多くてうんざりしたのか、昨日は「(もうヨウ素の話はおしまい. )」、そして今日になってもツイッターでのヨウ素の話題が止まらないので「(あ~,もう ヨウ素はよそうよ )」というコメントでした。
原発からかなり離れたところで検出されるヨウ素は、医療用のヨウ素の可能性が高い、特にI-131のみが検出される場合はまず間違いなく医療用ヨウ素131が原因だといわれています。例えばこの長崎市の例(8/29)がわかりやすいと思います。

中部下水処理場や西部下水処理場では、放射性ヨウ素(I-131)のみが検出されています。一方で、セシウムは検出限界以下です。もしこれが福島原発由来ならば、セシウムもそれなりに検出されるはずです。でもそれがないということは、明らかに由来が別であるということを示しています。医療用に使われるヨウ素は、いずれは尿になって出て行くので、それが下水に流れ込んでいるということだと思います。
次に、東京の例を見てみましょう。最初に紹介したZAKZAKというサイトでは、東京の下水処理場の例を出して、8/15-16は東部スラッジセンターや清瀬水再生センターではI-131が急上昇した、という例を出しています。
確かに8/15-16のデータ(これは8/26に発表されたものです)だけをのせて先ほどの急上昇した、というコメントを出すと、なるほど、と思ってしまいます。
では、本当にそうなのか?東京都下水道局はHPに5月から情報を定期的に公開しています。I-131だけでなくCs-134、Cs-137のデータがありますが、それを5月の分から本日発表されたデータまで表にまとめてみました。

上からI-131、Cs-134、Cs-137の順です。右から2番目の列が先ほどのZAKZAKに掲載されていたデータです。ここではセシウムのデータについては解析せず、ヨウ素131についてのみ見ていきましょう。
まず東部スラッジセンターです。確かに8/1-2の時が28Bq/kgだったのに、8/15-16では150Bq/kgと急上昇しています。しかしその前も見てみると、6月に100Bq/kgあって、だんだんと下がってきていて、また上がっています。清瀬水再生センターも同じような傾向です。
でも、もしこれが福島原発由来ならば、他の下水処理場でも同じような傾向になるはずです。しかし、東部スラッジセンター(江東区)の近くの葛西水再生センター(江戸川区)やみやぎ水再生センター(足立区)ではこのような傾向は見えません。葛西水再生センターは8/15-16にむしろ下がって不検出になっています。
各下水処理場でアップダウンがあるのですが、その時期は全くバラバラで、特定の二つのデータだけを抜き出して「上がっている」ということを主張するのはおかしいということがわかります。これもやはり医療用のヨウ素131が下水に流れ込んだものを検出している、とみるのが正しいと思います。
最後に、ZAKZAKに出ていた岩手県奥州市のデータです。

これは確かにこれまでのデータとは違います。8月11日までは不検出だったのが、8月25日にいきなり2300Bq/kgもI-131が検出されています。このデータだけを見たら大騒ぎになるのも無理はないと思います。でも、よく見るとセシウムはほとんど変わっていません。原発由来ならばヨウ素がこれだけ上がればセシウムも上がるはずです。
奥州市のデータについては、他のところが医療用だからこれもそうだ、と言い切っていいものかどうか自信がありませんでした。原発由来ならば、岩手県の奥州市以外でも同様のことが起こっているはずです。そこで、岩手県、それから福島県より北の東北地方のデータを確認しました。
秋田県 流域下水道汚泥等の放射性物質の調査結果について 6月と8月の2回の測定でI-131は不検出
宮城県 下水汚泥の放射能・下水処理場内の空間線量率 6月と8月の2回の測定でI-131は不検出
山形県 下水汚泥中の放射性物質の測定結果について 7/6と8/24でそれぞれI-131を検出。特に8月になって急に増えているという傾向はなし。
岩手県 下水汚泥中の放射性物質の測定結果について 6月に不検出
同じ岩手県の中ではどうかというと、下記の通りです。
盛岡市 一般廃棄物焼却施設の焼却灰と浄水・下水汚泥の放射能測定結果をお知らせします。 8/15 I-131は不検出
二戸市 二戸市内における放射能測定結果について 7/1 I-131は不検出
北上市 北上工業団地終末処理場の放射能測定分析結果について 7/14 7/28 8/18 I-131は不検出
住田町 放射線量測定結果について 8/11 I-131は不検出
これだけデータを並べて見ると、同じ岩手県で検出されているのは奥州市だけです。これはやはり奥州市のデータも医療用ヨウ素131を検出していると判断するのが一番妥当だと思います。おそらくこの付近の病院で8月になってから放射性ヨウ素の治療を受けた人がいるのでしょう。
しつこいようですが、それでも信じない人のために、山梨県のデータもご紹介します。6月にいきなりI-131の値が跳ね上がっていますよね。そして8月にかけて下がっています。おそらく奥州市もこれと同じパターンが2ヶ月遅れで来ただけでしょう。
「東京で大異変…ヨウ素が急上昇!何が起きているのか」
簡単に説明すると、8月になって、下水汚泥から放射性ヨウ素が検出されるようになった、それまでは不検出なのに、最近検出されたということは、また新たに放射能が検出されたのではないか?という疑惑を生んでいる、真実は何なのだろうか?ということです。
東大の早野先生は、これは甲状腺治療に使われている医療用のヨウ素131であるとして、togetterというツイッターのまとめを紹介しています→http://togetter.com/li/156686。
そして、そういう質問が多くてうんざりしたのか、昨日は「(もうヨウ素の話はおしまい. )」、そして今日になってもツイッターでのヨウ素の話題が止まらないので「(あ~,もう ヨウ素はよそうよ )」というコメントでした。
原発からかなり離れたところで検出されるヨウ素は、医療用のヨウ素の可能性が高い、特にI-131のみが検出される場合はまず間違いなく医療用ヨウ素131が原因だといわれています。例えばこの長崎市の例(8/29)がわかりやすいと思います。

中部下水処理場や西部下水処理場では、放射性ヨウ素(I-131)のみが検出されています。一方で、セシウムは検出限界以下です。もしこれが福島原発由来ならば、セシウムもそれなりに検出されるはずです。でもそれがないということは、明らかに由来が別であるということを示しています。医療用に使われるヨウ素は、いずれは尿になって出て行くので、それが下水に流れ込んでいるということだと思います。
次に、東京の例を見てみましょう。最初に紹介したZAKZAKというサイトでは、東京の下水処理場の例を出して、8/15-16は東部スラッジセンターや清瀬水再生センターではI-131が急上昇した、という例を出しています。
確かに8/15-16のデータ(これは8/26に発表されたものです)だけをのせて先ほどの急上昇した、というコメントを出すと、なるほど、と思ってしまいます。
では、本当にそうなのか?東京都下水道局はHPに5月から情報を定期的に公開しています。I-131だけでなくCs-134、Cs-137のデータがありますが、それを5月の分から本日発表されたデータまで表にまとめてみました。

上からI-131、Cs-134、Cs-137の順です。右から2番目の列が先ほどのZAKZAKに掲載されていたデータです。ここではセシウムのデータについては解析せず、ヨウ素131についてのみ見ていきましょう。
まず東部スラッジセンターです。確かに8/1-2の時が28Bq/kgだったのに、8/15-16では150Bq/kgと急上昇しています。しかしその前も見てみると、6月に100Bq/kgあって、だんだんと下がってきていて、また上がっています。清瀬水再生センターも同じような傾向です。
でも、もしこれが福島原発由来ならば、他の下水処理場でも同じような傾向になるはずです。しかし、東部スラッジセンター(江東区)の近くの葛西水再生センター(江戸川区)やみやぎ水再生センター(足立区)ではこのような傾向は見えません。葛西水再生センターは8/15-16にむしろ下がって不検出になっています。
各下水処理場でアップダウンがあるのですが、その時期は全くバラバラで、特定の二つのデータだけを抜き出して「上がっている」ということを主張するのはおかしいということがわかります。これもやはり医療用のヨウ素131が下水に流れ込んだものを検出している、とみるのが正しいと思います。
最後に、ZAKZAKに出ていた岩手県奥州市のデータです。

これは確かにこれまでのデータとは違います。8月11日までは不検出だったのが、8月25日にいきなり2300Bq/kgもI-131が検出されています。このデータだけを見たら大騒ぎになるのも無理はないと思います。でも、よく見るとセシウムはほとんど変わっていません。原発由来ならばヨウ素がこれだけ上がればセシウムも上がるはずです。
奥州市のデータについては、他のところが医療用だからこれもそうだ、と言い切っていいものかどうか自信がありませんでした。原発由来ならば、岩手県の奥州市以外でも同様のことが起こっているはずです。そこで、岩手県、それから福島県より北の東北地方のデータを確認しました。
秋田県 流域下水道汚泥等の放射性物質の調査結果について 6月と8月の2回の測定でI-131は不検出
宮城県 下水汚泥の放射能・下水処理場内の空間線量率 6月と8月の2回の測定でI-131は不検出
山形県 下水汚泥中の放射性物質の測定結果について 7/6と8/24でそれぞれI-131を検出。特に8月になって急に増えているという傾向はなし。
岩手県 下水汚泥中の放射性物質の測定結果について 6月に不検出
同じ岩手県の中ではどうかというと、下記の通りです。
盛岡市 一般廃棄物焼却施設の焼却灰と浄水・下水汚泥の放射能測定結果をお知らせします。 8/15 I-131は不検出
二戸市 二戸市内における放射能測定結果について 7/1 I-131は不検出
北上市 北上工業団地終末処理場の放射能測定分析結果について 7/14 7/28 8/18 I-131は不検出
住田町 放射線量測定結果について 8/11 I-131は不検出
これだけデータを並べて見ると、同じ岩手県で検出されているのは奥州市だけです。これはやはり奥州市のデータも医療用ヨウ素131を検出していると判断するのが一番妥当だと思います。おそらくこの付近の病院で8月になってから放射性ヨウ素の治療を受けた人がいるのでしょう。
しつこいようですが、それでも信じない人のために、山梨県のデータもご紹介します。6月にいきなりI-131の値が跳ね上がっていますよね。そして8月にかけて下がっています。おそらく奥州市もこれと同じパターンが2ヶ月遅れで来ただけでしょう。
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