9/15 文科省が発表した森林の放射性セシウムの蓄積-林の中の雨は外の100倍のセシウム!
9/14、文科省は「文部科学省による放射性物質の分布状況等に関する調査研究(森林内における放射性物質の移行調査)の結果について」を発表しました。asahi.comにも概略は載っています。
これは、筑波大学が中心になって実施したもので、針葉樹林、広葉樹林での放射性セシウムの分布を調べたものです。
放射性セシウム以外の結果については後日報告されるようです。
調査は、福島県川俣町の広葉樹林、針葉樹林(壮齢林:樹齢40-50年)およびスギ若齢林(樹齢18年)の3地点(下図)を選んで行いました。

この地点において、いくつかの実験を行っています。
(1)現状における森林内の葉に含まれる放射性セシウムの濃度の違いを確認するため、現在生育している葉(生葉)、及び落葉する前の枯葉(枯葉)、並びに落葉を採取し、乾燥後、破砕した上で、乾燥重量あたりの放射性セシウムの濃度を測定しました。
(2)森林内の地表面における放射性セシウムの蓄積状況を確認するため、森林内土壌を深度別に採取し、乾燥後、乾燥重量あたりの放射性セシウムの深度別の濃度を測定しました。
(3)森林内外で降下する雨に含まれる放射性セシウムの濃度の違いを確認するため、森林外の開けた地域に降下する雨(林外雨)及び森林内の地表面に降下する雨(林内雨)について週1回程度採取し、濾過した上で、放射性セシウムの濃度を測定しました。また、森林内においては、木の幹を伝って流れる雨(樹幹流)に含まれる放射性セシウムの濃度も測定しました。
その他、高さ別の環境放射線濃度の測定などの実験も行っているのですが、今日は結果がわかりやすいものだけをご紹介します。詳細を知りたい方はぜひ元のファイルを読んでみてください。
(1)針葉樹と広葉樹、生葉と枯葉の比較
まず、生葉、枯葉、落葉の比較です。字が小さいので、元のファイルを見てもらった方がわかりやすいと思います。

この表からわかる結果です。
・スギ林の生葉の放射性セシウムの濃度(Cs-137で約45-50Bq/kg)は、広葉樹混合樹林(Cs-137で約15Bq/kg)に比べて平均3倍程度、高い傾向にあることが確認された。
・スギ壮齢林の枯葉の放射性セシウムの濃度(Cs-137で約119Bq/kg)は、スギ若齢林(Cs-137で約45Bq/kg)に比べて平均2倍程度となっており、高い傾向にあることが確認された。なお、スギ若齢林は、生葉と枯葉で濃度に大きな差はなかった。
・リター層上部に堆積した落葉に含まれる放射性セシウムの濃度について、広葉樹混合林及びスギ林について比較した結果、広葉樹混合林(Cs-137で約413Bq/kg)は、スギ林(Cs-137で約77-99Bq/kg)に比べて、平均3~6倍程度となっており、高い傾向にあることが確認された。
スギ林の生葉のセシウム濃度が広葉樹の生葉の濃度の3倍というのはちょっと意外だったのですが、放射性セシウムが大量に降下したのは3月中旬から下旬です。スギ林は常緑樹なので3月でも葉が出ていましたが、広葉樹はまだ葉があまり出ていなかったために、濃度が低いと考えることができます。
これに関連して、最後に記載のある落葉については、逆に広葉樹の方がスギ林の3-6倍の濃度でした。3月にセシウムが大量に降下した際には広葉樹はまだ葉が生育途中で面積も小さく、ほとんどが地表にある落葉に付着したと考えることができます。
また、生葉と枯葉では枯葉の方が高かった、あるいは同程度であったことから、これは根から吸い上げたものではなく、葉に付着したものであるという考察をしています。今年に限っては、お茶の例もありますし、付着したものがかなりあると思います。
落葉広葉樹林であれば、この葉が秋になると全部落ちるわけですから、落葉にかなり放射性セシウムは移行し、来年の生葉はもっと少なくなるのだと思います。
あまりいろいろと比較してもわからなくなるので、簡単な比較データの紹介のみにとどめておきます。
(2)土壌のどれくらいの深さまで放射性セシウムが蓄積しているか?

Cs-134とCs-137はほぼ同じようなデータなので、Cs-137だけで話をします。この図に出てくるリター層というのは、森林において地表面に落ちたままで、まだ土壌生物によってほとんど分解されていない葉・枝・果実・樹皮・倒木などが堆積している層の事をいうそうです。
広葉樹林の場合、リター層に90%の放射性セシウムがとどまっていました。スギ林でも、若齢林では90%がリター層にありましたが、壮齢林では48%にとどまり、1-2cmの深さにまでセシウムは移行していました。
それでも、昨日ご紹介した「9/14 農水省が発表した農地土壌の除染技術評価-ヒマワリは使えない!」にもあった通り、地表から5cmの深さまでにほとんどの放射性セシウムはとどまっていました。これは水田などでも同じデータが出ていますので、今年の現時点では放射性セシウムは5cm程度の深さまでに止まっているということが改めて確認されたということです。
(3)森林内外で降下する雨に含まれる放射性セシウムの濃度の違い
森林内外で降下する雨に含まれる放射性セシウムの濃度の違いを確認するため、森林内外の数点に採取器(サンプラー)を設置し、1週間に1 回雨を採取した上で、ゲルマニウム半導体検出器で放射性セシウムの濃度を測定しました。
林の外(林外)としては、下記の2地点を選択しました。

その結果、林外雨に含まれる放射性セシウムの濃度はCs-137で平均0.4Bq/kg(Cs-134とCs-137を合わせて0.76Bq/kg)程度でした。一方で、森林内の林内雨や樹幹流(木の幹を伝って流れる雨)中のCs-137は、林内雨で約42.8Bq/kg、樹幹流で約26.3Bq/kgと、林の外の50~100倍の濃度があることがわかりました。下記に示すのは広葉樹の林内雨のデータです。スギ林はさらに高いです(ここでは省略しました)。

これは明らかに、雨によって葉や幹に付いていた放射性セシウムが洗い流されているために林の中では雨が降った時の放射性セシウム濃度が高くなっていることを示しています。しかし、林の外ではCs-137が0.4Bq/kgなのが、林の中では約40Bq/kgと100倍近く高くなるというのは驚きですね。ピクニックで山登りをしていて雨に降られたら危険だということですね。また、林の外でも雨が降ったら0.4Bq/kgになるというのも川俣町と原発に近いところだからだと思います。他の所では雨で放射性セシウムが検出されていないと思います。
農水省や文科省の調査で、実態が少しずつわかってきました。この結果を除染に活かす、などというコメントもあるようですが、除染をやるならば森林よりも都市が先だと思うので、当面は森林で汚染がひどいところには近づけないようにしておくしかないと思います。また、除染といっても所詮は放射能の移動にすぎないので、除染作業によって拡散させないようにすることと、最終的にどこに持っていくのかを政治の力で決めることが先決だと思います。

この地点において、いくつかの実験を行っています。
(1)現状における森林内の葉に含まれる放射性セシウムの濃度の違いを確認するため、現在生育している葉(生葉)、及び落葉する前の枯葉(枯葉)、並びに落葉を採取し、乾燥後、破砕した上で、乾燥重量あたりの放射性セシウムの濃度を測定しました。
(2)森林内の地表面における放射性セシウムの蓄積状況を確認するため、森林内土壌を深度別に採取し、乾燥後、乾燥重量あたりの放射性セシウムの深度別の濃度を測定しました。
(3)森林内外で降下する雨に含まれる放射性セシウムの濃度の違いを確認するため、森林外の開けた地域に降下する雨(林外雨)及び森林内の地表面に降下する雨(林内雨)について週1回程度採取し、濾過した上で、放射性セシウムの濃度を測定しました。また、森林内においては、木の幹を伝って流れる雨(樹幹流)に含まれる放射性セシウムの濃度も測定しました。
その他、高さ別の環境放射線濃度の測定などの実験も行っているのですが、今日は結果がわかりやすいものだけをご紹介します。詳細を知りたい方はぜひ元のファイルを読んでみてください。
(1)針葉樹と広葉樹、生葉と枯葉の比較
まず、生葉、枯葉、落葉の比較です。字が小さいので、元のファイルを見てもらった方がわかりやすいと思います。

この表からわかる結果です。
・スギ林の生葉の放射性セシウムの濃度(Cs-137で約45-50Bq/kg)は、広葉樹混合樹林(Cs-137で約15Bq/kg)に比べて平均3倍程度、高い傾向にあることが確認された。
・スギ壮齢林の枯葉の放射性セシウムの濃度(Cs-137で約119Bq/kg)は、スギ若齢林(Cs-137で約45Bq/kg)に比べて平均2倍程度となっており、高い傾向にあることが確認された。なお、スギ若齢林は、生葉と枯葉で濃度に大きな差はなかった。
・リター層上部に堆積した落葉に含まれる放射性セシウムの濃度について、広葉樹混合林及びスギ林について比較した結果、広葉樹混合林(Cs-137で約413Bq/kg)は、スギ林(Cs-137で約77-99Bq/kg)に比べて、平均3~6倍程度となっており、高い傾向にあることが確認された。
スギ林の生葉のセシウム濃度が広葉樹の生葉の濃度の3倍というのはちょっと意外だったのですが、放射性セシウムが大量に降下したのは3月中旬から下旬です。スギ林は常緑樹なので3月でも葉が出ていましたが、広葉樹はまだ葉があまり出ていなかったために、濃度が低いと考えることができます。
これに関連して、最後に記載のある落葉については、逆に広葉樹の方がスギ林の3-6倍の濃度でした。3月にセシウムが大量に降下した際には広葉樹はまだ葉が生育途中で面積も小さく、ほとんどが地表にある落葉に付着したと考えることができます。
また、生葉と枯葉では枯葉の方が高かった、あるいは同程度であったことから、これは根から吸い上げたものではなく、葉に付着したものであるという考察をしています。今年に限っては、お茶の例もありますし、付着したものがかなりあると思います。
落葉広葉樹林であれば、この葉が秋になると全部落ちるわけですから、落葉にかなり放射性セシウムは移行し、来年の生葉はもっと少なくなるのだと思います。
あまりいろいろと比較してもわからなくなるので、簡単な比較データの紹介のみにとどめておきます。
(2)土壌のどれくらいの深さまで放射性セシウムが蓄積しているか?

Cs-134とCs-137はほぼ同じようなデータなので、Cs-137だけで話をします。この図に出てくるリター層というのは、森林において地表面に落ちたままで、まだ土壌生物によってほとんど分解されていない葉・枝・果実・樹皮・倒木などが堆積している層の事をいうそうです。
広葉樹林の場合、リター層に90%の放射性セシウムがとどまっていました。スギ林でも、若齢林では90%がリター層にありましたが、壮齢林では48%にとどまり、1-2cmの深さにまでセシウムは移行していました。
それでも、昨日ご紹介した「9/14 農水省が発表した農地土壌の除染技術評価-ヒマワリは使えない!」にもあった通り、地表から5cmの深さまでにほとんどの放射性セシウムはとどまっていました。これは水田などでも同じデータが出ていますので、今年の現時点では放射性セシウムは5cm程度の深さまでに止まっているということが改めて確認されたということです。
(3)森林内外で降下する雨に含まれる放射性セシウムの濃度の違い
森林内外で降下する雨に含まれる放射性セシウムの濃度の違いを確認するため、森林内外の数点に採取器(サンプラー)を設置し、1週間に1 回雨を採取した上で、ゲルマニウム半導体検出器で放射性セシウムの濃度を測定しました。
林の外(林外)としては、下記の2地点を選択しました。

その結果、林外雨に含まれる放射性セシウムの濃度はCs-137で平均0.4Bq/kg(Cs-134とCs-137を合わせて0.76Bq/kg)程度でした。一方で、森林内の林内雨や樹幹流(木の幹を伝って流れる雨)中のCs-137は、林内雨で約42.8Bq/kg、樹幹流で約26.3Bq/kgと、林の外の50~100倍の濃度があることがわかりました。下記に示すのは広葉樹の林内雨のデータです。スギ林はさらに高いです(ここでは省略しました)。

これは明らかに、雨によって葉や幹に付いていた放射性セシウムが洗い流されているために林の中では雨が降った時の放射性セシウム濃度が高くなっていることを示しています。しかし、林の外ではCs-137が0.4Bq/kgなのが、林の中では約40Bq/kgと100倍近く高くなるというのは驚きですね。ピクニックで山登りをしていて雨に降られたら危険だということですね。また、林の外でも雨が降ったら0.4Bq/kgになるというのも川俣町と原発に近いところだからだと思います。他の所では雨で放射性セシウムが検出されていないと思います。
農水省や文科省の調査で、実態が少しずつわかってきました。この結果を除染に活かす、などというコメントもあるようですが、除染をやるならば森林よりも都市が先だと思うので、当面は森林で汚染がひどいところには近づけないようにしておくしかないと思います。また、除染といっても所詮は放射能の移動にすぎないので、除染作業によって拡散させないようにすることと、最終的にどこに持っていくのかを政治の力で決めることが先決だと思います。
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