10/1 福島県の「定時降下物」データの修正がとんでもないうわさに・・・
9/26、文科省のHPにおいて、6月から8月の定時降下物のデータが大幅に修正されました。
このデータの修正に関する文科省の発表にいち早く気がついたのは、いつものごとく東大の早野先生です。この方の情報収集・発信能力にはいつも驚かされます。
結果は、「なんだ、こういう事だったのか」というレベルなのですが、ネットの中ではとんでもない話に変わってしまっていたのです。情報伝達という意味で興味深い事例なので取り上げます。
この話はtogetterというまとめサイトに「水道水ジャナクテ定時降下物ダヨ」としてまとめられています。長いので、お時間のある人は全部読んでみたらいいと思いますが、お時間のない人は「残りを読む」の前まで読めば、何が起こったのかはわかります。定時降下物の測定と、その修正に関する話が一つ目の話題です。「残りを読む」以降は、ネット上での情報拡散という別の話題になります。
1.「定時降下物」って何?
そもそも、定時降下物って何なの、という人が多いのだと思います。空間線量率(μSv/h)は新聞にも毎日載るくらいに有名ですし、上水(蛇口水)(Bq/kg)も3月に水道水騒ぎで有名になりましたので、認知度はかなり高いと思います。でも、実は定時降下物(MBq/km2)で大騒ぎになったことはないので、これに関しては意外と知らない人がいるのかもしれません。
定時降下物の理解ができていれば、2番目の話題である間違った情報拡散にはならなかったと思いますので、ここで正しい知識を持っていただければと思います。
定時降下物の測定とは、雨やちりの中に含まれている放射性物質の量を測定することです。文科省のHPには各都道府県の毎日の降下量が発表されています。降下物は福島県以外では6月以降はほとんど測定されていません。
測定ですが、降下物ですから上から降ってきます。そこで、サンプル収集に用いる容器もおけのような間口の広い容器になります。

大阪府立公衆衛生研究所が使用している容器(大阪府立公衆衛生研究所HPより)

(北海道立衛生研究所のHPより)
上の図のように、直径30cm(毎日用)や直径80cm(月間用)の円筒形の金属容器に雨やちりをためて、それをゲルマニウム半導体検出器で測定するのです。測定の方法は、大阪府立公衆衛生研究所のHPに報告書がありましたので、それを見ると、月間の場合は「水盤(表面積 5000 cm2)に1ヶ月間に降下した雨水およびちりを採取し、採取試料全量を上水自動濃縮装置(柴田理化器械製)を用いて蒸発濃縮した。濃縮物を蒸発皿に移して蒸発乾固した後、残留物をU-8 容器に移し測定用試料とした。」とあります。
つまり、集めた雨やちりを全量回収して測定機で測定しているわけです。毎日の場合も基本的には同じだと思いますが、雨の場合にどうするのか、というところはひょっとしたら複数の方法(乾固させて一定量に溶かすか、体積を測っておいて一部を測定して何倍かするか)があるのかもしれません。
2.今回の上方修正はなぜ起こった?
文科省の発表によると、都道府県別環境放射能水準調査の測定結果(福島県)のデータが間違っていたということで、福島県において分析試料の単位換算及び測定用試料のサンプリング方法を再検証した結果に基づき、以下のとおり測定結果が修正されました。
ここで皆さんにご理解いただきたいのは、以下の2点です。
・修正されたのは福島県の環境放射線水準調査の結果であること。
・今回は、定時降下物の測定データに関する修正である(水道水とは何の関係もない)こと。
それでは、データの修正について確認していきます。

これを見ていただくとわかるように、例えば6/11~6/12のデータでは、Cs-134:6.6MBq/Km2=Bq/m2、Cs-137:8.0MBq/km2=Bq/m2だったのが、修正後は、それぞれ、160Bq/m2、200Bq/m2になっていて、24-25倍に上方修正されています。それ以外の日も、10倍~20倍に修正されています。
この修正だけをみると、「いったい何が起こった?」「意図的な隠蔽があったのか?」と誰もが思いますよね。日によって何倍になったかという倍率も異なります。
で、その真相は?というと、「水道水ジャナクテ定時降下物ダヨ」で調べてくれた方(@fukuwhitecatさん)の説明によると(ツイッターより引用)以下のような経緯でした。非常に初歩的な間違いですね。
(1)福島県では某センターでこれまで定時降下物検査をしてきた、とのこと。方法は内部マニュアルに従って(参照できる公表資料なし)。聴いた話だと数十cmの水盤を作り、1日放置してその水について計測する、と。計測量は50mlくらい。
(2)雨の際は、降った水を全部貯めて、その中の「50ml」を計測にかけるとのこと。基本的に、その「50ml」の中で計測されたベクレル数をそのまま文科省に伝えていた、ということです。本当は雨が多い場合はBq/50ml×雨量で1日総量ですが
(3)そのかけ算を忘れていたので、報告の数字が思いっきり小さくなった、ということです。Bq/50mlから、MBq/km2への換算は数式があるらしく、それに則っている、と。誤差については、最初の計測については明確だが、換算を重ねるので
(4)最終的なMBq/km2のレベルでは数学的に誤差を明確にするのは難しい、と仰っておりました。うーん。又聞きって説明が難しいでございますが・・・このような経緯のようです。要するに、測った値をそのまま報告して、全体量への掛け算を忘れたと。
上の説明を読めばおわかりと思いますが、福島県では上でご紹介した大阪府の月間の測定方法とは異なり、一日でたまった液量を蒸発させずにその中の50mlを測定に回していたようです。雨が降ると、水量が多くなります。測定に使用するのは50mlだけですので、全体の量が1Lの場合には、1L÷50ml=20なので50ml中の放射能(Bq)を20倍すれば1L(一日分)中の放射能量になります。たまった雨が500mlの場合には、500÷50=10で10倍する必要があります。
雨が降って一日の降下物全量が1Lで、50ml中の測定サンプルには10Bqの放射能があった場合
10(Bq/50ml)×20=200(Bq/測定器一日)
実際には、この放射能量は直径30cm程度の円形の測定器に降った降下物なので、その面積をm2にするために何倍かすればBq/m2に換算できるはずです。ここでは面積がわからないので省略しますが、Bq/m2とMBq/km2は同じことですので、Bq/m2が計算できればMBq/km2が計算できたことになります。
ところがなんと、6月から8月の測定においては、50ml中の放射能量を測定したあとで20倍とか10倍とかのかけ算をするのを忘れていたのです。お粗末ですよね。でも、これで、ある日の測定は25倍だけれども、ある日は10倍になったというように倍率が違うのも理由が納得できます。上で説明したように、1Lの場合は20倍、500mlの場合は10倍に修正されているのです。
なお、文科省のHPには、9/2の時点で間違いに気がついてその旨を発表しています。その割には修正結果が出てきたのが3週間後の9/26ということで、ずいぶんと時間をかけています。データの検証は福島県が行っていますので、そのやりとりにも時間がかかっているのかもしれませんが、もう少し早く発表できたのでは?と事情を知らない外部の人間は考えてしまいます。
3.間違った情報の拡散-なぜ「水道水」になった?
本来ならば、ここまでで終わる話だったのですが、この話題には後編があります。ここからは2番目の話題に入ります。
9/26(月)のおそらく午後に文科省のHPに修正が発表されました。そして早野先生のツイートが19:20。その日の21:35には「2ちゃんねるすぱ」に下記のようなタイトルで出ています。
「福島「ごめんごめん、水道水のセシウム量はかり間違えてたわ。基準値超えに気をつけて^^v」
しかし、これはタイトルだけで、本文中には一切「水道水」という表現はありません。
これが2chspaのニュース速報として21:39に流れると、ここから次の日にかけてツイッター上で一気に拡散していきました。このあたりの経緯は「水道水ジャナクテ定時降下物ダヨ」をご覧下さい。ある人が言っていたように、「環境放射能水準→水って言葉がある→水道水の事」という連想なのでしょうか?
2chで「水道水」とタイトルに書いた人は、降下物と水道水の違いを知らずに「水道水」という表現を間違えて使ったのか?意図的に間違ったタイトルをつけて広めようとしたのか?真相はわかりません。ただ、水道水の方が降下物よりも理解しやすく、リンク先を見たらデータとして数値が大幅に上がっているのは確かなので、「えっ」と思って水道水かどうかを確認せずに信じてしまう人が続出してしまったということのようです。
今回は、落ち着いて読めば、本文には「水道水」とは一言も書いてありませんので、タイトルが間違っていると理解できると思います。でも、それはあくまで上で説明した「定時降下物」が何かを理解していてのことです。
おそらく今回の件を通じて、「定時降下物」が何か理解した人も多いと思いますので、そういう人は同じ間違った情報には引っかからないと思います。でも、この次は違うパターンで来るかもしれません。その時に引っかからないようにするためには何が必要でしょうか?
私が思うに、表やグラフの読み方の基本をしっかりと身につけておけば引っかかることも減ると思います。これには文系、理系は関係ありません。文系の人だって、例えば経済関係のグラフでグラフの単位が円なのかドルなのか理解していなければ、数字の大きさにごまかされてしまいます。
表やグラフの作者には必ず意図があります。自分の主張と合わせるために紛らわしい書き方をわざとする場合もあります。読む側がしっかりと表やグラフを理解できないと、簡単に作者の意図に引っかかってしまう場合もあるのです。
表やグラフの読み方で最低限必要なポイントをあげておきます。
・まず最初に表やグラフのタイトルを読んで、何を示すための表(グラフ)なのか、把握する。
・数字が並んでいる場合は、単位に注意する。例えば、10(μSv/h)と10(mSV/h)では全く意味が違います。
この二つだけでも常に実践していれば、文科省の発表した修正表を見て、定時降下物であること、単位がMBq/km2(=Bq/m2)であることがわかると思います。定時降下物がわからなくても、Bq/m2とは単位面積あたりのベクレル数だということがわかれば、水道水で使用するBq/kg(またはBq/L)とは違うということに気がついたでしょう。
逆に言うと、この二つを理解できないような表やグラフは読んでも意味がない(あるいは間違って理解する)ので参考にしない方がいいと思います。
4.おまけ 栃木県の降下物(9/20-22)について
「8/17 検出限界値と定量下限値の違い」へのコメントで、9/20-9/22の栃木県の降下物のデータで、栃木県の降下物のデータがCs-134だけが検出されていてCs-137が出ていないのはどうしてか?という質問がありました。通常はCs-134が出ればCs-137も出るはずなのにおかしいのではないか?ということです。
これについてもすでに理由が調査がされていました。この日はちょうど台風15号が接近、通過した時で、各地で大雨になりました。そのために測定誤差が非常に大きくなったということです。大雨になると測定誤差が大きくなることの説明は私にはうまくできませんが、明らかに降下物の水量も多量になりますし、通常とは異なることが予想できると思います。そういうものだと思ってください。どなたか説明できる人がいたらフォローをお願いします。
測定誤差の話は「8/17 検出限界値と定量下限値の違い」にも書きました。測定誤差の3倍を検出限界としているので、測定誤差が非常に大きくなれば、通常ならば検出されて数値が出る場合でも検出限界以下となることはあり得ます。
例えば(実際にはBq/m2でデータが出るわけではなく、上で説明したようにBq/50mlというような形で出てきますが簡略化します)下記のような結果が得られたとしましょう。
通常ならば、測定誤差が110Bq/m2もあるということはまずあり得ないのですが、大雨で測定誤差が非常に大きくなったということなので、Cs-137の結果がCs-134とほぼ同じ320Bq/m2だったとしても、Cs-137の測定誤差が110Bq/m2あったとしたら、Cs-137はND(不検出)でCs-134は330Bq/m2という結果になってしまいます。
実際のところはどうだったかわかりませんが、大雨で測定誤差が非常に大きくなったとということなので、ほぼ同じような現象が起こっていたためにCs-137はND(不検出)になったのだと思います。これは定量下限値というよりも検出限界値の話だと私は思います。(この説明ももし間違っていたらどなたかフォローをお願いします。)
1.「定時降下物」って何?
そもそも、定時降下物って何なの、という人が多いのだと思います。空間線量率(μSv/h)は新聞にも毎日載るくらいに有名ですし、上水(蛇口水)(Bq/kg)も3月に水道水騒ぎで有名になりましたので、認知度はかなり高いと思います。でも、実は定時降下物(MBq/km2)で大騒ぎになったことはないので、これに関しては意外と知らない人がいるのかもしれません。
定時降下物の理解ができていれば、2番目の話題である間違った情報拡散にはならなかったと思いますので、ここで正しい知識を持っていただければと思います。
定時降下物の測定とは、雨やちりの中に含まれている放射性物質の量を測定することです。文科省のHPには各都道府県の毎日の降下量が発表されています。降下物は福島県以外では6月以降はほとんど測定されていません。
測定ですが、降下物ですから上から降ってきます。そこで、サンプル収集に用いる容器もおけのような間口の広い容器になります。

大阪府立公衆衛生研究所が使用している容器(大阪府立公衆衛生研究所HPより)

(北海道立衛生研究所のHPより)
上の図のように、直径30cm(毎日用)や直径80cm(月間用)の円筒形の金属容器に雨やちりをためて、それをゲルマニウム半導体検出器で測定するのです。測定の方法は、大阪府立公衆衛生研究所のHPに報告書がありましたので、それを見ると、月間の場合は「水盤(表面積 5000 cm2)に1ヶ月間に降下した雨水およびちりを採取し、採取試料全量を上水自動濃縮装置(柴田理化器械製)を用いて蒸発濃縮した。濃縮物を蒸発皿に移して蒸発乾固した後、残留物をU-8 容器に移し測定用試料とした。」とあります。
つまり、集めた雨やちりを全量回収して測定機で測定しているわけです。毎日の場合も基本的には同じだと思いますが、雨の場合にどうするのか、というところはひょっとしたら複数の方法(乾固させて一定量に溶かすか、体積を測っておいて一部を測定して何倍かするか)があるのかもしれません。
2.今回の上方修正はなぜ起こった?
文科省の発表によると、都道府県別環境放射能水準調査の測定結果(福島県)のデータが間違っていたということで、福島県において分析試料の単位換算及び測定用試料のサンプリング方法を再検証した結果に基づき、以下のとおり測定結果が修正されました。
ここで皆さんにご理解いただきたいのは、以下の2点です。
・修正されたのは福島県の環境放射線水準調査の結果であること。
・今回は、定時降下物の測定データに関する修正である(水道水とは何の関係もない)こと。
それでは、データの修正について確認していきます。

これを見ていただくとわかるように、例えば6/11~6/12のデータでは、Cs-134:6.6MBq/Km2=Bq/m2、Cs-137:8.0MBq/km2=Bq/m2だったのが、修正後は、それぞれ、160Bq/m2、200Bq/m2になっていて、24-25倍に上方修正されています。それ以外の日も、10倍~20倍に修正されています。
この修正だけをみると、「いったい何が起こった?」「意図的な隠蔽があったのか?」と誰もが思いますよね。日によって何倍になったかという倍率も異なります。
で、その真相は?というと、「水道水ジャナクテ定時降下物ダヨ」で調べてくれた方(@fukuwhitecatさん)の説明によると(ツイッターより引用)以下のような経緯でした。非常に初歩的な間違いですね。
(1)福島県では某センターでこれまで定時降下物検査をしてきた、とのこと。方法は内部マニュアルに従って(参照できる公表資料なし)。聴いた話だと数十cmの水盤を作り、1日放置してその水について計測する、と。計測量は50mlくらい。
(2)雨の際は、降った水を全部貯めて、その中の「50ml」を計測にかけるとのこと。基本的に、その「50ml」の中で計測されたベクレル数をそのまま文科省に伝えていた、ということです。本当は雨が多い場合はBq/50ml×雨量で1日総量ですが
(3)そのかけ算を忘れていたので、報告の数字が思いっきり小さくなった、ということです。Bq/50mlから、MBq/km2への換算は数式があるらしく、それに則っている、と。誤差については、最初の計測については明確だが、換算を重ねるので
(4)最終的なMBq/km2のレベルでは数学的に誤差を明確にするのは難しい、と仰っておりました。うーん。又聞きって説明が難しいでございますが・・・このような経緯のようです。要するに、測った値をそのまま報告して、全体量への掛け算を忘れたと。
上の説明を読めばおわかりと思いますが、福島県では上でご紹介した大阪府の月間の測定方法とは異なり、一日でたまった液量を蒸発させずにその中の50mlを測定に回していたようです。雨が降ると、水量が多くなります。測定に使用するのは50mlだけですので、全体の量が1Lの場合には、1L÷50ml=20なので50ml中の放射能(Bq)を20倍すれば1L(一日分)中の放射能量になります。たまった雨が500mlの場合には、500÷50=10で10倍する必要があります。
雨が降って一日の降下物全量が1Lで、50ml中の測定サンプルには10Bqの放射能があった場合
10(Bq/50ml)×20=200(Bq/測定器一日)
実際には、この放射能量は直径30cm程度の円形の測定器に降った降下物なので、その面積をm2にするために何倍かすればBq/m2に換算できるはずです。ここでは面積がわからないので省略しますが、Bq/m2とMBq/km2は同じことですので、Bq/m2が計算できればMBq/km2が計算できたことになります。
ところがなんと、6月から8月の測定においては、50ml中の放射能量を測定したあとで20倍とか10倍とかのかけ算をするのを忘れていたのです。お粗末ですよね。でも、これで、ある日の測定は25倍だけれども、ある日は10倍になったというように倍率が違うのも理由が納得できます。上で説明したように、1Lの場合は20倍、500mlの場合は10倍に修正されているのです。
なお、文科省のHPには、9/2の時点で間違いに気がついてその旨を発表しています。その割には修正結果が出てきたのが3週間後の9/26ということで、ずいぶんと時間をかけています。データの検証は福島県が行っていますので、そのやりとりにも時間がかかっているのかもしれませんが、もう少し早く発表できたのでは?と事情を知らない外部の人間は考えてしまいます。
3.間違った情報の拡散-なぜ「水道水」になった?
本来ならば、ここまでで終わる話だったのですが、この話題には後編があります。ここからは2番目の話題に入ります。
9/26(月)のおそらく午後に文科省のHPに修正が発表されました。そして早野先生のツイートが19:20。その日の21:35には「2ちゃんねるすぱ」に下記のようなタイトルで出ています。
「福島「ごめんごめん、水道水のセシウム量はかり間違えてたわ。基準値超えに気をつけて^^v」
しかし、これはタイトルだけで、本文中には一切「水道水」という表現はありません。
これが2chspaのニュース速報として21:39に流れると、ここから次の日にかけてツイッター上で一気に拡散していきました。このあたりの経緯は「水道水ジャナクテ定時降下物ダヨ」をご覧下さい。ある人が言っていたように、「環境放射能水準→水って言葉がある→水道水の事」という連想なのでしょうか?
2chで「水道水」とタイトルに書いた人は、降下物と水道水の違いを知らずに「水道水」という表現を間違えて使ったのか?意図的に間違ったタイトルをつけて広めようとしたのか?真相はわかりません。ただ、水道水の方が降下物よりも理解しやすく、リンク先を見たらデータとして数値が大幅に上がっているのは確かなので、「えっ」と思って水道水かどうかを確認せずに信じてしまう人が続出してしまったということのようです。
今回は、落ち着いて読めば、本文には「水道水」とは一言も書いてありませんので、タイトルが間違っていると理解できると思います。でも、それはあくまで上で説明した「定時降下物」が何かを理解していてのことです。
おそらく今回の件を通じて、「定時降下物」が何か理解した人も多いと思いますので、そういう人は同じ間違った情報には引っかからないと思います。でも、この次は違うパターンで来るかもしれません。その時に引っかからないようにするためには何が必要でしょうか?
私が思うに、表やグラフの読み方の基本をしっかりと身につけておけば引っかかることも減ると思います。これには文系、理系は関係ありません。文系の人だって、例えば経済関係のグラフでグラフの単位が円なのかドルなのか理解していなければ、数字の大きさにごまかされてしまいます。
表やグラフの作者には必ず意図があります。自分の主張と合わせるために紛らわしい書き方をわざとする場合もあります。読む側がしっかりと表やグラフを理解できないと、簡単に作者の意図に引っかかってしまう場合もあるのです。
表やグラフの読み方で最低限必要なポイントをあげておきます。
・まず最初に表やグラフのタイトルを読んで、何を示すための表(グラフ)なのか、把握する。
・数字が並んでいる場合は、単位に注意する。例えば、10(μSv/h)と10(mSV/h)では全く意味が違います。
この二つだけでも常に実践していれば、文科省の発表した修正表を見て、定時降下物であること、単位がMBq/km2(=Bq/m2)であることがわかると思います。定時降下物がわからなくても、Bq/m2とは単位面積あたりのベクレル数だということがわかれば、水道水で使用するBq/kg(またはBq/L)とは違うということに気がついたでしょう。
逆に言うと、この二つを理解できないような表やグラフは読んでも意味がない(あるいは間違って理解する)ので参考にしない方がいいと思います。
4.おまけ 栃木県の降下物(9/20-22)について
「8/17 検出限界値と定量下限値の違い」へのコメントで、9/20-9/22の栃木県の降下物のデータで、栃木県の降下物のデータがCs-134だけが検出されていてCs-137が出ていないのはどうしてか?という質問がありました。通常はCs-134が出ればCs-137も出るはずなのにおかしいのではないか?ということです。
これについてもすでに理由が調査がされていました。この日はちょうど台風15号が接近、通過した時で、各地で大雨になりました。そのために測定誤差が非常に大きくなったということです。大雨になると測定誤差が大きくなることの説明は私にはうまくできませんが、明らかに降下物の水量も多量になりますし、通常とは異なることが予想できると思います。そういうものだと思ってください。どなたか説明できる人がいたらフォローをお願いします。
測定誤差の話は「8/17 検出限界値と定量下限値の違い」にも書きました。測定誤差の3倍を検出限界としているので、測定誤差が非常に大きくなれば、通常ならば検出されて数値が出る場合でも検出限界以下となることはあり得ます。
例えば(実際にはBq/m2でデータが出るわけではなく、上で説明したようにBq/50mlというような形で出てきますが簡略化します)下記のような結果が得られたとしましょう。
測定結果 | 測定誤差 | 測定誤差の3倍との比較 | 結果の表示 | |
Cs-134 | 330Bq/m2 | 100Bq/m2 | 330Bq/m2>100Bq/m2×3 | 330Bq/m2 |
Cs-137 | 320Bq/m2 | 110Bq/m2 | 320Bq/m2<110Bq/m2×3 | ND(不検出) |
通常ならば、測定誤差が110Bq/m2もあるということはまずあり得ないのですが、大雨で測定誤差が非常に大きくなったということなので、Cs-137の結果がCs-134とほぼ同じ320Bq/m2だったとしても、Cs-137の測定誤差が110Bq/m2あったとしたら、Cs-137はND(不検出)でCs-134は330Bq/m2という結果になってしまいます。
実際のところはどうだったかわかりませんが、大雨で測定誤差が非常に大きくなったとということなので、ほぼ同じような現象が起こっていたためにCs-137はND(不検出)になったのだと思います。これは定量下限値というよりも検出限界値の話だと私は思います。(この説明ももし間違っていたらどなたかフォローをお願いします。)
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