10/12 横浜市のマンション屋上からSrが195Bq/kg検出のニュースの意味は?
朝日新聞などにも載っていたようですが、横浜市港北区のマンションの屋上で、7月に溝にたまった堆積物を採取し、測定したところ195Bq/kgのストロンチウム(Sr)が検出されました。原発から250km離れた横浜市でSrが検出されたのは初めてです。これは、市民が民間の検査機関(「同位体研究所」)に依頼して判明したもので、横浜市でも追加調査を行うことになりました。
この話題、実はネット上では2日前から騒ぎになっています。簡単な解説をします。
いつものように、まず事実関係を整理しましょう。最近、ツイッターのまとめとして私が情報源にしているtogetterでは、このようなまとめをしてくれた方がいます。興味のある方はこちらのリンクを読んでもらえれば詳細な情報もわかります。
Srに関する基本的な事項
チェルノブイリ原発事故において、Cs-137(半減期30年)とSr-90(半減期29年)は、その半減期の長さから長期的な汚染が問題になっています。従って、今回の福島原発事故においても、Cs-137とSr-90の汚染が問題だと早くからいわれてきました。Sr-89は半減期50日、Cs-134は半減期2年と上の二つに比べれば半減期は短いので、長期的な影響にはあまり関係ありません。
特にSrは骨にたまってなかなか抜けないために、一度取り込んでしまうと長期間放射線を浴びやすく、骨肉腫などのガンになる可能性が高まると言われています。そういう意味で、Srには要注意と言われているのです。
測定方法に関していうと、Cs-137はガンマ線を出すために比較的容易に測定できますが、Sr-90はベータ線しか出さないため、その測定には通常時間がかかります。他のベータ線を出す物質と分離させてからそのベータ線を測定するという方法を採るため、1日や2日で結果が出るものではありません。そのため、多数のサンプルを測定することが難しく、東京電力や文科省の測定においても、一部のサンプルに限定してSrの濃度を測定してきました。
Sr/Cs比率(あるいはSr-90/Cs-137比率)がわかれば、日々測定されているCsの濃度からSrの濃度を推定することが可能になるため、今回の福島原発事故において、Sr/Cs比率がいったいいくらくらいであるかがポイントとなっていました。チェルノブイリにおいては、Sr/Cs比率は0.1前後だったそうです。これまでの数少ないデータでは、土壌においてはSr/Cs比は1/100以下ですが、主に2号機から海洋に流出した放射能では、Sr/Cs比はもう少し高い数値も出ていました。
海水については、「8/8 東京電力から海水などのSrのデータ発表(8/4,5)。」に記載したようにSr/Cs=0.1前後のデータが多いです。ただし、魚介類は「8/31 水産庁が発表した魚のストロンチウムのデータ:初めてマダラから検出」で取り上げましたが、まともなデータは一つしかなくて、それによればSr/Cs=0.001程度ですが、この1件のデータだけで魚には取り込まれにくいとは判断しない方がいいと思います。
今回の横浜市のケース
今回の横浜市のケースは、市民が自分のマンションの屋上の溝にたまった堆積物を民間の検査機関に提出して測定を依頼したものだそうです。さきほどのまとめからの情報を抜き出すと以下のようになります。検査報告書はここ。
Cs-134:29775Bq/kg、Cs-137:33659Bq/kg 合計63434Bq/kg
Sr-90:195Bq/kg
Sr/Cs=0.3%(Sr-90/Cs-137=0.6%)
これまで福島県を中心に行われた土壌調査においても、Cs以外にSrのデータも測定されて発表されています。「10/2 文科省の発表したプルトニウム・ストロンチウムの汚染マップ」において取り上げましたが、その時はSr-90/Cs-137比率は、『1.6×10-4~5.8×10-2(平均:2.6×10-3)』でした。詳細な表はコンタンさんがまとめてくれていますので興味のある方はご覧下さい。
なお、Sr/Cs比が6%近くにもなる場所があることから、その理由を保安院が6月に発表した資料(表5)にある、2号機と3号機で放出されたSr/Cs比率が違うことで解釈できないか?と考える人もいるようです。3号機由来の降下が多いところはSr/Cs比率が高い、という傾向があるのかどうか、私は確認していないのでわかりません。

話がそれてしまいましたが、今回の横浜市のケースは、Srの比率が特に高いわけでもなく、おそらく平均的なSr/Cs比率だと思います。そして、これまでに「8/18 福島原発から大量にまき散らされたセシウムなどの再循環の現況と課題」でも指摘しているように、これまでにまき散らされた放射性物質が雨が降ったり風が吹いたりする度にたまるところにはどんどんたまって濃縮されています。初めの降下量の100倍になっているところも多いはずです。マンションの屋上の溝などは、雨どいの下などと同じく濃縮されやすい場所なのだと思います。
ですから、今回のニュースは、ストロンチウムが検出された、ということ自体は大きなニュースとしてとらえる必要はないと思います。むしろ、横浜市でも濃縮されて約60000Bq/kg(市の再測定では105,600Bq/kgという報道もありました)のセシウムが検出されていることを問題視した方がいいです。
私はこのマンションの屋上が特殊な場所だったとは思いません。このような場所は、測定されていないだけで、現在の関東地方には局所的にはいくらでもあるのだと思った方がいいということです。
そして、都内でも放射性セシウムが局所的には30000~60000Bq/kgのところがあるということは、すでに市民団体が報告していた(例えば「8/21 「放射能防御プロジェクト」の発表と関東の土壌汚染の実態」)と思います。今回のケースから、Srは測定されていないだけで、もし60000Bq/kgのCsがあれば、100~200Bq/kgのSr-90はあると想定した方がよいということを教えてくれたと考えるべきでしょう。
Srに関する基本的な事項
チェルノブイリ原発事故において、Cs-137(半減期30年)とSr-90(半減期29年)は、その半減期の長さから長期的な汚染が問題になっています。従って、今回の福島原発事故においても、Cs-137とSr-90の汚染が問題だと早くからいわれてきました。Sr-89は半減期50日、Cs-134は半減期2年と上の二つに比べれば半減期は短いので、長期的な影響にはあまり関係ありません。
特にSrは骨にたまってなかなか抜けないために、一度取り込んでしまうと長期間放射線を浴びやすく、骨肉腫などのガンになる可能性が高まると言われています。そういう意味で、Srには要注意と言われているのです。
測定方法に関していうと、Cs-137はガンマ線を出すために比較的容易に測定できますが、Sr-90はベータ線しか出さないため、その測定には通常時間がかかります。他のベータ線を出す物質と分離させてからそのベータ線を測定するという方法を採るため、1日や2日で結果が出るものではありません。そのため、多数のサンプルを測定することが難しく、東京電力や文科省の測定においても、一部のサンプルに限定してSrの濃度を測定してきました。
Sr/Cs比率(あるいはSr-90/Cs-137比率)がわかれば、日々測定されているCsの濃度からSrの濃度を推定することが可能になるため、今回の福島原発事故において、Sr/Cs比率がいったいいくらくらいであるかがポイントとなっていました。チェルノブイリにおいては、Sr/Cs比率は0.1前後だったそうです。これまでの数少ないデータでは、土壌においてはSr/Cs比は1/100以下ですが、主に2号機から海洋に流出した放射能では、Sr/Cs比はもう少し高い数値も出ていました。
海水については、「8/8 東京電力から海水などのSrのデータ発表(8/4,5)。」に記載したようにSr/Cs=0.1前後のデータが多いです。ただし、魚介類は「8/31 水産庁が発表した魚のストロンチウムのデータ:初めてマダラから検出」で取り上げましたが、まともなデータは一つしかなくて、それによればSr/Cs=0.001程度ですが、この1件のデータだけで魚には取り込まれにくいとは判断しない方がいいと思います。
今回の横浜市のケース
今回の横浜市のケースは、市民が自分のマンションの屋上の溝にたまった堆積物を民間の検査機関に提出して測定を依頼したものだそうです。さきほどのまとめからの情報を抜き出すと以下のようになります。検査報告書はここ。
Cs-134:29775Bq/kg、Cs-137:33659Bq/kg 合計63434Bq/kg
Sr-90:195Bq/kg
Sr/Cs=0.3%(Sr-90/Cs-137=0.6%)
これまで福島県を中心に行われた土壌調査においても、Cs以外にSrのデータも測定されて発表されています。「10/2 文科省の発表したプルトニウム・ストロンチウムの汚染マップ」において取り上げましたが、その時はSr-90/Cs-137比率は、『1.6×10-4~5.8×10-2(平均:2.6×10-3)』でした。詳細な表はコンタンさんがまとめてくれていますので興味のある方はご覧下さい。
なお、Sr/Cs比が6%近くにもなる場所があることから、その理由を保安院が6月に発表した資料(表5)にある、2号機と3号機で放出されたSr/Cs比率が違うことで解釈できないか?と考える人もいるようです。3号機由来の降下が多いところはSr/Cs比率が高い、という傾向があるのかどうか、私は確認していないのでわかりません。

話がそれてしまいましたが、今回の横浜市のケースは、Srの比率が特に高いわけでもなく、おそらく平均的なSr/Cs比率だと思います。そして、これまでに「8/18 福島原発から大量にまき散らされたセシウムなどの再循環の現況と課題」でも指摘しているように、これまでにまき散らされた放射性物質が雨が降ったり風が吹いたりする度にたまるところにはどんどんたまって濃縮されています。初めの降下量の100倍になっているところも多いはずです。マンションの屋上の溝などは、雨どいの下などと同じく濃縮されやすい場所なのだと思います。
ですから、今回のニュースは、ストロンチウムが検出された、ということ自体は大きなニュースとしてとらえる必要はないと思います。むしろ、横浜市でも濃縮されて約60000Bq/kg(市の再測定では105,600Bq/kgという報道もありました)のセシウムが検出されていることを問題視した方がいいです。
私はこのマンションの屋上が特殊な場所だったとは思いません。このような場所は、測定されていないだけで、現在の関東地方には局所的にはいくらでもあるのだと思った方がいいということです。
そして、都内でも放射性セシウムが局所的には30000~60000Bq/kgのところがあるということは、すでに市民団体が報告していた(例えば「8/21 「放射能防御プロジェクト」の発表と関東の土壌汚染の実態」)と思います。今回のケースから、Srは測定されていないだけで、もし60000Bq/kgのCsがあれば、100~200Bq/kgのSr-90はあると想定した方がよいということを教えてくれたと考えるべきでしょう。
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