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10/30 フランスIRSNが10/26に発表した海洋放射能汚染(東京電力の20倍)の解説

 
10/26、フランスのIRSN(フランス放射線防護原子力安全研究所)は、これまでの文科省および東京電力が発表したデータを元に解析を行い、海洋に放出された放射性セシウムの量が27000テラベクレル(2.7京ベクレル=27000兆Bq)であると発表(リンクはフランス語)しました。

どこかでだれかがこの話をまとめてくれているかと思ったのですが、さすがにフランス語になるとあまりトライする人がいないようで、AFPのこの記事が一番詳しいようです。しかたがないのでいくつかポイントを絞ってご紹介します。

10/31追記:「10/31 フランスIRSNが発表した海洋汚染の内容の仮日本語訳」を追加しました。

IRSNは、これまでにも海洋放射能汚染については、何回も発表しています。例えば7月にも今回と同様の発表(リンクはフランス語)をしています。今回の発表においては、海洋に放出された放射性セシウムの量が東京電力が発表した数値の20倍程度あるのではないか?ということで話題になっています。

1.いろいろな発表数値のまとめ

いきなり20倍とか言われてもわからないので、まず、東京電力が海洋に放出した放射能をどれだけであったと評価しているのか、そこから知っておく必要があります。

6/19 福島原発の放射能汚染水の全容を紹介します!その2詳細編」でまとめましたが、これまでにわかっていて東京電力がまとめている海洋への流出(意図的な放出も含む)は主に3つです。

1.4/4~4/10 緊急放出した集中廃棄物処理施設などからの低濃度汚染水の放出量は10,393トン、放射性物質量は3核種合計1.5×10^11 Bq(150ギガBq=1500億Bq)でした。

2.4/1~4/6 2号機タービン建屋高濃度汚染水の漏洩による港湾内への流出量は520トン、放射性物質量は3核種合計で4.7×10^15 Bq(4700テラBq=4700兆Bq)でした。

3.5/10~5/11 3号機タービン建屋高濃度汚染水の漏洩による港湾内への流出量は 250トン、放射性物質量は3核種合計で2.0×10^13Bq(20テラBq=20兆Bq)でした。

この中で、1.と3.は2.に比べると1/100以下だったので、無視してかまいません。2.においては、4700テラベクレルのうちI-131は2800テラベクレル、Cs-134は940テラベクレル、Cs-137は940テラベクレルです。なお、テラベクレルとは、1兆ベクレル=1,000,000,000,000Bqです。ゼロが12個つきます。おそらく兆よりも上の京という単位を使っても多くの人にはピンと来ないと思いますので、ここでは兆で統一しておきます。15000兆とかいう記載は、本来ならば1京5000兆とか1.5京と表現するべきですが、あえて単位を兆にしておきます。

つまり、東京電力は、ヨウ素と合わせて4700兆Bq、放射性セシウムでは1880兆Bqを海洋に放出したといっていることになります。算出根拠についても「4/21 福島原発で注ぎ込まれた冷却水はどこへ行ったのか?その4」でご紹介したように、ザックリとしたものではありますが、公表されています。

これに対し、「10/11 2号機から海洋への放射能の流出は3月下旬から始まっていた?」でご紹介したように、9月に日本原子力研究開発機構が発表した試算ではCs-137が3600兆Bqです。おそらくCs-134もほぼ等量でしょうから、放射性セシウム全体としては7200兆Bqという試算になるはずです(ただしCs-134については発表されていません)。東京電力の発表の約4倍です。ただし、この試算においては、海洋に直接放出された分だけではなく、大気中に放出されたものが海洋に落ちて沈着したものについても含まれています。

また、電力中央研究所と気象研は同じく9月にCs-137に3500兆Bqであるという試算を発表しました。こちらについては、海洋に直接放出された分だけでの計算をしています。放射性セシウムの合計としては、その約2倍で7000兆Bqになると考えておいていいと思います(これもCs-134については発表されていません)。

ちなみに、海洋汚染だけではなく、今回の事故で放出された放射性物質の総量(海洋への直接放出は除く)についても、いくつかの発表があるのでそれもついでにまとめておきましょう。

まず、原子力保安院は、Cs-137を15000兆Bq放出したと発表しています原子力安全委員会は、日本原子力研究開発機構の修正を受けてCs-137は11000兆Bqと推定しています。

ヨウ素換算係数というのがあって、IAEAの発表しているUser's Manual(リンク先は英語)という資料のTable2に記載があります。それによると、Cs-137の換算係数は40です。Cs-134の換算係数は3です。

原子力安全委員会では、I-131を130000兆Bq(=13京Bq)、Cs-137を11000兆Bqとしましたので、ヨウ素換算係数の40をかけると130000兆Bq+11000兆Bq×40=570000兆Bq=57万テラベクレルというヨウ素換算の総放出量が導き出されます。

原子力保安院の計算では、I-131が160000兆Bqで、Cs-137が15000兆Bqでしたので、ヨウ素換算すると、160000兆Bq+15000兆Bq×40=760000兆Bq=76万テラベクレルになります(保安院は当初は37万テラベクレルと言っていました)

おそらく、57万テラベクレルとか76万テラベクレル(あるいは77万テラベクレル)という数字はニュースで聞いたことがあると思います。

最近、Natureという権威のある科学雑誌で紹介(リンク先は英語)されたある文献は、ノルウエーの研究者によるもの(リンク先は英語)です。それによると、Cs-137が35000兆Bqと、原子力保安院が発表した15000兆Bq×40の約2倍という数値を出しています。チェルノブイリで放出されたCs-137の42%に当たるという試算(リンク先はブルームバーグ)です。これが、最近ニュースになっている(リンク先は日経)、政府が発表した数値の2倍とかか3倍というノルウエーの研究結果というものです。

35000兆Bqを原子力保安院の15000兆Bqと比べると2倍、原子力安全委員会の11000兆Bqと比べると3倍、という数値になります。同じニュースなのに2倍になったり3倍になったりするのはそのためです。

参考までに、これまでに比較したデータを一覧表にしておきます。
10/30IRSN7

2.IRSNが発表した、海洋に放出された放射能の量

IRSNが発表したのは、福島原発事故全体での放出量ではなく、海洋への放出量です。Cs-137で27000兆Bqという発表で、先ほど書いた、東京電力の940兆Bqの約20倍であるという報道(リンク先は時事.com)がなされています。別のニュースでは約30倍(リンク先はTBS Newsi)と言っていて、私はこの方が近いと思いますが、IRSNが20倍と書いているのです。この倍率は、日本原子力研究開発機構や電力中央研究所と気象研の試算(3-4倍)をさらに数倍上回るものです。

どうやってこの数値を算出したのか、発表されたフランス語の資料を見ていきます。なお、お断りしておきますが、基本的には私はこのフランス語の資料をExcite翻訳にかけてフランス語→英語に直して理解しているだけです(一般的にフランス語→日本語は精度が悪いのでやらない方がいいです)。英語がおかしい時は元のフランス語を見て、フランス語の辞書で単語の意味を確認していますが、大学で習ったとは言え、フランス語を間違って解釈している場合もあるかもしれません。その場合はご勘弁下さい。

まず、最初にはっきりと書いてあるのですが、IRSNは自分で観測したわけではなく、観測データは全て東京電力(TEPCO)と文科省(MEXT)のデータを元にしているということです。そして、そのデータを元に独自のシミュレーションを加えて今回の推論を導き出したということです。だからやろうと思えば同じ計算は我々日本人にもできるはずです。

では、IRSNがどうやって27000兆Bqという数値を出したのか、順を追ってみていきます。

まず、文科省や東京電力が測定した海水のデータを集めて、1-2週間ごとに下の図のように分布図を作りました。図が小さいのでわかりにくいですが、一番右側に放射能の濃度に応じて色分けをしていることが示してあります。赤い星は東京電力あるいは文科省の観測地点を示します。

10/30IRSN1
(クリックで別画面に拡大)

次に、それぞれの期間(例えば4/11-4/18)における等値線から、上のそれぞれの図で青く囲んであるゾーンの中にあるCs-137の量を計算しています。実はこの部分のフランス語がちょっと自信がないのですが、bathymetryという手法を用いています。その地点の海の深さを計算して、Cs-137の濃度×海の深さ(m)を全て足し合わせているのだと思います。そうやって、その時点での青いゾーンの中にあるCs-137の量を計算しているようです。

10/30IRSN2

上の表で出した放射能の総量を、横軸に時間を取って、縦軸に放射能(Bq)を対数に取ってプロットしました。そうすると、このグラフに示すようにほぼ直線に乗ってくることがわかりました。ここから、この海域内のCs-137は、半減期が6.9日で減っているという計算ができます。なぜこんなに早く減るのか、というと、親潮と黒潮の海流の影響で海水の入れ替えが起こっているからだとしています。

10/30IRSN3

そうすると、このグラフの左端にある4/8における放射能の量がグラフの式から計算できます。それがこのグラフに示してあるように2.2E+16Bq=2.2×10^16Bq=22000兆Bq(95%信頼区間:20800-23100兆Bq)なのです。

実際には、ほとんどの放出は4/8までに起こっていますので、それ以後の放出分の寄与はかなり少ないと考えられます。それを計算すると、4/8以降の分は18%にしかならず、トータルで27000兆Bqが放出されたという計算になります。これは、7月にIRSNが計算した量の2倍、6月に東京電力が公表した数値の20倍に当たる、ということです。

一方、大気中に放出された放射能が海面に落ちてそれが海洋を汚染したのはどれくらいなのか、ということについてもIRSNは評価しています。それによると、76兆Bqが大気中から海洋(原発から半径80km圏内)を汚染したという計算になります。これは、上で計算した27000兆Bqのわずか0.3%にしかすぎません。なお、新しい計算数値が(8月に原子力安全委員会から?)発表されたため、それを用いて計算を行っています。そのため、7月時点でIRSNが行った評価の1/10に収まっています。

なお、下の図に示すように大気中に放出された放射能の量は、計算によると、全部で11500兆Bqにもなります。しかし、半径80km圏内の海水にはさきほどのように76兆Bqしか落ちていません。残りはほとんどが陸地に落ちたり、もっと遠くの北半球の海に落ちたと考えられます。

10/30IRSN4


3.海底土などの情報

ここまででIRSNの発表したデータのうち、海水が東京電力の発表の20倍という部分については終わりです。ですが、IRSNの発表にはそれ以外にも海底土の分析や魚介類への蓄積の分析があります。魚介類については日本でも解析されていますので、あまり目新しいことはなく、省略します。

海底土の分析については引き続きご紹介します。下の図は、東京電力や文科省が発表したデータを経日的にグラフにし、縦軸をCs-137の放射能でプロットしてあります。原発から1km以内と、50km以内、および50km以遠とで色分けしてあります。コメントとしては、中期的に上昇している傾向にあるという事が記載されていました。

10/30IRSN5

次の図は、海底土の分布を地図上にプロットし、予想される分布図を等値線で書いてくれたものです。原発のすぐ近くを除いては、通常1000Bq/kg以下のCs-137しか観測されていません。ここで書いてあったコメントに、通常海水と海底土の放射能の比率は海水:海底土=1:1000だと記載されています。従って、海水で100Bq/Lを記録した場所では100000Bq/kg以上あってもいいはずだと記載されています。おそらくこれまでの事故でそのような知見があるのでしょう。ここには詳細な記載はありませんでした。

10/30IRSN6

海底土のデータを見る際には、土壌の粒子サイズなどが重要だというような記述もあったのですが、今回はここまでにしておきます。

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コメント

No title

 興味深く読ませていただいております。わたしは原子力の事は分かりませんが、フランス語は分かるので、コメントします。
 IRSNの原文を見ました。自信がないと言っておられる bathymetrie は深さの寸法とかいう意味なので、その部分は、海深と塩分濃度と温度から割り出した混合物の層の厚みを考慮に入れているという意味になります。
 だからどうなんだという所は私には分かりませんが、なにかのお役に立てば嬉しいです。

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twitterは@tsokdbaです。
3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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