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11/5 南相馬市の乳幼児1500人の尿の測定で最大187Bq/Lの放射性セシウム

 
今朝のNHKオンラインにあったニュースですが、福島県南相馬市の乳幼児が放射性物質を体内に取り込む内部被曝をしていないか、尿を検査したところ、7%の子どもから放射性セシウムが検出されたということです。

このニュースをめぐって、ネット上では今日はいろいろな議論が巻き起こっていました。最近はもう定番になった、このニュース関連のツイートをまとめるtogetterもいくつか出てきて、内部被曝を考える上で非常に参考になりました。

いくつかのポイントがありますので、そこに焦点をあててご紹介します。

1.事実関係の整理

まず、今回のニュースがどのようなものだったのか、事実関係からまとめていきます。

RHC JAPANという会社(本社 港区六本木)があります。この会社は、9月から個人向けに尿の放射能検査サービスを開始しました。検査費用は24,000円(検査費用、容器費用、送料等全て込み:福島県民限定で18000円)です。

また、『なお同社は、南相馬市立総合病院で実施されている内部被曝検査の支援として、尿検査が可能な南相馬市の全児童に対し、無料で尿の放射能検査を行うとしている。(医療人材.netより)』ということで、南相馬市と連携して、3月11日の震災以後、南相馬市に住んでいた0~6歳の児童の尿の無料検査を行いました。

その結果としてまとめられたのが、今回NHKがニュースで流した情報です。『これまで分析を終えた1500人余りのうち、7%に当たる104人から放射性セシウムが検出されました。ほとんどは検出限界を僅かに超える1リットル当たり20から30ベクレルの範囲で、最も値が高かったのは1歳の男の子で187ベクレルでした』。RHC JAPANによると、最終的には、2100名を超える申し込みがあったそうです。

なお、この検査は、RHC JAPANがマシス食品医薬品安全評価分析センター(以後マシスと省略します)という検査会社に委託して行っています。実際にマシスで測定に用いられる装置は、都道府県が牛肉や米の検査で用いているゲルマニウム検出器ではなく、NaI(Tl)シンチレーションスペクトロメーター検査機器というスクリーニング用の検査機械です。

今回は、ネット上でこのニュースをめぐって二つの議論がなされていたように思います。一つは検査データの信頼性の問題、もう一つはこのデータが正しいとして、もし尿中に187Bq/Lあるとしたら、その人の体内にはどれくらいの放射性セシウムがあるのか?という問題です。この二つについて、私のわかる範囲で解説を加えます。


2.一つ目のポイント 検査データの信頼性

今回、RHC JAPAN社が委託した検査会社がマシスという会社だったことが議論のポイントの一つにあがっています。実は、私のブログでは紹介しなかったのですが、ある会社の牛乳をマシスに依頼して(この時は無料検査をキャンペーンで行っていました)検査したところ、1260Bq/kgの放射性セシウムが検出された、という話がありました。そんなはずはない、ということでいろんな人が調べたりマシスに確認したところ、最終的にはデータの転記ミスだったという結果で落ち着きました。
『牛乳の放射能検査結果でお客様からご連絡を頂き再度、確認しました所弊社の転記ミスにより間違った値をご報告してしまいました。
検査結果は、I-131→ND Cs-134→ND Cs-137→ ND でした。各関係者には、大変ご迷惑をおかけしました事を心からお詫び申し上げます。今後は、このような事が無いよう社員一同分析事業に取り組む所存です。(マシス社HPより。今は削除されている。)』

その際のマシスの対応や、ある人がひじきを測定してもらったら、ひじきに多く含まれている放射性カリウムをセシウムと読み間違えた事などから、この会社の放射能測定は技術的に信頼がおけるのか?という疑問が提起されました。会社としてはいろいろな検査を行っている実績のある会社なのですが、放射能測定は今回の原発事故以降に始めたようで、経験が少ないようです。

放射能測定に使用する装置やそのデータの読み方には、いろいろな知識が必要です。特に簡易型の装置では設定をしっかりとしないと放射性カリウム(K-40)のピークを間違えてセシウムと読む事があるらしいので、そのあたりの知識がないと、間違った結果を出してしまう恐れもあります。

そのため、今回の検査も、マシスの測定する装置と、その測定条件から、正確なデータが得られるのか?という事が議論のポイントになっています。今回の尿検査も20mlしかサンプルに用いていません。測定時間も10分ほどだということです。定量限界は20Bq/Lです(RHC JAPANのHPより)
11/6追記:測定時間は確認していませんので削除します。

放射能測定という意味で尿を検査する場合、通常の健康診断の尿検査とは異なり、最低でも1日分の尿を集めないと正確な結果が得られないということが言われています。通常は1L~2Lの尿を検査することが多いようです。

ということで、今回の測定結果がどこまで信頼できるのか?という疑問が出されていました。

3.2つめのポイント 187Bq/Lの子供の体内にはいったいどれくらいのセシウムがあるのか?

今回の測定結果の信頼性はひとまず置いておいて、これが正しい結果として見てみましょう。1500人の尿を測定して、104人(約7%)から20-30Bq/L放射性セシウムが検出されたということです。定量限界が20Bq/Lということなので、ギリギリの値です。

注目すべきは、最大で187Bq/Lの放射性セシウムが検出された1歳児がいるということです。この1歳児の場合、いったいどれくらいの放射性セシウムが体内にあるのだろうか?ということがネット上で話題になりました。以前も東大の児玉先生が、チェルノブイリでは、尿中に6Bq/Lの放射性セシウムが検出された人の中に膀胱ガンになった人がいるという話をして、それが本当にセシウムによるものか、という議論がありましたが、それとも関係する話です。

内部被曝の話を考える上で重要なことかと思うので、ひょっとしたら間違っている部分もあるかもしれませんが、現時点で私がわかっている知識で記載します。間違い等あれば指摘してください。

ツイッター上で@study2007さんがいろいろな人とやりとりをしながら説明してくれたので、理解できるようになりました。

下の図は、厚労省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会放射性物質対策部会という非常に長ったらしい名前の審議会が5月に行われた時の資料の一部です。この資料には、内部被曝について、ちょっと難しいですが、ICRPでどのような議論が行われてきたかを比較的わかりやすく整理してくれています。ちなみに、今この審議会では食品の基準値の見直しを議論しています。

11/5内部被曝1

この図を見てもよくわからないと思いますが、これはコンパートメントモデルと呼ばれるもので、食物に入っていた放射性セシウムが体内でどのように移動し、どうやって排出されるのか、そしてその期間はどれくらいか?ということを示しています。セシウムの場合、体外に排出されるセシウムの80%が尿として排出され、20%が便として排出されるということです。

図の右にある表で、biological half-timeという数字が書いてあります。これはいわゆる生物学的半減期と呼ばれるもので、物理学的な放射性セシウムの半減期とは別のものです。取り込まれた放射性セシウムも代謝によっていずれは排出されるので、その量が半分になるまでの期間がどれくらいか、ということを示している数値です。1歳児では13日、大人では110日というのがICRP Publicationi 67にでているそうです。ここでは、Total BodyAというのは生物学的半減期10日以内のきわめて速い代謝であり、大人でも10%だけです(1歳児ではありません)ので、Total BodyBの方を見てください。

11/5内部被曝2

R(t) = 0.1×e(-0.693/T1)+0.9×e(-0.693/T2) (T1=2 days,T2=110 days)

次に、上の図にあるこの式にご注目下さい。私も数式は得意ではないのですが、これに触れないとここから先に進めないので、敢えて出します。ここでは職業被曝した人の体内に残留するセシウムということで計算式が書かれていますが、食べたものの内部被曝でも同じ事です。0.1というのは速い代謝のTotal BodyAの方ですが、1歳児の場合で話をすると、Total BodyA=0になるので、次の式に置き換えられます。

R(t) = e(-0.693/T2)

ここでは、1歳児ではT2は13日のようですが、togetterでは20日として計算されていたので、T2=20日として話をします。

毎日1Bqの放射性セシウムを摂取すると、摂取しては尿などから排出されるのですが、一日で全て排出されるわけではないので、少しずつたまっていきます。ICRPの資料では、解像度が悪いのですが、下のように書いてあります。毎日1Bqの放射性セシウムを摂取すると、1000日(約3年)後には幼児で30Bq、子供で53Bq、大人で143Bq蓄積するということです。なお、このグラフでは、毎日同じ量を摂取した場合に、少しずつ蓄積していくことと、あるところで排出量と摂取量が同じになって平衡に達するということに注目してください。幼児では、半年くらいで平衡に達しています。

11/5内部被曝3

この平衡に達するというところは、@study2007さんのこの説明がわかりやすいので引用させてもらいます。

11/5内部被曝4

ここでまた数式が出てきてしまうのですが、ある日の体内の放射性セシウム量をN0、次の日の体内の放射性セシウム量をN1とすると、

N1 =N0× e(-0.693/T2)

であり、平衡に達している時はN1=N0ですから、次の日までに排出された量=その日の摂取量は、N0×(1- e(-0.693/T2))にあたります。T2=20日として計算すると0.034×N0となるので、1÷0.034=29.36で毎日の摂取量の約30倍で平衡に達しているということが計算でわかります。187Bq/Lで、一日の尿の量を仮に1Lとすると、1日に187Bqですから、その30倍で187×29.3=約5500Bq。体重を仮に10kgとすると、550Bq/kgの放射性セシウムが体内にあるという計算になります。これがTogetterで議論されていた中身です。

先ほどのICRPの資料でも、毎日1Bqを摂取すると、30Bqで平衡に達するという計算をしていますので、ほぼ同じ計算になります。なお、@study2007さんが計算してくれたところによると、子供だと毎日の摂取量の87倍くらいで平衡に達するということです。これはICRPの資料の合わせてみても、大きく違っていないのでほぼ合っていると思います。

ただし、今回の測定結果は、別の可能性もあります。つまり、一度に大量に吸収して、その後は徐々に排出されているという場合です。ICRP111にその例が示してあります。1000Bqを一度に摂取して、その後は徐々に減っていく場合が示されています。

11/5内部被曝5

今までのケースは、毎日一定量を摂取するという前提で計算していましたが、南相馬の場合は、3月に大量に体内被曝し、それが徐々に排泄されている可能性もあります。187Bq/Lという結果がどちらによるものかはわかりません。


今回の発表を元にネットで議論されたことから何がわかるかということをまとめます。

1.放射性セシウムを毎日一定量摂取すると、年齢によって数値は異なるが、摂取量の30から100倍程度の量が体内に蓄積する。そこで平衡に達する。

2.一方、カリウム中に約0.01%含まれているK-40は、人体には必須の成分であるためにすでに平衡に達しており、食物中に含まれているカリウムの分が新たに体内に蓄積されることはない。


成人男性60kg中にはK-40が4000Bqあるといわれていますが、これはすでに体内に定常的に存在するものです。一方、放射性セシウムは、これまで体内にほとんどなかったため、今後放射性セシウムを含む食べ物を多く食べると、蓄積していきます。ある程度蓄積した段階で平衡に達しますが、その量がいったいどれくらいになるか、ということは、平均して一日に食べるセシウムの量(Bq)がわかれば割り出せるということです。また、尿中の放射性セシウム量を測定すれば(検出できれば、ですが)、3月に大量に浴びていない場合であれば、体内の放射性セシウム量も計算して割り出せると思います。

このことを利用して、BqをSvに直したりすればいろいろなことが評価できると思うのですが、今日はそこまで整理できないのでここまでにしておきます。

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コメント

内部被曝

セシウム内部被曝の動物実験論文を紹介しているところがありました
http://d.hatena.ne.jp/sivad/20130521/p1

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TSOKDBA

Author:TSOKDBA
twitterは@tsokdbaです。
3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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