11/7 東京都が宮古市のがれきを受け入れた問題、あなたはどう考えますか?
11/3、岩手県宮古市から主に津波による震災がれきがはじめて都内にコンテナ輸送されてきました(NHKオンライン)。
この問題について、どうも賛否両論巻き起こっている、というか、反対の人が多い(毎日JP)ようです。何が問題なのか、調べてみました。
そもそも、この問題は、東日本大震災、特に津波で生じたがれきの処理が大量に発生したことが問題です。これは原発事故とは関係なく、主に津波によって発生しました。その量は、環境省が11/2にまとめた資料によると、岩手県で約11年分に当たる476万トン、宮城県で約19年分に当たる1569万トンもあるそうです。

それぞれの県では、当然のことながら処理を進めていますが、このままではいつまでたっても処理しきれないのが現状です。そこで、数のように、岩手県では476万トンのうち57万トンを広域処理をしてもらいたいという希望を出しています。

同様に、宮城県では石巻ブロックの294万トンについて広域処理の希望を出しています。他の3つのブロックは検討中ということですが、それがどこに当たるのかは不明です。

このような状況ですが、がれきの処理がなかなか進まないため、東京都が岩手県と協定を結んで、今回宮古市のがれきが東京都に運ばれてきたものです。東京都はいずれ宮城県とも協定を結ぶ予定です。東京都のHPには、都民から寄せられた質問に対するQ&Aがありましたので、そこから引用します。

ここに書いてあるように、東京都は平成25年度末(2年半後)までに50万トンを処理するということを協定を結びました。決して福島県からがれきを持ってくるわけではありません。もちろん、岩手県や宮城県でも場所によっては放射能を帯びているがれきもあるでしょうが、基本的に「震災がれき」と「放射能がれき」は違うと思います。福島県の原発近くで津波の被害にあって生じたがれきは、放射能もかなり浴びているので「放射能がれき」と言ってもいいと思いますが、宮城県や岩手県の津波で被害を受けた地域の多くは、放射能をそれほど多くは受けていないはずです。それをこれからデータで確認していきましょう。
岩手県の航空機モニタリングのデータがいまだに文科省から発表されないので、岩手県のデータを文科省のデータで示せないのが残念です。以前、「10/13 新潟県と秋田県の航空機モニタリングの結果と今後の予定」で紹介した図を再掲します。放射性セシウム(Cs-134+Cs-137)の沈着を示した図です。

宮城県の中で現段階で広域処理の対象となっている石巻ブロックですが、石巻市付近では、牡鹿

岩手県については、文科省のマップがまだ公開されていないので、岩手県の汚染域を確認するために、早川先生の作った汚染地図を示します。

こうやってみれば、宮城県でも南部の角田市、宮城県の北部の気仙沼市や岩手県南部の陸前高田市など
11/9追記:間違いを修正
次に、焼却施設でのデータを見ます。環境省が8月に発表した資料に、16都県の焼却場のデータ「16都県の一般廃棄物焼却施設における焼却灰の放射性セシウム濃度測定結果一覧」があります。

(クリックで別画面に拡大)
それを見ると、岩手県では奥州市と一関市が高い放射能を出しています。ただし、この下の資料(黄色いマーカー)に示すように、奥州市と一関市は今回の対象ではないということなので、それが担保されるならば問題ないと思います。

宮城県では、国が基準としている8000Bq/kgを超える飛灰がでている地域はありません。

(クリックで別画面に拡大)
環境省のこの資料によると、今回震災がれきとして対象となっている沿岸の地区では、8月に発表された資料では下記に示すようなデータが得られています。

(クリックで別画面に拡大)
これらのことから、環境省の資料では、これらの地域の中で一番高めにでた陸前高田市でも3450Bq/kgの飛灰であったので、それ以外の地域ではそれ以下の可能性が高いとしています。今回東京都が受け入れた宮古市では焼却灰で133Bq/kgということを確認しています。

(クリックで別画面に拡大)
では、今回のことが、なぜ問題になっているのでしょうか?毎日JPによれば、都に寄せられた意見で反対が2868件で賛成が199件だったそうです。
おそらくは、反対してくる人たちの半分以上は震災がれき=放射能汚染がれきというイメージがあるためと思います。それに加えて、都の説明が不十分で、都民の心配を取り除くような形の説明をしてきていないからだと思います。石原都知事は、記者会見で「黙れ、と言えばいいんだよ」と言ったそうです。
私個人の意見としては、下記のようになります。
1.福島県のがれきは県外に移動させるべきではないが、放射能ではなく震災、特に津波で被害を受けた地域のがれきは福島県とは別に考えるべきだと思います。従って、今回の受け入れには基本的には賛成です。ただし、情報公開をしっかりとして、余計な疑念を払拭させるようにすることが必須です。
2.今回私も、環境省の資料がなければ震災がれきの対象地域がどこなのかわかりませんでした。この資料を見ても、岩手県のうち何市と何市、宮城県のうち何市と何市と明確に書いてあるわけではありませんが、一関市や奥州市が除外されており、沿岸地域に限定されるということは書いてありましたので、だいたいのイメージがわかって「震災がれき」≠「放射能がれき」とわかりました。東京都はもっと対象となる地域を明確に示す必要があると思います。そうでないと、今回は宮古市のがれきでも、そのうちに放射能を多く含むがれきを受け入れるのではないか?という疑念を払拭できません。「黙れ」ではなくわかりやすい説明が必要なのです。説明しても理解しない人は必ずいますが、そこで初めて「黙れ」でいいと思います。
3.今回の騒ぎで改めて都民が考えるべきことは、震災がれきの受け入れよりも、すでにあふれそうになっている都内のゴミ処理施設における放射性セシウムを含む廃棄物の処分をどうするか、ということです。現在の国の方針では、当面は東京の放射性廃棄物は都内で保管するように、ということですので、東京都の場合は埋め立て地でなんとかなるのかもしれませんが、場合によってはそれ以外にも一時保管施設を建設しないといけない、という話になるかもしれません。
みなさんはこれを読んでどう考えたでしょうか?
最後に、副知事でもある猪瀬直樹さんが日経BPに書いていた記事を紹介して終わりにします。
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