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11/11 海底土の汚染と海水の汚染の関係について その2

 
11/8 海底土の汚染と海水の汚染の関係について その1」で予告したとおり、前回の続きです。今、海の中で起こっている事を少しずつ理解していくため、海底土のCsやSrの汚染状況について、過去のデータを調べながら、いま発表されているデータを深く理解していこうという試みです。

私も勉強しながらまとめていっています。興味のある方はぜひおつきあい下さい。

今回もテキストは「海洋における放射性核種の移行パラメータ(1996年)」です。「温故知新」のつもりです。


前回は、分配係数(Kd)=堆積物中濃度/海水中濃度というお話をして、SrのKdは大体10、CsのKdは100-1000という事を書きました。

でも、前回は簡単に説明するためにそう書きましたが、実は、実際に海底堆積物汚染の評価に適用する場合にはいくつかの問題点がある、という注意書きがありましたので少しかみ砕いて説明を加えます。

(1) Kdは海水と堆積物が均一に混合した状態での相互間の核種の分配を示す指標ですが、現実の海ではこのような状態はまず存在しがたいということです。従って、Kdは海底のすぐ上の海水と堆積物表層の間、または水深の極めて浅い沿岸海域での海水・堆積物間での放射性核種の分配を考える場合にのみ直接に適用できるだろうということです。

(2) Kdが計算できる時は、海水と堆積物間での分配が平衡状態にあることを仮定していますが、実際には海水から堆積物への不可逆的な蓄積の部分が多く、水中濃度と堆積物中濃度の変動が対応しない場合が多いと考えられるそうです。従って、Kd値は長期間後の分配の予測に適用することが望ましいということです。

(3) 海水から海底への放射性核種の移行は、沈降粒子と結合して移行することが多いですが、海中の沈降粒子には、鉱物粒子の場合と生物起源粒子があり、両者のKd値はかなり異なるということです。生物起源粒子の場合は、プランクトンのKd(CF=濃縮度)を使うことも可能だということです。

(4) 堆積物への放射性核種の蓄積は、粒子表面での反応なので、粒子の表面積=サイズに大きく影響されます。これはIRSNのレポートにも書いてあったことです。そのため、粒度組成ごとのKd値というのがあることが理想だ、ということです。

(5) 放射性降下物や施設からの放射性廃液の調査から求めたKd値は、かなり長期間(2-3年)後の分布の指標にはなるが、短期間の汚染の評価に対しては過大評価になってしまうということです。短期間の評価には、実験室で求めた数値の方が合っているということです。

というように、Kd値というのは簡単ではないよ、いろんな条件によって変わるよ、ということが書かれていました。一応Kd値の計算式とそれにもとづくKd値は求められていますが、特に汚染数ヶ月の現時点では文献値通りにはいかないこともあるよ、ということですね。たぶん来年以降になればデータも落ち着いてくるのでしょう。


それをふまえて、次に実際の過去のデータを見ながらどういう事が言えるのかを見ていきましょう。まず最初は陸奥湾の海水と海底土のデータをSr-90とCs-137について見ています。

11/11海底土1

データにあった北緯41°16’、東経141°10’は地図上ではこの辺です。地図の真ん中の赤い十字のあるところです。湾内の内海です。

11/11海底土6

このデータは海水がmBq/Lで書かれているので、単位をBq/LとBq/kgに直して書き直しました。

11/11海底土3

このデータ、1986年8月というのは、チェルノブイリ事故があってから4ヶ月後のデータなのです。海水への流出はなく、大気中からの降下物の影響だけですが、新たな降下があったという意味では今年の夏と同じイメージでいてもいいかもしれません。このデータだけ見ると、新たな降下物があって一年目のKd値は低めで、2年目以降は1年目よりも高くなってそこで落ち着くというイメージができます。

次に茨城県の東海村の近くのデータです。こちらも1986年から数年間のデータです。

11/11海底土2

小さくて見にくいので、5ヶ所のうち、2ヶ所ほどのデータを書き出しました。

11/11海底土4

こちらのデータで見ると、必ずしもチェルノブイリ事故の1年目が低いということではないようです。陸奥湾とは異なり、太平洋の親潮の影響など、海流が速いところだというのも影響していると思います。また、海水のデータは、Cs-137とSr-90の絶対値がほぼ変わらず、だいたい0.002~0.004Bq/Lなのですが、海底土のデータについては、陸奥湾のデータの方がSr-90もCs-137も数倍高く、その結果Kd値も数倍高くなっています。おそらく、地形(海流)や底質の粒子の大きさなどの条件が違うのでしょう。

この報告書ができた時(1996年頃)の情報のまとめとして、以下のことがあげられていました。

1.1980年~1986年の北太平洋の外洋堆積物中のCs-137全量は、海水中の全量の1-5%である。これはPu-240よりも割合が少ない。Sr-90はさらに少なく、Sr-90濃度はCs-137濃度の約1/10である。

この報告は、上に示したデータ(外洋というよりは沿岸ですが)においても、陸奥湾でも茨城県でもほぼSr-90/Cs-137=0.1の近辺(0.07、0.16、0.17)ですのでだいたい当てはまると思います。つまり、福島原発事故以前のデータとしては、海底土のデータはSr-90/Cs-137比率=0.1というのが一つの目安だということです。

2.表面海水中では1972年と1988年を比べてみて、Cs-137の濃度は半減期を考慮するとほとんど変化していなかったという報告があるそうです。その報告では、Cs-137の表面海水中の半減期(表面海水から深海や海底土への移動の速度)は100年以上ということになったそうです。そして、Sr-90とCs-137の鉛直分布は、一般的には表面層と混合層で濃度が高く、その下では急激に濃度が減っていくそうです

3.Sr-90とCs-137はそのほとんどが溶存形であり、海水中に入ったSr-90とCs-137はH-3(トリチウム)と同様に海水と同じ働きをするといわれているそうです。粒子形のCs-137は海水中のCs-137の1%以下であり、粒子形のSr-90は極めて少ないということです。

これらのことから予想できることは、表面付近を移動している海水中のCs-137が数ヶ月で海底土に蓄積しているというのは、海水中のCs-137が深海の海水を通じて海底土に移行したり、粒子の大きな砂に沈着して海底に落ちていったのではないということです。具体的には、植物性あるいは動物性プランクトンに取り込まれて、その死骸の形で沈降していって蓄積しているのではないか、ということです。

実際、それを示唆するデータもあります。

11/11海底土5

詳細を説明するのは省略しますが、上の図でマーカーをつけた部分に記載してあるように、チェルノブイリの前はほとんどなかったのに、2-3ヶ月で780mの深度の海底で粒子として検出されたCs-134とCs-137があり、これは100m/dayの速度で沈降した事になります。これは、大型の生物起源粒子、つまりプランクトンなどに取り込まれて深層へ運ばれていることを示していると書いてあります。


いかがでしょうか。ちょっと難しいですが、チェルノブイリ事故があった頃の海水と海底土のCsやSrの汚染状況をある程度イメージできたでしょうか?わたしなりにまとめると、今日の要点は以下のようになります。

1.チェルノブイリ事故後の海水のCs-137は0.002~0.004Bq/Lであった。また、海水のSrも0.002~0.004Bq/Lであった。
2.一方、海底土のデータは、Sr-90/Cs-137比率=0.1程度である。これは海水の数値がほぼ変わらないけれども、Kd値がSr-90=10でCs-137=100(~1000)でCs-137の方が10倍高いということと合致する。
3.表面海水のCs-137の海表面からの消失の半減期は長く、汚染事故の数ヶ月後に海底へ沈降しているというのは、プランクトンに取り込まれて沈降した可能性が高い。


前回のその1、今回のその2で得られた知識を元にして、次回は現在の文科省や東京電力のデータを見ていこうと思います。この文献には他にもいろいろと書いてあるのですが、私が理解できて解説できるレベルのことはここまでなので、もっと知りたい方は原典を当たってみてください。

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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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