11/15 PNASに載った名古屋大学などのシミュレーション結果
今朝はニュースでいきなり「北海道や中国・四国地方にも放射能が拡散した可能性があるという調査を名古屋大学などのチームがまとめました。・・・」と始まったので、何かと思いました。多くの方がこの話はニュースでご存じかと思います。
この研究結果(シミュレーション結果)は、米国科学アカデミー紀要(研究者の間ではProNAS(プロナス)、またはPNAS(ピーナス)ということが多いです。)に発表されました。この雑誌は、非常に有名で権威ある雑誌ですので、かなりしっかりしたデータでないと掲載させてもらえません。
この論文は、PNASの11月14日号(online版:early edition)に掲載されました。全文のpdf(英語)はこちら、また、supporting informationと言って補足的な情報はこちらにあります。最近はジャーナルの電子化が進んだため、本文には掲載されずにこちらにしか細かい条件が出ていないこともよくあります。この中には、アニメーションもありますので、興味のある方はどうぞ。
なお、通常はPNASを購読している人しか読めないのですが、この論文は誰もが読めるオープンアクセス版というものになっています。著者本人たちのコメントはこちらに。
また、英語を読むのは、という人のために、今回は名古屋大学の方で日本語も用意してくれました。
日本だけでなく、ノルウエー、アメリカの研究者での国際的な協力によるボランティアの研究だそうです。また、第一著者の安成哲平さんはアメリカにあるUSRAという施設の客員研究員だそうです。3番目の著者に東大の早野教授の名前もありました。早野先生は「Ryugo S. Hayano」となっているので、ミドルネームを持っているのですね。Sって何の略だろう・・・
簡単にポイントを解説します。
1.今回の論文は、あくまでシミュレーションであり、実際の汚染の結果ではありません。従って、実際の測定を各都道府県で行ってみて欲しいというのが著者らの主張です。これを見て、地図で色が付いているからあぶない、などと考える必要はないということです。
2.Cs-137の沈着は、地形によってかなり変わってくる可能性があることがわかったということです。これが今回の一つの成果だと思います。中国・四国地方でも、標高の高い山岳地域では平地に比べて比較的高めに出ると予想されました。
3.今回のシミュレーションのデータは、3/20~4/19のデータを用いています。従って、3/15に放出された放射性物質の影響はあまり考慮されていない可能性があります。また、特徴としては、数値シミュレーションの結果と、文科省の定時降下物の測定の結果を合わせたものであるというところが特徴的です。そのため、降下物のデータとはかなり整合性がとれたものになっています。
4.著者らが述べているように、このシミュレーションは、今後の測定計画の検討や、すでに測定結果が得られているデータとの比較のために用いるものであって、このデータが真実であるとしてこれに基づいた議論をすることが目的としていないということを頭に入れておく必要があります。
では、最近の航空機モニタリングと比較してみましょう。まずは今回のシミュレーション結果から。

(プレスリリースより(http://www.nagoya-u.ac.jp/research/pdf/activities/20111115_hyarc.pdf?20111115))
続いて、文科省の最新の航空機モニタリングからCs-134+Cs-137の沈着量の図です。

縮尺が同じくらいになるように横に並べてみました。

こうやってみると、群馬県や栃木県、いわゆる東葛地域のホットスポットはシミュレーション結果では表現できていないのがわかります。ですが、シミュレーションというのはあくまである条件の下でこれくらいになるはず、という予想なので、細かい部分が合わないのは当然です。むしろ、このシミュレーションによると、道東が汚染されている可能性があるので、釧路や根室の土壌の測定を行ってみる必要性があると私は思いました。
西日本に関しては、はっきり言ってあまり気にする必要がありません。チェルノブイリ原発事故や核実験の影響で、これまでにも土壌中のCs-137は10-20Bq/kgは日本中どこにでもありました。今回のシミュレーションにおいて、西日本で紫になっている所がありますが、紫は25Bq/kg以下です。元々20Bq/kgあったとしたら、2倍になるかどうかです。あまり神経質にならなくてもいいと思います。もちろん、高めに出ると予想されるところは測定して確認した方がいいと思いますが、この結果を見て、西日本の人が騒ぐ必要はないと思います。
といってもデータを示さないと納得しない人もいるでしょうから、環境放射線データベースから2009年の土壌中のCs-137のデータを表で示します。西日本でも20Bq/kgを超えている地点はいくつもあります。

今回は日本語の資料が誰でも読めることから、ここまでにします。
なお、通常はPNASを購読している人しか読めないのですが、この論文は誰もが読めるオープンアクセス版というものになっています。著者本人たちのコメントはこちらに。
また、英語を読むのは、という人のために、今回は名古屋大学の方で日本語も用意してくれました。
日本だけでなく、ノルウエー、アメリカの研究者での国際的な協力によるボランティアの研究だそうです。また、第一著者の安成哲平さんはアメリカにあるUSRAという施設の客員研究員だそうです。3番目の著者に東大の早野教授の名前もありました。早野先生は「Ryugo S. Hayano」となっているので、ミドルネームを持っているのですね。Sって何の略だろう・・・
簡単にポイントを解説します。
1.今回の論文は、あくまでシミュレーションであり、実際の汚染の結果ではありません。従って、実際の測定を各都道府県で行ってみて欲しいというのが著者らの主張です。これを見て、地図で色が付いているからあぶない、などと考える必要はないということです。
2.Cs-137の沈着は、地形によってかなり変わってくる可能性があることがわかったということです。これが今回の一つの成果だと思います。中国・四国地方でも、標高の高い山岳地域では平地に比べて比較的高めに出ると予想されました。
3.今回のシミュレーションのデータは、3/20~4/19のデータを用いています。従って、3/15に放出された放射性物質の影響はあまり考慮されていない可能性があります。また、特徴としては、数値シミュレーションの結果と、文科省の定時降下物の測定の結果を合わせたものであるというところが特徴的です。そのため、降下物のデータとはかなり整合性がとれたものになっています。
4.著者らが述べているように、このシミュレーションは、今後の測定計画の検討や、すでに測定結果が得られているデータとの比較のために用いるものであって、このデータが真実であるとしてこれに基づいた議論をすることが目的としていないということを頭に入れておく必要があります。
では、最近の航空機モニタリングと比較してみましょう。まずは今回のシミュレーション結果から。

(プレスリリースより(http://www.nagoya-u.ac.jp/research/pdf/activities/20111115_hyarc.pdf?20111115))
続いて、文科省の最新の航空機モニタリングからCs-134+Cs-137の沈着量の図です。

縮尺が同じくらいになるように横に並べてみました。

こうやってみると、群馬県や栃木県、いわゆる東葛地域のホットスポットはシミュレーション結果では表現できていないのがわかります。ですが、シミュレーションというのはあくまである条件の下でこれくらいになるはず、という予想なので、細かい部分が合わないのは当然です。むしろ、このシミュレーションによると、道東が汚染されている可能性があるので、釧路や根室の土壌の測定を行ってみる必要性があると私は思いました。
西日本に関しては、はっきり言ってあまり気にする必要がありません。チェルノブイリ原発事故や核実験の影響で、これまでにも土壌中のCs-137は10-20Bq/kgは日本中どこにでもありました。今回のシミュレーションにおいて、西日本で紫になっている所がありますが、紫は25Bq/kg以下です。元々20Bq/kgあったとしたら、2倍になるかどうかです。あまり神経質にならなくてもいいと思います。もちろん、高めに出ると予想されるところは測定して確認した方がいいと思いますが、この結果を見て、西日本の人が騒ぐ必要はないと思います。
といってもデータを示さないと納得しない人もいるでしょうから、環境放射線データベースから2009年の土壌中のCs-137のデータを表で示します。西日本でも20Bq/kgを超えている地点はいくつもあります。

今回は日本語の資料が誰でも読めることから、ここまでにします。
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