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11/16 福島県で川底のセシウムが河口へ移動というNHKの報道への疑問

 
8/2 環境省が行った福島県の河川および川底の結果。川底のセシウムは雨で流されて河口へ!」の続報です。

11/16朝のNHKオンラインによると、環境省の調査結果で川底の放射性物質が河口に移動している傾向があるという発表がありました。この報道、全般的な傾向としては別におかしくはないので賛同できるのですが、今回発表されたデータからこの記事を作るのはあまりにお粗末だと思います。その理由をこれから示していきます。

NHKオンラインは1週間もすると消えるので、後日のために全文引用しておきます。

『東京電力福島第一原子力発電所周辺の市町村を流れる河川の調査で、河口付近の泥や砂に含まれる放射性物質の濃度が上昇していることが分かり、専門家は、「上流から海に向かって放射性物質が移動していると考えられる」としています。

環境省は、福島第一原発の事故の影響を調べるため、周辺の市町村を流れる河川で、放射性物質の測定を行っていて、新たに南相馬市などの河川で、9月に採取した泥や砂を分析しました。その結果、1キログラム当たりの放射性セシウムの濃度は、県北部を東西に流れる新田川の上流の飯舘村草野で3200ベクレル、河口付近に当たる南相馬市原町区で1万3000ベクレルでした。5月に行った調査と比較すると、濃度は上流で5分の1に減った一方、河口付近では3倍余りに増えていました。また、新田川の北を流れる真野川の河口付近に当たる南相馬市鹿島区でも、2万8000ベクレルと、濃度は、5月の2倍に上昇していました。これについて、放射性物質に詳しい近畿大学の山崎秀夫教授は、「上流から海に向かって川底の泥などに結びついた放射性物質が移動していると考えられる。河口付近の濃度の変化に注意する必要がある」と話しています。』(NHKオンライン11/16 15:40より)

このNHKの報道の元になったのは、11/15に文科省のHPに発表されたデータです。「公共用水域等の環境放射線モニタリング調査結果(速報)について[平成23年11月15日]」で、測定は、環境省と福島県が行ったものです。

ここには、河川の水質のデータの他に、川底の底質のデータが測定されています。川の水質は同じ地点でほぼ毎月測定されていたのですが、底質のデータは5月に引き続いて2回目です。ただし、正確に言うと、8/1に一度、7月の雨の後にどうなったか、という目的で調査して発表されていますので、それを含めると3回目です。なお、8月の発表については「8/2 環境省が行った福島県の河川および川底の結果。川底のセシウムは雨で流されて河口へ!」に書いてありますのでぜひご覧下さい。


さて、NHKの報道で私が何を問題だと考えているか、その理由を説明していきます。NHKの報道では、今回の9月の測定結果について、下記の二つのことをあげて、専門家のコメントをつけていました。

・新田川では、5月に行った調査と比較すると、濃度は上流で1/5に減った一方、河口付近では3倍余りに増えていた。
・新田川の北にある真野川の河口付近(南相馬市鹿島区)でも、28000Bq/kgと、濃度は5月の2倍に上昇していた(だから河口の濃度は普遍的に増加しているんだと主張したい)。

そして、専門家のコメントとして、「川底の放射性セシウムが河口付近に移動しているのだろう」と言わせています。

この内容自体は誰もが予想できることなので、特に驚くべきことではありません。ただし、データに基づいて話をしていれば、という前提がつきます。

では、今回の福島県の河川の底質のデータに注目してみていきます。今回の発表の中で、湖沼、ダム、農業用ため池などのデータは割愛させていただきます。

まずNHKオンラインで例として挙げられていた新田川のデータです。下の図で73(草野),74,75,76(原町区)の4ヶ所のデータが測定されており、前回(5月)と比較することができます。各地点で、Cs-134+Cs-137の合計の数字を計算して地図に記入しました。前回よりも濃度が増加した地点は黄色に赤字、減少した地点は水色に青字で示しています。74のように白地に黒い数字は今回初めて測定された地点、もしくは前回とほとんど変化がない地点です。74の場合は前回からほとんど変動がありませんでした。

11/16底質6

また、少しややこしいのですが、河口と上流のデータを比べて、河口が一番高い場合は赤い上向きの矢印(↑)、河口よりも川の上流の方が高い場合は青い下向きの矢印(↓)を示しています。また、川の名前をオレンジ色で塗ってあるところは、川の水に放射性セシウムが検出されている川を示します。

これだけ見ると、確かに新田川のデータは、NHKの報道のように、上流の濃度が減って河口付近の濃度が増えています。さらに新田川の場合は、河口の底質の濃度が一番高くなっています。つまり、川の上流の底質にあった放射性セシウムが、4ヶ月の間に流されて河口に移動してきた、という印象を持ちます。

でも、全ての川が同じような傾向を示しているのでしょうか?特に河口付近のセシウムの濃度が上昇しているというのは本当なのでしょうか?

今回の発表には、海に流れ込んでいる川が20本近くありました。それぞれについて見てみます。下の地図にあるようにかなり広い範囲にわたるため、地図を3分割して北から順番に示していきます。

11/16底質1

まず、一番北側の相馬市、南相馬市のあたりです。地蔵川から真野川までの4つの川では、河口付近の地点のデータが5月と比較できます。4つのうち3つの川では5月よりも9月の方が河口付近の底質のセシウム濃度は増加しています。

11/16底質2

次に、新田川を含む福島第一原発の近くです。福島第一原発は前田川と熊川の間にあります(☆のところ)。ここでは、河口のデータを前回と比較できる川は新田川しかありません(それ以外は今回新たに追加したということです)。またこのあたりでは、川の水でも放射性セシウムが検出されている川が多いですね。


11/16底質3

最後に県南のいわきの方です。こちらでは、前回とデータを比較できる7つの川において、6つが前回と比べて下がっているのです

11/16底質4

つまり、河口のデータで、5月と比較できる川は全部で12あり、そのうち7つは5月と比較して河口付近のセシウムの濃度は低下しているのです。福島県全てで、NHKの表現を借りると「東京電力福島第一原子力発電所周辺の市町村を流れる河川」の河口付近のセシウムの濃度が増加しているとはとても言えないのがおわかりだと思います。

いかがでしょうか?NHKの報道は、12あった川のデータのうち、一番自分の説に都合のよい川のデータを記載し、上流は濃度が減少したが河口付近は増加したと言っているのです。新田川の北にある真野川の河口も、確かに濃度が5月の2倍近くになっています。でも、これは全体的な傾向を示しているとは言えません。

それが許されるならば、逆にこのようなことも言えます。

県南のいわき地方の図で、102番の夏井川の六十枚橋では、5月に410Bq/kgあったセシウムが今回43Bq/kgと大きく減少し、河口のセシウムは減っている傾向があります。夏井川のさらに南の藤原川の河口付近のみなと大橋(108番)でも1390Bq/kgあったセシウムが530Bq/kgにまで減少し、この説を裏付けるものです。

いかかでしょうか?今回のデータだけで、NHKが報道したようなことをいうのはおかしいということがご理解いただけましたか?

私はNHKが新田川のデータを出した理由が予想できます。今回、上流と下流が全て前回の5月と比較できるのが新田川だけでした。そこで河口付近が増加している!と思い、近くの真野川もそうだったので、全てのデータを確認せずに専門家のコメントをもらって記事にしてしまったのでしょう。原発の北側だけに絞ってコメントするならばそれも許されますが、原発の南側のデータを一切無視して、12のデータのうち半分にも満たない傾向をもって河口付近のセシウムが上昇している、としてしまうのはお粗末すぎます。

河口付近の放射性セシウムが増加している、と主張したいならば、私が「8/2 環境省が行った福島県の河川および川底の結果。川底のセシウムは雨で流されて河口へ!」で示したような、下の図のようなデータを見て主張して欲しかったです。

11/16底質7_20110802231347116

今回は、おそらく上記のような理由だったと思います。でも、こうやってデータの一部だけを切り出して、自分にとって都合のよいデータを作るという情報操作は一般によく行われます。ですから、ニュースを鵜呑みにしないで、自分で元のデータに当たって確認するという作業が必要なのです。

なお、今回のNHKの報道については、今回のデータだけからこの結論を導くのはおかしいですが、普通に考えて別におかしな結論ではないため、そこに目くじらを立てるつもりはありません。私がおかしいと言っているのは、発表されたデータの中から自説に都合のいいデータだけを抜き出して、それに専門家と言われる人のコメントをつけてニュースに仕立て上げることが問題だということです。今回ならば、専門家に聞くのならば、県南部の河口付近のセシウム濃度の低下についてもコメントをもらうべきでした。

なお、今回のデータで、川の水からも放射性セシウムが検出されたような川は、底質の放射性セシウムも一番高いところで10000Bq/kgを超えていることが多かったように思います。

最後に、参考までに阿武隈川の流域はどうなっているのか、調べてみました。こちらも、前回と比べてどうか、と言われると確かな傾向は見いだせません。

11/16底質5

NHKの報道に対するコメントが多くなってしまったため、今日は別の視点でデータを見ることができませんでした。後日時間があればもう一度振り返ってみたいと思います。

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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
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