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11/21 JAMSTECのシンポジウム(海底土の汚染と海水の汚染の関係について その3)

 
11/20に秋葉原で行われたJAMSTEC(海洋研究開発機構)のシンポジウムに参加してきました。

東日本大震災において、海底でどのような変動があってあの大津波が引き起こされたのか、という研究発表や、JAMSTECのいろいろな調査結果についての発表がありました。

この中で、私が今一番興味がある海洋汚染、特に海底土の汚染について紹介します。

今回のシンポジウムは、JAMSTECがどのようなことを行っているかの紹介も兼ねているためか、カラーのパンフレットもいろいろとおいてあり、名前しか知らなかったJAMSTECの実態をなんとなく知ることができました。300名近く入る会場に、2/3程度は入っていたでしょうか。昨日の東大農学部の報告会よりは若い人の比率も多めでした。4月につくばで防災科学技術研の発表を聞いた時も基本的には中高年が多かったので、こういう会に出てくるのは基本的には年齢層が高いものなのかもしれませんね。

これまでJAMSTECについては、主に文科省のHPで出てきたモニタリングやシミュレーションでしか知らなかったのですが、シミュレーションについても詳細な解説をしてもらえたので、よくわかりました。

一方、MCS、OBS、CTD、などとテクニカルタームがあふれていて、一応解説はしてくれるのですが、初めて聞く人間にはちょっとつらかったです。暗黒汁、地震汁、粘土一番搾りなどという楽しい用語を発明してわかりやすく説明してくれる高井さんというプログラムディレクターの方もいました。

さて、今回は、海洋汚染の中でも特に垂直方向への汚染と海底土の汚染についてのメカニズムについてわかったことを中心に書いていきます。

地球環境変動領域 物質循環研究プログラムチームリーダーの本多牧生さんの話です。本多さんのチームは、西部北太平洋における生態系と生物地球化学の季節的/経年的変化を研究しているそうです。

今回の発表は、S1(北緯30度、東経145度:亜熱帯循環域)とK2(北緯47度、東経160度:亜寒帯循環域)というJAMSTECが定点観測している2点と、そこに至るまでいくつかのポイントのデータでした。今年の4月から5月に「みらい」号で行った調査(MR11-03)でわかった結果です。

11/21JAMSTEC4

この調査において、途中のいくつかのポイントで海水中の放射性セシウム量を測定しました。その結果、北緯40°以北のポイントでは平均0.013Bq/L、北緯35°以南のポイントでは0.028Bq/Lで、全地点での平均は0.048±0.066Bq/Lでした。ご注意いただきたいのは、下の図でK2地点に行ったのが4/19、S1地点に行ったのが4/29-5/1であり、この時点ではこんな遠くまで2号機から流れ出した汚染水は到達していません。従って、ここで検出された海水の放射性セシウムは大気中から拡散したものが海に沈着したものであると考えられるということです

11/21JAMSTEC2
(ポスター発表より)
同じ図が日本海洋学会のHPから和訳をダウンロードできます。

さて、このグループでは、S1とK2にセジメントトラップという沈降物を採取するための装置を仕掛けているそうです。そこで定期的にサンプルを回収して、その中にある沈降粒子の分析も行っているそうです。海底に沈降してくる粒子ということは、これがすなわち海底土になるということです。

その結果、下の図にあるように、水深が4810mもある海底で4/18-30に採集した海底土(沈降粒子)から、Cs-134が検出されたということです。青いところからはCs-134が検出されています。(縦軸を見るのを忘れたのですが、これはどれだけの物質が沈降してきているかを示す数値(単位がmg/m2/day)で、Cs-134の量ではありません。)

11/21JAMSTEC3-1
(ポスター発表より)

これがどういう意味を持つかということですが、3.11以前には半減期が2年のCs-134は検出できませんでした。核実験時代のCs-137は微量ながら残っていますが、Cs-134が検出されたということは、新たに放出された放射性セシウム、つまりこの場合で言えば福島第一原発由来であるとほぼ予想できます。福島第一原発由来のCs-134/Cs-137比は約1.0で、チェルノブイリの時は約0.5だったということなので、この比を見ても約1.0であり、確かに福島由来であるということを確かめたと海水のデータの時に発表がありました。

大気中に放出された放射性物質がK2やS1の地点に到達できるのはシミュレーションの結果では3/15以降、ということなので、わずか1ヶ月程度で海面から深さ4810mの海底まで粒子が沈降しているということです。これは、170m/dayの速度で降下したということになります。非常に速い速度です。11/11 海底土の汚染と海水の汚染の関係について その2」では、過去の事例として、チェルノブイリの際に100m/dayの速度で沈降した例があるとご紹介しましたが、それよりも速い速度です。

11/11 海底土の汚染と海水の汚染の関係について その2」においてはプランクトンに取り込まれて、と私の予想で書いてしまいましたが、今回のシンポジウムではポスターセッションもあったので、本多さんに直接質問することができました。その時の知見や、他の方の発表から得た知識を元に修正します。

JAMSTECのHPの海洋物質循環研究チームのサイトに海底土がどのように沈降してできるかを説明したものがありましたので、それを引用して説明します。

11/21JAMSTECー1

海流は、表層における流れがメインであり、海底までは流れがあるわけではないようです。海底での海流は、全地球的に1000年単位での大きな流れはありますが、表層の海流のように速い流れはないそうです。(海底土の測定がよく行われている福島県の30~50km程度沖合は、海深が100-200メートルです。黒潮は400m程度、親潮は100m程度までの深さまでしかないということだったので、このくらいの浅い海で表層の海流がどこまで影響しているかどうかはわかりません。おそらく黒潮の影響はあまり受けないので、親潮は届かない程度の深さだと想像していますが、100m程度だと微妙ですね。)

では、海底土の放射性セシウムの汚染はどうやって起きるかというと、上の図でマリンスノーと書いてあるものがありますよね。これは、プランクトンのフン、死骸、分泌する粘着物などに鉱物などが付着して、それが海底に沈んでいくものだということです。海中から拡散して、あるいは大気中から沈着した放射性セシウムも、この粒子状物質に付着する形で海底に沈降していくようです。

11/21JAMSTEC5

以前、コンタンさんから「10/19 海洋プランクトンから669Bq/kgの放射性セシウム検出!」へのコメント
『どこかに海洋汚染の鉛直方向の拡散について解説した資料はないでしょうか?
(中略)・・その後、海水中の放射性セシウムはどこへ向かったのでしょう?均一に薄まったのでしょうか?それとも沈降して底泥にたまっているのでしょうか?』

という質問をもらっていました。なかなか答が見つからなかったのですが、おそらく今回の答がそれに当たるものだと思います。つまり、鉛直方向への拡散は、主にマリンスノーという形での沈降による。そして、海水中の放射性セシウムは、多くは海流によって希釈されたが、一部(?)が沈降して海底にたまっていったということだと思います。

11/21夜追記:@Tmiyamaさんからコメントをいただきましたが、遠洋の深海で起こっていることと、沿岸で起こっていることは同じでない可能性があります。従って、現在海底土の調査を行っている範囲でのメカニズムについては、違ったメカニズムがある可能性もあります。11/27(日)に教育テレビでETV特集(22時)があるようですので、そこで何かわかるかもしれません。

ここまで詳しく本多さんに確認したわけではなく、私の推測も入っているのですが、「11/11 海底土の汚染と海水の汚染の関係について その2」でプランクトンだけのような書き方をしていたのを改めて、今回の記述内容に修正したいと思います。

また、プランクトンについては別の発表がありました。プランクトンも特殊な鯉のぼりみたいな形をしたネットで2000トンの海水を濾過して集めて測定しました。その中の放射性セシウムは、原発事故以前は0.05-0.08Bq/kg湿重量に対して今回は3-4Bq/kgでした。ちなみに、乾重量では10-60Bq/kg、懸濁物で測定すると5-40Bq/kgでした。
11/21JAMSTEC1.5
(ポスター発表より)
同じ図が日本海洋学会のHPから和訳をダウンロードできます。

これについては東京電力の人がわざわざ会社名を名乗って質問し、濃縮係数を聞いていました。このあたりの海水の放射性セシウムはだいたい0.01Bq/kgなので、濃縮係数としたら300程度になるそうです。プランクトンの濃縮係数は30とか50とかいわれていますので高いです。ただし、現在は過渡期であり、この3-4Bq/kgが、体内に吸収したのか外に吸着したのかは判断できない。また、プランクトンと称しているが、本当にプランクトンだけを集めたわけではなく、ゴミのようなものも集めているのかもしれないので、今後確認したいということでした。

また、このプランクトンが、黒潮などに乗ってそのまま流れていくのか、それとも途中で沈降するのか?という質問があり、それは今後調査してデータを取っていきたい、ということでした。

少し脇道にそれましたが、さらに詳しく知りたい方のために、今回とっておきのキーワードを教えてもらったので、「生物ポンプ」という言葉で検索して調べてみてください。「生物ポンプ」という言葉は海洋における炭素循環ということで出てくる用語です。なぜか「atomica」にも出ていましたが、二酸化炭素による地球温暖化とからめての解説があります。

11/21JAMSTEC6
atomicaの図より


今回のまとめです。

1.JAMSTECの発表により、深さ4810mの海底への沈降粒子の中にCs-134が4/18には検出されていたことがわかった。これは大気中に放出された放射性セシウム由来としても、170m/dayの速度で沈降しているものであり、かなり速い速度である(今回発表のトピックスの一つ)。
2.海底土の汚染について、これまで少しずつまとめてきましたが、海底土が汚染されるのは基本的にはこの沈降粒子によるものだということが今回わかりました。これは、プランクトンのフンや死骸、粘液などに鉱物などが付着してできる粒子で、大きさは1mmにも満たないものがほとんどです。放射性セシウムもこの粒子に付着する形で沈降粒子となり、海底土として蓄積していると考えられます。

シミュレーションの話は今回は省略します。一つだけコメントすると、「5/25 文科省の第5回の海洋汚染シミュレーション結果を解説!」などで解説してきたシミュレーションは海洋からの放出だけを想定しており、実際の測定データ、特に3月のデータを反映していない部分がある。現在、大気中からの放出も考慮したバージョンを作成しており、それだと実際のデータに少し近づいている、ということでした。

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コメント

Re: JAMSTECの広報活動

年齢層の比率は、印象レベルなので正確ではありませんが、JAMSTECの来場者アンケートでは、年代(40代、50代など)を書く欄もあり(東大農学部のアンケートではなかった)、年齢層ごとの対策も意識している気はしました。

つくば市のいろいろな研究所は、4月の研究所公開、夏休みのちびっ子博士用公開、秋の各研究所の特別公開、科学フェスティバルなどでアウトリーチ活動を行っており、その時に同時に講演も行っていることが多いようです。私はそういう時にはあまり聞かないのですが、おそらくそういう設定ならば小さい子供のいる世代も家族で講演を聴く人と子供の面倒を見ながら楽しむ人とにわかれて話を聞けるのでしょうね。

今回のように講演会だけ、という設定では、やはり内容によほど興味がないと人を呼ぶのは難しいと思います。10代、20代の若者に土日に遊ばずに講演会を聞くことを求めてもそれは厳しいでしょうね。

JAMSTECの広報活動

話は内容からそれますが、確かに一般的に講演会などへの出席者の年齢層が高い、と言う事に同じ印象を持っています。
一方で、JAMSTECに若い人が多いと言うのは、毎月1回地球情報館(横浜研究所)で一般公開セミナーを開催したり、(お気付きと思いますが)中にちょっとした科学館並の展示施設や、児童向けの図書館を備えているなど、いわゆる研究公開とアウトリーチ活動の連携が上手く取れているいい例かと。もちろん、職員の方々の意識も高いと感じました。
比較的最近できた研究所だからこそ出来る、「だけ」なんでしょうか?

http://www.jamstec.go.jp/j/pr/seminar/index.html

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Author:TSOKDBA
twitterは@tsokdbaです。
3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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