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11/25 横浜市のストロンチウム検出、福島原発と無関係と文科省が発表!

 
10/12 横浜市のマンション屋上からSrが195Bq/kg検出のニュースの意味は?」と「10/16 横浜市港北区のストロンチウム検出の続報-横浜市の検査結果」でご紹介した横浜市のストロンチウム(Sr)検出の続報です。

11/24、文科省は「横浜市が採取した堆積物及び堆積物の採取箇所の周辺土壌の核種分析の結果について」という横浜市の土壌についての分析結果をまとめました。

横浜市が測定に利用した、「同位体研究所」の測定方法には問題があって、ストロンチウム以外を検出している可能性が高いという趣旨のコメントが付いています。

そもそもこの問題は、横浜市民が港北区のあるマンションの屋上で溝にたまった堆積物を「同位体研究所」に依頼して測定したところ、ストロンチウムが検出されたというニュース(「10/12 横浜市のマンション屋上からSrが195Bq/kg検出のニュースの意味は?」参照)から始まりました。その後、横浜市が近くの土木事務所や噴水から堆積物を採取し、同じ「同位体研究所」に依頼して測定した結果を発表したのが下の図です(「10/16 横浜市港北区のストロンチウム検出の続報-横浜市の検査結果」参照)。同じマンション屋上のサンプルも測定しましたが、管理組合の許可が得られず公表されていません。

11/25横浜Sr1

10/14に横浜市が発表した結果では、セシウムがCs-134とCs-137合計で約30000Bq/kg以上検出されていました。そして、ベータ線しか出さないストロンチウムは簡易に検出できる固相検出法で測定しています。

今回、文科省は(財)日本分析センターに依頼して4つのサンプルを測定しています。まずはその結果を示します。

11/25横浜Sr2

横浜市の1番と同じサンプルが上の文科省の1番のサンプル、そして横浜市の2番のサンプルが文科省の3番のサンプルです。同じサンプルを比較しやすいように並べてみました。

11/25横浜Sr3

比較すると、放射性セシウムの数値は同じサンプルではほぼ同じ数値が出ていることがわかります。このCs-134/Cs-137の比率から、少なくとも放射性セシウムについては、この堆積物の中に福島原発由来のものがあることがわかります。

ただ、注意しないといけないのは、放射性セシウムが福島原発由来であっても、放射性ストロンチウムも福島原発由来であるとはかぎらないのです。もし福島原発由来の堆積物には放射性ストロンチウムがほとんどなければ、検出された放射性ストロンチウムは福島原発由来ではない可能性があるのです。

ストロンチウムはベータ線しか出さないため、他の元素と分離して測定しないとならず、測定に時間がかかります。文科省の測定でも1ヶ月近く要しています。一方、同位体研究所の固相抽出法では、簡便に3-7日で結果が出る方法なのですが、Sr-89とSr-90の分離ができないなどの問題点があることはわかっていました。

今回、同位体研究所が測定したのと同じサンプルを文部科学省放射能測定法シリーズ「放射性ストロンチウム分析法」に従って測定したところ、Sr-89は不検出となり、Sr-90も1番のサンプルで不検出、2番のサンプルで1.1Bq/kgとなりました。検出下限値は、Sr-89で約 3Bq/kgであり、Sr-90で、約 0.8Bq/kgだということです。

この結果と、文科省の2番と4番のサンプルの結果でSr-89が不検出であったことも合わせて、文科省はこの1番で検出されたSr-90は『放射性ストロンチウムについては、福島第一原子力発電所の事故に伴い、新たに沈着したとは言えない』と結論づけました。

では、同位体研究所で測定したものはなんだったのでしょうか?文科省の説明によれば、『同社の HPによれば、固相抽出法と想定されるが、これまでの(財)日本分析センターの実績や海外の文献によると、この手法ではラジウム、鉛などベータ線を放出する天然核種、あるいはベータ線を放出する子孫核種が抽出されることが示されている』ということなので、ラジウムや鉛などではないか?ということです。

Sr-89の半減期は約50日程度ですから、Sr-89が検出されていれば福島原発由来とほぼ断定できるのですが、Sr-89が不検出となると、Sr-90の検出量が1.1Bq/kgとか0.82Bq/kgであれば、これまでの核実験由来のSr-90の量とあまり変わらないということになります。

実際、「日本の環境放射能と環境放射線」のサイトには、2009年の土壌中のSr-90のデータが載っており、それによると横須賀市で1.8Bq/kgというデータですから、今回のデータとほぼ変わらないということになります。

11/25横浜Sr4

市民グループが依頼した測定により、東京の霞ヶ関でストロンチウム検出というニュースもありましたが、同じ同位体研究所の測定ということで、文科省はこれもストロンチウム以外を検出している可能性がある、というコメントを出しています。こちらも検出法の問題ということで片付けられてしまうようです。

この問題についてもっと知りたい方は、このtogetterをチェックしてみてください。

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コメント

Re: No title

グワチさん

「オアシス」とのコメントありがとうございました。

この問題、同位体研究所の反論が出ており、それに対する評価も両論あるような気がしています。固相抽出法の真の実力が今私には見極めができていません。もう少しいろいろ調べてわかったら再度まとめるかもしれません。

今後ともよろしくお願いします。

No title

初めまして。この問題について色々と調べていてこちらを見つけました。中立の立場で冷静かつ客観的に記述されていて安心して読むことができます。原発事故関係のサイトの中ではオアシスのようですね。(笑)

固相抽出法というのは良く知りませんが、同定までの時間が短い利点を生かして、予備検査に威力を発揮すると思います。放射性ストロンチウムを有意に検出したサンプルだけ本検査へ、というやり方にすれば無駄な検査を減らせるでしょう。ストロンチウムの分布と由来を知るためのデータ蓄積は当然ですが、その正確さと有意性が一番の問題です。国と民間で反目するのではなく、互いの長所をうまく組み合わせて精度を高めてもらいたいです。

ストロンチウム90は60年代からフォールアウトとして日本全国に存在してますね。調べればどこの庭先からも出る可能性はあります。元々89と90を分離できないやり方では原発由来のストロンチウムの証拠を挙げることはできません。

それに、その地域のストロンチウム90の定量データが存在しないのでは、仰る通り、90を確認してもそれがいつ、どこから来たのか判断できないでしょう。

マンションや側溝の土砂という濃縮された堆積物とはいえ、200Bq/kg近くも検出されれば、やはりそうかなとも思いますが、それも周辺土壌と一緒に調べないと濃縮の影響は排除できなくなります。まして検出限界ぎりぎりの濃度では過去のフォールアウトとの区別は付きがたいですね。

横浜や東京の記事にある数値も、自分の生活範囲の中にあるか無いかという視点で健康管理や除染のために役立てるしかできないデータだと思います。

最近は不安を煽るのにもデータや数式で理論武装した記事が増えてきて、いちいち検証が難しくなってきてます。貴ブログにはこれからも平易で有用な情報をぜひともお願いしたいです。長文失礼しました。

月間降下物も検査すればいいのに

文科省が日本分析センターに検査委託している環境モニタリング調査では、現在昨年度分を検査しているそうです。
今年の3月のストロンチウムなどの検査結果は、早くて来年度の公表だと聞きました。
4月以降の分の検査は来年度だそうですので、結果はさらに次の年度の公表だそうです。
全国の検体は日本分析センターに送付済みなそうですから、優先的に検査して結果をこんなふうにすぐ公表してくれればいいんですけどね…

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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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