12/2 東京電力が発表した福島第一原発の港湾内海底土のデータ
12/1、東京電力は福島第一原発の港湾内の海底土の分析結果を記者会見で発表しました。
海底土のデータ自体はこれまでも何回も公表されています。今回の発表は、これまで物揚場前でしか測定されていなかった、港湾内のデータを取ってくれたところが違います。
では、早速どんなデータが出ているのか見ていきましょう。東京電力の発表にしては、今までになくわかりやすい表現をしてくれています。今回の発表のしかたについては、満点はあげられませんが、私としては合格点をあげます。きっと今までいろいろと文句を言ってきたのを東京電力の関係者が誰か読んでくれているのでしょう。情報公開のあり方が改善されたことは望ましいことです。

今回目を引くのは、5号機や6号機が図の中に入っていることです。実は、5号機や6号機のバースクリーン前については、最近まで海水のデータが発表されていませんでした。11/15以降に海水のサンプリングも行われるようになっていたのですが、私も最近は海水のデータをチェックしていなかったので気がつきませんでした。
1-4号機のスクリーン海水は、今ではシルトフェンスという汚濁防止膜を張っていますので、その外に放射性物質がそのまま流れ出すことはなくなっています。これまでの実績としても、シルトフェンスの内側と外側では、外側の放射性セシウム量は1/5~1/10程度に減っています。詳細は、5月の時のデータの分析になりますが、「5/16 3号機からの海への汚染水流出はいまのところ止まっているようだ」をお読み下さい(今読み返してみて、よくこんな細かい分析をしていたものだと半年前の自分に感心します。5/11前後の3号機からの汚染水流出に伴うシルトフェンス内外の放射性物質の挙動を細かく解析したものです。)。
ニュースでは、「海底土からセシウム160万ベクレル…福島第一」というようなタイトルをつけているメディアもありますが、はっきり言って、これは大騒ぎする必要はありません。
「11/8 海底土の汚染と海水の汚染の関係について その1」や「11/11 海底土の汚染と海水の汚染の関係について その2」でご紹介したように、海底土と海水の間の分配係数(Kd)はCsの場合は100~1000ということがわかっています。つまり、海底の堆積物中濃度/海水中濃度=100~1000なのです。
今回の東京電力のデータに、ほぼ同じ地点の11/30の海水のデータを合わせて記入してみました。ここではKd値は記載していませんが、Cs-134+Cs-137でKd値を求めると、5号機では570、1-4号取水口北では8750、2号機スクリーン外側では723、1-4号取水口南では8121となっています。

Kd値が1000を超えて8000近いデータがあるので、海底の堆積物中濃度/海水中濃度=100~1000に当てはまるとは言い切れない部分もあるのですが、シルトフェンスを張っていることでより海底土に濃縮されていると仮定すると、このようなデータが出てもおかしくないかもしれません。港湾内の海水で放射性セシウムとして合計500Bq/kg近く検出している状況では、単純に1000倍したら海底土で500,000Bq/kg検出される可能性もあるのです。
ですから、今回の160万ベクレルという数字だけを見て、大騒ぎする必要はありません。
それよりも今回、コンタン(@Kontan_Bigcat)さんが教えてくれたのですが、東京電力の海底土の測定は、Bq/kg湿土で行っているようなのです。通常の手法ではBq/kg乾土で行います。つまり、土壌を熱をかけるなどして乾燥させて水分がほとんどない状況にしてから測定器にかけるのです。ですが、下の海底土の試料採取の写真を見ても、採取した水分を含む泥をそのまま測定用の容器に入れているような気がします。

これはなぜ問題かというと、二つの問題があります。一つは、Bq/kg乾土よりもBq/kg湿土の方がデータが低く出るということです。もう一つは、文科省や福島県の他の測定データと比較するのが難しくなるのです。
例えば、海水を含んだ状態の1kgの海底土(泥)をそのまま測定するのと、海水を蒸発させて乾燥させた状態で測定するのとでは、乾燥土にすると重さが半分?くらいになります(どれだけ減るのかはデータがわかっていません)。仮に半分の500gになると仮定すると、Bq/kgに換算するとデータは2倍になります。同じ海底土を測定するのでも、湿土で測定するのと乾土で測定するのとではデータが違ってくるのです。これは、茶葉の放射性セシウムを測定するのに水分を含んだ生葉で測定するのか乾燥した荒茶で測定するのかというような違いだと考えればわかると思います(この場合は4-5倍荒茶の方が数値が高くなります)。
東京電力の測定は全て同じ方法(Bq/kg湿土)で測定しているようなのですが、そうなると、Bq/kg乾土で測定している文科省のデータとの比較が難しくなります。Bq/kg湿土のデータをBq/kg乾土に換算するための係数がわからないと単純には比較ができません。
海底土の放射能測定において、Srは日本分析センターで測定するので乾土で測定しています。ですから、例えばこの下のデータのように、CsのデータとSrのデータを並べて記載されても、Bq/kg乾土で測定されたものならば比較できますが、もしCsはBq/kg湿土で測定し、SrはBq/kg乾土で測定していたら、単純には比較できません。この表では上の部分にBq/kg乾土と書いてありますが、CsのデータはBq/kg湿土のデータの可能性が高いです。少なくとも、ヨウ素とセシウムだけのデータとして発表された時から数値は変更されていません。単にSrのデータを下に加えただけです。

同じ表の中に注釈もなく、Bq/kg乾土で測定したデータとBq/kg湿土で測定したデータを並べて記載しているとなると、データの解釈がややこしくなるので、非常に問題となってきます。特にSr/Cs比を出す時には問題です。見かけ上Sr/Cs比が大きくなってしまうからです。
この問題については、もう少し調査しようと思っています。
なお、コンタンさんが海底土の測定結果リンク集を作ってくれたので、詳細データを知りたい方は参考にしてください。
では、早速どんなデータが出ているのか見ていきましょう。東京電力の発表にしては、今までになくわかりやすい表現をしてくれています。今回の発表のしかたについては、満点はあげられませんが、私としては合格点をあげます。きっと今までいろいろと文句を言ってきたのを東京電力の関係者が誰か読んでくれているのでしょう。情報公開のあり方が改善されたことは望ましいことです。

今回目を引くのは、5号機や6号機が図の中に入っていることです。実は、5号機や6号機のバースクリーン前については、最近まで海水のデータが発表されていませんでした。11/15以降に海水のサンプリングも行われるようになっていたのですが、私も最近は海水のデータをチェックしていなかったので気がつきませんでした。
1-4号機のスクリーン海水は、今ではシルトフェンスという汚濁防止膜を張っていますので、その外に放射性物質がそのまま流れ出すことはなくなっています。これまでの実績としても、シルトフェンスの内側と外側では、外側の放射性セシウム量は1/5~1/10程度に減っています。詳細は、5月の時のデータの分析になりますが、「5/16 3号機からの海への汚染水流出はいまのところ止まっているようだ」をお読み下さい(今読み返してみて、よくこんな細かい分析をしていたものだと半年前の自分に感心します。5/11前後の3号機からの汚染水流出に伴うシルトフェンス内外の放射性物質の挙動を細かく解析したものです。)。
ニュースでは、「海底土からセシウム160万ベクレル…福島第一」というようなタイトルをつけているメディアもありますが、はっきり言って、これは大騒ぎする必要はありません。
「11/8 海底土の汚染と海水の汚染の関係について その1」や「11/11 海底土の汚染と海水の汚染の関係について その2」でご紹介したように、海底土と海水の間の分配係数(Kd)はCsの場合は100~1000ということがわかっています。つまり、海底の堆積物中濃度/海水中濃度=100~1000なのです。
今回の東京電力のデータに、ほぼ同じ地点の11/30の海水のデータを合わせて記入してみました。ここではKd値は記載していませんが、Cs-134+Cs-137でKd値を求めると、5号機では570、1-4号取水口北では8750、2号機スクリーン外側では723、1-4号取水口南では8121となっています。

Kd値が1000を超えて8000近いデータがあるので、海底の堆積物中濃度/海水中濃度=100~1000に当てはまるとは言い切れない部分もあるのですが、シルトフェンスを張っていることでより海底土に濃縮されていると仮定すると、このようなデータが出てもおかしくないかもしれません。港湾内の海水で放射性セシウムとして合計500Bq/kg近く検出している状況では、単純に1000倍したら海底土で500,000Bq/kg検出される可能性もあるのです。
ですから、今回の160万ベクレルという数字だけを見て、大騒ぎする必要はありません。
それよりも今回、コンタン(@Kontan_Bigcat)さんが教えてくれたのですが、東京電力の海底土の測定は、Bq/kg湿土で行っているようなのです。通常の手法ではBq/kg乾土で行います。つまり、土壌を熱をかけるなどして乾燥させて水分がほとんどない状況にしてから測定器にかけるのです。ですが、下の海底土の試料採取の写真を見ても、採取した水分を含む泥をそのまま測定用の容器に入れているような気がします。

これはなぜ問題かというと、二つの問題があります。一つは、Bq/kg乾土よりもBq/kg湿土の方がデータが低く出るということです。もう一つは、文科省や福島県の他の測定データと比較するのが難しくなるのです。
例えば、海水を含んだ状態の1kgの海底土(泥)をそのまま測定するのと、海水を蒸発させて乾燥させた状態で測定するのとでは、乾燥土にすると重さが半分?くらいになります(どれだけ減るのかはデータがわかっていません)。仮に半分の500gになると仮定すると、Bq/kgに換算するとデータは2倍になります。同じ海底土を測定するのでも、湿土で測定するのと乾土で測定するのとではデータが違ってくるのです。これは、茶葉の放射性セシウムを測定するのに水分を含んだ生葉で測定するのか乾燥した荒茶で測定するのかというような違いだと考えればわかると思います(この場合は4-5倍荒茶の方が数値が高くなります)。
東京電力の測定は全て同じ方法(Bq/kg湿土)で測定しているようなのですが、そうなると、Bq/kg乾土で測定している文科省のデータとの比較が難しくなります。Bq/kg湿土のデータをBq/kg乾土に換算するための係数がわからないと単純には比較ができません。
海底土の放射能測定において、Srは日本分析センターで測定するので乾土で測定しています。ですから、例えばこの下のデータのように、CsのデータとSrのデータを並べて記載されても、Bq/kg乾土で測定されたものならば比較できますが、もしCsはBq/kg湿土で測定し、SrはBq/kg乾土で測定していたら、単純には比較できません。この表では上の部分にBq/kg乾土と書いてありますが、CsのデータはBq/kg湿土のデータの可能性が高いです。少なくとも、ヨウ素とセシウムだけのデータとして発表された時から数値は変更されていません。単にSrのデータを下に加えただけです。

同じ表の中に注釈もなく、Bq/kg乾土で測定したデータとBq/kg湿土で測定したデータを並べて記載しているとなると、データの解釈がややこしくなるので、非常に問題となってきます。特にSr/Cs比を出す時には問題です。見かけ上Sr/Cs比が大きくなってしまうからです。
この問題については、もう少し調査しようと思っています。
なお、コンタンさんが海底土の測定結果リンク集を作ってくれたので、詳細データを知りたい方は参考にしてください。
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