12/9 東京電力は汚染処理水の海洋放出を施設運営計画に盛り込む予定だったが全漁連の反発をみて盛り込まず!
12/8の読売オンラインに、「処理汚染水放出、全漁連抗議受け再検討」という記事が載っていました。
この記事は、ちょっと見過ごせない話なので、久しぶりに東京電力の記者会見を聞いてみることにしました。
最近まで知らなかったのですが、ニコ生やUSTREAM以外にも、現在は、東京電力のHPでも記者会見の状況が1週間分は見ることができるようになっていましたので情報としてお知らせします。
※実は、ほとんど書き上げたところでニュースとして「施設運営計画には盛り込まず」ということが判明したため、最新のニュースとはそぐわない形になっていますが、盛り込むことを検討している、という午前中の会見の内容を元にしてほとんどの文章を書いています。その点はご了承下さい。
1.読売オンラインからの紹介
読売オンラインの記事によると、
『東京電力が、福島第一原子力発電所にたまる処理汚染水を海に放出することを検討していることが8日わかった。
経済産業省原子力安全・保安院に近く提出する同原発の中期的な施設運営計画に盛り込む可能性を、全国漁業協同組合連合会に打診していた。東電は同日、全漁連の抗議を受け、再検討する方針を示した。
東電によると、原子炉から直接漏れてきた高濃度汚染水から、放射性セシウムなどを取り除いた処理水が約10万トンたまっており、処理水の一部は原子炉の冷却に再利用されている。一方、原子炉建屋などには地下水が1日200~500トン流入し、汚染水は増え続けている。処理水の貯蔵タンクの容量は、最終的には約16万トンまで増えるが、来年3月には、いっぱいになると予想されている。
そこで、処理水に再度、別の浄化処理を施して、国の定める安全基準以下に放射性物質の濃度を下げた上で放出する計画の検討に入った。東電の松本純一・原子力立地本部長代理は、同日の記者会見で「先の見通しのないまま、タンクを増設し続けるわけにはいかない」と説明した。』
でしたが、これだけではよくわからないので、記者会見の動画及びtogetterのまとめから情報を補足して、まとめました。@ystriceraさん、いつもありがとうございます。
2.記者会見のまとめ
全漁連から抗議があったという件について:
東京電力が今週月曜日(5日)に、国に対してそのうちに提出する予定の施設運営計画(その2)が社内ではまとまったので、全漁連に事前に説明をしにいって打診をしたということです。汚染水については基本的には構内での保管・再利用をしていくが、余った部分については告示濃度を充分下回った形で海洋に放出することもあり得るという形で説明したということのようです。
「施設運営計画(その2)」というのは何かというと、現在、「施設運営計画(その1)」が出されています。それに対するその2です。正式名称は、「福島第一原子力発電所第1~4号機に対する「中期的安全確保の考え方」に基づく施設運営計画に係る報告書」です。これについては、存在を見落としていたためにこのブログでは紹介してきませんでした。
遅まきながら、「福島第一原子力発電所第1~4号機に対する「中期的安全確保の考え方」に基づく施設運営計画に係る報告書(その1)(改訂2)」が12/7に発表されていたので、それの説明を別の記事に「12/9 放射能汚染水の処理は1年で終わらず、実は炉心取出完了までかかる!」として書きました。12/8午前の記者会見の情報を見ずに書いたものなので、若干情報が古いですが、合わせてお読み下さい。汚染水処理システムについても簡単に説明をしています。ここではその説明は省略します。
ついさきほど、東電の記者会見があり、施設運営計画が提出されたそうです。内容はここにありますがまだ読んでいません。その点はご了承下さい。
海洋に放出予定の水とはどのようなものかというと、淡水受タンク(12/6現在で14651トン)+濃縮塩水受タンク(12/6現在82196トン)で、約10万トンが対象になるということです。これは、濃縮塩水受タンクの増設予定が3月上旬までは決まっているが、その容量は14万トンで、3月にはほぼいっぱいになってしまうため、それを処理して放射能濃度を告示濃度より低くしてから海洋に放出することを検討したいということです。12/7の資料を下に引用しましたのでご覧下さい。

(クリックで別画面に拡大)
淡水受タンクの水は、11/18に発表された汚染水の分析データからすると、全ベータの濃度もかなり少なくなっています。

蒸発濃縮装置入口(39,000,000Bq/L)が蒸発濃縮装置出口(22,000Bq/L)に減っています。これまでの分析結果からすると、全ベータの約30%がストロンチウムですので、淡水受タンクの水の中のストロンチウムは、約6000Bq/Lということになります。
一方で、濃縮塩水というのは、今週はじめに150Lの放出があった、蒸発濃縮装置にかける前の水ということです。つまり、ストロンチウムを含む全ベータの放射性物質は全く除去できていない水です。先ほどの数値でいうと、蒸発濃縮装置入口ですので、ストロンチウムは全ベータ39,000,000Bq/Lの30%とすると、11,700,000Bq/Lになります。
しかし、実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示(炉規則告示)濃度限度と呼ばれる法的規制濃度は、Sr-89が300Bq/L、Sr-90が30Bq/Lです(ちなみに、Cs-134は60Bq/L、Cs-137は90Bq/Lです)。東京電力は、告示濃度を下回る濃度にしてからでないと放出しないと言っていますので、淡水受タンク(=蒸発濃縮装置出口)の6000Bq/L(Sr-89:Sr-90を9月頃の比率の1:1とするとSr-89、Sr-90ともに3000Bq/L)とすると、Sr-90は告示濃度の100倍、Sr-89は告示濃度の10倍になります。ところが濃縮塩水では、同様に計算すると、Sr-90で告示濃度の200,000倍になり、Sr濃度を1/100000以下にしないといけないことになります。
この点について、記者会見で質問が何度も出ましたが、東京電力の解答としては、現在実験室レベルで検討しているということです。100000倍濃度を下げる方法も、ゼオライトや化学的に処理する方法により可能性が見えてきているので、今後の検討にはなるが、もし海洋に放出することになればその処理を行ってからになるという解答でした。
ちなみに、5,6号機から出てきて、所内で散水している水は、下記のようにストロンチウムも含めて全てND(不検出)です。従って、以前園田政務官が飲んだ水というのもこの水ですので、ストロンチウムもほとんど除去できている水です。どこかのブログに、今週初めのストロンチウムの海洋への流出を受けて、あの政務官が飲んだ水にはストロンチウムが入っていたのでは、などと書いてありましたが、ちょっと調べればわかることなのに困ったものです。

また、濃度を告示濃度以下にすることができても、各事業者(ここでは東京電力)が定めている保安規定というものがあり、そこでは、福島第一原発の場合は1年間に海に放出してもよい量を2220億Bqと定めているそうです。今年度は、とっくにこれをオーバーしていますので、どう考えるべきか整理したいと言っていました。
なお、この保安規定はWebでは公開していないので、原発近くの資料館のような所か、東京で言えば原子力ライブラリなどの原子力情報コーナーにしかないそうです。
3.なぜ汚染水は減らないのか?
以前もご紹介しましたが、地下水が毎日200-500トン流れ込んできています。トレンチやタービン建屋の水位を地下水よりも高くすると地下水が汚染されてしまうので、常に地下水の水位よりも低い水位でタービン建屋の水位は保っています。現状では、水位をOP+3000(小名浜の基準海面から3mの高さ)に保つようにしてコントロールしています。
しかし、この地下水があるため、いつまで経っても減らすことはできず、むしろ増えてしまいます。今日の記者会見でも、東京電力の松本さんは「先の見通しがないままで1年2年と増設を続けるわけにはいかない」と述べていました。
今後の対策としては、地下水がタービン建屋に入って汚染水になる前にくみ出す方法を検討しているそうです。そうすれば、あまり汚染されていない水としてそれを処理し、汚染水の増加を食い止めることができるからです。遮水壁に関しては検討したが、陸側の遮水壁は効果が薄いと判断したので海側だけにした、という説明でした。
4.まとめ
12/8午前の記者会見をまとめると以下のようになります。
(1)現在施設運営計画の(その1)をすでに提出しているが、近いうちに提出する予定である(その2)では廃棄物管理、特に液体廃棄物の処理について書く予定である。
(その2)は12/8夜に提出されました。
(2)その施設運営計画(その2)において、タンクで保存しきれない、処理後の汚染水について、告示濃度を充分に下回った濃度にしてから海洋廃棄することを計画の中に盛り込むことを検討している。まだ決めたわけではない。
(その2)では結局盛り込まれませんでした(リンクはasahi.com)。
(3)全ベータの濃度を告示濃度以下にする技術的な目途がまだ立ったわけではないが、実験室レベルでは検討して感触は得ているので、実施するとなればその施設設計はこれからである。
(4)毎日200-500トン流れ込んでくる地下水の対応に苦慮している。建屋に流れ込む前にくみ出すことを検討している。
(5)この汚染水処理がいつまで続くのか、現時点では全く見通しは立っていない。
せっかく書き上げて「さあ、保存しようか」と思った時にツイッターで最新情報を確認したら計画には盛り込まず、ということだったので、この記事をやめてしまうのも一つの方法だったのですが、せっかくここまで書いたので、注釈付きで載せることにしました。
読売オンラインの記事によると、
『東京電力が、福島第一原子力発電所にたまる処理汚染水を海に放出することを検討していることが8日わかった。
経済産業省原子力安全・保安院に近く提出する同原発の中期的な施設運営計画に盛り込む可能性を、全国漁業協同組合連合会に打診していた。東電は同日、全漁連の抗議を受け、再検討する方針を示した。
東電によると、原子炉から直接漏れてきた高濃度汚染水から、放射性セシウムなどを取り除いた処理水が約10万トンたまっており、処理水の一部は原子炉の冷却に再利用されている。一方、原子炉建屋などには地下水が1日200~500トン流入し、汚染水は増え続けている。処理水の貯蔵タンクの容量は、最終的には約16万トンまで増えるが、来年3月には、いっぱいになると予想されている。
そこで、処理水に再度、別の浄化処理を施して、国の定める安全基準以下に放射性物質の濃度を下げた上で放出する計画の検討に入った。東電の松本純一・原子力立地本部長代理は、同日の記者会見で「先の見通しのないまま、タンクを増設し続けるわけにはいかない」と説明した。』
でしたが、これだけではよくわからないので、記者会見の動画及びtogetterのまとめから情報を補足して、まとめました。@ystriceraさん、いつもありがとうございます。
2.記者会見のまとめ
全漁連から抗議があったという件について:
東京電力が今週月曜日(5日)に、国に対してそのうちに提出する予定の施設運営計画(その2)が社内ではまとまったので、全漁連に事前に説明をしにいって打診をしたということです。汚染水については基本的には構内での保管・再利用をしていくが、余った部分については告示濃度を充分下回った形で海洋に放出することもあり得るという形で説明したということのようです。
「施設運営計画(その2)」というのは何かというと、現在、「施設運営計画(その1)」が出されています。それに対するその2です。正式名称は、「福島第一原子力発電所第1~4号機に対する「中期的安全確保の考え方」に基づく施設運営計画に係る報告書」です。これについては、存在を見落としていたためにこのブログでは紹介してきませんでした。
遅まきながら、「福島第一原子力発電所第1~4号機に対する「中期的安全確保の考え方」に基づく施設運営計画に係る報告書(その1)(改訂2)」が12/7に発表されていたので、それの説明を別の記事に「12/9 放射能汚染水の処理は1年で終わらず、実は炉心取出完了までかかる!」として書きました。12/8午前の記者会見の情報を見ずに書いたものなので、若干情報が古いですが、合わせてお読み下さい。汚染水処理システムについても簡単に説明をしています。ここではその説明は省略します。
ついさきほど、東電の記者会見があり、施設運営計画が提出されたそうです。内容はここにありますがまだ読んでいません。その点はご了承下さい。
海洋に放出予定の水とはどのようなものかというと、淡水受タンク(12/6現在で14651トン)+濃縮塩水受タンク(12/6現在82196トン)で、約10万トンが対象になるということです。これは、濃縮塩水受タンクの増設予定が3月上旬までは決まっているが、その容量は14万トンで、3月にはほぼいっぱいになってしまうため、それを処理して放射能濃度を告示濃度より低くしてから海洋に放出することを検討したいということです。12/7の資料を下に引用しましたのでご覧下さい。

(クリックで別画面に拡大)
淡水受タンクの水は、11/18に発表された汚染水の分析データからすると、全ベータの濃度もかなり少なくなっています。

蒸発濃縮装置入口(39,000,000Bq/L)が蒸発濃縮装置出口(22,000Bq/L)に減っています。これまでの分析結果からすると、全ベータの約30%がストロンチウムですので、淡水受タンクの水の中のストロンチウムは、約6000Bq/Lということになります。
一方で、濃縮塩水というのは、今週はじめに150Lの放出があった、蒸発濃縮装置にかける前の水ということです。つまり、ストロンチウムを含む全ベータの放射性物質は全く除去できていない水です。先ほどの数値でいうと、蒸発濃縮装置入口ですので、ストロンチウムは全ベータ39,000,000Bq/Lの30%とすると、11,700,000Bq/Lになります。
しかし、実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示(炉規則告示)濃度限度と呼ばれる法的規制濃度は、Sr-89が300Bq/L、Sr-90が30Bq/Lです(ちなみに、Cs-134は60Bq/L、Cs-137は90Bq/Lです)。東京電力は、告示濃度を下回る濃度にしてからでないと放出しないと言っていますので、淡水受タンク(=蒸発濃縮装置出口)の6000Bq/L(Sr-89:Sr-90を9月頃の比率の1:1とするとSr-89、Sr-90ともに3000Bq/L)とすると、Sr-90は告示濃度の100倍、Sr-89は告示濃度の10倍になります。ところが濃縮塩水では、同様に計算すると、Sr-90で告示濃度の200,000倍になり、Sr濃度を1/100000以下にしないといけないことになります。
この点について、記者会見で質問が何度も出ましたが、東京電力の解答としては、現在実験室レベルで検討しているということです。100000倍濃度を下げる方法も、ゼオライトや化学的に処理する方法により可能性が見えてきているので、今後の検討にはなるが、もし海洋に放出することになればその処理を行ってからになるという解答でした。
ちなみに、5,6号機から出てきて、所内で散水している水は、下記のようにストロンチウムも含めて全てND(不検出)です。従って、以前園田政務官が飲んだ水というのもこの水ですので、ストロンチウムもほとんど除去できている水です。どこかのブログに、今週初めのストロンチウムの海洋への流出を受けて、あの政務官が飲んだ水にはストロンチウムが入っていたのでは、などと書いてありましたが、ちょっと調べればわかることなのに困ったものです。

また、濃度を告示濃度以下にすることができても、各事業者(ここでは東京電力)が定めている保安規定というものがあり、そこでは、福島第一原発の場合は1年間に海に放出してもよい量を2220億Bqと定めているそうです。今年度は、とっくにこれをオーバーしていますので、どう考えるべきか整理したいと言っていました。
なお、この保安規定はWebでは公開していないので、原発近くの資料館のような所か、東京で言えば原子力ライブラリなどの原子力情報コーナーにしかないそうです。
3.なぜ汚染水は減らないのか?
以前もご紹介しましたが、地下水が毎日200-500トン流れ込んできています。トレンチやタービン建屋の水位を地下水よりも高くすると地下水が汚染されてしまうので、常に地下水の水位よりも低い水位でタービン建屋の水位は保っています。現状では、水位をOP+3000(小名浜の基準海面から3mの高さ)に保つようにしてコントロールしています。
しかし、この地下水があるため、いつまで経っても減らすことはできず、むしろ増えてしまいます。今日の記者会見でも、東京電力の松本さんは「先の見通しがないままで1年2年と増設を続けるわけにはいかない」と述べていました。
今後の対策としては、地下水がタービン建屋に入って汚染水になる前にくみ出す方法を検討しているそうです。そうすれば、あまり汚染されていない水としてそれを処理し、汚染水の増加を食い止めることができるからです。遮水壁に関しては検討したが、陸側の遮水壁は効果が薄いと判断したので海側だけにした、という説明でした。
4.まとめ
12/8午前の記者会見をまとめると以下のようになります。
(1)現在施設運営計画の(その1)をすでに提出しているが、近いうちに提出する予定である(その2)では廃棄物管理、特に液体廃棄物の処理について書く予定である。
(その2)は12/8夜に提出されました。
(2)その施設運営計画(その2)において、タンクで保存しきれない、処理後の汚染水について、告示濃度を充分に下回った濃度にしてから海洋廃棄することを計画の中に盛り込むことを検討している。まだ決めたわけではない。
(その2)では結局盛り込まれませんでした(リンクはasahi.com)。
(3)全ベータの濃度を告示濃度以下にする技術的な目途がまだ立ったわけではないが、実験室レベルでは検討して感触は得ているので、実施するとなればその施設設計はこれからである。
(4)毎日200-500トン流れ込んでくる地下水の対応に苦慮している。建屋に流れ込む前にくみ出すことを検討している。
(5)この汚染水処理がいつまで続くのか、現時点では全く見通しは立っていない。
せっかく書き上げて「さあ、保存しようか」と思った時にツイッターで最新情報を確認したら計画には盛り込まず、ということだったので、この記事をやめてしまうのも一つの方法だったのですが、せっかくここまで書いたので、注釈付きで載せることにしました。
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