12/10 玄海3号機の水漏れに見る九州電力の情報公開の姿勢と最近の東京電力の情報公開の改善
12/9、佐賀県にある定期点検中の玄海原発3号機で、1次冷却水の浄化用ポンプの温度が上昇する不具合があり、同時に放射性物質を含む冷却水が1.8トン水漏れを起こしました。しかし、九州電力は地元の自治体に10日朝になるまで伝えていなかったことが分かりました(リンクは毎日jp)。
九州電力は、やらせメールなどの問題で企業体質が問われている会社です。東京電力があれだけの事故を起こし、その情報公開の姿勢について批判されたのですから、それを他山の石として自らも改めようという姿勢を持って欲しいと思います。
1.九州電力の情報公開の姿勢のまずさ
まずは事実関係の整理です。
九州電力のHPによると、「玄海原子力発電所3号機 定期検査の状況について(39KB)」というタイトルだけ見ても何のことかわからないお知らせがありました。しかもHPのトップページには、「更新情報」に載っているだけです。


この内容を見ても、何が起こったのかはよくわかりません。早くもう少し水漏れに関する細かい情報をHP上にも公開して欲しいと思います。
NHKオンラインによると、
『佐賀県玄海町にある九州電力玄海原発3号機では、定期検査中の9日、1次冷却水を浄化して原子炉格納容器に戻すポンプの温度が、通常30度から40度ほどなのに、80度以上に上がる不具合がありました。3号機では、この不具合の際、放射性物質を含む一次冷却水1.8トンが、設備内に漏れているのが見つかりましたが、九州電力は地元の玄海町にポンプの不具合だけを連絡し、水漏れについては10日朝になるまで伝えていませんでした。』
ということです。また、最初にリンクを貼った毎日jpによると、
『経済産業省原子力安全・保安院によると、今回のポンプの異常や冷却水漏れは法令による報告義務の対象にあたらない。ただし、九電からは、冷却水が外部に漏れていないことやモニタリングデータに問題がないとの報告があり、原因を調査することを確認したという。』
ということでした。つまり、今回のようなポンプの異常や冷却水漏れは法令による報告義務の対象にあたらないということです。法律で要求されている最低限のことはしているということですが、東電の原発事故以来、原発においてトラブルがあった際の情報公開については今までよりも詳細な情報公開が求められているということくらいはわかっていてほしかったです。
『九電はポンプの異常だけを発表。その後の取材で、夜になって1次冷却水漏れを認めた。「設備の構造を考えると、ポンプの温度上昇と漏水に因果関係はないだろう。通常でも漏れはあり、原子炉建屋内にとどまっているので広報しなかった」としている。』(毎日jpより)
水漏れがあったのならば、水漏れがあったけれども建屋内で済んだので対応した、と発表すればいいだけの話です。その事実を公開せずに、後で追求されて渋々認めるという形はリスク対応として最低の対応です。
九州電力には、リスク管理やリスク対応を勉強している人間がいないのでしょうか?今からでも遅くないので、講師を招いて勉強会を行ったりして、会社のトップ自らが考え方を改めるべきだと思います。
2.最近の東京電力の情報公開の姿勢は改善している
東京電力のHPを毎日のようにチェックしている人間にとって、九州電力のHPの不親切さは目立ちます。でも、東京電力も半年前は九州電力と似たようなものでした。私もこのブログでは東京電力に対してもっとわかりやすい情報公開をして欲しいと要求してきましたが、いろいろなところからの要求を受けて、徐々に改善してきたというのが実際の所です。
3月の原発事故以来ずっと東京電力のHPを見てきた私としては、現在の東京電力のHPは、情報発信をしっかりとしようという姿勢が感じられます。もちろん、まだ出していない情報もあるのだと思いますが、出てこない情報はわからないので検証できませんので、出てきた情報についての発信の仕方について取り上げます。
いくつもの改善がありましたが、この9ヶ月を振り返っていくつかの印象的なポイントを記載したいと思います。
1.報道配布 写真・動画ダウンロード
これは4月頃だったと思うのですが、これまで新聞やTVでしか見られなかった画像、映像を直接東京電力が配信するようになったのは大きいと思います。これにより、2号機からの高濃度汚染水が海に流出している画像も東京電力のHPから見ることができるようになりました。
2.記者会見配付資料
これは6月頃だったと思います。6月の始めに「6/5 東京電力の新しい海洋サンプリング体制について解説が記者会見用資料にあった」というものを書いていますから。ここにしか公開されない資料も多く、有用性という意味では非常に高いものです。逆に言うと、それまでは記者会見では配布していなかったのに一般には非公開であったということです。
3.シリーズ動画
このシリーズ動画は9月頃から始まったようですが、私が特に注目している放射能汚染水についても4回に分けて解説してくれています。初めて知識を得る人には参考になると思います。このページのまとめ方は動画と解説資料を同じ場所に配置してくれていて非常にわかりやすかったと思います。

しかしながら、12月になってHPの構成が変更された際に「東日本大震災後の福島第一・第二原子力発電所の状況」からはリンクが貼られなくなってしまいました。動画だけをまとめた「写真・映像ライブラリー 映像」というページにまとめられてしまいました。(なお、こちらでは記者会見の模様も1週間分は見られるようになりました。)

映像をまとめてくれたのはいいのですが、映像は長いので時間がないひとは全部見ることができません。以前のように対応する映像と画像をセットで載せてもらった方がわかりやすいです。「シリーズ動画」も今後更新をしてください。
4.pdfファイルの改善
これが私にとっては一番の改善です。下の勝川先生のツイート(6月)にもあるのですが、この頃の私の気持ちを見事に代弁してくれています。東京電力が発表しているデータをExcelに入力してグラフを書こうとしても、数値のコピペができないために、どれだけの人が文句を言ったことでしょう。

今調べたら、10/25までの資料はコピペができず、10/26の資料からコピペができるようになっていました。こういう変更は情報公開の姿勢が改善されたことをアピールできるいい機会なのですから、アナウンスなしにこっそりと行うのではなく、HP上でもアナウンスするべきだったと思います。1ヶ月以上知らずに過ごしてしまいました。
5.情報のわかりやすさの工夫
これは、情報発信の技術の問題になると思うのですが、東京電力の情報公開で「おっ、これはやるじゃん!」と初めて思ったのは8/11に発表された海底土のまとめの図です。海洋汚染関係のデータは、東京電力は数値のみの発表で、文科省がそれを図にプロットして発表するという体制が続いていましたが、この時は東京電力が1ヶ月分のデータを自らまとめてくれたので、非常にわかりやすく、こちらも手間が省けてよかったと思います。これは今後も続けて欲しいと思います。

3.まとめ
東京電力の情報公開の姿勢は、この9ヶ月で少しずつ改善してきていると思います。私も東京電力に対してはこのブログでかなり文句を書いてきましたが、改善してよくなった部分については素直に評価したいと思います。今後もこのような積極的なわかりやすい情報公開、情報発信に努めて欲しいと思います。
一方の九州電力に対しては、東京電力のこの9ヶ月の変化を見習って、もう少し情報公開の姿勢を改めて欲しいと思います。こちらはまだまだ先が長そうですね。
まずは事実関係の整理です。
九州電力のHPによると、「玄海原子力発電所3号機 定期検査の状況について(39KB)」というタイトルだけ見ても何のことかわからないお知らせがありました。しかもHPのトップページには、「更新情報」に載っているだけです。


この内容を見ても、何が起こったのかはよくわかりません。早くもう少し水漏れに関する細かい情報をHP上にも公開して欲しいと思います。
NHKオンラインによると、
『佐賀県玄海町にある九州電力玄海原発3号機では、定期検査中の9日、1次冷却水を浄化して原子炉格納容器に戻すポンプの温度が、通常30度から40度ほどなのに、80度以上に上がる不具合がありました。3号機では、この不具合の際、放射性物質を含む一次冷却水1.8トンが、設備内に漏れているのが見つかりましたが、九州電力は地元の玄海町にポンプの不具合だけを連絡し、水漏れについては10日朝になるまで伝えていませんでした。』
ということです。また、最初にリンクを貼った毎日jpによると、
『経済産業省原子力安全・保安院によると、今回のポンプの異常や冷却水漏れは法令による報告義務の対象にあたらない。ただし、九電からは、冷却水が外部に漏れていないことやモニタリングデータに問題がないとの報告があり、原因を調査することを確認したという。』
ということでした。つまり、今回のようなポンプの異常や冷却水漏れは法令による報告義務の対象にあたらないということです。法律で要求されている最低限のことはしているということですが、東電の原発事故以来、原発においてトラブルがあった際の情報公開については今までよりも詳細な情報公開が求められているということくらいはわかっていてほしかったです。
『九電はポンプの異常だけを発表。その後の取材で、夜になって1次冷却水漏れを認めた。「設備の構造を考えると、ポンプの温度上昇と漏水に因果関係はないだろう。通常でも漏れはあり、原子炉建屋内にとどまっているので広報しなかった」としている。』(毎日jpより)
水漏れがあったのならば、水漏れがあったけれども建屋内で済んだので対応した、と発表すればいいだけの話です。その事実を公開せずに、後で追求されて渋々認めるという形はリスク対応として最低の対応です。
九州電力には、リスク管理やリスク対応を勉強している人間がいないのでしょうか?今からでも遅くないので、講師を招いて勉強会を行ったりして、会社のトップ自らが考え方を改めるべきだと思います。
2.最近の東京電力の情報公開の姿勢は改善している
東京電力のHPを毎日のようにチェックしている人間にとって、九州電力のHPの不親切さは目立ちます。でも、東京電力も半年前は九州電力と似たようなものでした。私もこのブログでは東京電力に対してもっとわかりやすい情報公開をして欲しいと要求してきましたが、いろいろなところからの要求を受けて、徐々に改善してきたというのが実際の所です。
3月の原発事故以来ずっと東京電力のHPを見てきた私としては、現在の東京電力のHPは、情報発信をしっかりとしようという姿勢が感じられます。もちろん、まだ出していない情報もあるのだと思いますが、出てこない情報はわからないので検証できませんので、出てきた情報についての発信の仕方について取り上げます。
いくつもの改善がありましたが、この9ヶ月を振り返っていくつかの印象的なポイントを記載したいと思います。
1.報道配布 写真・動画ダウンロード
これは4月頃だったと思うのですが、これまで新聞やTVでしか見られなかった画像、映像を直接東京電力が配信するようになったのは大きいと思います。これにより、2号機からの高濃度汚染水が海に流出している画像も東京電力のHPから見ることができるようになりました。
2.記者会見配付資料
これは6月頃だったと思います。6月の始めに「6/5 東京電力の新しい海洋サンプリング体制について解説が記者会見用資料にあった」というものを書いていますから。ここにしか公開されない資料も多く、有用性という意味では非常に高いものです。逆に言うと、それまでは記者会見では配布していなかったのに一般には非公開であったということです。
3.シリーズ動画
このシリーズ動画は9月頃から始まったようですが、私が特に注目している放射能汚染水についても4回に分けて解説してくれています。初めて知識を得る人には参考になると思います。このページのまとめ方は動画と解説資料を同じ場所に配置してくれていて非常にわかりやすかったと思います。

しかしながら、12月になってHPの構成が変更された際に「東日本大震災後の福島第一・第二原子力発電所の状況」からはリンクが貼られなくなってしまいました。動画だけをまとめた「写真・映像ライブラリー 映像」というページにまとめられてしまいました。(なお、こちらでは記者会見の模様も1週間分は見られるようになりました。)

映像をまとめてくれたのはいいのですが、映像は長いので時間がないひとは全部見ることができません。以前のように対応する映像と画像をセットで載せてもらった方がわかりやすいです。「シリーズ動画」も今後更新をしてください。
4.pdfファイルの改善
これが私にとっては一番の改善です。下の勝川先生のツイート(6月)にもあるのですが、この頃の私の気持ちを見事に代弁してくれています。東京電力が発表しているデータをExcelに入力してグラフを書こうとしても、数値のコピペができないために、どれだけの人が文句を言ったことでしょう。

今調べたら、10/25までの資料はコピペができず、10/26の資料からコピペができるようになっていました。こういう変更は情報公開の姿勢が改善されたことをアピールできるいい機会なのですから、アナウンスなしにこっそりと行うのではなく、HP上でもアナウンスするべきだったと思います。1ヶ月以上知らずに過ごしてしまいました。
5.情報のわかりやすさの工夫
これは、情報発信の技術の問題になると思うのですが、東京電力の情報公開で「おっ、これはやるじゃん!」と初めて思ったのは8/11に発表された海底土のまとめの図です。海洋汚染関係のデータは、東京電力は数値のみの発表で、文科省がそれを図にプロットして発表するという体制が続いていましたが、この時は東京電力が1ヶ月分のデータを自らまとめてくれたので、非常にわかりやすく、こちらも手間が省けてよかったと思います。これは今後も続けて欲しいと思います。

3.まとめ
東京電力の情報公開の姿勢は、この9ヶ月で少しずつ改善してきていると思います。私も東京電力に対してはこのブログでかなり文句を書いてきましたが、改善してよくなった部分については素直に評価したいと思います。今後もこのような積極的なわかりやすい情報公開、情報発信に努めて欲しいと思います。
一方の九州電力に対しては、東京電力のこの9ヶ月の変化を見習って、もう少し情報公開の姿勢を改めて欲しいと思います。こちらはまだまだ先が長そうですね。
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