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12/26 福島の大波地区での高セシウム米は、カリウム不足が原因?

 
いくつかの新聞報道によると、12/25に福島市で行われた中間報告会で、福島県と農林水産省の調査結果が一部発表されたそうです。残念ながら、その詳しい資料がまだ公表されていない(?)ので、ニュース報道のみを材料にして書きます。

いずれ報告書が公開されたら(してくださいね!)、それを元に考察したいと思います。

いくつかの報道からわかる断片を拾い上げてみます。ここでは、河北新報読売オンライン日経Web毎日JPから拾い上げてきました。


・福島市大波地区や渡利地区など3市7地区の水田22カ所を調査した。比較のため、基準値を下回った周辺の水田9カ所も調べた。(河北新報)
・土壌の表層15センチを採取したほか、農家から施肥量や耕起時期、根張りの深度などの栽培管理状況を聞いた。(河北新報)

・大波地区の7か所の土壌を調べたところ、地表から深さ5センチまでの放射性セシウム濃度が、深さ5~15センチの土壌に比べ平均で3・6倍高かった。(読売新聞)
・同地区の稲は他地区に比べ、根が浅かったことも分かった。(読売新聞)
・玄米の規制値超えが多かった山間部の狭い水田は十分に耕されておらず、表土に近いほど土壌のセシウム濃度が高かった。(日経新聞)
・ほとんどの水田が山あいにあるためトラクターが使えず、排水も悪かった。根張りが浅くなり、セシウムを含んだ地表付近に根が分布していたことも影響したとみている。(河北新報)
・玄米が規制値を超えた水田のほとんどで、カリウム濃度が低かったことが分かった。この低濃度は、カリウムが含まれる肥料の不足が原因とみられ、中にはカリウム含有の肥料が全く使われていない水田もあった。(日経新聞)
・調査対象になった水田のカリウム濃度は100グラム当たり平均6.7ミリグラムで、福島市の平均15.9ミリグラムを大きく下回っていた。(河北新報)
・土が2321ベクレルで玄米から800ベクレル近く出た所もあり、県は「土とコメの汚染度に相関関係はみられない」とした。(毎日新聞)
・ 農水省の吉岡修参事官は「土壌のセシウムに加え、カリウム濃度や根張りなどが複数の要因が複合的に関係している」と説明。一方で、空間放射線量や山林からの水の流入などについては、「現段階では直接的に影響しているとは言えない」とした。(日経新聞)
・規制値を超えた水田の約4分の1が、同省が作付けを認めた基準以下だったことも判明した。(毎日)

さて、これらのことを整理してみましょう。

下記の複数の要因が絡まっている可能性があるということが結論でした。

1.カリウム濃度が不足しており、セシウムを吸収しやすい環境にあった(通常は15.9mg/100g土壌なのに6.7mg/100g土壌)。
2.山あいの田んぼで機械を入れて耕すことができず、イネの根が浅く張っていた。
3.土壌のセシウムのデータが作付けを禁止した5000Bq/kgを超えていたところもあった(3/4?)。ただし、土壌とコメの汚染度に相関関係は見られなかった。

1.カリウム不足。これは古くから文献的に報告されていることです。1984年に出された57ページにも及ぶ非常に長い論文で、肥料中のカリウムの有無がどれだけイネのセシウム取り込みに影響を及ぼすか調べたものがあります。この実験では、ポットを用いて、土壌にいろいろなパターンの肥料を加え、さらに実験的に放射性セシウムや放射性ストロンチウムを添加して、栄養素の有無が与えるイネへのセシウムの取り込みの変化を調べました。

12/26コメ2

上の表のように、「対照区」では、塩加=塩化カリウム(KCl)をポット(土壌3kg、面積200cm2)に1.2g、つまり土壌1kgあたり0.4g加えています。それに対し「-K区」では、塩化カリウムはゼロです。それ以外の塩安=塩化アンモニウムやリン酸1ナトリウムは「対照区」と同じです。

その結果、下の表のように、カリウムを加えなかった土壌では、対照区の9倍近く放射性セシウムが玄米に取り込まれました。これは、移行係数(この表では玄米濃縮係数)は0.28にもなり、土壌中のカリウムが少ないと、イネにはセシウムが取り込まれやすいことを示しています。

なお、この移行係数0.28というのは、実験的な条件でありますが、意外に今年の一部の田んぼの状況を反映している可能性があると思いました。いずれこの論文については詳しく取り上げたいと思います。

12/26コメ1

こういう事実はすでに知られていたので、福島県では、4月の段階でこのような資料を配付してカリウムを肥料として使うようにと情報提供をしていました(この文書では野菜についてですが、基本的にはイネでも同じことです)。イネについても確か同様の文書がどこかにあったはずです。他にも農協などからも情報は流れていたと思うのですが、混乱の中で稲ワラ問題のようにその情報が伝わらなかった可能性はあります。ただ、これであれば来年の対応は可能です。

12/26コメ3

追記:5月6日の「原子力災害に関する農作物の技術対策Q&A」でコメについてもカリウムの施肥についてQ&Aがありました。

12/26コメ4



2.東大農学部の報告でもあったように、(「8/15 東大と福島県の共同研究の解説(1)土壌セシウムのデータ」や「11/20 東大農学部主催の放射能の農畜水産物等への影響の研究報告会」を参照のこと)、土壌中の放射性セシウムはあまり地中深くまで浸透しません。特に表層5cmにとどまる割合が非常に多いです。今回の規制値を超えた田んぼの多くは山あいで、トラクターも入れないような所で、充分に耕されなかったために根の貼り方が浅かった。そのために表層のセシウムに接しやすかった、という推論がされています。
であれば、来年への対策として、そのような山あいの田んぼはできるだけ作らない、ということができると思います。もちろん、実際には線引きが難しいと思いますが。

3.これは、下記の毎日の記事から推論して、作付け基準の5000Bq/kgを超えた田んぼが3/4もあったのか?と読んでいます。私の勘違いかもしれませんが。もしそうだとしたら、これは単なる土壌調査不足ですから、事前の調査をしっかり行えば、来年は同じ失敗は防げる可能性が高いと思いました。

・規制値を超えた水田の約4分の1が、同省が作付けを認めた基準以下だったことも判明した。(毎日)


以上、現段階でわかっている断片的な情報から考えると、来年への対応策が全く取れないわけではないかな、という印象を持ちました。ただし、来年は新基準値が採用されます。100Bq/kgを超えないようにするということを考えると、カリウムを肥料として追加することを徹底させることと、土壌のセシウム値が高いところはコメを作らないということでどこまでできるのか、実際のデータを持っている人たちは一生懸命に考えていることでしょう。最後は政治的な判断が入ることと思います。

年内にも来年の作付け基準を出すということなので、2-3日中には結論が出るかもしれません。きっとその時には今回の資料も公開されると思います。どんなデータが出ていたのか、見るのが楽しみです。

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コメント

カリ不足が原因?の件

 こんばんは、金沢大学の田崎先生のお話しで書き込んだ福島の藤田です、ご無沙汰しております。
 本日 化学や放射能については素人ながら、東大の溝口先生の研究発表を元に、カリが少ないではなく、カリを捕まえる粘土が少ない(セシウムを捕まえられない)ではないか? とブログのコメント欄も含み書いてみました、TSOKDBAさんに見ていただけるといろいろご指導いただけることがあるんではないかと思い、こちらにコメントを残させていただきます。お忙しいとは思いますが、お時間のある時にでも拝見いただきご指導いただけると大変ありがたいです。よろしくお願いいたします。

http://fukushima-child.blogspot.com/

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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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