1/7 福島市の定時降下物の急増の理由は? 続編です
昨日は「1/6 福島市の定時降下物の急増の理由は?」を急いで書いてアップしたら、予想以上の反響がありました。
ツイッターなどは、ニュースがあると1時間2時間単位で話に尾ひれがついて盛り上がるものなので、不完全であっても早く書き上げた方がいいということは経験上わかっていましたが、この問題にいかに多くの人の関心があるか、あたらめてわかりました。
1.定時降下物のデータ
昨日の記事の最初に書いたように、昨日の段階では、私は福島市の定時降下物のデータを全て確認したわけではありませんでした。6月7月のデータは一覧表があったのでだいたい理解していたものの、3月以降の降下物量の流れを全て把握していないままに欠かざるを得ませんでした。
しかし、この話題について書く以上は全てのデータを確認しておく必要があると私は考えています。でもそれはどこかにデータがまとめていない限り、文科省のサイトからExcelに転記してグラフを書かないとわかりません。そういう便利なサイトを探したのですがすぐには見つからず(ご存じの方がいたら教えてください)、仕方なく9ヶ月分のデータを全部Excelに転記しました。
そのデータは、せっかくなので、ここにアップロードしておきますので、興味のある方はご自分で確認してみてください。ぜひともご自分でデータを解析して、私が見落としていたことを見つけたら教えてください。
koukabutu_fukushima.xls
なお、文科省のサイトから転記したデータは、基本的にCs-134のデータとCs-137のデータです。I-131のデータも一部転記しましたが、途中からはほとんどがND(不検出)になったので省略しました。
また、気象庁の福島市のデータから気象データもコピペして、同じ日のデータとして比較できるようにしました。
2.福島市のCs降下物量と平均風速の関係
今日はこの福島市の原発事故以降の定時降下物のグラフを見ながら考えてみたいと思います。まずは3月からのデータ(Cs-134とCs-137の合計値(Bq/m2))を見てみましょう。注意点として、3月26日までは、福島市は計測体制が整っていなかったので、降下物のデータはありません。また、4月23日まではCs-137とI-131のみの測定だったので、Cs-134のデータはありません。従って、4/23までのデータは約2倍して考える必要があります。また、ここでは、ND(不検出)のデータは便宜上0(ゼロ)として扱っています。

(クリックで別画面に拡大)
ここでは示しませんが、3月や4月のデータを見ると、実は福島市よりもひたちなか市の方が降下量は多いようです。
福島市の降下物量は、8月くらいまでは結構ドカスカしていますが、9月以降は落ち着いている感じです。せっかく毎日のデータがあるので、それを月ごとに集計してみると下記のようになります。比較のために、昨日の記事「1/6 福島市の定時降下物の急増の理由は?」で載せた、双葉郡の月間降下物のデータと並べてみました。ただし、双葉郡のデータは、一月に一度しか測定しないもので、降下物を集める容器も大きさが違いますので、単純に比較できるものではないということはご承知おき下さい。

上の表で右側の福島市の方を見て欲しいのですが、こうやって各月のデータを集計してみると、福島市の場合は、8月以降はほぼ落ち着いてきて、少しずつ低下しています。ところが、12月になるとなぜか956Bq/m2に増加しています。11月(360Bq/m2)の2.5倍以上です。これはどうしてでしょうか?
昨日も少しご紹介しましたが、すでに@study2007さんが「土壌からの再飛散(浮遊)と降下物測定のギャップ、及びマスクの必要性についてのメモ」というまとめや彼のブログの「福島第一原発事故 航空機による広域モニタリングと再飛散(浮遊)について」でヒントを書いてくれていますので、風速との関係があるのではないかと考えました。冬型の気圧配置になると、風が強くなりますので、その影響では?ということです。
ただ、風速のデータを見ると、12月が11月と比べて風速が非常に強くなったというわけではありません。気象庁のデータをみると、、毎月の平均風速は、11月で2.0m/s、12月で2.7m/sですから1.35倍です。風速が2倍になると風圧は風速の2乗に比例するので4倍になるそうですが、1.35の2乗として1.82倍とすると、2倍近くになるということは説明できるかもしれません。
そこで、先ほどExcelに転記してまとめたデータから、Cs降下物量と平均風速の関係をグラフにしてみました。下のグラフで青い線は福島市の毎日の平均風速、赤い線はその日のCs降下物量です。かなり横長なグラフなので、3月下旬から9月上旬までと、9月から1月はじめまでに分けてみました。青い線は縦軸左側の目盛り、赤い線は縦軸右側の目盛りです。

(クリックで別画面に拡大)
上の図で、3月下旬から9月上旬までは、青い線と赤い線には何の関係もないように見えます。

(クリックで別画面に拡大)
ところが、降下物量がほぼ落ち着いてきた9月以降については、青い線(平均風速)と赤い線(降下物量)は非常によく似たパターンになっていることがわかると思います。上のグラフで4つほど赤い丸をつけた日が、風速で予想される以上に降下物が観測された日です。これらの例外(1/2のデータもそれに含まれます)がなぜ起こったのかについては考察する必要がありますが、全体的な傾向としては、福島市の9月以降の降下物は、風によって再飛散(浮遊)しているものを計測しているだけであるといっても問題ないと思います。
別の資料として、東京電力が福島第一原発事故による1-3号機のセシウムの放出量を評価したグラフ(資料の12ページ)がありますが、それを見ても8月以降は放出量はかなり低下し、ほぼ一定量で落ち着いてきています。これらを合わせて考えても、新たに放出されているセシウムを降下物として測定できていたのは7月くらいまでで、8月以降は降下物のデータは上記の再浮遊による影響が強いと判断できます。

3.定時降下物の異常値について
ここまでの解析で、降下物のデータは8月あるいは9月から風による再浮遊を反映していることが多いことがわかりました。しかし、先ほども言及したように、1/2のデータも含めて一部の日についてはその日の平均風速だけでは説明できません。
例えば、福島市でこれまで一番降下物量の多かった日は7/19で、その日は降下物量は合計で1340Bq/m2でした。3月中旬は福島市のデータがないのですが、おそらくこれを超えているはずですが、4月以降では圧倒的に高い数値です。この時にどれだけこの値が話題になったのかわかりませんが、おそらく今ほど話題にはなっていなかったと思います。あの頃はまだ原発からの放射性物質の飛散もあったとは思いますが、福島市の値としてはダントツに高い値でした。
他にも9/10、12/19、12/29、1/2など、何回か風速だけでは説明できない日があります。たまたま1/2のデータは他の日よりもかなり高く出たのですが、昨日もご紹介したツイッターの話が本当であるならば、「2日は風が強く検体水に土埃が多く混じり濁っていた」ということなので、少なくとも測定した福島県原子力センター福島支所では風が強くて土が舞い上がりやすいような条件が揃っていたのだと思います。
通常よりも高い値が出たのは1/2が初めてではなく、7/19など(この頃はまだ原発からの影響があった可能性は否定できませんが)これまでにも何回か出ていること、福島市の気象データ(平均風速)から予想される以上に降下物の値が高いこともこれまでに何回かあったことを考えると、こういうことは今後も起こりうることだと思いました。ただ、測定を行っている福島県原子力センター福島支所で、1/2の降下物量がなぜあそこまで高い値になるほど土埃が舞い上がったのか(福島市の気象データとのずれがあるのはどうしてか)はわかりません。近くの地形などもGoogle mapで確認しましたが、同じ福島市の渡利地区のように山がすぐ近くにあるわけでもないので、理由はわかりませんでした。
4.まとめ
長くなりましたので、昨日と今日の話をまとめます。
(1)福島市の降下物データは、9月以降は比較的落ち着いているが、12月になってから風が強くなったからか(?)若干多くなっている。
(2)9月以降でみると、風の強い日に降下物量が多くなる傾向がある。ただし、何日かはこのパターンに当てはまらない日もあり、別の要因も働いている可能性がある。
(3)1/2の降下量は、12月のデータと比較しても4倍ほど高い値であったが、風が強かったという話なので、風で舞い上がった汚染土が測定器にたまたま多く入った可能性がある。
(4)風向きが西、あるいは西北西のことが多いことと、各種モニタリングポストの値がほとんど変動していないことから、原発から飛んできた可能性は低い。
(5)今も測定を続けている埼玉県や東京都では降下物は1月になってからは観測されていない。従って、今わかっているデータでは原発から新たな放射性物質の放出が起きたということは考えにくい。
(6)今後も時々このように高い値が観察されることは起こりうる。風の強い時にはマスクをして自衛するというのは意味があると考えられる。
1/8追記:その後のやりとりから得た情報として、福島市では雪が降って一部は積もっているということでした。雪が積もったらこのような風による舞い上がりは減ると思うので、強風時でも降下物の増加は少なくなる可能性が高いと思います。今後についてはデータによる検証が必要です。また、マスクの必要性についてはご自分の判断でお願いします。
追記その2:1/8の福島民報にも『県は「風で舞い上がった土ぼこりが測定容器に混入し、数値が上がった可能性が高い」との見解を示した。』との記載がありました。
昨日の記事の最初に書いたように、昨日の段階では、私は福島市の定時降下物のデータを全て確認したわけではありませんでした。6月7月のデータは一覧表があったのでだいたい理解していたものの、3月以降の降下物量の流れを全て把握していないままに欠かざるを得ませんでした。
しかし、この話題について書く以上は全てのデータを確認しておく必要があると私は考えています。でもそれはどこかにデータがまとめていない限り、文科省のサイトからExcelに転記してグラフを書かないとわかりません。そういう便利なサイトを探したのですがすぐには見つからず(ご存じの方がいたら教えてください)、仕方なく9ヶ月分のデータを全部Excelに転記しました。
そのデータは、せっかくなので、ここにアップロードしておきますので、興味のある方はご自分で確認してみてください。ぜひともご自分でデータを解析して、私が見落としていたことを見つけたら教えてください。
koukabutu_fukushima.xls
なお、文科省のサイトから転記したデータは、基本的にCs-134のデータとCs-137のデータです。I-131のデータも一部転記しましたが、途中からはほとんどがND(不検出)になったので省略しました。
また、気象庁の福島市のデータから気象データもコピペして、同じ日のデータとして比較できるようにしました。
2.福島市のCs降下物量と平均風速の関係
今日はこの福島市の原発事故以降の定時降下物のグラフを見ながら考えてみたいと思います。まずは3月からのデータ(Cs-134とCs-137の合計値(Bq/m2))を見てみましょう。注意点として、3月26日までは、福島市は計測体制が整っていなかったので、降下物のデータはありません。また、4月23日まではCs-137とI-131のみの測定だったので、Cs-134のデータはありません。従って、4/23までのデータは約2倍して考える必要があります。また、ここでは、ND(不検出)のデータは便宜上0(ゼロ)として扱っています。

(クリックで別画面に拡大)
ここでは示しませんが、3月や4月のデータを見ると、実は福島市よりもひたちなか市の方が降下量は多いようです。
福島市の降下物量は、8月くらいまでは結構ドカスカしていますが、9月以降は落ち着いている感じです。せっかく毎日のデータがあるので、それを月ごとに集計してみると下記のようになります。比較のために、昨日の記事「1/6 福島市の定時降下物の急増の理由は?」で載せた、双葉郡の月間降下物のデータと並べてみました。ただし、双葉郡のデータは、一月に一度しか測定しないもので、降下物を集める容器も大きさが違いますので、単純に比較できるものではないということはご承知おき下さい。

上の表で右側の福島市の方を見て欲しいのですが、こうやって各月のデータを集計してみると、福島市の場合は、8月以降はほぼ落ち着いてきて、少しずつ低下しています。ところが、12月になるとなぜか956Bq/m2に増加しています。11月(360Bq/m2)の2.5倍以上です。これはどうしてでしょうか?
昨日も少しご紹介しましたが、すでに@study2007さんが「土壌からの再飛散(浮遊)と降下物測定のギャップ、及びマスクの必要性についてのメモ」というまとめや彼のブログの「福島第一原発事故 航空機による広域モニタリングと再飛散(浮遊)について」でヒントを書いてくれていますので、風速との関係があるのではないかと考えました。冬型の気圧配置になると、風が強くなりますので、その影響では?ということです。
ただ、風速のデータを見ると、12月が11月と比べて風速が非常に強くなったというわけではありません。気象庁のデータをみると、、毎月の平均風速は、11月で2.0m/s、12月で2.7m/sですから1.35倍です。風速が2倍になると風圧は風速の2乗に比例するので4倍になるそうですが、1.35の2乗として1.82倍とすると、2倍近くになるということは説明できるかもしれません。
そこで、先ほどExcelに転記してまとめたデータから、Cs降下物量と平均風速の関係をグラフにしてみました。下のグラフで青い線は福島市の毎日の平均風速、赤い線はその日のCs降下物量です。かなり横長なグラフなので、3月下旬から9月上旬までと、9月から1月はじめまでに分けてみました。青い線は縦軸左側の目盛り、赤い線は縦軸右側の目盛りです。

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上の図で、3月下旬から9月上旬までは、青い線と赤い線には何の関係もないように見えます。

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ところが、降下物量がほぼ落ち着いてきた9月以降については、青い線(平均風速)と赤い線(降下物量)は非常によく似たパターンになっていることがわかると思います。上のグラフで4つほど赤い丸をつけた日が、風速で予想される以上に降下物が観測された日です。これらの例外(1/2のデータもそれに含まれます)がなぜ起こったのかについては考察する必要がありますが、全体的な傾向としては、福島市の9月以降の降下物は、風によって再飛散(浮遊)しているものを計測しているだけであるといっても問題ないと思います。
別の資料として、東京電力が福島第一原発事故による1-3号機のセシウムの放出量を評価したグラフ(資料の12ページ)がありますが、それを見ても8月以降は放出量はかなり低下し、ほぼ一定量で落ち着いてきています。これらを合わせて考えても、新たに放出されているセシウムを降下物として測定できていたのは7月くらいまでで、8月以降は降下物のデータは上記の再浮遊による影響が強いと判断できます。

3.定時降下物の異常値について
ここまでの解析で、降下物のデータは8月あるいは9月から風による再浮遊を反映していることが多いことがわかりました。しかし、先ほども言及したように、1/2のデータも含めて一部の日についてはその日の平均風速だけでは説明できません。
例えば、福島市でこれまで一番降下物量の多かった日は7/19で、その日は降下物量は合計で1340Bq/m2でした。3月中旬は福島市のデータがないのですが、おそらくこれを超えているはずですが、4月以降では圧倒的に高い数値です。この時にどれだけこの値が話題になったのかわかりませんが、おそらく今ほど話題にはなっていなかったと思います。あの頃はまだ原発からの放射性物質の飛散もあったとは思いますが、福島市の値としてはダントツに高い値でした。
他にも9/10、12/19、12/29、1/2など、何回か風速だけでは説明できない日があります。たまたま1/2のデータは他の日よりもかなり高く出たのですが、昨日もご紹介したツイッターの話が本当であるならば、「2日は風が強く検体水に土埃が多く混じり濁っていた」ということなので、少なくとも測定した福島県原子力センター福島支所では風が強くて土が舞い上がりやすいような条件が揃っていたのだと思います。
通常よりも高い値が出たのは1/2が初めてではなく、7/19など(この頃はまだ原発からの影響があった可能性は否定できませんが)これまでにも何回か出ていること、福島市の気象データ(平均風速)から予想される以上に降下物の値が高いこともこれまでに何回かあったことを考えると、こういうことは今後も起こりうることだと思いました。ただ、測定を行っている福島県原子力センター福島支所で、1/2の降下物量がなぜあそこまで高い値になるほど土埃が舞い上がったのか(福島市の気象データとのずれがあるのはどうしてか)はわかりません。近くの地形などもGoogle mapで確認しましたが、同じ福島市の渡利地区のように山がすぐ近くにあるわけでもないので、理由はわかりませんでした。
4.まとめ
長くなりましたので、昨日と今日の話をまとめます。
(1)福島市の降下物データは、9月以降は比較的落ち着いているが、12月になってから風が強くなったからか(?)若干多くなっている。
(2)9月以降でみると、風の強い日に降下物量が多くなる傾向がある。ただし、何日かはこのパターンに当てはまらない日もあり、別の要因も働いている可能性がある。
(3)1/2の降下量は、12月のデータと比較しても4倍ほど高い値であったが、風が強かったという話なので、風で舞い上がった汚染土が測定器にたまたま多く入った可能性がある。
(4)風向きが西、あるいは西北西のことが多いことと、各種モニタリングポストの値がほとんど変動していないことから、原発から飛んできた可能性は低い。
(5)今も測定を続けている埼玉県や東京都では降下物は1月になってからは観測されていない。従って、今わかっているデータでは原発から新たな放射性物質の放出が起きたということは考えにくい。
(6)今後も時々このように高い値が観察されることは起こりうる。風の強い時にはマスクをして自衛するというのは意味があると考えられる。
1/8追記:その後のやりとりから得た情報として、福島市では雪が降って一部は積もっているということでした。雪が積もったらこのような風による舞い上がりは減ると思うので、強風時でも降下物の増加は少なくなる可能性が高いと思います。今後についてはデータによる検証が必要です。また、マスクの必要性についてはご自分の判断でお願いします。
追記その2:1/8の福島民報にも『県は「風で舞い上がった土ぼこりが測定容器に混入し、数値が上がった可能性が高い」との見解を示した。』との記載がありました。
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