東京電力の海底土の汚染データのアップデート
この話は、「12/12 東京電力の海底土のデータ 11月分のまとめ」の続編です。重複する内容もありますので、そのつもりでごらんください。
東京電力の12月分のまとめが、1/18の発表の中にされていました。ほぼ同じ図ですが、わたしなりに情報を付加して「12/12 東京電力の海底土のデータ 11月分のまとめ」と同じ方法で整理した12月分のデータを含めて、以下に示します。その前に、海底土の測定方法については整理しておく必要があるのでそれを最初にまとめます。
1.東京電力の海底土の測定方法
東京電力は、毎月1回、25ヶ所の海底土を採取し、そのセシウムの汚染を自社で測定しています。一方で、Srの分析や他の核種の分析は日本分析センターに依頼しています。
通常、海底土の測定は土壌を乾燥機にかけて、乾燥した土(乾土)あたりのデータを測定する(「ゲルマニウム半導体検出器等を用いる機器分析のための試料の前処理法」)のですが、東京電力は海底土を湿土のまま測定しています。つまり、海底から採ってきた泥をそのまま(?)測定器にかけて測定しています。

東京電力記者会見配付資料(12/1)より
東京電力はこれまで海底土の測定について、乾土で行っているのか湿土で行っているのかを明示してきませんでした。昨年11月に初めて湿土での分析であることが示されました。その時に、今までの分析方法がどうだったのか確認したいのと、今後は乾土で測定して欲しいというやりとりをコンタンさん(@Kontan_Bigcat)としました。私はそこで止まってしまったのですが、コンタンさんが回答する記者団の佐藤さん(@kishadan_editor)を通じて東京電力に対して質問(昨年末及び年始)をしてもらいました。
質問の経緯や詳細はコンタンさんのブログで「(暫定)東電の海底土調査の問題点」というのがありますので、それをご覧下さい。
「回答する記者団」の佐藤さんに聞いてもらったところ、東電としても乾土での測定に切り替えるべく乾燥器などの装置を手配しているということでした。また、これまでの測定データを乾土でのデータに変換するための乾土率の測定もしてくれるということなので、気長に待つしかありません。
2.東京電力だけが湿土で測定することの問題点
乾土と湿土でデータがどれくらい違うのか?ということについては、はっきりとはわかりませんが、2-3倍は数値が上がる可能性があります。具体的に説明しましょう。
ある海底土を2kgとってきて、そのうち半分の1kgをそのまま水分のある状態で(湿土で)測定したら100BqのCs-137が検出されたとします。この場合、100Bq/kg(湿土)という結果になります。
一方、残りの湿土1kgを乾燥させて乾土にしたら、海底土中の水分がなくなって、400gになったとします。このサンプルを測定しても、検出されるCs-137はほぼ100Bqのはずです。水の中のセシウム濃度は海底土のセシウム濃度の1/1000程度というのが経験的にわかっているからです。とすると、100Bq/400g=250Bq/kgということになります。
同じ海底土のサンプルでも、湿土で測定するのか乾土で測定するのか下のようにデータが2.5倍も違うことになってしまいます。なお、この2.5倍というのはあくまで例えばという例ですので、実際に測定してみないとこれが何倍なのかはわかりません。1.5倍かもしれません。その測定を東京電力にはお願いしています。
100Bq/kg(湿土)
250Bq/kg(乾土)
東京電力はこれまで海底土の測定を湿土で測定していましたが、今後乾土で測定すればこれまでよりも高いデータになる可能性があります。
実は、東京電力以外の文科省や福島県は全て標準的な乾土での測定を行っています。東京電力だけが湿土で測定することがなぜ問題なのか?二つあります。
1.同じ土壌のセシウムとストロンチウムのデータを比較する際に、Cs/Sr比率が計算できない。

ここではちゃんと測定方法が違うことを明示してありますが、以前はその違いも表示されていませんでした(先ほどのコンタンさんのブログ記事参照のこと)。このデータを用いてSr-90/Cs-137=15/8500と計算してはいけません。実際よりも高めに見積もることになるのでいいかもしれませんが、2-3倍大きくなってしまいます。
2.東京電力のデータと文科省、福島県のデータを並べて比較することができない。
東京電力のデータだけを時系列を追って比較することには意味はありますが、東京電力の測定方法だけが湿土での測定ですので、同じ時期の文科省や福島県の測定データを並べて比較することができません。東京電力のデータは乾土率を用いて補正する必要があります。福島県水産試験場のHPは、東京電力の湿土での測定という情報がなかったためにこの間違いをやってしまいました(コンタンさん、情報ありがとうございました)。

(福島県水産試験場HPより)
3.東京電力の海底土のデータを時系列を追って比較
前置きがかなり長くなりました。やっと12月のデータの登場です。「12/12 東京電力の海底土のデータ 11月分のまとめ」でも行いましたが、東京電力のまとめているデータに若干情報を付加してあります。
このあと5枚の図が並びます。9月以降のデータでは、前月と比較して上昇したデータについては数字を赤枠で囲ってあります。逆に前月よりも下がったデータについては青枠で囲ってあります。各地点の●の色分けは、東京電力の方式をそのまま取り入れて、Cs-137の値で色分けしています。
25地点の情報は、下記の通りです。このあとに示す図では、右側の古い地点番号を使っています。今回から東京電力のHPの図では文科省の番号の振り方に合わせています。番号の振り方が違っていますのでご注意下さい。

7月~8月の測定は、東京電力のHPの図そのままです。

これ以降は、東京電力のHPの図に、前月からの上がり下がりがわかるように数字の枠に色をつけています。




この5枚の図をアニメーションにしてみました。1秒ごとに動くようにしてあります。もし動かなければ、画像をクリックすれば別画面で開きます。

全体的に、7-8月時の測定よりも、下がってきているというのがわかります。しかしながら、22番の相馬沖合3kmのように、大きく上がったり下がったりしているポイントがあり、これが「1/15 NHKスペシャル 知られざる放射能汚染~海からの緊急報告~を見て」でもご紹介したNHKスペシャルでも取り上げていた川からの流出の影響、この場合で言うと北にある阿武隈川からの流出の影響なのかどうか、今後の検証が必要と思います。

(1/15 NHKスペシャルより)
NHKスペシャルでも取り上げていたように、海底土の汚染は海流?によって移動します。従って、毎月の最新状況をアップデートしていく必要があります。ここでは、毎月の測定結果を加えていく予定です。東京電力の測定が乾土になるか、乾土率をもとめて換算できるようにしてくれたら、文科省のデータや福島県のデータと合わせてみたいと思います。
東京電力は、毎月1回、25ヶ所の海底土を採取し、そのセシウムの汚染を自社で測定しています。一方で、Srの分析や他の核種の分析は日本分析センターに依頼しています。
通常、海底土の測定は土壌を乾燥機にかけて、乾燥した土(乾土)あたりのデータを測定する(「ゲルマニウム半導体検出器等を用いる機器分析のための試料の前処理法」)のですが、東京電力は海底土を湿土のまま測定しています。つまり、海底から採ってきた泥をそのまま(?)測定器にかけて測定しています。

東京電力記者会見配付資料(12/1)より
東京電力はこれまで海底土の測定について、乾土で行っているのか湿土で行っているのかを明示してきませんでした。昨年11月に初めて湿土での分析であることが示されました。その時に、今までの分析方法がどうだったのか確認したいのと、今後は乾土で測定して欲しいというやりとりをコンタンさん(@Kontan_Bigcat)としました。私はそこで止まってしまったのですが、コンタンさんが回答する記者団の佐藤さん(@kishadan_editor)を通じて東京電力に対して質問(昨年末及び年始)をしてもらいました。
質問の経緯や詳細はコンタンさんのブログで「(暫定)東電の海底土調査の問題点」というのがありますので、それをご覧下さい。
「回答する記者団」の佐藤さんに聞いてもらったところ、東電としても乾土での測定に切り替えるべく乾燥器などの装置を手配しているということでした。また、これまでの測定データを乾土でのデータに変換するための乾土率の測定もしてくれるということなので、気長に待つしかありません。
2.東京電力だけが湿土で測定することの問題点
乾土と湿土でデータがどれくらい違うのか?ということについては、はっきりとはわかりませんが、2-3倍は数値が上がる可能性があります。具体的に説明しましょう。
ある海底土を2kgとってきて、そのうち半分の1kgをそのまま水分のある状態で(湿土で)測定したら100BqのCs-137が検出されたとします。この場合、100Bq/kg(湿土)という結果になります。
一方、残りの湿土1kgを乾燥させて乾土にしたら、海底土中の水分がなくなって、400gになったとします。このサンプルを測定しても、検出されるCs-137はほぼ100Bqのはずです。水の中のセシウム濃度は海底土のセシウム濃度の1/1000程度というのが経験的にわかっているからです。とすると、100Bq/400g=250Bq/kgということになります。
同じ海底土のサンプルでも、湿土で測定するのか乾土で測定するのか下のようにデータが2.5倍も違うことになってしまいます。なお、この2.5倍というのはあくまで例えばという例ですので、実際に測定してみないとこれが何倍なのかはわかりません。1.5倍かもしれません。その測定を東京電力にはお願いしています。
100Bq/kg(湿土)
250Bq/kg(乾土)
東京電力はこれまで海底土の測定を湿土で測定していましたが、今後乾土で測定すればこれまでよりも高いデータになる可能性があります。
実は、東京電力以外の文科省や福島県は全て標準的な乾土での測定を行っています。東京電力だけが湿土で測定することがなぜ問題なのか?二つあります。
1.同じ土壌のセシウムとストロンチウムのデータを比較する際に、Cs/Sr比率が計算できない。

ここではちゃんと測定方法が違うことを明示してありますが、以前はその違いも表示されていませんでした(先ほどのコンタンさんのブログ記事参照のこと)。このデータを用いてSr-90/Cs-137=15/8500と計算してはいけません。実際よりも高めに見積もることになるのでいいかもしれませんが、2-3倍大きくなってしまいます。
2.東京電力のデータと文科省、福島県のデータを並べて比較することができない。
東京電力のデータだけを時系列を追って比較することには意味はありますが、東京電力の測定方法だけが湿土での測定ですので、同じ時期の文科省や福島県の測定データを並べて比較することができません。東京電力のデータは乾土率を用いて補正する必要があります。福島県水産試験場のHPは、東京電力の湿土での測定という情報がなかったためにこの間違いをやってしまいました(コンタンさん、情報ありがとうございました)。

(福島県水産試験場HPより)
3.東京電力の海底土のデータを時系列を追って比較
前置きがかなり長くなりました。やっと12月のデータの登場です。「12/12 東京電力の海底土のデータ 11月分のまとめ」でも行いましたが、東京電力のまとめているデータに若干情報を付加してあります。
このあと5枚の図が並びます。9月以降のデータでは、前月と比較して上昇したデータについては数字を赤枠で囲ってあります。逆に前月よりも下がったデータについては青枠で囲ってあります。各地点の●の色分けは、東京電力の方式をそのまま取り入れて、Cs-137の値で色分けしています。
25地点の情報は、下記の通りです。このあとに示す図では、右側の古い地点番号を使っています。今回から東京電力のHPの図では文科省の番号の振り方に合わせています。番号の振り方が違っていますのでご注意下さい。

7月~8月の測定は、東京電力のHPの図そのままです。

これ以降は、東京電力のHPの図に、前月からの上がり下がりがわかるように数字の枠に色をつけています。




この5枚の図をアニメーションにしてみました。1秒ごとに動くようにしてあります。もし動かなければ、画像をクリックすれば別画面で開きます。

全体的に、7-8月時の測定よりも、下がってきているというのがわかります。しかしながら、22番の相馬沖合3kmのように、大きく上がったり下がったりしているポイントがあり、これが「1/15 NHKスペシャル 知られざる放射能汚染~海からの緊急報告~を見て」でもご紹介したNHKスペシャルでも取り上げていた川からの流出の影響、この場合で言うと北にある阿武隈川からの流出の影響なのかどうか、今後の検証が必要と思います。

(1/15 NHKスペシャルより)
NHKスペシャルでも取り上げていたように、海底土の汚染は海流?によって移動します。従って、毎月の最新状況をアップデートしていく必要があります。ここでは、毎月の測定結果を加えていく予定です。東京電力の測定が乾土になるか、乾土率をもとめて換算できるようにしてくれたら、文科省のデータや福島県のデータと合わせてみたいと思います。
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