福島県は米の緊急調査結果のとりまとめ(2/3)を発表!
2/3、福島県は、米の放射性物質に関する緊急調査をとりまとめて発表しました。
「米の放射性物質緊急調査の結果について(取りまとめ)」
11月に発覚した規制値越えのセシウムを含む米が多くの地域で確認されたことを受け、年末から緊急調査に取り組んできた結果、やっとまとまりました。先週、「1/28 福島県のお米の緊急調査 その後の進捗状況」で途中までの情報を紹介した時は、1月末に終わるのだろうか?と心配しましたが、最後のダッシュでなんとかとりまとめてくれました。関係者の方はお疲れ様です。
1.とりまとめの内容紹介
まずは今回のとりまとめ結果を見ていきます。そのためには、調査地域区分に3つの区分があることを理解しておかないといけません。
1.福島市旧小国村(大波地区)
これは、11月に暫定規制値越えの米が検出された事態を受けての全戸全袋調査です。
2.特定避難勧奨地点が存在する地域
これは、その後伊達市などでも暫定規制値越えの米が検出されたため、農家全戸から原則1袋ということで調査を行っています。ゲルマニウムではなくNaIでの簡易検査だったはずです。
3.本調査、予備調査でセシウムが少しでも検出された地域
2.の調査を開始した後も規制値越えの米が検出されたため、対象を拡大しました。
調査方法については、12/28のこの資料(今後の米放射性物質調査緊急調査の進め方フロー)をご覧下さい。もち米を別途測定するなど追加されています。
(敢えて付け加えると、「4.本調査、予備調査で全てNDだった地域」は今回の対象外です。)
それぞれについて、全戸の調査結果(1.以外は通常1戸一袋を調査)が下記にまとまっています。全部で23240戸の32747点の調査を行いました。

さて、みなさんが関心がある結果です。1.2.3.合わせた23240戸のデータをセシウム量で区分してグラフにすると下記のようになります。現在の規制値の500Bq/kgと、厚労省が4月から予定している新基準値の100Bq/kgで区切ってあります。

これによると、97.5%の22657戸が100Bq/kgであり、ほとんどが新基準値の100Bq/kg以下であることがわかります。ただ、見方を変えれば2.5%が新基準値では引っかかってしまうということです。
そこで、実際の地区毎の結果を見たい人のために、詳細なデータをpdfとExcelとで別表としてつけてくれています。このような情報公開の姿勢、特にExcelシートで公開したことは評価できます。ありがとうございます。
「米の放射性物質緊急調査 区域毎の調査結果(pdf)」
そして、今回の緊急調査を行うにあたり、出荷見合わせを要請していましたが、100Bq/kg以下だった地区については出荷見合わせを解除しました。しかしながら、現行の規制値以下ですが新基準値の100Bq/kgを超える地域の米については、下記のように引き続き出荷見合わせを要請しています。
『イ100Bq/kgを超過し500Bq/kg以下の地域
当該地域の米は特別隔離対策の対象となるよう国に要望しており、国も対応を検討していることから、引き続き出荷を見合わせるよう依頼する。
なお、田村市旧瀬川村、白河市旧白坂村、西郷村旧西郷村については、1月27日に調査が終了し出荷の見合わせを解除するとしたが、改めて出荷を見合わせるよう依頼する。』
今後の対応としては、下記のような記載があります。
『3 今後の対応
(1)100 Bq/kg以下となり、出荷が可能となった地域において、諸般の事情により未検査となっている生産者について、23年産米の特別隔離対策を進める観点から分析を行う。
(2)県産米については、国が行う特別隔離対策を活用し、100 Bq/kgを超える米が一般に流通しないよう努める。』
「特別隔離対策」とは、農水省が12/27に発表した政策で、下記のことが書いてあります。出荷せずに廃棄し、いずれは東電に賠償させるという予定のようです。
『食品中の放射性物質の新基準値案の水準(100 Bq/㎏)を考慮し、暫定規制値(500 Bq/㎏)を超える放射性セシウムの検出により出荷が制限された米だけでなく、100 Bq/㎏を超える米についても、市場流通から隔離することとする。これを円滑に実施するため、民間団体などが出荷代金相当額を生産者等に対して支払う仕組みを整備する。
これらの措置により、消費者の不安解消と生産者の経営安定を図る。』

2.よくありがちな誤解を解くための補足
あるtogetterのまとめをふとしたことから読んでいたら、今回の福島県の情報を受けて、これまでの経緯を全く理解していない人がいることに気がつきました。このまとめ自体はあまり読むことをお勧めしませんが、いろんな意味で役に立つ情報もあるので、一部紹介してコメントします。

発言者が誰かは敢えて紹介しませんが、この発表「だけ」を読むと、こういう誤解をする人もいると思います。上でも記載したつもりですが、リンク先を読まないで理解不足の方もいるので補足します。今回の調査はあくまで緊急調査であり、本調査で全てNDだった地区は今回の調査の対象外です。
2/5追記:ある方からコメントをいただき、上の人の発言は本調査で西会津町でも検出されているはずなのになぜ緊急調査で測定しないのか、という意味ではないかという指摘をいただきました。確かにNDではないのに今回の対象に入っていないところ(旧束松村)があります。下の地図を拡大してもわかります。従って、「経緯を理解していない」というのは私の誤解の可能性があります。西会津町の話は最後の福島県への要望に追加しました。ただ、togetterのまとめでは他にも緊急調査の意味合いを理解していない人がいましたので、例として残しておきます。
私が良く参考にしている@shanghai_iiさんの作成した力作(無断引用です。問題あればご連絡下さい。)を見たら、本調査では会津地区など多くの地域がND(濃い青)であることがわかると思います。

福島県の早場米調査、予備調査、本調査(これはゲルマニウム検出器で、検出限界がCs-134、Cs-137ともに約10Bq/kgで測定)の結果は、検査したサンプル数が全部で1724点で、そのうちCs-134もCs-137もND(不検出)だったのは1387件で、約80%がNDです。この数値は、早場米まで入れているため、他の人の数値と異なるかもしれません。なお、作付面積まで考慮して加重平均を計算すると、同じく@shanghai_iiさんの計算では約87%がNDになるそうです。

出典:早場米調査結果まとめ101点、予備調査まとめ449点、本調査まとめ1174点
また、このデータに基づき、一度福島県の米のデータについては10月にまとめをしています。
「10/23 お米の放射能データのまとめ(2) 福島県のセシウムの平均値は?」
なお、農水省のHPを見ると、いつのまにか11月の福島市旧小国村のデータ1件(630Bq/kg)を勝手に福島県の本調査の結果に入れています。どういう意図があるのかわかりませんが、これはあくまで本調査後の検査にわかったものですから除外するべきです。もし入れるならば、その後の伊達市旧小国村や旧福島市のデータも入れるべきです。

以上をまとめると、早場米調査、予備調査、本調査で測定した1724点の大多数(80%)の1387点がNDであり、新基準値の100Bq/kg以下のものが324点で、合わせて1711点(99.2%)が100Bq/kg以下でした。100Bq/kg以下を超えたものは13点で、最高が二本松市旧小浜町の500Bq/kgです。暫定規制値の500Bq/kg越えはありませんでした。そして、全てNDだった地区は今回の緊急調査の対象外になっています。
本調査では規制値越えが1点もなかったからこそ、11月になって暫定規制値越えの米があとからあとから出てきて大きな問題になったのです。
11月の規制値越え発覚を受けて、福島市旧小国村では全戸の全袋(30kg)単位で調査することになりましたし、それ以外にも特定避難勧奨地点が存在する地域の調査を行うことになりました。なお、旧小国村の測定がゲルマニウム検出器なのかNaIの簡易検査なのか詳細は明らかになっていませんが、「特定避難勧奨地点が存在する地域」の調査はNaIの簡易検査で行い、高めの数値が出たらゲルマニウム検出器で測定することになっていました。おそらく「本調査、予備調査でセシウムが少しでも検出された地域」についても同じ可能性があります。
500Bq/kgを超えたものについてはゲルマニウム検出器でしっかり測定しているはずですが、それ以外のものについては、今回はスクリーニングですので、下のツイッターでの発言にあったように検出限界値はCs合計で60Bq/kgという調査であっても、100Bq/kgを超えるかどうかというチェックには使えると思います。どの検査が検出感度がどれくらいなのか、ということは福島県にも明示して欲しいし、それを我々も理解しておく必要があります。

3.今後の予定は?
福島県の調査結果まとめを受けて今後どうなるのか?それについては、この記事が一番参考になります。
福島民報 1/30 【24年産米作付け】線引き難航必至 農家「科学的根拠を」
『JA福島中央会の方針では、24年産米で食品の新基準値の100ベクレルを超える危険性が小さい地域は除染などを条件に作付けを進め、地理的な要因などで危険性が大きい地域は作付けを制限する。新基準値超えのコメの分布状況や数値の大小を基に総合的に判断するとした。農林水産省穀物課も「同様の考え方になるだろう」としているが、明確な基準はなく、可否を決めるには難航が予想される。
JA伊達みらい管内では、県の調査で多くの旧町村で100ベクレル超のコメが見つかった。しかし、担当者によると、あくまで旧町村内の一部で、100ベクレルを超えなかった水田も多い。「字単位の制限なのか、放射性セシウムが流れ込む水系で分けるのか。線引きは難しい」と指摘する。』 福島民報1/30より
2月中(あるいはもっと早い?)には方針を決定しないと今年の作付けはできません。実際の作付け作業の前に、資材の発注などがあるそうです。
この線引きは、非常に難しいのですが、公平を期すためにはどういう根拠であっても同じ線引きで行うことが必要です。また、作付けをした結果、もし新基準値の100Bq/kgを超えてしまった場合にどうするのか、これも今回は事前に決めておく必要があります。そうでないと、きっと農家の不満が高まる結果になるのではないでしょうか?
4.福島県に対する要望
福島県は、全体的に見ると今回の緊急調査の結果をしっかりと開示してくれたと思います。Excelデータをダウンロードできるようにしてくれて、利用できるようにしてくれている所も評価すべきと思います。
一方で、今後のため、福島県の情報公開の姿勢をよりよく見せるために要望したいことがあります。それをいくつかあげたいと思います。
(1) 今回の緊急調査の位置づけを、わかりやすく示すこと。
全ての人が福島県の米の情報について私ほど理解しているわけではありません。かなりフォローしているつもりの私だって完璧に把握できていません。上で紹介したように、なんで会津地区が入っていないのか?と疑問を持つような人も出てきます。また、こういうまとめがあると、福島県の米を全て調査したと勘違いする人が必ず出てきます。ですから、今回の調査で何を行ったのか、どこは調査していないのか、福島県全体の結果としてはどういう事が言えるのかを示すべきです。
例えば、ここで出した数値に、NDだったために緊急調査を行わなかった地域の農家戸数を足した仮想の集計結果を出しても良かったと思います。
水田畑作課ではデータ集計だけで手一杯かもしれませんが、他の課と協力してそこでまとめを作って公開すると言うことをやってもいいと思います。情報は公開されていますが、断片的な情報が多いので、それをつなぎ合わせたまとめを作成しないと受け手には伝わらないと思います。そうしたら結局は情報の伝達方法としては失敗です。マスメディアはあくまでその日の発表情報を伝えるだけですから、全体像を描くような解説はしてくれません。福島県が自分たちで正しい情報を発信し続けることが重要と思います。
(2)検出限界値を明示すること
昨年10月まで必死になって更新していた「今年のコメの放射能検査の最新状況のまとめ(随時更新用)」で紹介していますが、予備調査、本調査の時の検出限界値は、コンタンさんがまとめてくれていたように、福島県ではCs-134:5~10Bq/kg、Cs-137:5~10Bq/kgだったはずです。
『「お米の検査の定量下限/検出限界一覧」 Ver.5.0 (10/31公表分まで)』より
福島県 (検出限界: Cs-134、Cs-137 各 5~10 Bq/kg(合計 10~20 Bq/kg)、「90gの検体を 1,800秒測定」)
今回の緊急調査について、暫定規制値越えのサンプルはゲルマニウム検出器で測定したことがわかっていますが、スクリーニング的に実施した「特定避難勧奨地点が存在する地域」や「本調査、予備調査でセシウムが僅かでも検出された地域」の調査方法がわかりません。特に別表のデータを見ると、「放射線が僅かでも検出された地域」はその地区の最高値(Cs-134とCs-137の合計)が示されています。

上の図で19Bq/kgという場合、検出限界値はいくつくらいだったのでしょうか?本調査でも、Cs-134:ND、Cs-137:9Bq/kgというような結果が出た場合、NDをいくつとするか(ND=0か、ND=検出限界値か、その1/2か)によって、合計値は変わって来るため、合計値での計算は前提を書かないとできませんでした。
緊急調査における検出限界値と、Cs-134とCs-137の合計を出す場合のND値の取り扱い方法を開示して欲しいと思います。今回の緊急調査で検出限界値が合計で60Bq/kgだったという結果もいわき市ではあったようです。
(3) 元になるデータについて、合計が合わないので、間違っているならば修正すること
「12/31 福島県の緊急調査の途中経過とその後の情報のまとめ」にも書きましたが、福島市旧小国村の農家の戸数は「地域区分一覧表」によれば154戸です。

実際、途中では下に示すように154戸中138戸の調査が完了していたのに、ある時から急に135戸に減ってしまって現在に至っています。

135戸が正しい数値ならば、過去の発表はそのままでもいいので、コメントとして実際には135戸しかなかったことが判明したために第○報から修正した、と出してもらえればいいと思います。一覧表は正しい数値に修正すべきです。
また、2/3に発表された第18報では、累計値が今回のまとめのデータと合わないといけないはずなのですが、特定避難勧奨地点が存在する地域の累計は、6市町村22旧市町村で、4910戸の6852点の調査結果になっていないといけません。しかし、第18報では6市町村22旧市町村で552戸の1561点と全く違う累計値になっています。

このようないい加減な集計をやっているのでは、いつまた重要な修正が行われるのかわからず、基本的なデータに対して信用できなくなります。
福島県としての調査もこれで一段落でしょうから、過去の発表を全て確認し、間違っている所は修正して欲しいと思います。数字の集計というのはこのような調査の基本中の基本ですので、発表する前にチェックしてほしいものです。集計した当人は間違いに気がつかないことが多いので、別の人がチェックする仕組みが必要です。もし現在もそのような仕組みを作っているとしたら今は全く機能していないことを理解して欲しいと思います。
2/5追記
(4) なぜ、西会津町(旧束松村)が緊急調査の検査対象に入っていないのか説明すること
9/23発表の本調査においては、西会津町(旧束松村)においても下のようにセシウムが検出されています。

ある方から指摘があったので一応全ての本調査、予備調査、早場米調査の結果をチェックしましたが、ここだけがセシウムを検出しているにもかかわらず今回の緊急調査の対象に入っていません。そもそも12/2の「緊急調査の地域区分一覧表(訂正)」に入っていませんでした。
計画に入っていなかったのですから、今回の緊急調査結果に含まれていないのは当然なのですが、なぜ西会津町(旧束松村)を除外したのか?単なるミスなのか。もしミスならばどう対応するのか?追加で測定するのか、そのあたりを明らかにして欲しいと思います。
2/5追記 ここまで
誤解のないように付け加えておきますが、これは福島県にケチをつけているのではありません。私は、Excelデータの公開など評価できる事にはいいとはっきりと述べています。今後の福島県の情報公開のあり方をよりよいものにしてもらい、県知事の安全宣言後の暫定規制値越え続出で失われた信用を早く取り戻すための提言であることをご理解いただきたいと思います。
これまでにも福島県のHPの発表内容には確認・修正を申し入れたことがありますが、そのたびに福島県の担当部署はきちんと対応してくれていることは申し添えておきます。
まずは今回のとりまとめ結果を見ていきます。そのためには、調査地域区分に3つの区分があることを理解しておかないといけません。
1.福島市旧小国村(大波地区)
これは、11月に暫定規制値越えの米が検出された事態を受けての全戸全袋調査です。
2.特定避難勧奨地点が存在する地域
これは、その後伊達市などでも暫定規制値越えの米が検出されたため、農家全戸から原則1袋ということで調査を行っています。ゲルマニウムではなくNaIでの簡易検査だったはずです。
3.本調査、予備調査でセシウムが少しでも検出された地域
2.の調査を開始した後も規制値越えの米が検出されたため、対象を拡大しました。
調査方法については、12/28のこの資料(今後の米放射性物質調査緊急調査の進め方フロー)をご覧下さい。もち米を別途測定するなど追加されています。
(敢えて付け加えると、「4.本調査、予備調査で全てNDだった地域」は今回の対象外です。)
それぞれについて、全戸の調査結果(1.以外は通常1戸一袋を調査)が下記にまとまっています。全部で23240戸の32747点の調査を行いました。

さて、みなさんが関心がある結果です。1.2.3.合わせた23240戸のデータをセシウム量で区分してグラフにすると下記のようになります。現在の規制値の500Bq/kgと、厚労省が4月から予定している新基準値の100Bq/kgで区切ってあります。

これによると、97.5%の22657戸が100Bq/kgであり、ほとんどが新基準値の100Bq/kg以下であることがわかります。ただ、見方を変えれば2.5%が新基準値では引っかかってしまうということです。
そこで、実際の地区毎の結果を見たい人のために、詳細なデータをpdfとExcelとで別表としてつけてくれています。このような情報公開の姿勢、特にExcelシートで公開したことは評価できます。ありがとうございます。
「米の放射性物質緊急調査 区域毎の調査結果(pdf)」
そして、今回の緊急調査を行うにあたり、出荷見合わせを要請していましたが、100Bq/kg以下だった地区については出荷見合わせを解除しました。しかしながら、現行の規制値以下ですが新基準値の100Bq/kgを超える地域の米については、下記のように引き続き出荷見合わせを要請しています。
『イ100Bq/kgを超過し500Bq/kg以下の地域
当該地域の米は特別隔離対策の対象となるよう国に要望しており、国も対応を検討していることから、引き続き出荷を見合わせるよう依頼する。
なお、田村市旧瀬川村、白河市旧白坂村、西郷村旧西郷村については、1月27日に調査が終了し出荷の見合わせを解除するとしたが、改めて出荷を見合わせるよう依頼する。』
今後の対応としては、下記のような記載があります。
『3 今後の対応
(1)100 Bq/kg以下となり、出荷が可能となった地域において、諸般の事情により未検査となっている生産者について、23年産米の特別隔離対策を進める観点から分析を行う。
(2)県産米については、国が行う特別隔離対策を活用し、100 Bq/kgを超える米が一般に流通しないよう努める。』
「特別隔離対策」とは、農水省が12/27に発表した政策で、下記のことが書いてあります。出荷せずに廃棄し、いずれは東電に賠償させるという予定のようです。
『食品中の放射性物質の新基準値案の水準(100 Bq/㎏)を考慮し、暫定規制値(500 Bq/㎏)を超える放射性セシウムの検出により出荷が制限された米だけでなく、100 Bq/㎏を超える米についても、市場流通から隔離することとする。これを円滑に実施するため、民間団体などが出荷代金相当額を生産者等に対して支払う仕組みを整備する。
これらの措置により、消費者の不安解消と生産者の経営安定を図る。』

2.よくありがちな誤解を解くための補足
あるtogetterのまとめをふとしたことから読んでいたら、今回の福島県の情報を受けて、これまでの経緯を全く理解していない人がいることに気がつきました。このまとめ自体はあまり読むことをお勧めしませんが、いろんな意味で役に立つ情報もあるので、一部紹介してコメントします。

発言者が誰かは敢えて紹介しませんが、この発表「だけ」を読むと、こういう誤解をする人もいると思います。上でも記載したつもりですが、リンク先を読まないで理解不足の方もいるので補足します。今回の調査はあくまで緊急調査であり、本調査で全てNDだった地区は今回の調査の対象外です。
2/5追記:ある方からコメントをいただき、上の人の発言は本調査で西会津町でも検出されているはずなのになぜ緊急調査で測定しないのか、という意味ではないかという指摘をいただきました。確かにNDではないのに今回の対象に入っていないところ(旧束松村)があります。下の地図を拡大してもわかります。従って、「経緯を理解していない」というのは私の誤解の可能性があります。西会津町の話は最後の福島県への要望に追加しました。ただ、togetterのまとめでは他にも緊急調査の意味合いを理解していない人がいましたので、例として残しておきます。
私が良く参考にしている@shanghai_iiさんの作成した力作(無断引用です。問題あればご連絡下さい。)を見たら、本調査では会津地区など多くの地域がND(濃い青)であることがわかると思います。

福島県の早場米調査、予備調査、本調査(これはゲルマニウム検出器で、検出限界がCs-134、Cs-137ともに約10Bq/kgで測定)の結果は、検査したサンプル数が全部で1724点で、そのうちCs-134もCs-137もND(不検出)だったのは1387件で、約80%がNDです。この数値は、早場米まで入れているため、他の人の数値と異なるかもしれません。なお、作付面積まで考慮して加重平均を計算すると、同じく@shanghai_iiさんの計算では約87%がNDになるそうです。

出典:早場米調査結果まとめ101点、予備調査まとめ449点、本調査まとめ1174点
また、このデータに基づき、一度福島県の米のデータについては10月にまとめをしています。
「10/23 お米の放射能データのまとめ(2) 福島県のセシウムの平均値は?」
なお、農水省のHPを見ると、いつのまにか11月の福島市旧小国村のデータ1件(630Bq/kg)を勝手に福島県の本調査の結果に入れています。どういう意図があるのかわかりませんが、これはあくまで本調査後の検査にわかったものですから除外するべきです。もし入れるならば、その後の伊達市旧小国村や旧福島市のデータも入れるべきです。

以上をまとめると、早場米調査、予備調査、本調査で測定した1724点の大多数(80%)の1387点がNDであり、新基準値の100Bq/kg以下のものが324点で、合わせて1711点(99.2%)が100Bq/kg以下でした。100Bq/kg以下を超えたものは13点で、最高が二本松市旧小浜町の500Bq/kgです。暫定規制値の500Bq/kg越えはありませんでした。そして、全てNDだった地区は今回の緊急調査の対象外になっています。
本調査では規制値越えが1点もなかったからこそ、11月になって暫定規制値越えの米があとからあとから出てきて大きな問題になったのです。
11月の規制値越え発覚を受けて、福島市旧小国村では全戸の全袋(30kg)単位で調査することになりましたし、それ以外にも特定避難勧奨地点が存在する地域の調査を行うことになりました。なお、旧小国村の測定がゲルマニウム検出器なのかNaIの簡易検査なのか詳細は明らかになっていませんが、「特定避難勧奨地点が存在する地域」の調査はNaIの簡易検査で行い、高めの数値が出たらゲルマニウム検出器で測定することになっていました。おそらく「本調査、予備調査でセシウムが少しでも検出された地域」についても同じ可能性があります。
500Bq/kgを超えたものについてはゲルマニウム検出器でしっかり測定しているはずですが、それ以外のものについては、今回はスクリーニングですので、下のツイッターでの発言にあったように検出限界値はCs合計で60Bq/kgという調査であっても、100Bq/kgを超えるかどうかというチェックには使えると思います。どの検査が検出感度がどれくらいなのか、ということは福島県にも明示して欲しいし、それを我々も理解しておく必要があります。

3.今後の予定は?
福島県の調査結果まとめを受けて今後どうなるのか?それについては、この記事が一番参考になります。
福島民報 1/30 【24年産米作付け】線引き難航必至 農家「科学的根拠を」
『JA福島中央会の方針では、24年産米で食品の新基準値の100ベクレルを超える危険性が小さい地域は除染などを条件に作付けを進め、地理的な要因などで危険性が大きい地域は作付けを制限する。新基準値超えのコメの分布状況や数値の大小を基に総合的に判断するとした。農林水産省穀物課も「同様の考え方になるだろう」としているが、明確な基準はなく、可否を決めるには難航が予想される。
JA伊達みらい管内では、県の調査で多くの旧町村で100ベクレル超のコメが見つかった。しかし、担当者によると、あくまで旧町村内の一部で、100ベクレルを超えなかった水田も多い。「字単位の制限なのか、放射性セシウムが流れ込む水系で分けるのか。線引きは難しい」と指摘する。』 福島民報1/30より
2月中(あるいはもっと早い?)には方針を決定しないと今年の作付けはできません。実際の作付け作業の前に、資材の発注などがあるそうです。
この線引きは、非常に難しいのですが、公平を期すためにはどういう根拠であっても同じ線引きで行うことが必要です。また、作付けをした結果、もし新基準値の100Bq/kgを超えてしまった場合にどうするのか、これも今回は事前に決めておく必要があります。そうでないと、きっと農家の不満が高まる結果になるのではないでしょうか?
4.福島県に対する要望
福島県は、全体的に見ると今回の緊急調査の結果をしっかりと開示してくれたと思います。Excelデータをダウンロードできるようにしてくれて、利用できるようにしてくれている所も評価すべきと思います。
一方で、今後のため、福島県の情報公開の姿勢をよりよく見せるために要望したいことがあります。それをいくつかあげたいと思います。
(1) 今回の緊急調査の位置づけを、わかりやすく示すこと。
全ての人が福島県の米の情報について私ほど理解しているわけではありません。かなりフォローしているつもりの私だって完璧に把握できていません。上で紹介したように、なんで会津地区が入っていないのか?と疑問を持つような人も出てきます。また、こういうまとめがあると、福島県の米を全て調査したと勘違いする人が必ず出てきます。ですから、今回の調査で何を行ったのか、どこは調査していないのか、福島県全体の結果としてはどういう事が言えるのかを示すべきです。
例えば、ここで出した数値に、NDだったために緊急調査を行わなかった地域の農家戸数を足した仮想の集計結果を出しても良かったと思います。
水田畑作課ではデータ集計だけで手一杯かもしれませんが、他の課と協力してそこでまとめを作って公開すると言うことをやってもいいと思います。情報は公開されていますが、断片的な情報が多いので、それをつなぎ合わせたまとめを作成しないと受け手には伝わらないと思います。そうしたら結局は情報の伝達方法としては失敗です。マスメディアはあくまでその日の発表情報を伝えるだけですから、全体像を描くような解説はしてくれません。福島県が自分たちで正しい情報を発信し続けることが重要と思います。
(2)検出限界値を明示すること
昨年10月まで必死になって更新していた「今年のコメの放射能検査の最新状況のまとめ(随時更新用)」で紹介していますが、予備調査、本調査の時の検出限界値は、コンタンさんがまとめてくれていたように、福島県ではCs-134:5~10Bq/kg、Cs-137:5~10Bq/kgだったはずです。
『「お米の検査の定量下限/検出限界一覧」 Ver.5.0 (10/31公表分まで)』より
福島県 (検出限界: Cs-134、Cs-137 各 5~10 Bq/kg(合計 10~20 Bq/kg)、「90gの検体を 1,800秒測定」)
今回の緊急調査について、暫定規制値越えのサンプルはゲルマニウム検出器で測定したことがわかっていますが、スクリーニング的に実施した「特定避難勧奨地点が存在する地域」や「本調査、予備調査でセシウムが僅かでも検出された地域」の調査方法がわかりません。特に別表のデータを見ると、「放射線が僅かでも検出された地域」はその地区の最高値(Cs-134とCs-137の合計)が示されています。

上の図で19Bq/kgという場合、検出限界値はいくつくらいだったのでしょうか?本調査でも、Cs-134:ND、Cs-137:9Bq/kgというような結果が出た場合、NDをいくつとするか(ND=0か、ND=検出限界値か、その1/2か)によって、合計値は変わって来るため、合計値での計算は前提を書かないとできませんでした。
緊急調査における検出限界値と、Cs-134とCs-137の合計を出す場合のND値の取り扱い方法を開示して欲しいと思います。今回の緊急調査で検出限界値が合計で60Bq/kgだったという結果もいわき市ではあったようです。
(3) 元になるデータについて、合計が合わないので、間違っているならば修正すること
「12/31 福島県の緊急調査の途中経過とその後の情報のまとめ」にも書きましたが、福島市旧小国村の農家の戸数は「地域区分一覧表」によれば154戸です。

実際、途中では下に示すように154戸中138戸の調査が完了していたのに、ある時から急に135戸に減ってしまって現在に至っています。

135戸が正しい数値ならば、過去の発表はそのままでもいいので、コメントとして実際には135戸しかなかったことが判明したために第○報から修正した、と出してもらえればいいと思います。一覧表は正しい数値に修正すべきです。
また、2/3に発表された第18報では、累計値が今回のまとめのデータと合わないといけないはずなのですが、特定避難勧奨地点が存在する地域の累計は、6市町村22旧市町村で、4910戸の6852点の調査結果になっていないといけません。しかし、第18報では6市町村22旧市町村で552戸の1561点と全く違う累計値になっています。

このようないい加減な集計をやっているのでは、いつまた重要な修正が行われるのかわからず、基本的なデータに対して信用できなくなります。
福島県としての調査もこれで一段落でしょうから、過去の発表を全て確認し、間違っている所は修正して欲しいと思います。数字の集計というのはこのような調査の基本中の基本ですので、発表する前にチェックしてほしいものです。集計した当人は間違いに気がつかないことが多いので、別の人がチェックする仕組みが必要です。もし現在もそのような仕組みを作っているとしたら今は全く機能していないことを理解して欲しいと思います。
2/5追記
(4) なぜ、西会津町(旧束松村)が緊急調査の検査対象に入っていないのか説明すること
9/23発表の本調査においては、西会津町(旧束松村)においても下のようにセシウムが検出されています。

ある方から指摘があったので一応全ての本調査、予備調査、早場米調査の結果をチェックしましたが、ここだけがセシウムを検出しているにもかかわらず今回の緊急調査の対象に入っていません。そもそも12/2の「緊急調査の地域区分一覧表(訂正)」に入っていませんでした。
計画に入っていなかったのですから、今回の緊急調査結果に含まれていないのは当然なのですが、なぜ西会津町(旧束松村)を除外したのか?単なるミスなのか。もしミスならばどう対応するのか?追加で測定するのか、そのあたりを明らかにして欲しいと思います。
2/5追記 ここまで
誤解のないように付け加えておきますが、これは福島県にケチをつけているのではありません。私は、Excelデータの公開など評価できる事にはいいとはっきりと述べています。今後の福島県の情報公開のあり方をよりよいものにしてもらい、県知事の安全宣言後の暫定規制値越え続出で失われた信用を早く取り戻すための提言であることをご理解いただきたいと思います。
これまでにも福島県のHPの発表内容には確認・修正を申し入れたことがありますが、そのたびに福島県の担当部署はきちんと対応してくれていることは申し添えておきます。
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