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難解!厚労省が発表した食品の放射性物質に関する検査の新指針

 
3/12、厚労省は、原子力災害対策本部が改正した「食品中の放射性物質に関する「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」の改正について」を発表すると同時に、農畜水産物等の検査計画等の改正について、都道府県等へ通知(医薬食品局食品安全部)しました。

食品中の放射性物質に関する「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」の改正について」のページでは、別紙として22ページにもわたる説明(原子力災害対策本部)がついています。初めてこれをまともに読んだのですが、これが超難解です。原子力災害対策本部長の県知事への出荷停止の指示もわかりにくかったのですが、これに比べたらまだマシです。

なぜ難しいかというと、法令用語によくある、前の条文の(1)についてはAで、(2)についてはBで、というような表現のオンパレードだからです。複雑な場合分けを法律的に記載したのでしょうが、法律をよく読んでいる人以外で、これを一度読んだだけで素直に理解できる人は1%もいないと断言できます。

あまりの難しさに、この解説記事を書くのをためらったくらいです。

私もさすがに一度では理解できなかったので、まずは各社の報道はどのように伝えているのかを調べました。一番親切に解説してくれていたのはasahi.comでした。

あとは要点だけの解説で、細かいことは一切触れていない報道ばかりでしたが、このニュースについてはその姿勢でも正解だと思いました。

余りに複雑なため、全体をわかりやすく整理するのは不可能と思いますが、やれるところまでやってみます。私も「1.経緯」を書いてみて、過去の「考え方」と読み比べてみて初めてやっとわかってきた気がします。

1.経緯

「考え方」についての厚労省のHP及び別紙に説明されていますが、まずマスメディア各社がこの検査の「指針」と報道しているものが何に基づくのかを理解しておかないといけません。

今回厚労省のこのHPに出されたものは、『本日、原子力災害対策本部において、原子力安全委員会の助言を踏まえ、食品中の放射性物質に関する「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」が別紙のとおり改正されたのでお知らせします。』ということで、このあとでも述べますが、原子力災害対策本部から出された「考え方」が変わったよ、というお知らせなのです。ここには厚労省の意見は入っていません。

これを受けて厚労省から該当自治体に通知したのは、こちらになります。おそらくいずれは整理されて同じ食品の放射能検査や規制値に関するHPの中にまとめられると思いますが、原子力災害対策本部の「考え方」と厚労省の各都道府県への「通知」は持っている意味あいは異なりますので、そこのところをまず誤解しないようにしないといけません。

基本的に、厚労省の「通知」は原子力災害対策本部の「考え方」を受けてのものですから、まずは「考え方」を理解しておく必要があります。厚労省の「通知」において、別紙参考の原子力災害対策本部から出された「考え方」のI.趣旨というところからそのまま引用します。

『平成23年3月17日に食品衛生法(昭和22年法律第233号)に基づく放射性物質の暫定規制値が設定され、4月4日付けでそれまでに得られた知見に基づき「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」を取りまとめた。』

これはもう1年も前のことになります。これまで食品衛生法には食品中に放射性物質が混入しているという前提がなかったためにその規制値もなかったのですが、放射性物質が大量にばらまかれたことで、急遽その規制値を決める必要が出てきました。そこで「暫定規制値」というものが設定されたのが昨年の3/17の事でした。

その暫定規制値に従って福島県を中心に検査を行った結果をもとに4/4に原子力災害対策本部から出されたのが「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方(別紙1参考)」でした。当時は放射性ヨウ素I-131が主な検査の対象でした。

厚労省は、この原子力災害対策本部の考え方に基づいて対象となる『総理指示対象自治体(福島県、茨城県、栃木県、群馬県)及びその隣接自治体(宮城県、山形県、新潟県、長野県、埼玉県、千葉県)並びに暫定規制値を超えた食品の生産自治体(東京都)』に対して「地方自治体の検査計画について(別紙1)」という指示をしています。この時で11都県ですね。

『平成23年6月27日、食品からの放射性ヨウ素の検出レベルが低下する一方、一部の食品から暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されていることを踏まえ、事故直後の放射性ヨウ素の降下による影響を受けやすい食品に重点を置いたものから、放射性セシウムの影響及び国民の食品摂取の実態等を踏まえたものに充実させた。』

放射性ヨウ素は半減期が8日と短いため、一月もしたらほとんど消えていきました。その一方で、半減期の長い放射性セシウムの汚染が問題となってきました。そこで、原子力災害対策本部は昨年の6/27に「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」を一部改正しました。

それに基づき、厚労省も「地方自治体の検査計画について(別紙)」を改定しました。この時は対象となる自治体は『福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、神奈川県、宮城県、山形県、新潟県、長野県、埼玉県、東京都、山梨県、静岡県』に広がっています。つまり、4月の時から比べると神奈川県と静岡県、山梨県が追加されて14都県になっています。こう書けば、あ、これはお茶のためだ、とわかる人も多いと思います。

なお、この「別紙参考」のI.趣旨では省略されているのですが、実はこのあとに8/4にも原子力災害対策本部は「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」というのを出していて、そこでは対象自治体は「福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、神奈川県、宮城 県、岩手県、青森県、秋田県、山形県、新潟県、長野県、埻玉県、東京都、山梨県、静岡県」と17都県に増えています。この時の主な改正は、牛肉とコメを加えたことでした。

『今般、平成23年の検査結果が集積されたこと及び集積されたこと及び平成24年4月1日から新基準値が施行されることを踏まえ、食品の出荷制限等の要否を適切に判断するための検査計画、検査結果に基づく出荷制限等の必要性の判断、出荷制限等の解除の考え方について必要な見直しを行った。

運用に当たっては、これまでに得られている知見(これまでの検査結果に加え、放射性物質の降下・付着、水・農地土壌・大気からの移行、生産・飼養管理による影響等)を踏まえて対応する。』

今回の対象自治体は、(1)過去に複数品目で出荷制限指示の対象となった自治体である福島県、宮城県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県と(2)過去に単一品目で出荷制限指示の対象となった自治体及び出荷制限指示対象自治体の隣接自治体である青森県、岩手県、秋田県、山形県、埼玉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県の合計17都県です。昨年の6月から比べて、青森県、秋田県、岩手県が追加されていますが、8/4からは変更ありません。また、(1)の6県と(2)の11都県に区分しています。

今回の対象自治体は基本的には(1)と(2)の17都県なのですが、『(3)放射性物質の検出状況等を踏まえ、別途指示する自治体』というものも追記されており、今後の展開によっては追加ができるようになっています。これは6/27からすでに追加されていました。

単に今回の原子力災害対策本部の考え方では17都県が対象で、と考えると全体像が理解できないと思いますが、こうやって経緯を追って理解すると、わかりやすいと思います。


2.検査対象品目

実は、今回の「考え方」の改正ではこの部分が全面的に変わっています。食品の新基準値が4月から設定される予定ですが、そこでは放射性セシウムの基準値はこれまでの500Bq/kgから100Bq/kgと大きく下がります。

このことと、これまでの膨大な量の検査結果を受けて、新たに品目を整理しています。

(1)100 Bq/kgを超える放射性セシウムが検出された品目

ア 野菜類(露地物を優先して選択)
チンゲンサイ等非結球性葉菜類、カブ等その他の根菜類、タケノコ等多年生の野菜、ハーブ類等の摂取量の少ない野菜(多年生のものを含む)

イ 果実類(露地物を優先して選択)
ミカン、ユズ、カボス等その他のかんきつ類、ビワ等その他の常緑果樹、カキ、モモ、ウメ、スモモ等その他の核果実、ブドウ、ベリー類、キウイフルーツ等、クリ等穀果類、イチジク等その他の落葉果樹

ウ きのこ・山菜類(露地物を優先して選択)
原木しいたけ(露地栽培及び施設栽培)、原木なめこ(露地栽培)、原木くりたけ(露地栽培)、原木まいたけ(露地栽培)、原木ひらたけ(露地栽培)、野生きのこ類、菌床しいたけ(施設栽培)、菌床えのきたけ(施設栽培)、菌床なめこ(施設栽培)、たらのめ、わらび、ふきのとう、くさそてつ(こごみ)、
ねまがりたけ、こしあぶら、おやまぼくち、やまぐり

エ 肉
牛肉、豚肉、イノシシその他の野生鳥獣の肉類

オ 穀類
米、麦類、大豆、ソバ

カ その他
茶、はちみつ

(2)放射性セシウムが検出されて50Bq/kgを超えたが100Bq/kgを超えたことがない品目

ア 野菜類(露地物を優先して選択)
ジャガイモ、サツマイモ

イ 果実類(露地物を優先して選択)
リンゴ、ナシ

ウ きのこ・山菜類(露地物を優先して選択)
菌床まいたけ(施設栽培)、もみじがさ(しどけ)、つくし

エ 肉
羊肉

オ 穀類
小豆

新基準値は100Bq/kgなのですから、(1)のこれまでの検査で100Bq/kgを越えた品目というのは理解できますが、(2)の50Bq/kg超-100Bq/kgの品目について、福島県、宮城県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県と、残りの11都県でもこれまでに50Bq/kgを越える放射性セシウムを検出した自治体では検査する、というところが今回の大きなポイントの一つと思います。これは、50Bq/kgを越えるものが検出されていたところでは、100Bq/kgを越えるものもあり得るという考え方に基づいています。今回はここについては説明できないので省略しますが、厚労省のHPにも「食品中の放射性セシウムスクリーニング法の一部改正について」というものがあり、ここでスクリーニングレベルとして基準値の1/2(50Bq/kg)以上にできるように変更されています。

(3)飼養管理の影響を大きく受けるため、継続的なモニタリング検査が必要な品目
ア 乳(17都県で検査対象とする。)

イ 牛肉(福島県、宮城県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県及び岩手県で検査対象とする。)

(4)水産物(50 Bq/kgを超える放射性セシウムが検出された品目)

ア 海産魚種(福島県、宮城県、茨城県、岩手県及び千葉県で検査対象とする。)

イカナゴ稚魚・イワシ類の稚魚、シラウオ類、イワシ類・サバ類、アジ類、ブリ類、ヒラメ、カレイ類(3群)、アイナメ、メバル・ソイ・カサゴ類(2群)、サメ・エイ類、マダラ、スケソウダラ・ギス・アオメエソ・イシナギ類、エゾイソアイナメ、アンコウ類、ホウボウ類・ニベ・グチ類・トクビレ類、タイ類(クロダイ類除く)・マトウダイ類・タチウオ、クロダイ類・ウミタナゴ、スズキ、フグ類、アナゴ類、マゴチ、イカナゴ(親)、シロギス、ギンザケ、甲殻類、貝類、ウニ類、海藻類、イカ・タコ類

イ 内水面魚種(17都県で検査対象とする。)

ワカサギ、イワナ・ヤマメ・マス類、コイ類・フナ類・ウグイ・モツゴ類・ドジョウ、ウナギ、アユ、バス類、無脊椎動物

(5)から(8)は昨年8月とほとんど変わらないのでここでは紹介しません。

3.検査対象市町村等の設定

(1)100 Bq/kgを超える放射性セシウムが検出された品目について
ア 福島県、宮城県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県
当該品目から50 Bq/kgを超える放射性セシウムを検出した地域及び主要な産地において市町村ごとに3検体以上実施する。その他の市町村では1検体以上実施する。

イ 11都県(青森県、岩手県、秋田県、山形県、埼玉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県)
当該品目から50 Bq/kgを超える放射性セシウムを検出した地域において市町村ごとに3検体以上実施する。
主要な産地において市町村ごとに1検体以上実施する。
出荷があるにもかかわらず、過去に検査実績がない地域においては、原則として市町村ごとに1検体以上実施する。ただし、土壌中の放射性セシウム濃度及び環境モニタリングの検査結果等を勘案して、地域の中で複数市町村を選び各々の市町村で1検体以上の実施とすることができる。

これまでは1検体の検査で良かったのですが、今後はいくつかの場合分けがされて、3検体の検査が必要な値域と、1検体でよい地域とに分かれます。

(2)50 Bq/kgを超えたが100Bq/kgを超えたことがない放射性セシウムが検出された品目の検査について

当該品目から50 Bq/kg超-100Bq/kgの放射性セシウムを検出した地域においては市町村ごとに3検体以上、その他の地域においては主要な産地において市町村ごとに1検体以上、それぞれ実施する。

例えばジャガイモが(2)にあたりますが、ジャガイモの検査で過去に50 Bq/kgを超える放射性セシウムを検出した地域においては市町村ごとに3検体以上、その他の地域においては主要な産地において市町村ごとに1検体以上するというのが今回の方針です。地域によって検査すべき検体数が変わってくるということです。

(3)検体採取を行う地点の選択に当たっては、土壌中のセシウム濃度、環境モニタリング検査結果、23年産の当該製品の検査で50Bq/kgを超える放射性セシウムを検出した地点等を勘案するとともに、放射性セシウム濃度が高くなる原因の一部が判明している品目については、当該要因が当てはまる地点を優先して選択する。


4.検査の頻度

基本的に週1回程度ということはこれまでと変わりません。追加されたのは次の部分です。

乳については原則として概ね週1回程度、牛肉については農家ごとに3か月に1回程度とする。

水産物の検査は、原則として週1回程度とし、漁期のある品目については、漁期開始前に検査を実施し、漁期開始後は週1回程度の検査を継続する。

また、海産魚種の岩手県及び千葉県の海産水産物の検査及び11都県の自治体の内水面魚種の検査については、過去の検査結果を考慮して検査の頻度を設定する。これは、福島県、宮城県、茨城県とそれ以外には若干の差をつけたものということができます。

5.検査計画の策定・公表及び報告
検査計画は、四半期ごとに策定し、ホームページなどで公表するとともに、国に報告する。

このような計画の発表と国への報告は今回初めて義務づけられたものです。

6.検査結果に基づく措置
基準値を超えた食品については、地方自治体においては食品衛生法により廃棄、回収等の必要な措置をとる。
なお、加工食品が基準値を超えた場合には、地方自治体は食品衛生法による措置のほか、原因を調査し、必要に応じ原料の生産地におけるモニタリング検査の強化等の対策を講じる。

これまでは基準値を超えた食品の廃棄・回収ということは明示されていませんでしたが、今回はそこが明示されました。

7.具体的な品目の分類
3/13食品1
3/13食品2
3/13食品3
3/13食品4
3/13食品5
3/13食品6

今回は少しはしょって紹介しました。

最後にポイントを整理します。各メディアの報道にもありますが、だいたい下記のようなものです。

1.対象都県は17都県であるが、過去に複数品目で出荷制限指示の対象となった福島県、宮城県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県とそれ以外の11都県に分類した。
2.対象品目も、過去の検査結果から、100Bq/kgの品目と、50超-100Bq/kgの品目と、それ以外とに分類し、対応を分けた。必要な検体数も3検体の場合がある。
3.水産物については海産魚種と内水面魚種に分類し、海産魚種については福島県、宮城県、茨城県と、さらに岩手県、千葉県を対象として32種の品目群について検査するように求めた。なお、福島県、宮城県、茨城県と岩手県、千葉県とでは検査頻度に若干の違いがある。
4.検査計画の策定、公表、報告を対象都県に義務づけた。
5.検査結果に基づき、基準値を超えた場合は食品衛生法に基づき廃棄、回収する事を明記した。


その他の細かいことは、HPの資料を読んでみてください。コメの検査に関するところ(別添7)も変更になっていますが、今日は省略します。


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これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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