トレンチなどで見つかった溜まり水についての東京電力の報告書(3/30)
3/30、東京電力は「当社福島第一原子力発電所のトレンチ内で発見された放射性物質を含む溜まり水の対応に関する経済産業省原子力安全・保安院への報告について(その2)」を発表しました。
これは、「1/11 福島原発のトレンチたまり水-報告書から読み解く汚染水の原因は?」でご紹介した1/6の中間報告に続く報告になっています。1/20に保安院から追加指示を受けての報告です。
私は、トレンチなどの水たまりについては、1月後半からほぼ毎日新しい情報を更新してきました。そのまとめは「福島原発トレンチの水(汚染水、地下水、津波の残りなど)発見情報のまとめ(2/15最終版)」に記載してあります。
今回の「第二回中間報告」は、上の記事で書いたことを報告書としてまとめてくれているのと、新たな情報がいくつかありますので、新しい情報を中心にご紹介します。
まずは時系列に沿った情報からです。

この中で、最後の二つに関しては私は見逃していたようなので、後ほど詳しく紹介します。
次の表が、全点検結果のまとめです。全部で145のトレンチ等を点検して、水がないことを確認した場所が64カ所、溜まり水があった場所が54カ所、高線量や障害物のために確認できなかった場所が27カ所でした。溜まり水があった54カ所のうち、10^6 Bq/L以上の放射性物質の存在が確認できたのが1カ所、10-5 Bq/L以上の放射性物質の存在が確認できたのが2カ所で、それ以外の51カ所は100000 Bq/L未満でした。
場所でいうと、1~4号機周りのトレンチ等(建屋に接続していないトレンチ等)と、5・6号機周り及びその他敷地内のトレンチ等は全て100000 Bq/L未満で、高濃度の汚染水が確認されたのは高レベル放射性汚染水が滞留している建屋に接続しているトレンチ等だけでした。

(クリックで別画面に拡大)
私は当初、10000Bq/Lレベルの放射性物質があった場合も汚染水が漏れ出した可能性があると思っていたのですが、下記にあるように、サブドレン水の濃度も、5月初めの頃は下の表のように10000 Bq/L近くあったため、このレベルの水の場合もサブドレン水、すなわち地下水由来の可能性が高いと考えることができるようです。

なお、それぞれのレベルに応じて、10^6 Bq/L以上(=10^3 Bq/cm3以上)の放射性物質の存在が確認できた1カ所はAの対応、10^6 Bq/L以上の放射性物質の存在が確認できた2カ所はBの対応、残りの51カ所はCの対応をすることになっているようです。

12/18に発見された共用プールダクトについては、今回もその汚染水の流入経路についての報告がされています。この共用プールダクトの話については「1/11 福島原発のトレンチたまり水-報告書から読み解く汚染水の原因は?」に書きましたので詳細はくり返しませんが、前回の1/6の中間報告書においても汚染水の原因は明らかになっていませんでした。

今回、この共用プールダクトについて新たに追加データが発表されました。それによると、この共用プールダクトでは、12/18の発見後に12/23にたまっている汚染水を雑固体廃棄物減容処理建屋に一部移送しました。また、年が明けて1/5には上からの流入経路であるケーブル管路を止めました。
しかしながら、その後も水位が上昇し、放射能濃度も落ちずにむしろ上昇気味であることから、東京電力としても、これはプロセス主建屋からの漏洩であると認めました。「原因の特定は困難であるものの、漏えいの発生する可能性を比較検討したところ、シール材塗布部の隙間から漏えいした可能性が高いと考えられる。」と報告書には記載してあります。私が当初予想したようなひび割れではないようですが、プロセス主建屋からの漏洩というのは予想通りでした。

対策としては、『共用プールダクト内に漏えいした高レベル放射性汚染水は、大部分がポンプによる汲み上げ等により回収可能であることから、共用プールダクト内の水位が上昇しないようプロセス主建屋または雑固体廃棄物減容処理建屋に適宜汲み上げを行う。』ということです。
次に、2号機ポンプ室循環水ポンプ吐出弁ピット(Cs-134: 7.1×10^6 Bq/L、Cs-137: 9.1×10^6 Bq/L)についてです。ここは、昨年の4月に高濃度汚染水が海に流出した場所のすぐ近くです。まずは東京電力の報告書にある図を示します。下の図でいうと赤い部分になります。

(クリックで別画面に拡大)
昨年4月の2号機からの流出事故で高濃度汚染水が流れていった流路が下の図でオレンジ色に塗ってあるところです。オレンジ色のトレンチの中で青い矢印が実線のところはまだ高濃度汚染水が残っていると考えられるところ、点線のところは、5月末に縦坑を塞いだためにそれ以上の新たな汚染水の流入はないと考えられるところです。
この図では、オレンジ色のところは「10^3 Bq/cm3以上」と書いてありますが、この図においては「10^6Bq/cm3程度=10^9 Bq/L程度」と読み替えた方が正しいと思います。(ただし、最近は汚染水処理によって1/10程度に下がっているはずです。)
東京電力が昨年の4/21に出した2号機の流出についての報告書では、この流出した汚染水には、I-131が5.4×10^9Bq/L、Cs-134が1.8×10^9Bq/L、Cs-137が1.8×10^9Bq/L含まれていたということです。この汚染水は、2号機のタービン建屋からトレンチを通って来たのですから、東京電力があの時に汚染水を除去してしない限りまだその水は残っています。
昨年からの報告書を読んでも、汚染水が海に流出することは止めていますが、トレンチにある汚染水の除去はしていません。というよりもタービン建屋にまでつながっているのでできません。高濃度汚染水ですし、抜いても抜いてもどんどんまたタービン建屋から出てくるからです。

上の図で、A-A断面という図に書いてあるのですが、2号機電源ケーブルトレンチにある貫通部(O.P.+3.8m)から海側のポンプ吐出弁ピットに漏れたようです。元の汚染水がCs-137で約1.8×10^9 Bq/Lだったのに対し、今回発見された汚染水の濃度は9.1×10^6 Bq/Lと、約200倍に希釈されています。雨などで水位が上昇し、水位がO.P.+3.8mを超えた時にピットにもれたと考えれば、リーズナブルな数値です。
2/15時点ではケーブルトレンチには水がなかったということなので、その後また水が蒸発したのか、あるいは別のところに流れ出していったのかもしれません。
この汚染水の対応策としては、下の図のように水を抜いてモルタルなどを充填するということです。

最初の方でまとめの表として、たまった汚染水をタービン建屋に移送したらまた水位が上がったという記述がありました。これはおそらく地下水がピットの中に入ってきているためだと考えています。確かに、下のグラフにあるように抜いた後にも水位が上がってきていることを見ると地下水が入ってきたというのは正しいと思います。汚染水の塩分濃度や放射性セシウムの濃度から計算しても、海水ではなく地下水の混入と考えるのが妥当です。


しかし、うっかりすると見逃してしまうのですが、どうしてこのピットに地下水が入ってくるのか?という理由を考えておくことは重要です。このピットにはO.P.+3.8m以外に貫通部があるという記述がないので、これは地震によってピットに亀裂が入り、そこから地下水が入り込んできていると考えるのが妥当だと思います。
次に、2号機の吐出弁ピットよりも低い濃度(Cs-134: 3.8×10^5 Bq/L、Cs-137: 4.8×10^5 Bq/L)で汚染水がたまっていた3号機ポンプ室循環水ポンプ吐出弁ピットについてです。こちらも基本的には2号機と同様に考えることができます。

3号機では5/11に汚染水(Cs-134: 3.9×10^7 Bq/L、Cs-137: 3.7×10^7 Bq/L)が流出しました。これもやはり吐出弁ピットの近くです。そして、上の図のようにたまっていた汚染水が雨水などで増えて約1/80に希釈されて貫通部から吐出弁ピットへ流れ出したと考えることができます。

対策としては、こちらも2号機と同じで、水を抜きながらモルタルなどで埋めるということです。こちらは水を抜いてもすぐに水位が上がってしまいました。これも地下水だと考えられるということです。ここでも同じように注目しておくべき事は、流入経路は不明の地下水が流れ込んでいるということです。


今回、報告書からトレンチの溜まり水の情報をまとめるにあたり、昨年の4月の2号機、および5月の3号機からの汚染水の海洋への漏洩事故について再度見直しました。これについてもいずれまとめようと思っています。お楽しみに。
今回の「第二回中間報告」は、上の記事で書いたことを報告書としてまとめてくれているのと、新たな情報がいくつかありますので、新しい情報を中心にご紹介します。
まずは時系列に沿った情報からです。

この中で、最後の二つに関しては私は見逃していたようなので、後ほど詳しく紹介します。
次の表が、全点検結果のまとめです。全部で145のトレンチ等を点検して、水がないことを確認した場所が64カ所、溜まり水があった場所が54カ所、高線量や障害物のために確認できなかった場所が27カ所でした。溜まり水があった54カ所のうち、10^6 Bq/L以上の放射性物質の存在が確認できたのが1カ所、10-5 Bq/L以上の放射性物質の存在が確認できたのが2カ所で、それ以外の51カ所は100000 Bq/L未満でした。
場所でいうと、1~4号機周りのトレンチ等(建屋に接続していないトレンチ等)と、5・6号機周り及びその他敷地内のトレンチ等は全て100000 Bq/L未満で、高濃度の汚染水が確認されたのは高レベル放射性汚染水が滞留している建屋に接続しているトレンチ等だけでした。

(クリックで別画面に拡大)
私は当初、10000Bq/Lレベルの放射性物質があった場合も汚染水が漏れ出した可能性があると思っていたのですが、下記にあるように、サブドレン水の濃度も、5月初めの頃は下の表のように10000 Bq/L近くあったため、このレベルの水の場合もサブドレン水、すなわち地下水由来の可能性が高いと考えることができるようです。

なお、それぞれのレベルに応じて、10^6 Bq/L以上(=10^3 Bq/cm3以上)の放射性物質の存在が確認できた1カ所はAの対応、10^6 Bq/L以上の放射性物質の存在が確認できた2カ所はBの対応、残りの51カ所はCの対応をすることになっているようです。

12/18に発見された共用プールダクトについては、今回もその汚染水の流入経路についての報告がされています。この共用プールダクトの話については「1/11 福島原発のトレンチたまり水-報告書から読み解く汚染水の原因は?」に書きましたので詳細はくり返しませんが、前回の1/6の中間報告書においても汚染水の原因は明らかになっていませんでした。

今回、この共用プールダクトについて新たに追加データが発表されました。それによると、この共用プールダクトでは、12/18の発見後に12/23にたまっている汚染水を雑固体廃棄物減容処理建屋に一部移送しました。また、年が明けて1/5には上からの流入経路であるケーブル管路を止めました。
しかしながら、その後も水位が上昇し、放射能濃度も落ちずにむしろ上昇気味であることから、東京電力としても、これはプロセス主建屋からの漏洩であると認めました。「原因の特定は困難であるものの、漏えいの発生する可能性を比較検討したところ、シール材塗布部の隙間から漏えいした可能性が高いと考えられる。」と報告書には記載してあります。私が当初予想したようなひび割れではないようですが、プロセス主建屋からの漏洩というのは予想通りでした。

対策としては、『共用プールダクト内に漏えいした高レベル放射性汚染水は、大部分がポンプによる汲み上げ等により回収可能であることから、共用プールダクト内の水位が上昇しないようプロセス主建屋または雑固体廃棄物減容処理建屋に適宜汲み上げを行う。』ということです。
次に、2号機ポンプ室循環水ポンプ吐出弁ピット(Cs-134: 7.1×10^6 Bq/L、Cs-137: 9.1×10^6 Bq/L)についてです。ここは、昨年の4月に高濃度汚染水が海に流出した場所のすぐ近くです。まずは東京電力の報告書にある図を示します。下の図でいうと赤い部分になります。

(クリックで別画面に拡大)
昨年4月の2号機からの流出事故で高濃度汚染水が流れていった流路が下の図でオレンジ色に塗ってあるところです。オレンジ色のトレンチの中で青い矢印が実線のところはまだ高濃度汚染水が残っていると考えられるところ、点線のところは、5月末に縦坑を塞いだためにそれ以上の新たな汚染水の流入はないと考えられるところです。
この図では、オレンジ色のところは「10^3 Bq/cm3以上」と書いてありますが、この図においては「10^6Bq/cm3程度=10^9 Bq/L程度」と読み替えた方が正しいと思います。(ただし、最近は汚染水処理によって1/10程度に下がっているはずです。)
東京電力が昨年の4/21に出した2号機の流出についての報告書では、この流出した汚染水には、I-131が5.4×10^9Bq/L、Cs-134が1.8×10^9Bq/L、Cs-137が1.8×10^9Bq/L含まれていたということです。この汚染水は、2号機のタービン建屋からトレンチを通って来たのですから、東京電力があの時に汚染水を除去してしない限りまだその水は残っています。
昨年からの報告書を読んでも、汚染水が海に流出することは止めていますが、トレンチにある汚染水の除去はしていません。というよりもタービン建屋にまでつながっているのでできません。高濃度汚染水ですし、抜いても抜いてもどんどんまたタービン建屋から出てくるからです。

上の図で、A-A断面という図に書いてあるのですが、2号機電源ケーブルトレンチにある貫通部(O.P.+3.8m)から海側のポンプ吐出弁ピットに漏れたようです。元の汚染水がCs-137で約1.8×10^9 Bq/Lだったのに対し、今回発見された汚染水の濃度は9.1×10^6 Bq/Lと、約200倍に希釈されています。雨などで水位が上昇し、水位がO.P.+3.8mを超えた時にピットにもれたと考えれば、リーズナブルな数値です。
2/15時点ではケーブルトレンチには水がなかったということなので、その後また水が蒸発したのか、あるいは別のところに流れ出していったのかもしれません。
この汚染水の対応策としては、下の図のように水を抜いてモルタルなどを充填するということです。

最初の方でまとめの表として、たまった汚染水をタービン建屋に移送したらまた水位が上がったという記述がありました。これはおそらく地下水がピットの中に入ってきているためだと考えています。確かに、下のグラフにあるように抜いた後にも水位が上がってきていることを見ると地下水が入ってきたというのは正しいと思います。汚染水の塩分濃度や放射性セシウムの濃度から計算しても、海水ではなく地下水の混入と考えるのが妥当です。


しかし、うっかりすると見逃してしまうのですが、どうしてこのピットに地下水が入ってくるのか?という理由を考えておくことは重要です。このピットにはO.P.+3.8m以外に貫通部があるという記述がないので、これは地震によってピットに亀裂が入り、そこから地下水が入り込んできていると考えるのが妥当だと思います。
次に、2号機の吐出弁ピットよりも低い濃度(Cs-134: 3.8×10^5 Bq/L、Cs-137: 4.8×10^5 Bq/L)で汚染水がたまっていた3号機ポンプ室循環水ポンプ吐出弁ピットについてです。こちらも基本的には2号機と同様に考えることができます。

3号機では5/11に汚染水(Cs-134: 3.9×10^7 Bq/L、Cs-137: 3.7×10^7 Bq/L)が流出しました。これもやはり吐出弁ピットの近くです。そして、上の図のようにたまっていた汚染水が雨水などで増えて約1/80に希釈されて貫通部から吐出弁ピットへ流れ出したと考えることができます。

対策としては、こちらも2号機と同じで、水を抜きながらモルタルなどで埋めるということです。こちらは水を抜いてもすぐに水位が上がってしまいました。これも地下水だと考えられるということです。ここでも同じように注目しておくべき事は、流入経路は不明の地下水が流れ込んでいるということです。


今回、報告書からトレンチの溜まり水の情報をまとめるにあたり、昨年の4月の2号機、および5月の3号機からの汚染水の海洋への漏洩事故について再度見直しました。これについてもいずれまとめようと思っています。お楽しみに。
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