4/5【速報】 3/26に続いてまたも同じ種類の配管からSr汚染水が海へ流出?
東京電力は4/5、放射能汚染水を処理する循環システムの中の淡水化装置のところにある配管から汚染水漏れが発生し、12トンの水が流出したと発表しました。
午前中に記者会見し、その時の情報では12トンのほとんどが全て海に流出した、という事だったのですが、夕方の記者会見ではちょっとニュアンスが変わってきて400L程度ではないか、という話になってきています。また、海に流れ出した量はもっと少ないのではないか?という話です。従って、今書いている時点での情報ということで解説しますが、その後の情報によっては大きな修正が必要かもしれません。
今回の汚染水漏れは、昨日の深夜(4/5 0時から1時前後)に起きました。そのため、最近は何もなければ一日一回の記者会見になっていましたが、今日は午前中にも記者会見を行いました。4/5夕方の時点では、プレスリリースにも資料が掲載されていますが、この時の資料では、漏れ出した先の排水路の放射能濃度がCs-137などのガンマ核種のデータしかなかったので、今回の汚染水がどれだけ海に漏れたのか?ということを解析するためには情報が不足しています。
従って、ストロンチウムの量をだいたい予想できる全β核種のデータが必須なのですが、この測定は福島第二原発(2F)に試料を輸送して測定しないといけません。しかし、このブログではご紹介していませんでしたが、3/27に2Fへの試料の輸送の際に水漏れを起こしてしまったという事故があったため、簡単に輸送して測定するということができなくなってしまい、測定結果が出るのに時間がかかっています。
前置きがだいぶ長くなりましたが、今回起こった漏洩事故がどこで起こったのか、という説明から始めます。下の図は「【速報】3/26 またも汚染水循環システムから水漏れで海へ流出!」でも利用した図ですが、初めて見る方もいると思うので、繰り返しになりますがご説明します。

現在のシステムを簡単に紹介すると、上の図のようになっています。タービン建屋の地下にたまっている放射能汚染水は、プロセス主建屋という場所にポンプで送られていて、そこでセシウム除去装置にかけられます。セシウムをほとんど除去された汚染水は、今度は海水に含まれている塩分(3月当初は炉心に海水を注水していたので)を除去するために、淡水化装置(逆浸透膜(RO膜))にかけます。そこで淡水は貯められて炉心へ注水されますが、塩分を含む処理水は、さらに濃縮して、蒸発濃縮水と、濃縮排水に分けて排水の量を減らします。今回水漏れがあった場所は、逆浸透膜という膜を用いて塩分を除去する淡水化装置から、蒸発濃縮装置へ行く間の配管なのです。
場所としては、プレスリリースの資料にもあるように、システムの模式図上は前回の3/26の図とほとんど同じです。

具体的な場所でいうと、本日のプレスリリースの図で説明すると、下の図のCエリアになります。先週の3/26の漏洩事故はH4とH6エリアの間でしたので、比較的近くです。

(クリックで別画面に拡大)
ちょうど本日、海には漏れなかったものの1月に何回も発生した別の汚染水漏れについての報告書が発表されましたので、そこから14ページの写真を引用して説明します(説明用に一部加筆しています)。上の模式図と比べていただけばわかるのですが、上の図ではH2とかH4とか書いてあるエリアには何もないのではなく、下の写真のようにびっしりとタンクがあるということが改めてよくわかる写真です。距離的には100m程度離れているようですね。

では、本日発表された、漏れ出した量についてです。
4/5の0:00にポンプが起動。50m3/h→0:06に70m3/hに上昇。0:13にポンプが自動停止。おそらく0:06の時点でホースが外れたのだという説明でした。
その後原因がすぐにわからず、3回手動で起動しています。
0:52手動起動 0:53手動停止
0:55手動起動 0:55手動停止
1:00手動起動 1:00手動停止
午前中の会見では、70m3/hの流量で、0:06~0:13と、0:52~1:00の間で10分ほど起動した。従って、70m3/h×10分(=1/6時間)≒12m3で12トンが外部に漏洩したということでした。これらはほとんどがU字溝を通って近くの排水溝から海に流れ出した可能性があるということでした。
そして、Cs-137などのガンマ核種だけはすぐにデータが出ましたので、プレスリリースで発表されています。全β核種のデータは、夕方の記者会見によると早くても夜の10時以降、もっとおそくなるかもしれない、ということでしたので、本日はこの数値をご紹介しておきます。
サンプリング場所は下の図に示すとおりです。

このあとに示すのは、それぞれの場所のデータ(ガンマ核種のみ)です。まず下の表に示すのは漏れた汚染水のデータです。先週(3/26)の時は、Cs-137:6.3×10^3Bq/Lで全β核種は1.4×10^8Bq/Lでしたので、今回はその1.5倍でCs-137:9.8×10^3Bq/Lということですから、全β核種は約2×10^8Bq/L程度あるということが予想できます。

続いて、下の表は流出が起こってから約3時間後の排水路下流側です。Cs-137が上の汚染水の約1/4の濃度に希釈されています。Sb-125の同程度に希釈されていますので、全βもそれくらい希釈されて約5×10^7Bq/L程度になっている可能性があります。

そこからさらに下流の排水路下流側堰2です(場所については上の地図参照のこと)。さらに1/5程度に薄くなっています。単純な比例計算は出来ないと思うのですが、全β核種も約1×10^7Bq/L程度になっている可能性があります。

排水路下流側堰3です。ここはさきほどの排水路下流側堰2のさらに1/5程度にうすくなっています。全β核種も約2×10^6Bq/L程度に希釈されている可能性があります。

そして沿岸の1-4号南放水口では、全βの測定結果が夕方になって出てきました。Cs-137などのガンマ核種だけでなく、ストロンチウムがメインである全β核種も検出限界未満(22Bq/L未満)ということでした。ここは海洋ですので、当然のことながら排水路よりもかなり希釈されます。

こうやってほとんどがガンマ核種のデータだけからの類推ですが、今回漏れ出した汚染水はあまり量が多くなく、排水路を通っていく間にかなり希釈されてしまう程度の量しかなかったような印象を私は受けました。従って、12トンの汚染水がほとんど全て海へ流出、という最初の発表を聞いた後にこのデータを見て、「?」と思ったのも事実です。
ちなみに、前回3/26はどうだったかというと、「3/27 淡水化装置からのSrを含む水が海へ漏れた事故の続報」でまとめたように、3/26の5時から9時の4時間で約80L程度が海に流出し、流出開始3時間後の朝8時には全β核種が17000Bq/Lもありました。流出を止めてからでも、250-300Bq/Lが検出されています。これと比較しても、今回の6時間後で検出限界未満というのは、海への流出量がかなり少ない可能性があります。

夕方の記者会見で、東電は沿岸のデータで数値が検出されなかったということから、実は海への流出量はかなり少ないのではないか?ということを言い出しました。
カナフレックスという素材のホースの継ぎ目が外れたのは前回と同様ですが、下に示す夕方の記者会見の時に発表された写真のように、ホースが外れてもその外側のビニールは破れていないので、あまり大量には漏れ出さず、実は外部に流出したのは400L程度ではないか、という発言がありました。

このあたりは明日以降になるとまた修正が入る可能性があるのですが、現時点(4/5 22:30)では当初の発表よりも海へ流出した量はかなり少ない可能性がある、という情報になっています。明日以降の追加データと東京電力の発表を聞いて、実はどうなっていたのかを判断したいと思います。
なお、記者会見においては、どうして同じような事故が繰り返されるのか、対策は本当に大丈夫なのか、という点をいろんな記者がかなり突っ込んで聞いていました。
本日はここまでにします。
3/26の漏洩事故については下記をご参照ください。
「【速報】3/26 またも汚染水循環システムから水漏れで海へ流出!」
「3/27 淡水化装置からのSrを含む水が海へ漏れた事故の続報」
「3/28 Sr入り汚染水による海洋汚染その3 本日の最新情報」
従って、ストロンチウムの量をだいたい予想できる全β核種のデータが必須なのですが、この測定は福島第二原発(2F)に試料を輸送して測定しないといけません。しかし、このブログではご紹介していませんでしたが、3/27に2Fへの試料の輸送の際に水漏れを起こしてしまったという事故があったため、簡単に輸送して測定するということができなくなってしまい、測定結果が出るのに時間がかかっています。
前置きがだいぶ長くなりましたが、今回起こった漏洩事故がどこで起こったのか、という説明から始めます。下の図は「【速報】3/26 またも汚染水循環システムから水漏れで海へ流出!」でも利用した図ですが、初めて見る方もいると思うので、繰り返しになりますがご説明します。

現在のシステムを簡単に紹介すると、上の図のようになっています。タービン建屋の地下にたまっている放射能汚染水は、プロセス主建屋という場所にポンプで送られていて、そこでセシウム除去装置にかけられます。セシウムをほとんど除去された汚染水は、今度は海水に含まれている塩分(3月当初は炉心に海水を注水していたので)を除去するために、淡水化装置(逆浸透膜(RO膜))にかけます。そこで淡水は貯められて炉心へ注水されますが、塩分を含む処理水は、さらに濃縮して、蒸発濃縮水と、濃縮排水に分けて排水の量を減らします。今回水漏れがあった場所は、逆浸透膜という膜を用いて塩分を除去する淡水化装置から、蒸発濃縮装置へ行く間の配管なのです。
場所としては、プレスリリースの資料にもあるように、システムの模式図上は前回の3/26の図とほとんど同じです。

具体的な場所でいうと、本日のプレスリリースの図で説明すると、下の図のCエリアになります。先週の3/26の漏洩事故はH4とH6エリアの間でしたので、比較的近くです。

(クリックで別画面に拡大)
ちょうど本日、海には漏れなかったものの1月に何回も発生した別の汚染水漏れについての報告書が発表されましたので、そこから14ページの写真を引用して説明します(説明用に一部加筆しています)。上の模式図と比べていただけばわかるのですが、上の図ではH2とかH4とか書いてあるエリアには何もないのではなく、下の写真のようにびっしりとタンクがあるということが改めてよくわかる写真です。距離的には100m程度離れているようですね。

では、本日発表された、漏れ出した量についてです。
4/5の0:00にポンプが起動。50m3/h→0:06に70m3/hに上昇。0:13にポンプが自動停止。おそらく0:06の時点でホースが外れたのだという説明でした。
その後原因がすぐにわからず、3回手動で起動しています。
0:52手動起動 0:53手動停止
0:55手動起動 0:55手動停止
1:00手動起動 1:00手動停止
午前中の会見では、70m3/hの流量で、0:06~0:13と、0:52~1:00の間で10分ほど起動した。従って、70m3/h×10分(=1/6時間)≒12m3で12トンが外部に漏洩したということでした。これらはほとんどがU字溝を通って近くの排水溝から海に流れ出した可能性があるということでした。
そして、Cs-137などのガンマ核種だけはすぐにデータが出ましたので、プレスリリースで発表されています。全β核種のデータは、夕方の記者会見によると早くても夜の10時以降、もっとおそくなるかもしれない、ということでしたので、本日はこの数値をご紹介しておきます。
サンプリング場所は下の図に示すとおりです。

このあとに示すのは、それぞれの場所のデータ(ガンマ核種のみ)です。まず下の表に示すのは漏れた汚染水のデータです。先週(3/26)の時は、Cs-137:6.3×10^3Bq/Lで全β核種は1.4×10^8Bq/Lでしたので、今回はその1.5倍でCs-137:9.8×10^3Bq/Lということですから、全β核種は約2×10^8Bq/L程度あるということが予想できます。

続いて、下の表は流出が起こってから約3時間後の排水路下流側です。Cs-137が上の汚染水の約1/4の濃度に希釈されています。Sb-125の同程度に希釈されていますので、全βもそれくらい希釈されて約5×10^7Bq/L程度になっている可能性があります。

そこからさらに下流の排水路下流側堰2です(場所については上の地図参照のこと)。さらに1/5程度に薄くなっています。単純な比例計算は出来ないと思うのですが、全β核種も約1×10^7Bq/L程度になっている可能性があります。

排水路下流側堰3です。ここはさきほどの排水路下流側堰2のさらに1/5程度にうすくなっています。全β核種も約2×10^6Bq/L程度に希釈されている可能性があります。

そして沿岸の1-4号南放水口では、全βの測定結果が夕方になって出てきました。Cs-137などのガンマ核種だけでなく、ストロンチウムがメインである全β核種も検出限界未満(22Bq/L未満)ということでした。ここは海洋ですので、当然のことながら排水路よりもかなり希釈されます。

こうやってほとんどがガンマ核種のデータだけからの類推ですが、今回漏れ出した汚染水はあまり量が多くなく、排水路を通っていく間にかなり希釈されてしまう程度の量しかなかったような印象を私は受けました。従って、12トンの汚染水がほとんど全て海へ流出、という最初の発表を聞いた後にこのデータを見て、「?」と思ったのも事実です。
ちなみに、前回3/26はどうだったかというと、「3/27 淡水化装置からのSrを含む水が海へ漏れた事故の続報」でまとめたように、3/26の5時から9時の4時間で約80L程度が海に流出し、流出開始3時間後の朝8時には全β核種が17000Bq/Lもありました。流出を止めてからでも、250-300Bq/Lが検出されています。これと比較しても、今回の6時間後で検出限界未満というのは、海への流出量がかなり少ない可能性があります。

夕方の記者会見で、東電は沿岸のデータで数値が検出されなかったということから、実は海への流出量はかなり少ないのではないか?ということを言い出しました。
カナフレックスという素材のホースの継ぎ目が外れたのは前回と同様ですが、下に示す夕方の記者会見の時に発表された写真のように、ホースが外れてもその外側のビニールは破れていないので、あまり大量には漏れ出さず、実は外部に流出したのは400L程度ではないか、という発言がありました。

このあたりは明日以降になるとまた修正が入る可能性があるのですが、現時点(4/5 22:30)では当初の発表よりも海へ流出した量はかなり少ない可能性がある、という情報になっています。明日以降の追加データと東京電力の発表を聞いて、実はどうなっていたのかを判断したいと思います。
なお、記者会見においては、どうして同じような事故が繰り返されるのか、対策は本当に大丈夫なのか、という点をいろんな記者がかなり突っ込んで聞いていました。
本日はここまでにします。
3/26の漏洩事故については下記をご参照ください。
「【速報】3/26 またも汚染水循環システムから水漏れで海へ流出!」
「3/27 淡水化装置からのSrを含む水が海へ漏れた事故の続報」
「3/28 Sr入り汚染水による海洋汚染その3 本日の最新情報」
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