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文科省が発表した本年度の海域モニタリングの考え方

 
4/7の「東京電力の4月からの新しい海洋モニタリング体制についての修正と補足」でも書いたように、文科省のHPには3/30に「平成24 年度海域モニタリングの進め方」が発表されています。

遅くなりましたが、ここではそれについてご紹介します。


1.総合モニタリング計画

まず今年度の海域モニタリングの説明の前に、3/15、「総合モニタリング計画」が改訂されて発表されましたのでそれを簡単に説明しておきます。

これは、昨年度に何回か行われたモニタリング調整会議という会議で決まったものです。3/15に第4回モニタリング調整会議が行われました。参加メンバーは細野大臣を議長として、関係省庁及び東京電力です。興味のある方はリンク先を御確認下さい。

その中で、海域モニタリングについては「総合モニタリング計画(改定案)における主な変更点について」という資料の中に書いてあるように

『平成24 年4 月以降の海域のモニタリングに関して、関係機関の連携の下、海水、海底土、海洋生物のモニタリングを実施することを明記
<主な変更点>
○ a) 今回、河川からの放射性物質の流入・蓄積が特に懸念される東京湾を対象海域に追加
○ b) 福島県を中心に環境指標となる海洋生物や餌生物のモニタリングを追加』

と、東京湾を追加すること、それから海洋生物やエサ生物(プランクトンなど)のモニタリングを追加することが盛り込まれています。

このようにしてこの第4回モニタリング調整会議において、昨年8/2に決定された「総合モニタリング計画」を改訂することが決まりました。決定された新しい総合モニタリング計画は下記のようなものです。海域モニタリングの部分だけ要約します。

平成24年4月以降の海域のモニタリングについて、(1)東電第一原子力発電所近傍海域、(2)沿岸海域、(3)沖合海域、(4)外洋海域、(5)閉鎖性海域である東京湾の5つの海域に分けて、以下のモニタリングを実施するということで、新たに東京湾が追加されました。

海水については、(1)~(5)の海域において、河口域や福島県内の港湾・海面漁場の位置等に考慮しながら、事故発生以前の水準調査と同程度の分析精度を基本として分析を実施する。

海底土については、(1)~(3)及び(5)の海域において、海水のモニタリングと同様な事項を考慮しながら、分析を実施。また、海底土の性状に関する情報を収集する。これは、海底土が粘土が多いのか砂が多いのか、ということを調べるということです。

海洋生物について、水産物に関して太平洋沿岸を中心に水産物中に含まれる放射性物質の濃度の測定を継続するとともに、福島県を中心に環境指標となる海洋生物のモニタリングを実施。餌生物については、水産物への放射性物質の移行・濃縮に関する研究の一環として実施する。

詳細は新しい総合モニタリング計画の7ページを見ていただければと思います。この中で、「原子力事業者」という表現で東京電力の分担が海水モニタリング、海底土のモニタリング、海洋生物(東電第一原子力発電所近傍海域において水産物及び餌生物)と明記されています。

2.海域モニタリングの考え方

こうして決まった新しい総合モニタリング計画を受けて、海域モニタリングについて3/30に決まったのが「平成24 年度海域モニタリングの進め方」です。

海水については
『新たな発電所からの放射性物質の漏えい監視を目的とした頻度の高いモニタリングと、科学的に長期影響を見ることを目的とし、海域に応じた検出下限値を下げたモニタリングを実施する。前者は東京電力において規制当局と調整を行うこととし、後者については、河川を通じた海への流入、拡散シミュレーションの結果を踏まえ、また、逆にシミュレーションへの利用等も想定し採水時期・測点・採水深度、頻度等を決定する。』
として、シミュレーションに利用できるように採水場所や時期を考えるとしたところが新たに加わった変更点です。

具体的には、下記の5分類にわけてモニタリングをすることになっています。

(1)近傍海域:東電第一原子力発電所近傍で監視が必要な海域
(2)沿岸海域:青森県(一部)・岩手県から宮城県、福島県、茨城県の海岸線から概ね30km以内の海域(河口域を含む)
(3)沖合海域:海岸線から概ね30~90km の海域
(4)外洋海域:海岸線から概ね90~280km 及び280km 以遠の海域
(5)東京湾:河川からの放射性物質の流入・蓄積が特に懸念される閉鎖性海域である東京湾

先ほども述べたように、東京湾を追加したことが大きな変更点です。

海底土については、
『放射性物質の河川を通じた海への流入、移行状況等を把握するため、河口域及び漁場等を考慮して測点を決定する。』

『外洋海域を除く(1)~(3)及び(5)の海域において、海水のモニタリングと同様な事項を考慮しながら、関係自治体とも連携して、海底土の放射性物質の濃度の測定を行う。併せて海底土の性状に関する情報を収集する。
特に、(2)、(3)の海域においては、河川からの放射性物質の流入、距離的なバラツキ、時間の経過に伴う移動に留意、(5)の海域においては河川からの放射性物質の流入に留意するとともに、関係機関と十分連携してあたることとする。』

として、河川からの流入を考慮したモニタリングが中心になるようです。
また、測定方法についても、例えば近傍海域では『分析核種は I-131、Cs-134、Cs-137 とし、1 回/月程度、検出下限値は10Bq/kg乾土とする。』と記載され、東京電力が行ってきた湿土あたりの放射能濃度ではなく、乾土あたりの分析をすることと明記されています。今年度からは東京電力も乾土での測定に切り替えてほしいものです。

水産物については
『4 月1 日からの食品の新基準値導入に対応し、調査を強化するとともに、東電第一原子力発電所から20km 圏内の海域においてもモニタリングを実施する。』
『福島県を中心に環境指標となる海洋生物や餌生物のモニタリングを追加する。』

具体的には、
『• (1)~(5)の海域に生息・回遊する種を対象に、漁業の操業状況に応じて原則1回/週の水産物調査を実施する。なお、(1)、(2)の海域のうち、東電福島第一原子力発電所20km圏内の海域については当面の間、刺し網、底引き網により計10地点について1回/月程度調査する。
• (2)の海域については、福島県を中心に河川河口域等において、環境指標となる海洋生物のモニタリングを1回/4 月程度実施する。』
ということで、「福島原発から20km以内の警戒区域の海域で魚介類の汚染調査が始まりました」で紹介したように、東京電力が行うとしている20km圏内の10地点の魚介類の調査がここに盛り込まれています。


詳細は「平成24 年度海域モニタリングの進め方」をご覧下さい。

最後に、発表された図面をご紹介します。

まずは近傍海域、沿岸海域、沖合海域のモニタリングポイントです。近傍海域についてはこの次に詳細な拡大図があります。

4/8モニタリング1

次に、主に東京電力が担当する近傍海域と、福島県、環境省が担当する福島県の沿岸海域のモニタリングポイントです。

4/8モニタリング2

そして、新たに追加された東京湾のモニタリングポイントです。採水と、海底土のモニタリングを行います。こちらについてはまだ担当や場所を調整中のところがあるようです。

4/8モニタリング3

最後に、外洋海域です。こちらは、気象庁や水産庁が担当です。

4/8モニタリング4

今年度もこのブログでは海域モニタリングの結果についてはフォローしていく予定です。


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