スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

放射能汚染水循環処理システムの現状はどうなっているのか?

 
今回は、放射能汚染水循環処理システムの現状についてまとめたいと思います。特に量的な関係について、汚染水の量がどれくらいあって、放射能量に直すとどれくらいなのか、そのあたりをまとめます。

1.放射能汚染水循環処理システムの概要

昨年6月に稼働した汚染水循環処理システムは、各種のトラブルがありましたが、9月頃からは順調に動き出したように見えました。その後昨年12月、今年の3月、4月と漏洩事故が何回も起こり、とても安定したシステムとはいえないということがわかりました。

このシステム稼働後は、東京電力は毎週水曜日にその週のまとめをプレスリリースとして発表しています。このまとめについては、私のブログ記事「東京電力が発表してきた福島第一原発の汚染水情報のまとめ(1)」に全てリンクを貼っています。今回は、これまで発表されてきたデータをまとめるとどのようなことがわかるのかを示したいと思います。

5/5-5

上の図は、毎週東京電力が発表している汚染水循環処理システムの概要の例(2012/5/2)です。わかりやすい図なので、これを用いて簡単に説明します。

タービン建屋の地下にたまっている放射能汚染水は、集中廃棄物処理建屋(集中RW/B)のプロセス主建屋及び高温焼却炉処理という場所にポンプで送られていて、そこでセシウム除去装置にかけられます。この装置がキュリオンとかサリーと呼ばれるものです。現在は稼働していませんが、当初はアレバという除染装置がありました。この処理によってSrなども除去できるという触れ込みでしたが、実際はそうではなかったようです(Srについての実績の発表がないので)。ここでできる廃スラッジや使用済みベッセルは循環システムの系外に出されて固体の廃棄物となります。

セシウムをほとんど除去された汚染水は、今度は海水に含まれている塩分(昨年3月当初は炉心に海水を注水していたので)を除去するために、淡水化装置(逆浸透膜(RO膜))にかけます。そこで淡水は貯められて炉心へ循環注水されますが、塩分を含む処理水は、さらに濃縮して、蒸発濃縮水(これは淡水と合わせて炉心注水に使用されます)と、濃縮排液に分けて廃液の量を減らします。この濃縮廃液はこれ以上処理ができないので、廃液として貯蔵しておくことになります。

ここには上の図のようにいろいろなデータが毎週報告されています。このデータを集計してExcelにしたものが下記のExcelファイルです。

osensui1-201205.xlsx

このシートでは、各建屋の汚染水の量、各ステップのタンクにたまっている総量、セシウム除去装置の毎週の処理量、集中RW/Bの放射能濃度を記録してあります。

これらのデータを用いると、汚染水の液量がどういう経緯をたどってきたのか、また、放射能(セシウム)の量がどう変わっていったのかを知ることができます。


2.放射能汚染水の総量の変化と地下水の流入

それでは、今年の4/10までのデータを元に、放射能汚染水の量が当初の目論見通りに減ったのかそれとも増えたのかを見ていきましょう。

まず、一般的な考え方でいう汚染水の総量の変化と濃縮塩水の増加量を示します。この場合の「汚染水」とは各建屋にたまっている水の合計値を示します。

5/5-9

この数値を見ると、昨年6月末に約12万トンでスタートした汚染水は8月くらいまで減りませんでした。その後サリーが順調に稼働し始めてからは、徐々に減りだし、11月末には約9万トンにまで減ります。しかし、その後はSrを含む汚染水漏洩事故などがあり、システムをあまり稼働できなかった12月と3月には再び増加します。そして徐々に増えて今では約10万トンに戻っています。

一方で、淡水化処理装置を通した後にできる濃縮塩水の量は順調に?増加しています。しかし、この濃縮塩水はセシウムはかなり除去されているものの、Srは全く除去されておらず、H-3(トリチウム)も多く含まれています。とてもこのまま捨てることができる廃液ではありません。そのため、この濃縮塩水はさらに蒸発濃縮装置を通して、濃縮廃液と淡水にして、淡水は淡水化装置で得られた淡水と合わせて炉心注水に利用しています。

この濃縮塩水を貯蔵するタンクが足りなくなりそうなため、タンクの増設をしてなんとかしのいでいる状態です。世間ではこの濃縮塩水タンクがいつ増設できるのか?間に合わないとあふれるのではないか?ということを気にしています。

しかし、私に言わせると濃縮塩水はまだ放射能汚染水です。完全に循環処理システムの系外に出たわけではありません。これを廃液と分類すると、正しく判断できないような気がします。以下に私の考える分類で放射能汚染水の量を見ていきます。私の分類では、濃縮塩水は汚染水に分類し、それを蒸発濃縮装置に通してできた濃縮廃液のみはこのシステムから出た廃液と考えます。

こういう分類で計算すると、このあとに示すように放射能汚染水は明らかにほとんど毎週増加していることがわかります。汚染水循環処理システムが稼働後は、汚染水の量が増える要因としては「昨年3/27のトレンチなどの水位検証により判明した衝撃の事実!」で示したように雨水か地下水しかありません。また、減る要因としては、循環システムの系外に出たと考えられる濃縮廃液ですが、これはトータルでも5000トンほどで、毎週の増減にはほとんど影響しません。従って、前の週との差はほとんどが地下水による増減であるということが言えます。

5/5-2


下のグラフに、毎週の汚染水量、その週の増減分=地下水の流入分(右軸)、ついでに毎週セシウム除去装置を通した処理量が発表されていますので、それをプロットしました。毎週の処理量(棒グラフ)は少ないので見にくいですが、トラブルがあって止めた時以外は比較的コンスタントに毎週8000トンくらいを処理しています。詳しい変化は上のグラフの方が見やすいのでそちらで見ていただければと思います。

5/5-10

こうやってグラフにすると、オレンジ色の汚染水の総量は毎週増え続けていることがはっきりとわかります。参考までに、一般に考えられている汚染水(各建屋の水の合計のみ)の総量変化を青で示しました。この青い線を見ていると、処理が進んでいるのになかなか汚染水が減らない、というイメージを持ってしまいますが、そうではなく、毎週汚染水は増え続けているという事実を認識しておいた方がいいと思います。

その認識を持って初めて、ではこの汚染水はどこから増えたのだろうか?という疑問に行き着きます。そして、上の図のような整理をしておけば、それはほとんどが地下水からの流入であるとすぐに判断できるのです。上のグラフでは毎週の増減を赤線で示してあります。毎週約2000-4000トンの増加があることがわかります。

驚きのデータだと思うのですが、この汚染水循環処理システムが稼働した昨年6月末には12万トンしかなかった放射能汚染水は、着実に増え続けて今では25万トン(5/22現在:濃縮塩水含む)にもなっているのです。Excelには最新のデータまで入力してあります。そしてこの汚染水は、地下水の流入が止まらない限りは増え続ける事が予想されます。東京電力の発表したところでは、毎日200-500トンが流入しているということです。

くり返しますが、濃縮塩水というのは、あくまでセシウム(それ以外の核種も若干除去されていますが)を除いただけの放射能汚染水なのです。従って、今後導入が予定されている多核種処理システムが稼働できるまでは、単にセシウムを除いた放射能汚染水を別のタンクで貯めている、という解釈をしておいた方が、正しい理解ができると私は考えます。

もちろん、こうやって別に貯めておくことの意義はあります。もし濃縮塩水を別に分けずにそのまま循環させていたとしたら、建屋地下の水位が地下水よりも高くなって汚染水が地下水に流出するとか、汚染水の水位が高くなって、また海にあふれ出すかしていた可能性が高いからです。セシウム除去汚染水を別のタンクに受けておくことにより、最悪の事態を防げているのは間違いないのです。


3.放射性セシウムの96%は実はもう処理済みだった!

では、この汚染水循環処理システムは意味がなかったのかというと、そんなことはありません。当初の目的は、放射性セシウムを除去することでした。誤算だったのは、フランスから高額な契約をしたという噂のあるアレバ社から導入したアレバという除染装置がたいして使えなかったことです。当時は、アメリカ製のキュリオンでセシウムを除去し、アレバによって他の核種の除染を行う計画でした。しかし、アレバによってβ核種のSrが除染されたというような実績の発表は一度もありませんでした。おそらくそのような性能は発揮できなかったのでしょう。あれば当然のことながら実績として発表しているはずですから。

あまり性能を発揮できない上に、企業秘密で詳細を開示してもらえず、おまけにトラブル続きで使えなかったアレバは2ヶ月でお蔵入りとなりました。それに代わって登場したのが東芝のサリーです。これは、後発である分、セシウムを吸着させたベッセルの処理を人が処理しなくてもいいような設計をしてあり、セシウム除去能力も充分なものがありました。そこで、9月以降はサリー単独、あるいはキュリオン+サリーといったやり方でセシウム除去を行ってきました。

その結果どうなったか、というのが次のグラフです。これはCs-137についてグラフにしたものです。今回は示しませんが、Cs-134についてもほぼ同じ結果になりました。

5/5-7

赤い線がCs-137の総量を示したものですが、汚染水循環処理システムの稼働により着実に減っていることがわかります。稼働当初はCs-137で250PBq、Cs-134で230PBqで合わせて約480PBqもあった放射能汚染水が、今年の5月にはCs-137で10PBq、Cs-134で7PBqと合計17PBqとなり、約1/25にまで低下していることがわかります。つまり、全量の96%のセシウムは廃スラッジや使用済みベッセルとして吸着されて貯められているのです。

ですから、普通の仕事であれば、全量の96%も処理したということで「よくやったね!」という話なのです。ところが、元の量があまりにも大きいため、放射性セシウムについては4%しか残っていなくてもかなりの量の放射能が残っているということになるのです。しかも液量が2倍近くに増えてしまっていますので、汚染水のタンクの総量に余裕がなくなってきているのが現状です。

なお、緑色の「合計」というのは、累積処理量と、残放射能を足してみて、それが毎週ほぼ同じ量なのかどうかを確認するためにつけたものです。多少のデコボコはありますが、ほぼ同じなので、この循環処理システムが始まってからは、系外に漏れ出ていったセシウムはあったとしても多くないということが言えると思います。

さて、ここで汚染水処理循環システムのデータを用いて、昨年6月時点の放射能汚染水注の放射性セシウムの総量がだいたい計算できました。合計で約480PBqです。実はこの値は、「福島第一原発事故で海洋に流出した放射性セシウム量は全体のわずか2%?」でご紹介した約20%で約280PBqという数字よりもかなり大きな数字になっています。

4/14図6

この間の東京電力の発表を受けて一部修正した「福島第一原発事故で海洋に流出した放射性セシウム量は全体のわずか2%? (東京電力の5/24のデータを加えたアップデート版)」には実はもっと多いようだということを書きましたが、それはこの事だったのです。

この280PBqと480PBqという2倍近いズレが何によるのかはわかりませんが、この20%という数字を出してきた論文は、昨年5月までの限られたデータを元に計算しており、その後により詳細なデータが判明したことで、もっと正確な数字が出てきたと考えることが出来ると思います。または、6月以降にさらに新たな水を加えられることで燃料棒から溶け出してきた放射性物質があって、その分の増加という考え方もあるかもしれません。

いずれにせよ、毎週発表されているデータが整合性のあるデータになっていますので、6月末現在で約480PBqという数字の方が正しい数字だと思います。そして、このシステムによって、これまでに約460PBqのセシウムが処理されてきたのです。従って、以前お示しした図はこのように修正したいと思います。

5/5-8

4.汚染水処理システムの今後

現在、東京電力が考えている対策は多岐にわたります。この5/12に発表された、「福島第一原子力発電所における信頼性向上対策に係る実施計画の策定に関する経済産業省原子力安全・保安院からの指示文書に対する報告の実施について」から将来の計画の中で汚染水処理に関する部分を抜き出してきてみました。

(1)一つは、処理した汚染水、特に濃縮塩水を保管しておく場所(容量)が足りなくなるため、『平成24 年5月までにHエリアに鋼製円筒型タンク40,000 m3、平成24 年7月までに地下貯水槽4,000m3 を試験施工として設置する』計画があるようです。Hエリアというのは、下の図のように、原発の山側の敷地に汚染水処理用に作られたエリアの中の一部です。紫のラインが現在の汚染水循環処理システムの全長4kmを示します。

5/28-1

このHエリアに円筒型タンクで40000トンを作るのはいいとして、下の図のような地下貯水槽4000トンを試験的に作るということです。でも、この地下貯水槽はまた地震があったら地下に漏れ出しそうで恐いですよね。

5/28-2

その他、EエリアにあるRO濃縮水を貯めるタンク8000トンを今年の8月までに42000トン貯められる大型のタンクに置き換える計画もあるようです。

5/28-3

(2)また、地下水の流入を少なくするため、「福島第一原発直下を流れる地下水の水位と流速はどうなっているのか?」で書いたような地下水バイパス(井戸による揚水で地下水水位を下げる試み)やサブドレンの浄化、復旧による地下水のくみ上げも試みる予定です。

(3)それから、まだ技術的な問題で先の話になりますが、現在は4kmもある汚染水循環処理システムの全長を短くすることも考えています。具体的には、原子炉建屋とタービン建屋の間で漏れている貫通部を特定してそこをもれないようにし、循環をもっとコンパクトなシステムで行うということも将来的な計画として入っており、一部は技術的な検討が行われています。これについてもいずれどこかで紹介する予定です。

(4)しかし、近未来で一番可能性があるのは、現在検討が進んでおり、それなりの成果が期待できる多核種除去システムです。現在の汚染水処理システムは主にセシウムの除去しか行えず、ストロンチウムなどは除去できていません。今後導入しようとしている多核種除去システムは、62種の核種について、法令で決められている数値を下回ることは当然として、検出限界以下になる事を目指して開発が進められているそうです。これについては、次回ご紹介したいと思います。


次回に続く 目次へ戻る
(次回へ続くのリンクはまだ使えません)
関連記事
にほんブログ村 科学ブログへ ブログランキング・にほんブログ村へ
↑日本ブログ村ランキングに参加しました。よかったらクリックお願いします。

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

まとめtyaiました【放射能汚染水循環処理システムの現状はどうなっているのか?】

 今回は、放射能汚染水循環処理システムの現状についてまとめたいと思います。特に量的な関係について、汚染水の量がどれくらいあって、放射能量に直すとどれくらいなのか

コメント

福島原発の汚染水の海洋流出の阻止

福島第一発電所の汚染水流出が報じられ政府をはじめ東電も現在十分な対策が講じられず大きな問題になっている。
この為、悪水を浄水で阻止する技術を提案するものである。
流出する汚染水を遮水壁(鋼矢板や凍結工法など)人の力で完全に阻止する事が難しい。悪水は必ず低い所に流れる。延長の長い施工や長年月の間には必ず漏水が生じる。
この為、水は水の力で、悪水は浄水で阻止しようとするものである。
1)地表水の流入水の阻止
福島第一発電所の敷地内に流入する水を阻止するために、北側を流れる細谷川と南側を流れる夫沢川の支流を結び、敷地内に流入する地表水を遮断する。
2)地下水の流入阻止(敷地を廻るお堀をほる)
流入地下水は、福島第一発電所の周囲に、清水を満たしたお堀(横穴を含む)を廻り、敷地外からの流入地下水を阻止する。(井戸の場合は水位調整や排水問題がある)
また、お堀の清浄水の水位は常に海水面同等以上を維持する。
3)敷地内の降雨対策
敷地内に降る雨水には限度があり、敷地の所どころに集め検査の上、速やかに排出し、地下水に還元しない。
4)お堀の内側に敷地を廻るトレンチ(溝)を掘る
 汚染水は高い所に流れることがなく、先のお堀とは別にこの内側に、低い、敷地を廻るトレンチ(溝)を掘り、溝の水位を常に外水位(海水面やお堀の水面)同等以下に保持することにより、敷地内の水は、海域に絶対に流出する事が無い。 先のお堀とトレンチ(溝)の間には遮水壁を設け、清浄水の漏水を遮水する。トレンチ(溝)の水は汲み上げ検査の上、貯留し、処理する。
5)「海洋の空(UTSURO)」を利用した貯水池の設置
先に提案した『福島原発《海洋のうつろ》を利用した放射能の海洋汚染と廃棄物処理対策について(提案)』申し上げてきましたが、この中でダブル堤により構成された巨大な「海洋の空(UTSURO)」を設置し、堤体のダブル堤体内に清浄水(きれいな海水)を満たし、「海洋の空(UTSURO)」内水域に大量の汚染水を貯留する手法を提案申し上げてきました。
 この手法により、福島原発全面1km~5km四方に「海洋の空(UTSURO)」を構成し、除染ガレキを含め、放射能汚染水を処理し、100万トン~10億トンの貯留を可能にし、福島原発の放射能問題を解決する手掛かりにしようとするものである。

プロフィール

TSOKDBA

Author:TSOKDBA
twitterは@tsokdbaです。
3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

FC2カウンター
ブログランキング
にほんブログ村 科学ブログへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
↑日本ブログ村ランキングに参加しました。よかったらクリックお願いします。
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
ふくしまの恵み(全量全袋検査の結果)

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

検索フォーム
カテゴリ
RSSリンクの表示
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
こちらにもぜひご記入を!
読んだ感想を是非お聞かせください。
無料アクセス解析
おすすめのリンク
QRコード
QR
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。