江戸川、利根川流域でのホルムアルデヒド検出問題の現況
昨日大きなニュースになった江戸川、利根川流域でのホルムアルデヒド検出問題についてです。
この問題は、現段階(5/20午前)ではまだ原因を調査中ですが、19日の段階で取水停止措置をとっていた千葉県の3浄水場でも取水を再開したということで、柏市、野田市などの断水も解消しました。長く断水が続かなくて良かったと思います。現段階でわかっていることを整理してみました。
※上花輪浄水場(野田市)はまだ取水を停止していたようです。訂正します。
※この続編は下記をご覧下さい。
「江戸川、利根川流域でのホルムアルデヒド検出問題その2 ダムの放水を考慮するとデータの解釈が変わった!」
「ホルムアルデヒド検出問題その3、事態は急展開して決着へ」
1.ホルムアルデヒドとは
ホルムアルデヒド(リンク先はちょっと専門的な解説)というのはHCHOという化学式で表される化合物で、いわゆるアルデヒド化合物の中で一番小さいものです。一般の人には、シック症候群の原因物質の一つとして知られています。発がん性があるという話も聞いたことがあるでしょう。
ホルムアルデヒドは水に非常に良く溶けます。ホルムアルデヒドの37%水溶液がホルマリンと呼ばれるもので、理科の教室でホルマリン漬けの標本を見たことがある方もいると思います。ホルムアルデヒドはタンパク質と反応しやすいので、ホルマリンは標本作りに利用されています。
ホルムアルデヒドは、毒劇法により医薬用外劇物という分類に指定されています。昨年からは水質汚濁防止法によっても指定物質として定められたため、もし事故によってホルムアルデヒドを排水に流出させてしまった場合にはその応急措置と地方自治体への届出が義務づけられました。(他にもいくつかの法律で規制されていますがここでは省略します。)
現在、浄水場で行われる水質検査においては、0.08mg/L以下という基準値が定められています。
2.今回のホルムアルデヒド検出の経緯
全ての情報を追い切れていないのですが、概略は次のようになっています。まずはいくつかの地名が出てきますので、簡単な地図を示します。

この地図で、利根川から江戸川が分かれてきていることを確認しておいてください。どこが上流でどこが下流かを理解しておくことは必要です。
(1) 群馬県千代田町の東部地域水道浄水場
5/19に群馬県のHPに掲載された情報によると、東部地域水道浄水場(千代田町)の送水において、数日前からホルムアルデヒドが検出されていました。

通常はどうなのか、というと、東京都の金町浄水場の昨年の結果では、0.001~0.002mg/Lでした。基準値の0.08mg/Lより大幅に低い値です。ふだんはほとんど検出されないのでしょう。それが5/15に基準値を超えないものの0.018mg/L検出され、17日、18日とだんだん濃度が高くなってきているということで問題になってきたのです。
なお、上の表を読む時に、東部地域水道浄水場の送水と河川水とでは測定方法が異なっていることに御注意下さい。下の※にあるように、河川水の場合はわざわざ塩素を加えてホルムアルデヒドを発生させてその濃度を測定しています。一方、浄水場においては、その浄水の過程で塩素を加えていますので塩素をさらに加える必要はありません。そのままホルムアルデヒドを測定しています。
ということは、川にホルムアルデヒドがこの濃度で流れているわけではなく、何か別の化合物が流れていて、それが塩素と反応することによってホルムアルデヒドを発生させているのだということがわかります。
さて、18日(金)の11:30に取水した河川水が0.098mg/Lのホルムアルデヒドを含むことが判明したため、18日の23:45に東部地域水道事務所の取水を停止しました。翌19日の10:14には、原水(河川水)の測定値が0.012mg/Lと低下したので、東部地域水道事務所の取水を再開しました。
(2)埼玉県行田市の行田浄水場
埼玉県のHPによると、利根大堰(行田市)行田浄水場の取水口でのホルムアルデヒドの濃度は、先ほどの東部地域水道浄水場と同じように塩素を加えてから測定しています。

このデータを見ればはっきりとわかるように、ホルムアルデヒドが検出されていたピークは5/18(金)あるいはその前日です。5/19以降はどんどん下がっていって、19日の11時以降は検出されていません。
(3)千葉県の北千葉浄水場
北千葉広域水道事業団のHPによると、第1報として「北千葉浄水場浄水からのホルムアルデヒドの検出について」(5/19 6:40)に記載の通り、5/18の18:00の時点で浄水のホルムアルデヒド濃度が0.062mg/Lになったため、同日19:15に取水を停止しました。
北千葉浄水場浄水からのホルムアルデヒドの検出について(第2報)(5/19 10:13)
北千葉浄水場浄水からのホルムアルデヒドの検出について(第3報)(5/19 14:45)
北千葉浄水場浄水からのホルムアルデヒドの検出について(第4報)(5/19 19:30)
北千葉浄水場におけるホルムアルデヒドの状況について(第5報)(5/20 9:30)
しかし、その後はこれだけの情報を出しているにもかかわらず、ホルムアルデヒドの濃度について一切の記載がありません。ここには単に取水を停止したとか再開したということが書いてあるだけです。
5/18 19:15 原水(江戸川表流水)の取水停止
5/19 1:10 原水取水再開
5/19 7:25 取水停止(2回目)
5/19 10:30から構成団体への送水停止
5/19 17:30から 原水取水再開
一度再開したのになぜまた2回目の取水停止をしたのか、そのあたりの情報はこれでは一切わかりません。
一方、千葉県水道局のHPには、もう少し情報があります。
利根川水系浄水場におけるホルムアルデヒド検出への対応について
北千葉浄水場では、5/18 15:00で0.041mg/L、5/18 18:00で0.062mg/Lになっています。
ホルムアルデヒド検出による栗山浄水場の取水停止について
北千葉浄水場の近く(下流)の栗山浄水場においても5/18 19:00で0.070mg/Lになったことから、5/19 0:30に取水を停止しました。
その後、第3報から第6報までは取水状況や送水、断水についての情報です。
栗山浄水場取水停止に伴う断減水について
ホルムアルデヒド検出による断減水について(第4報)
ホルムアルデヒド検出による断減水について(第5報)
ホルムアルデヒド検出による断減水について(第6報)
そしてホルムアルデヒド検出による断減水について(第7報)において、初めて矢切取水場の原水(浄水ではありません)のホルムアルデヒド濃度について情報が掲載されています。

矢切取水場においては、5/18の20:00頃がピークだったようです。
今ここで矢切取水場という言葉が出てきました。正確な位置は確認できないのですが、千葉県のHPによると、どうも栗山浄水場のすぐ近くにあるようです。

栗山浄水場の場所はわかっていますので、Google Mapで示します。矢切取水場はこのあたりではないかと想像していますが、違っていたらどなたか教えてください。なお、参考までに昨年3月にI-131検出で大騒ぎになった東京都の金町浄水場の位置を示します。あとでこの話もふれたいと思います。
(追記:@shanghai_iiさんにこの資料を教えていただいて、正しい位置がわかりましたので図を修正しました。前回の位置でだいたい合っていました。ついでにちば野菊の里浄水場も追加してあります。)

おまけとして、キーになる浄水場などにマークしたGooge mapへのリンクをつけておきます。
追記:東京新聞の記事によると、『千葉県では北千葉浄水場(流山市)の上流約十五キロ地点で同日早朝、国基準の三倍に当たる〇・二四六ミリグラムを検出。このため同浄水場は十八日夜の取水停止後、十九日未明にいったん再開したが、再び止めている。』
ということで、北千葉浄水場では5/19朝に0.246mg/Lのホルムアルデヒドを検出したそうです。
3.原因は何か?
5/20の段階では、原因は突き止められていません。
群馬県のHPによると、利根川の支流である烏川(高崎市などを通る)に原因がある可能性がある、ということで、埼玉県からの依頼を受けて群馬県では7地点の調査を行いました。その結果、下記のように、5/19の午前の時点では烏川など利根川支流はすでに基準値以下になっており、原因を突き止められなかったということです。調査は続行するそうです。

なお、ここに書いてある高崎市にある群栄化学工業の排水に関しては、0.041mg/Lになっていますが、事業場の排水基準は10mg/Lと高いために基準値以下であり、その下流にある井野川(下井野川橋)で0.017であるということが書いてあり、この結果からは原因であるとは言えないということのようです。
今まで見てきたデータから考えても、5/18の夕方がピークで、その後は下がる一方ですから、19日午前の段階で基準値以下だったというのは、単に5/19の時点でも原因物質が垂れ流しになっていることはないということの確認でしかありません。
NHKのニュースで出てきた解説(Web魚拓はこちら)では、利根川の流量はかなり多いので、かなりの量の原因物質が流れたのだろうと東大の滝沢教授は解説していました。
おそらく、どこかの企業?で流出事故があり、18日にはその原因に気がついて流出を止めたのだと思います。従って、現在はもうその物質はいないでしょう。時間が経てば経つほど原因の特定は困難になるのではないかと思います。
4.残る謎
今回のニュース、私が注目したのは原因が利根川にあるという話を聞いたからです。江戸川だけでなく、その上流に原因があるということは、利根川下流の茨城県はどうだったのか気になりました。
産経新聞のニュースによると、
『茨城県は、利根川水系の水海道浄水場(常総市)と利根川浄水場(取手市)で17、18日に取水して検査。常総市では17日に1リットル当たり0・027ミリグラム、18日に同0・025ミリグラムのホルムアルデヒドを検出。国の基準同0・08ミリグラムを下回り、「飲用に問題はない」としている。利根川浄水場は0・004~0・007ミリグラムだった。18日夜も検査を続け、今後の対応を検討するとしている。』(5/18 23:27)
ということで、水海道浄水場で5/17に0.027mg/L、5/18に0.025mg/Lでした。利根川浄水場では0.004~0.007mg/Lでした。従ってもし今後濃度が上昇するならば対応しようということが5/18の夜の段階での情報です。
利根川は江戸川よりも流量が多いため、希釈されてあまり問題にならない濃度だったのでしょう。上流の行田市で5/18には0.200mg/Lの濃度のホルムアルデヒドが検出されているので、時間的に早いとか遅いということはないと思います。従って、利根川の下流では問題になるほど濃度が上昇しなかった可能性があります。
一方、同じ江戸川の金町浄水場はどうだったのでしょうか?先ほど矢切取水場の場所を示すために栗山浄水場と金町浄水場の場所を示しましたが、ほとんど同じ場所です。
東京では、もう少し江戸川上流の三郷にも浄水場があり、こちらからも取水しています。

本日午前に東京都水道局のHPに掲載された情報ですが、『本日午前5時、三郷浄水場の送水において、ホルムアルデヒド濃度0.099mg/L(水質基準0.08mg/L 以下)が検出されました』という情報が載っていました。そのために、5/20の9:30に三郷浄水場からの送水を停止したそうです。
実際には、この水は給水場で他の水と混ぜられるために水道水は基準値以下になるという説明がありました。でも、ここには金町浄水場の話は一切出てきません。栗山浄水場のすぐ近くなので、ほぼ同じ原水を取水しているはずです。高度浄水設備だから大丈夫なのでしょうか?でも三郷浄水場も同じ高度浄水設備なのですよね。東京都水道局はもっと情報を公開すべきと思います。
また、三郷浄水場のホルムアルデヒド濃度も、なぜ5/20の今頃になって上昇したのか?同じ江戸川流域にある千葉県の矢切取水場ではもうピークを過ぎて完全に下降しつつあります。再び上昇したのか?だったら千葉県ではどうなのか?これも疑問です。
それほど大事にならずに済みそうでよかったのですが、関係する水道局あるいは自治体の情報開示のあり方には一部疑問が残りました。
ホルムアルデヒド(リンク先はちょっと専門的な解説)というのはHCHOという化学式で表される化合物で、いわゆるアルデヒド化合物の中で一番小さいものです。一般の人には、シック症候群の原因物質の一つとして知られています。発がん性があるという話も聞いたことがあるでしょう。
ホルムアルデヒドは水に非常に良く溶けます。ホルムアルデヒドの37%水溶液がホルマリンと呼ばれるもので、理科の教室でホルマリン漬けの標本を見たことがある方もいると思います。ホルムアルデヒドはタンパク質と反応しやすいので、ホルマリンは標本作りに利用されています。
ホルムアルデヒドは、毒劇法により医薬用外劇物という分類に指定されています。昨年からは水質汚濁防止法によっても指定物質として定められたため、もし事故によってホルムアルデヒドを排水に流出させてしまった場合にはその応急措置と地方自治体への届出が義務づけられました。(他にもいくつかの法律で規制されていますがここでは省略します。)
現在、浄水場で行われる水質検査においては、0.08mg/L以下という基準値が定められています。
2.今回のホルムアルデヒド検出の経緯
全ての情報を追い切れていないのですが、概略は次のようになっています。まずはいくつかの地名が出てきますので、簡単な地図を示します。

この地図で、利根川から江戸川が分かれてきていることを確認しておいてください。どこが上流でどこが下流かを理解しておくことは必要です。
(1) 群馬県千代田町の東部地域水道浄水場
5/19に群馬県のHPに掲載された情報によると、東部地域水道浄水場(千代田町)の送水において、数日前からホルムアルデヒドが検出されていました。

通常はどうなのか、というと、東京都の金町浄水場の昨年の結果では、0.001~0.002mg/Lでした。基準値の0.08mg/Lより大幅に低い値です。ふだんはほとんど検出されないのでしょう。それが5/15に基準値を超えないものの0.018mg/L検出され、17日、18日とだんだん濃度が高くなってきているということで問題になってきたのです。
なお、上の表を読む時に、東部地域水道浄水場の送水と河川水とでは測定方法が異なっていることに御注意下さい。下の※にあるように、河川水の場合はわざわざ塩素を加えてホルムアルデヒドを発生させてその濃度を測定しています。一方、浄水場においては、その浄水の過程で塩素を加えていますので塩素をさらに加える必要はありません。そのままホルムアルデヒドを測定しています。
ということは、川にホルムアルデヒドがこの濃度で流れているわけではなく、何か別の化合物が流れていて、それが塩素と反応することによってホルムアルデヒドを発生させているのだということがわかります。
さて、18日(金)の11:30に取水した河川水が0.098mg/Lのホルムアルデヒドを含むことが判明したため、18日の23:45に東部地域水道事務所の取水を停止しました。翌19日の10:14には、原水(河川水)の測定値が0.012mg/Lと低下したので、東部地域水道事務所の取水を再開しました。
(2)埼玉県行田市の行田浄水場
埼玉県のHPによると、利根大堰(行田市)行田浄水場の取水口でのホルムアルデヒドの濃度は、先ほどの東部地域水道浄水場と同じように塩素を加えてから測定しています。

このデータを見ればはっきりとわかるように、ホルムアルデヒドが検出されていたピークは5/18(金)あるいはその前日です。5/19以降はどんどん下がっていって、19日の11時以降は検出されていません。
(3)千葉県の北千葉浄水場
北千葉広域水道事業団のHPによると、第1報として「北千葉浄水場浄水からのホルムアルデヒドの検出について」(5/19 6:40)に記載の通り、5/18の18:00の時点で浄水のホルムアルデヒド濃度が0.062mg/Lになったため、同日19:15に取水を停止しました。
北千葉浄水場浄水からのホルムアルデヒドの検出について(第2報)(5/19 10:13)
北千葉浄水場浄水からのホルムアルデヒドの検出について(第3報)(5/19 14:45)
北千葉浄水場浄水からのホルムアルデヒドの検出について(第4報)(5/19 19:30)
北千葉浄水場におけるホルムアルデヒドの状況について(第5報)(5/20 9:30)
しかし、その後はこれだけの情報を出しているにもかかわらず、ホルムアルデヒドの濃度について一切の記載がありません。ここには単に取水を停止したとか再開したということが書いてあるだけです。
5/18 19:15 原水(江戸川表流水)の取水停止
5/19 1:10 原水取水再開
5/19 7:25 取水停止(2回目)
5/19 10:30から構成団体への送水停止
5/19 17:30から 原水取水再開
一度再開したのになぜまた2回目の取水停止をしたのか、そのあたりの情報はこれでは一切わかりません。
一方、千葉県水道局のHPには、もう少し情報があります。
利根川水系浄水場におけるホルムアルデヒド検出への対応について
北千葉浄水場では、5/18 15:00で0.041mg/L、5/18 18:00で0.062mg/Lになっています。
ホルムアルデヒド検出による栗山浄水場の取水停止について
北千葉浄水場の近く(下流)の栗山浄水場においても5/18 19:00で0.070mg/Lになったことから、5/19 0:30に取水を停止しました。
その後、第3報から第6報までは取水状況や送水、断水についての情報です。
栗山浄水場取水停止に伴う断減水について
ホルムアルデヒド検出による断減水について(第4報)
ホルムアルデヒド検出による断減水について(第5報)
ホルムアルデヒド検出による断減水について(第6報)
そしてホルムアルデヒド検出による断減水について(第7報)において、初めて矢切取水場の原水(浄水ではありません)のホルムアルデヒド濃度について情報が掲載されています。

矢切取水場においては、5/18の20:00頃がピークだったようです。
今ここで矢切取水場という言葉が出てきました。正確な位置は確認できないのですが、千葉県のHPによると、どうも栗山浄水場のすぐ近くにあるようです。

栗山浄水場の場所はわかっていますので、Google Mapで示します。矢切取水場はこのあたりではないかと想像していますが、違っていたらどなたか教えてください。なお、参考までに昨年3月にI-131検出で大騒ぎになった東京都の金町浄水場の位置を示します。あとでこの話もふれたいと思います。
(追記:@shanghai_iiさんにこの資料を教えていただいて、正しい位置がわかりましたので図を修正しました。前回の位置でだいたい合っていました。ついでにちば野菊の里浄水場も追加してあります。)

おまけとして、キーになる浄水場などにマークしたGooge mapへのリンクをつけておきます。
追記:東京新聞の記事によると、『千葉県では北千葉浄水場(流山市)の上流約十五キロ地点で同日早朝、国基準の三倍に当たる〇・二四六ミリグラムを検出。このため同浄水場は十八日夜の取水停止後、十九日未明にいったん再開したが、再び止めている。』
ということで、北千葉浄水場では5/19朝に0.246mg/Lのホルムアルデヒドを検出したそうです。
3.原因は何か?
5/20の段階では、原因は突き止められていません。
群馬県のHPによると、利根川の支流である烏川(高崎市などを通る)に原因がある可能性がある、ということで、埼玉県からの依頼を受けて群馬県では7地点の調査を行いました。その結果、下記のように、5/19の午前の時点では烏川など利根川支流はすでに基準値以下になっており、原因を突き止められなかったということです。調査は続行するそうです。

なお、ここに書いてある高崎市にある群栄化学工業の排水に関しては、0.041mg/Lになっていますが、事業場の排水基準は10mg/Lと高いために基準値以下であり、その下流にある井野川(下井野川橋)で0.017であるということが書いてあり、この結果からは原因であるとは言えないということのようです。
今まで見てきたデータから考えても、5/18の夕方がピークで、その後は下がる一方ですから、19日午前の段階で基準値以下だったというのは、単に5/19の時点でも原因物質が垂れ流しになっていることはないということの確認でしかありません。
NHKのニュースで出てきた解説(Web魚拓はこちら)では、利根川の流量はかなり多いので、かなりの量の原因物質が流れたのだろうと東大の滝沢教授は解説していました。
おそらく、どこかの企業?で流出事故があり、18日にはその原因に気がついて流出を止めたのだと思います。従って、現在はもうその物質はいないでしょう。時間が経てば経つほど原因の特定は困難になるのではないかと思います。
4.残る謎
今回のニュース、私が注目したのは原因が利根川にあるという話を聞いたからです。江戸川だけでなく、その上流に原因があるということは、利根川下流の茨城県はどうだったのか気になりました。
産経新聞のニュースによると、
『茨城県は、利根川水系の水海道浄水場(常総市)と利根川浄水場(取手市)で17、18日に取水して検査。常総市では17日に1リットル当たり0・027ミリグラム、18日に同0・025ミリグラムのホルムアルデヒドを検出。国の基準同0・08ミリグラムを下回り、「飲用に問題はない」としている。利根川浄水場は0・004~0・007ミリグラムだった。18日夜も検査を続け、今後の対応を検討するとしている。』(5/18 23:27)
ということで、水海道浄水場で5/17に0.027mg/L、5/18に0.025mg/Lでした。利根川浄水場では0.004~0.007mg/Lでした。従ってもし今後濃度が上昇するならば対応しようということが5/18の夜の段階での情報です。
利根川は江戸川よりも流量が多いため、希釈されてあまり問題にならない濃度だったのでしょう。上流の行田市で5/18には0.200mg/Lの濃度のホルムアルデヒドが検出されているので、時間的に早いとか遅いということはないと思います。従って、利根川の下流では問題になるほど濃度が上昇しなかった可能性があります。
一方、同じ江戸川の金町浄水場はどうだったのでしょうか?先ほど矢切取水場の場所を示すために栗山浄水場と金町浄水場の場所を示しましたが、ほとんど同じ場所です。
東京では、もう少し江戸川上流の三郷にも浄水場があり、こちらからも取水しています。

本日午前に東京都水道局のHPに掲載された情報ですが、『本日午前5時、三郷浄水場の送水において、ホルムアルデヒド濃度0.099mg/L(水質基準0.08mg/L 以下)が検出されました』という情報が載っていました。そのために、5/20の9:30に三郷浄水場からの送水を停止したそうです。
実際には、この水は給水場で他の水と混ぜられるために水道水は基準値以下になるという説明がありました。でも、ここには金町浄水場の話は一切出てきません。栗山浄水場のすぐ近くなので、ほぼ同じ原水を取水しているはずです。高度浄水設備だから大丈夫なのでしょうか?でも三郷浄水場も同じ高度浄水設備なのですよね。東京都水道局はもっと情報を公開すべきと思います。
また、三郷浄水場のホルムアルデヒド濃度も、なぜ5/20の今頃になって上昇したのか?同じ江戸川流域にある千葉県の矢切取水場ではもうピークを過ぎて完全に下降しつつあります。再び上昇したのか?だったら千葉県ではどうなのか?これも疑問です。
それほど大事にならずに済みそうでよかったのですが、関係する水道局あるいは自治体の情報開示のあり方には一部疑問が残りました。
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