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昨年8月のデータなのにアメリカの論文に載るとマグロの汚染が大騒ぎになるのはなぜ?

 
5/28、アメリカのPNASという有名な科学雑誌に太平洋を渡ってきたクロマグロの放射性セシウム検出(リンク先は英語)という話題が載っていました。

昨日、一昨日はかなりこの話題がツイッターでも駆け巡っていたように思いますが、大げさにとらえる人が出てきているように思います。今回報道機関は比較的冷静に伝えている印象がありましたが、この報道をどう受け取ればいいのか、論文に基づき考えていきたいと思います。

ご存じの方も多いとは思いますが、まずは今回の報道で概要を確認しましょう。いくつか読んだ中で一番まともで細かい報道をしているのはウオールストリートジャーナルです。以下に引用します。なかなか的確にまとめています。

『28日刊行の米国科学アカデミー紀要(PNAS)に発表された研究結果によると、昨年日本海沿岸海域から南カリフォルニア沖合に回遊してきたクロマグロが、福島第1原子力発電所の事故に伴うセシウムに汚染されていることが分かった。

セシウムの濃度は米国と日本が危険としているレベルの10分の1で、これを食べても健康被害はないとみられる。この調査は、スタンフォード大学の海洋生態学者ダニエル・マディガン氏らのチームが行ったもので、福島原発から遠く隔たったところまで回遊魚が短期間に放射性物質を運んできたことを初めて示した。

マディガン氏は「マグロは放射性物質に汚染され、これを世界最大の海洋を横断して運んできた」とし、「われわれはこのことに驚いたが、もっと驚いたのは調査対象の全てのマグロから放射性物質が検出されたことだ」とした。

 この調査結果を受けて、ウミガメやサメ、海鳥など、日本の周辺にいるもっと広範囲な海洋生物が低いレベルのセシウムを運んでいる可能性も指摘されている。同チームは今夏、クロマグロの他、ビンナガマグロ、ウミガメ、数種類のサメを調査することにしている。

 日本をはじめ世界中ですしの材料として人気の高い太平洋のクロマグロは、日本海で産卵する。成長すると日本の南海域を回遊し、黒潮に乗って北上して、福島沖を通る。その後、6000カイリ(1万1000キロメートル)以上を泳いで太平洋の東部に至る。最終的にはここから生まれた海域に戻って産卵する。

 マディガン氏らは、趣味の釣り人が原発事故約5カ月後の昨年8月にサンディエゴ沖合で釣った15匹の若いクロマグロを調べた。マグロが太平洋を横断する前に通過する東日本沿岸海域の放射能濃度は事故の数週間後に最大で通常の1万倍に達した。

 調査では、カリフォルニア沿岸海域に到着したマグロのセシウム137とセシウム134の濃度はわずかに高まっていた。これらはいずれも筋肉組織に集まる傾向がある。セシウム137の量は数十年前の核実験の影響で自然界に残っているセシウムのレベルの5倍だった。半減期約2年のセシウム134は原発事故の前は海洋生物や海水からは検出されていなかった。

 科学者らは、全般的なレベルはマグロの自然発生的な放射能を3%ほど押し上げるものだったと述べている。調査に参加したストーニーブルック大学(ニューヨーク州立)の海洋生物学者ニコラス・フィッシャー氏は「全てのマグロから同程度のセシウム134とセシウム137が検出された」とし、「これは非常に明瞭なデータだ」と話した。

 同チームは比較のために同時期に捕ったキハダマグロと、08年に捕ったクロマグロの組織も調べた。キハダマグロは通常、一生を通じてカリフォルニア沖合で過ごす。調査の結果、いずれの組織からもセシウム134は検出されず、セシウム137は事故以前のレベルだった。』
(引用ここまで)

さて、これで概略はおわかりだと思いますが、「ではもうマグロもダメなの?」と短絡的な反応を起こさないようにお願いします。

まずはデータを確認しましょう。この論文は、open accessといって全ての人に公開されていますので、誰でも読むことが出来ます。非常にきれいな英語なので、英語を勉強している方はチャレンジしてみたらいいと思います。

この論文に限らず、最近はオンラインで読める論文がほとんどなので、supporting informationというところに細かいデータが載っていることが多いです。この論文でも、Cs-134とCs-137を測定したクロマグロ15匹のデータが載っていましたのでデータを以下に書き写しました。

5/31-1
(クリックで別画面に拡大)

まず、一番の注意点です。この論文におけるデータは、乾重量あたりのBq/kgで示されています。それに対して、水産庁などが発表しているデータは、魚介類では全て湿重量での測定です。この論文にも記載されていますが、重量に0.244をかけて乾重量になるという換算式があるようです。従って、この論文では平均でCs-134が4.0Bq/kg、Cs-137が6.3Bq/kg、合計で10.3Bq/kgとなっていますが、日本のやり方で測定すると、だいたい1/4になりますので、Cs-134で1.0Bq/kg、Cs-137で1.6Bq/kg、合計で2.6Bq/kg程度ということになります。

次に、水産庁のHPから、マグロのデータをチェックしてみましょう。今回の論文に載っていたのはPacific Bluefin tuna (PBFT:Thunnus orientalis):クロマグロとYellowfin tuna (YFT:Thunnus albacares) : キハダマグロです。特にクロマグロとその幼魚であるyoung of Pacific Bluefin tuna (Thunnus orientalis):メジマグロについて確認してみます。今年3月までに発表されているマグロ41検体のデータをプロットすると下の図のようになります。

5/31-2

コンタンさんのブログに「いわき市沖の汚染はいつ収束するか?:グラフで見る水産物の放射能汚染(その5)3/31公表分まで」というのがあって、そこにいろいろな魚の放射能データがまとめられています。

メジマグロに関しては「その4」において
『メジマグロは20kgくらいまでのクロマグロの幼魚。主に夏から秋に沿岸で捕獲され、レジャー釣りの対象にもなっている。
おおむね30 Bq/kgくらいで、最高でも41 Bq/kg。但し沿岸に棲むため、沖合いのマグロよりは高い値となっている。』と記載があります。私はメジマグロとクロマグロの関係をよく理解していないので、この記述を参考にさせていただきます。

今回PNASの論文に出ていたクロマグロ(体長66cm程度、生まれてから1.5年程度)は、昨年8月に捕獲したということです。その時のセシウムが先ほど解説したようにCs-134+Cs-137合計で約2.6Bq/kgです。上に描いたグラフに赤丸で書き加えるとこんな感じです。

5/31-マグロ3

昨年8月であれば、まだマグロのような大きな魚にはそれほど影響が出てきていない時だったと思います。事故から丸1年以上経った今年の5月末になって、昨年8月のデータが出てきているということをまず頭に入れて読む必要があります。学術論文ですので、データをまとめて投稿して、査読が終わってpublishされるまでそれなりに時間がかかりますが、どうせならばもう少し新しい情報もつけて欲しかったと思います。

マグロと同様に食物連鎖の上位にいると考えられるカツオのデータまで含めた形でコンタンさんがまとめていますので、そのデータをお借りします。カツオの方がデータは多いですね。

5/31_maguro_graph
(「いわき市沖の汚染はいつ収束するか?:グラフで見る水産物の放射能汚染(その5)3/31公表分まで」より)

私は、マグロだけのデータを見ても、カツオと合わせた上のグラフを見ても、もうマグロの汚染はほぼ終わりつつあると思います。これに関しては、コンタンさんがまとめた「マグロのセシウム汚染は、すでに終息しつつある。」というtogetterを読んでいただいてもほぼ同じ趣旨のことが書いてあります。興味のある方は読んでみてください。

チェルノブイリ原発事故の後に測定した、日本近海の魚介類のセシウムのデータをまとめた海生研の有名な資料がありますが、この資料においても、海水のセシウム濃度のピークから半年~9ヶ月後に大型魚のスズキやマダラのピークが来ています。今はもう事故(2号機の漏洩)から13ヶ月も経っています。海水の汚染のピークから12ヶ月以上経っています。完全に元のレベルにまで収束するのはまだ先かと思いますが、データを見るかぎり、マグロのセシウム汚染のピークは越えたと言ってもいいと思います。

5/31-マグロ5

私が1年以上前にまとめた「まとめ4:海洋放射能汚染と魚介類への影響1:基本的な内容」にもそのことは解説してありますので、興味のある方はご覧下さい。

今回のPNASの論文は何が優れているかというと、2008年の同じクロマグロのデータと、2011年のアメリカ西海岸を回遊しているキハダマグロのデータを比較して示し、Cs-134が2008年のクロマグロと2011年の西海岸のキハダマグロには存在しないから、2011年のクロマグロ(2011年の4月以降に日本から太平洋を移動してきた)にあるCs-134は間違いなく福島原発由来のものであるということを示したことです。下の表で黄色い枠の部分のCs-134が検出されていないことにご注目ください。(これらのCs-137は40年ほど前の核実験の頃のCs-137の残りです。)

5/31-マグロ4

また、この表の数字はあくまで乾重量あたりですので、日本での測定結果と合わせてみる時には約1/4にして考えた方がよいです。

結局、今回のニュースでなにがわかり、またどこに注意しないといけないか、ということについてまとめます。

1.2008年のクロマグロ及び2011年のアメリカ西海岸回遊のキハダマグロとの比較により、福島原発事故由来のセシウム(Cs-134)を含んだクロマグロがアメリカの西海岸(San Diego)まで到達していたことが証明された。

2.そのクロマグロの捕獲時期は昨年8月と今から10ヶ月近く古いニュースであり、しかも報告されている数値は乾重量あたりであるため、日本で測定している値の4倍になっている。実際にはCs-134+Cs-137で2.6Bq/kg程度。

3.報道だけを読んでいると、いかにも今年5月のマグロから検出されたかのような報道もあり、日本の測定方法に直すと1/4になるということを注釈している報道は皆無であるため、その点は注意が必要。

4.現在のマグロのセシウムは、データが少ないがそれほど高くなく、どちらかというと終息傾向にあると考えて良さそうである。


以上、時間があまりないので要点のみを記載しました。

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 5/28、アメリカのPNASという有名な科学雑誌に太平洋を渡ってきたクロマグロの放射性セシウム検出(リンク先は英語)という話題が載っていました。昨日、一昨日はかなりこ

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