EMの宣伝に利用されている福島県農林水産部のレポートは結論の書き方を工夫したら良かったのに
昨日見つけた話で、すでに多くの人が書いているのですが、福島県農林水産部が発表した「農用地等の放射性物質除去・低減技術実証事業の試験結果(第2報)」とその実験結果におけるEMの寄与について簡単にコメントしておきたいと思います。
この事業は、福島県が農用地等を対象とした「民間等提案型放射性物質除去・低減技術実証事業」として昨年11月に公募したものです。
昨年12月21日に採択結果が発表され、以下の10件が採択されました。

このうち7件については、セシウムの吸着力をテストするもので、植物を植えなくても結果が出せるものだったため、今年4/12に第1報として発表されました。結果は、すでに効果があることが知られているゼオライトを上回るものはなかったということでした。

それに対して、5/17に第2報として発表された3件は、それぞれ提案された資材を加えて小松菜を栽培し、その移行係数を測定して吸収抑制効果を見るものでした。
具体的には、下記に示すような3種類の提案された資材を土壌に添加して、その土壌で小松菜を栽培するというものです。

ここで注目していただきたいのは、上の表の一番右側の投入成分というところ。K2Oでカリウム量を代表させているのですが、1番上の「EMオーガアグリシステム標準たい肥」は対照としている塩化カリウム区の4倍ものカリウムを投入しているのです。
その結果、いわゆる移行係数は無処理区が0.006に対して、対照である塩化カリウム区は0.0023、問題の「EMオーガアグリシステム標準たい肥」は0.0007でした。

その詳細なデータは下の表の通りです。

これらのデータを見ていただければおわかりのように、「EMオーガアグリシステム標準たい肥」を入れたことによって無処理区及び対照区よりも移行係数は確かに下がっています。しかし、これはEMの効果というよりもカリウム(K)の効果を見ているだけの可能性が高いのです。
私のブログでも「1/15 福島県と農水省の規制値越えの中間検討会(12/25)資料その2」などで紹介しているように、福島県はすでにセシウムの吸収を抑えるためにはカリウムを施用する事が重要であるということを言っています。
今回、「EMオーガアグリシステム標準たい肥」の効果がEMによるということを示したければ、実験の数が増えてしまって大変になりますが、投入成分のK2O量をEMと同じく194kg/10a程度に増やした対照区を設けて比較しないといけないのです。
今回このデータがなぜ問題だと言われているかというと、このように県が「各資材の施用により、コマツナにおける放射性セシウム濃度及び移行係数が無処理区と比較し低下した」と非常にあっさりと効果があったとだけ書かれているので、それをEMの宣伝に利用されているのではないか?ということがいくつかのブログなどで指摘されているからです。

例えば「小波の京女日記」や、「アグリサイエンティストが行く」、そして「WINEPブログ」です。この3つを読んでいただければ、どれもほぼ似たような問題点を指摘しているので、今回の話は理解できると思います。詳細はこれらを読んでいただくとして、ここではセシウムがカリウムと間違えて取り込まれるという話の詳細は省略します。
そして、「EM情報室」はEM(Effective Microorganisms)の効果は福島県の試験でも証明された(お墨付きが得られた)!と宣伝しています。
私は、微生物には計りしれない魅力があると思っていますが、世の中にはいい加減なデータで効果があった!と主張する人が多く、そのために微生物の魅力がまゆつばだと思われる結果になっているような気がして残念です。EMについても現段階では詳細に調査していないので的確にコメントできませんが、今まで見聞きしてきた感じでは怪しい人が多いように思います。
今回の福島県の実験方法では、残念ながらEMに関しては実験のデザインがよくない(適切な対照区をおいていない)ため、この結果だけでEM自体に効果があるとは言えません。おそらく言えるのはカリウムを増やすとセシウムの吸収が抑えられるというこれまでにも知られている事実を確認しただけです。
ただ、先ほどあげた3つのブログでは指摘されていなかったことを一つだけあげておきます。福島県の農業振興課・農林地再生対策室トップには他にもいろいろと情報が載っているのですが、「第2報詳細データ」という資料では、

「今回供試した資材、施用量の範囲においては、資材による土壌中の交換性カリウムの含量の増加が多いほど、コマツナへの放射性セシウムの移行が少なかった。
なお、放射性セシウム濃度の減少と有機物との関連を確認するため、今後、通常の堆肥を用いた検討が必要である。」ということをはっきりと記載しています。
福島県もカリウムが重要であるということは詳細データにおいては記載しているのです。しかし、結果の概要においてそのことを記載していないため、多くの人はそれに気がつかず、福島民友にもEMに効果があるような書き方をされてしまっています。
福島県の報告も、結果の概要においてしっかりと詳細と同レベルの記載をすべきだったと思います。単に結果だけを記載するのではなく、ポイントになるカリウム量の効果については結果の概要においても以下のように記載しておけば良かったと思います。
「各資材の施用により、コマツナにおける放射性セシウム濃度及び移行係数が無処理区と比較し低下したが、今回供試した資材、施用量の範囲においては、資材による土壌中の交換性カリウムの含量の増加が多いほど、コマツナへの放射性セシウムの移行が少なかった。
なお、放射性セシウム濃度の減少と有機物との関連を確認するため、今後、通常の堆肥を用いた検討が必要である。」
こうすれば、余計な誤解をする人は今よりも少なくなったと思います。もちろんそれでも都合のいいように解釈する人は出てくると思いますが、現状よりはマシだと思います。
昨年12月21日に採択結果が発表され、以下の10件が採択されました。

このうち7件については、セシウムの吸着力をテストするもので、植物を植えなくても結果が出せるものだったため、今年4/12に第1報として発表されました。結果は、すでに効果があることが知られているゼオライトを上回るものはなかったということでした。

それに対して、5/17に第2報として発表された3件は、それぞれ提案された資材を加えて小松菜を栽培し、その移行係数を測定して吸収抑制効果を見るものでした。
具体的には、下記に示すような3種類の提案された資材を土壌に添加して、その土壌で小松菜を栽培するというものです。

ここで注目していただきたいのは、上の表の一番右側の投入成分というところ。K2Oでカリウム量を代表させているのですが、1番上の「EMオーガアグリシステム標準たい肥」は対照としている塩化カリウム区の4倍ものカリウムを投入しているのです。
その結果、いわゆる移行係数は無処理区が0.006に対して、対照である塩化カリウム区は0.0023、問題の「EMオーガアグリシステム標準たい肥」は0.0007でした。

その詳細なデータは下の表の通りです。

これらのデータを見ていただければおわかりのように、「EMオーガアグリシステム標準たい肥」を入れたことによって無処理区及び対照区よりも移行係数は確かに下がっています。しかし、これはEMの効果というよりもカリウム(K)の効果を見ているだけの可能性が高いのです。
私のブログでも「1/15 福島県と農水省の規制値越えの中間検討会(12/25)資料その2」などで紹介しているように、福島県はすでにセシウムの吸収を抑えるためにはカリウムを施用する事が重要であるということを言っています。
今回、「EMオーガアグリシステム標準たい肥」の効果がEMによるということを示したければ、実験の数が増えてしまって大変になりますが、投入成分のK2O量をEMと同じく194kg/10a程度に増やした対照区を設けて比較しないといけないのです。
今回このデータがなぜ問題だと言われているかというと、このように県が「各資材の施用により、コマツナにおける放射性セシウム濃度及び移行係数が無処理区と比較し低下した」と非常にあっさりと効果があったとだけ書かれているので、それをEMの宣伝に利用されているのではないか?ということがいくつかのブログなどで指摘されているからです。

例えば「小波の京女日記」や、「アグリサイエンティストが行く」、そして「WINEPブログ」です。この3つを読んでいただければ、どれもほぼ似たような問題点を指摘しているので、今回の話は理解できると思います。詳細はこれらを読んでいただくとして、ここではセシウムがカリウムと間違えて取り込まれるという話の詳細は省略します。
そして、「EM情報室」はEM(Effective Microorganisms)の効果は福島県の試験でも証明された(お墨付きが得られた)!と宣伝しています。
私は、微生物には計りしれない魅力があると思っていますが、世の中にはいい加減なデータで効果があった!と主張する人が多く、そのために微生物の魅力がまゆつばだと思われる結果になっているような気がして残念です。EMについても現段階では詳細に調査していないので的確にコメントできませんが、今まで見聞きしてきた感じでは怪しい人が多いように思います。
今回の福島県の実験方法では、残念ながらEMに関しては実験のデザインがよくない(適切な対照区をおいていない)ため、この結果だけでEM自体に効果があるとは言えません。おそらく言えるのはカリウムを増やすとセシウムの吸収が抑えられるというこれまでにも知られている事実を確認しただけです。
ただ、先ほどあげた3つのブログでは指摘されていなかったことを一つだけあげておきます。福島県の農業振興課・農林地再生対策室トップには他にもいろいろと情報が載っているのですが、「第2報詳細データ」という資料では、

「今回供試した資材、施用量の範囲においては、資材による土壌中の交換性カリウムの含量の増加が多いほど、コマツナへの放射性セシウムの移行が少なかった。
なお、放射性セシウム濃度の減少と有機物との関連を確認するため、今後、通常の堆肥を用いた検討が必要である。」ということをはっきりと記載しています。
福島県もカリウムが重要であるということは詳細データにおいては記載しているのです。しかし、結果の概要においてそのことを記載していないため、多くの人はそれに気がつかず、福島民友にもEMに効果があるような書き方をされてしまっています。
福島県の報告も、結果の概要においてしっかりと詳細と同レベルの記載をすべきだったと思います。単に結果だけを記載するのではなく、ポイントになるカリウム量の効果については結果の概要においても以下のように記載しておけば良かったと思います。
「各資材の施用により、コマツナにおける放射性セシウム濃度及び移行係数が無処理区と比較し低下したが、今回供試した資材、施用量の範囲においては、資材による土壌中の交換性カリウムの含量の増加が多いほど、コマツナへの放射性セシウムの移行が少なかった。
なお、放射性セシウム濃度の減少と有機物との関連を確認するため、今後、通常の堆肥を用いた検討が必要である。」
こうすれば、余計な誤解をする人は今よりも少なくなったと思います。もちろんそれでも都合のいいように解釈する人は出てくると思いますが、現状よりはマシだと思います。
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