身の回りの食品と遺伝子組換え その1.大豆
さて、「遺伝子組換え食品は安全なのか? -イントロ-」に引き続き、今回は遺伝子組換え作物の比率が一番高い大豆について事実関係をまとめます。日本での生産量、輸入量から、遺伝子組換え大豆がどのくらいの比率で使われているかということについて調べて結果をまとめていきます。
基本的には、このような情報はすでに農水省などの統計情報としてまとまっているので、それをご紹介していきます。
1.日本における大豆の国内生産と輸入
まずは質問です。
Q:日本の大豆の年間生産量はどれくらいかわかりますか?自給率はどれくらいですか?
この質問に的確に答えられる人はあまりいないのではないでしょうか?当然のことながら私もわからず、今回一生懸命農水省のサイトを見ながら勉強しました。
まずは下の図をご覧下さい。この図は農水省の速報から引用したものです。昨年度の資料はまだ速報値しかありません。平成22年度で22.2万トンの国産に対して輸入量が345.6万トンで合計367.8万トン、平成23年度は21.9万トンの国産に対して輸入量が283.1万トンで合計305.0万トンです。合計の供給量に対して国産の生産量、すなわち大豆の自給率は22年度で6.4%、23年度で7.2%しかないのです。90%以上が輸入ということですね。


続いて、農水省の「大豆をめぐる最近の動向について」という生産局生産流通振興課作成の資料を、最新情報(平成22年度=2010年度)に書き直したものを見てみましょう。

残念ながら、一番下の国産大豆の用途別の部分は該当する統計が不明だったため、元の資料の平成18年度のデータをそのまま使用しています。おそらく平成22年度でもおおきくは変わらないと思います。
上のグラフの読み方です。一番上のグラフは、平成22年度の国内消費量の363.8万トンの利用内訳を示しています(上の数字の輸入量+国産量の数字の367.8万トンと微妙に合わないのは、在庫量が4万トン増えている=消費しなかったためです)。実は、日本で消費される大豆の約68%は大豆油になるのです。残り約32%のうち、3%が飼料用、2%は大豆油を絞る時のカスとしての減耗分、0.1%が種子用ですが、それ以外の約27%=97.6万トンが食用です。
このグラフではわかりませんが、さきほど平成22年度の自給率が6%しかないということを示したように大豆の90%以上が輸入です。ですから、油糧用の大豆は基本的に全て輸入です。国産大豆は、食用大豆約100万トンの約1/5と、種子用だけなのです。
その国産大豆の食用約20万トンの利用の内訳を見ると、平成18年度=2006年ですが、豆腐が59%、煮豆・惣菜が13%、納豆が8%、ミソ醤油が6%です。しかしこれらの国産品のシェアは煮豆・惣菜以外は30%未満ですので、食用の大豆は多くが輸入物だということがわかります。我々が食べている大豆製品の80%が輸入です。
ここで別の資料を見てみましょう。同じく「大豆をめぐる最近の動向について」からです。

上のグラフは輸入国の内訳です。最新のデータが揃っていないのですが、恐らく傾向は変わらないと思います。基本的にアメリカのシェアが70%以上で、続いてブラジル、カナダです。4番目の中国まで入れると、この4ヶ国でほぼ99%を占めてしまいます。
2.遺伝子組換え大豆の生産比率
さきほどなぜ輸入国の比率を示したかというと、各国で生産されている遺伝子組換え大豆の比率がどれくらいかということが別の統計にあるからなのです。次のグラフも同じ「大豆をめぐる最近の動向について」という資料にあるのですが、ここには中国を除くアメリカ、ブラジル、カナダといった日本が大豆を輸入している上位3ヶ国の遺伝子組換え大豆(GM大豆)の栽培面積の比率を示したものです。生産量とは若干の違いがあることにご注意下さい。

日本で一番多く輸入しているアメリカでは、実はもう90%以上が組換え大豆です。食用として日本に輸入している大豆は非遺伝子組換え大豆を用いていますが、それはアメリカで生産されているごく一部の大豆を日本が多く買っているという構図があるのです。
遺伝子組換え大豆は、1996年頃に市場に出てきたため、1997年ではほとんどシェアがありませんでしたが、10年経って2007年になると、完全に非遺伝子組換え大豆とのシェアが逆転しているという衝撃的な事実は認識しておく必要があります。
これを読んでいるみなさんは、遺伝子組換え大豆の比率がどのように変動してきたのかに興味があるでしょうから、もう少し詳しい資料をお示しします。以下のグラフはGMO compassという遺伝子組換え食品その他に関する情報サイトのものです。
まずは遺伝子大豆の作付面積ですが、水色のgloabl(全世界)という線を見ると、世界では遺伝子組換え大豆の作付面積は1997年から右肩上がりに上昇しているという事実を認識しておいた方がいいと思います。単位はグラフに示しませんでしたが、百万ヘクタール(=万km2)です。

次に下のグラフは、同じサイトの資料で、遺伝子組換え大豆の作付面積の比率がどう変わってきたのかを示したものです。同じ水色のworldwide(全世界)のグラフが同じように右肩上がりに上がっていて、2009年では77%にもなっています。日本が一番輸入しているアメリカでも、2009年で91%が遺伝子組換え大豆です。

1997年から2009年まで、世界の大豆の作付面積は6700万haから9000万haに増加しただけでしたが、遺伝子組換え大豆は510万haから6900万haにまで12倍以上に伸びています。逆に言うと、非組換え大豆は6190万haから2100万haへと1/3にまで減少しています。

このような変化がなぜ起こったのか、ということについては、また回を改めて書きたいと思います。今回はあくまで事実を知ることが目的ですので、淡々と事実を並べていきたいと思います。
3.遺伝子組換え食品の表示
こうやって遺伝子組換え大豆がいかに多いか、ということを知ると、自分がいつも食べている納豆は、豆腐は、大豆油はどうなの?という疑問が出てくるでしょう。それに対しては、2001年からJAS法及び食品衛生法が改訂されて表示ルールが定められています。
消費者庁が作成した「食品表示に関する共通Q&A(第3集:遺伝子組換え食品に関する表示について)」がわかりやすいと思いますので、そこからいくつか抜き出してみます。これを読めば、おそらく遺伝子組換え食品の表示について疑問に思っていることの多くは解消すると思います。
『表示義務の対象となるのは、大豆、とうもろこし、ばれいしょ、菜種、綿実、アルファルファ及びてん菜の7種類の農産物と、これを原材料とし、加工工程後も組み換えられたDNA又はこれによって生じたたん白質が検出できる加工食品32食品群及び高オレイン酸遺伝子組換え大豆及びこれを原材料として使用した加工食品(大豆油等)等です。』
今回は大豆についてですので、32食品群のうち、大豆に関係するものを示します。

納豆、豆腐、油揚げ、ミソ、枝豆、豆乳、きなこなどが入っていますね。一方で、この中には入らない主なものには、しょう油や大豆油があります。これらには表示義務はありません。『組換えられたDNAやこれによって生じたたん白質が、ひろく認められた最新の技術によっても検出できない』からです。
次に表示義務がある食品についてはどのような表示がされるか、ということなのですが、「遺伝子組換えである」または「遺伝子組換え不分別である旨」の表示が義務づけられています。その一方で、分別生産流通管理を行っていて、遺伝子組換えでない製品については、任意で「遺伝子組換えでない」という表示をする事が出来ます。「遺伝子組換えでない」というのはあくまで任意表示なのです。従って表示しなくてもかまわないのですが、現在は消費者の心理が遺伝子組換え食品はいやだ、という人が多いので、任意表示ですが表示する場合が多いようです。
また、原材料が何成分も使われている食品の場合、『遺伝子組換え農産物が主な原材料(原材料の上位3位以内で、かつ、全重量の5%以上を占める)でない場合は表示義務はありません。』従って、大豆がごく一部に使われているような食品の場合には、遺伝子組換え大豆を利用していても法的な表示義務はないのです。
また、「意図せざる混入」といって、『分別生産流通管理が適切に行われた場合でも、遺伝子組換え農産物の一定の混入は避けられないことから、分別生産流通管理が適切に行われていれば、このような一定の「意図せざる混入」がある場合でも、「遺伝子組換えでない」旨の表示をすることができることとしています。大豆及びとうもろこしについて、5%以下の意図せざる混入が認められて』います。
これは結構現実的な判断だと思います。いずれご紹介することもあるかと思いますが、DNAが検出できるような製品であれば、ごく微量しか含まれていなくても遺伝子組換え大豆が0.1%でも混入しているかどうかはPCRという手法を用いれば簡単に検出できます。生産及び流通段階でしっかりと管理していれば、5%未満までの混入は許します、ということなのです。5%という数字が妥当かどうかは別として、これを認めておかないと、非組換え大豆の輸入など出来なくなってしまうのです。
アメリカの大豆の場合、90%以上が組換え大豆です。日本向けの輸出で契約している非組換え大豆は専用のカントリー・エレベーターや輸出港でのコンテナヤードを使っていると思いますが、日本や欧州向けの輸出以外は基本的に組換え大豆なのです。ですから、アメリカ国内の業者が何万トンも大豆を扱う中で一粒たりとも組換え大豆が混入してはいけない、といったらそれは絶対に不可能です。
それを法律違反だといわれたら、そんな非組換え大豆をわざわざ作ったり輸入してくれる業者はゼロになってしまいます。遺伝子組換え大豆の混入ゼロを要求するのは、食品中の放射性物質が一切検出されてはいけないと要求するのに近い感覚があると思います。心情的には理解できますが、すでに圧倒的多数が遺伝子組換え大豆であるアメリカにおいて、一切遺伝子組換え大豆が入ってはいけないと要求することは、余計なコストがかかり、かえって大豆製品の値段が高くなることにつながると思います。
また、話はそれますが、アメリカのFDA(食品医薬品局)では、食品中にある一定の許容量の虫の断片が入っていたとしても許されているのです。例えば、ピーナッツバターでは100g中に昆虫の破片が30個までは入っていても許容されます。虫をもっと減らすことはできるけど、それをするために農薬を増やすことは賢明ではない、という考えのようです。そういう割り切りをする国で行う分別ですから、100%を求めることは無理があります。
4.今回のまとめ
今回は身の回りの食品と遺伝子組換え その1.として、大豆についてどれくらい多くの大豆製品が輸入で、そして輸出元のアメリカなどではほとんどが遺伝子組換え大豆を作っているという事を学びました。日本向けに輸出する大豆、特に表示義務のある納豆や豆腐に使われる大豆については非遺伝子組換え大豆を作っているようですが、アメリカでは遺伝子組換え大豆が標準になりつつあり、価格も遺伝子組換え大豆の方が安くなっています。日本の大豆消費の2/3を占めるけれども表示義務のない大豆油用の大豆などは、おそらく全てが価格の安い遺伝子組換え大豆を用いていることと思います。
また、飼料用の大豆についても、飼料が遺伝子組換えであってもそれを食べた牛や豚が遺伝子組換えになるわけではありませんので、ほとんどが遺伝子組換え大豆が使われていると思います。飼料についてはトウモロコシのところでまとめたいと思います。
今後、豆腐や納豆を買う時には、今まで気にしなかった方でも是非パッケージの表示を見てみて下さい。きっと『大豆(「遺伝子組換えでない」)』のような表示がされていることと思います。
最後に、参考となるサイトとして、厚労省の「遺伝子組換え食品」と農水省の「食品表示Q&A・ガイドライン等」、「海外食料需給レポート2011」、消費者庁の「食品表示」を挙げておきます。
次回はトウモロコシについて調べる予定です。こんな事も調べて欲しいということがあれば、コメントやツイッター等でご連絡下さい。
まずは質問です。
Q:日本の大豆の年間生産量はどれくらいかわかりますか?自給率はどれくらいですか?
この質問に的確に答えられる人はあまりいないのではないでしょうか?当然のことながら私もわからず、今回一生懸命農水省のサイトを見ながら勉強しました。
まずは下の図をご覧下さい。この図は農水省の速報から引用したものです。昨年度の資料はまだ速報値しかありません。平成22年度で22.2万トンの国産に対して輸入量が345.6万トンで合計367.8万トン、平成23年度は21.9万トンの国産に対して輸入量が283.1万トンで合計305.0万トンです。合計の供給量に対して国産の生産量、すなわち大豆の自給率は22年度で6.4%、23年度で7.2%しかないのです。90%以上が輸入ということですね。


続いて、農水省の「大豆をめぐる最近の動向について」という生産局生産流通振興課作成の資料を、最新情報(平成22年度=2010年度)に書き直したものを見てみましょう。

残念ながら、一番下の国産大豆の用途別の部分は該当する統計が不明だったため、元の資料の平成18年度のデータをそのまま使用しています。おそらく平成22年度でもおおきくは変わらないと思います。
上のグラフの読み方です。一番上のグラフは、平成22年度の国内消費量の363.8万トンの利用内訳を示しています(上の数字の輸入量+国産量の数字の367.8万トンと微妙に合わないのは、在庫量が4万トン増えている=消費しなかったためです)。実は、日本で消費される大豆の約68%は大豆油になるのです。残り約32%のうち、3%が飼料用、2%は大豆油を絞る時のカスとしての減耗分、0.1%が種子用ですが、それ以外の約27%=97.6万トンが食用です。
このグラフではわかりませんが、さきほど平成22年度の自給率が6%しかないということを示したように大豆の90%以上が輸入です。ですから、油糧用の大豆は基本的に全て輸入です。国産大豆は、食用大豆約100万トンの約1/5と、種子用だけなのです。
その国産大豆の食用約20万トンの利用の内訳を見ると、平成18年度=2006年ですが、豆腐が59%、煮豆・惣菜が13%、納豆が8%、ミソ醤油が6%です。しかしこれらの国産品のシェアは煮豆・惣菜以外は30%未満ですので、食用の大豆は多くが輸入物だということがわかります。我々が食べている大豆製品の80%が輸入です。
ここで別の資料を見てみましょう。同じく「大豆をめぐる最近の動向について」からです。

上のグラフは輸入国の内訳です。最新のデータが揃っていないのですが、恐らく傾向は変わらないと思います。基本的にアメリカのシェアが70%以上で、続いてブラジル、カナダです。4番目の中国まで入れると、この4ヶ国でほぼ99%を占めてしまいます。
2.遺伝子組換え大豆の生産比率
さきほどなぜ輸入国の比率を示したかというと、各国で生産されている遺伝子組換え大豆の比率がどれくらいかということが別の統計にあるからなのです。次のグラフも同じ「大豆をめぐる最近の動向について」という資料にあるのですが、ここには中国を除くアメリカ、ブラジル、カナダといった日本が大豆を輸入している上位3ヶ国の遺伝子組換え大豆(GM大豆)の栽培面積の比率を示したものです。生産量とは若干の違いがあることにご注意下さい。

日本で一番多く輸入しているアメリカでは、実はもう90%以上が組換え大豆です。食用として日本に輸入している大豆は非遺伝子組換え大豆を用いていますが、それはアメリカで生産されているごく一部の大豆を日本が多く買っているという構図があるのです。
遺伝子組換え大豆は、1996年頃に市場に出てきたため、1997年ではほとんどシェアがありませんでしたが、10年経って2007年になると、完全に非遺伝子組換え大豆とのシェアが逆転しているという衝撃的な事実は認識しておく必要があります。
これを読んでいるみなさんは、遺伝子組換え大豆の比率がどのように変動してきたのかに興味があるでしょうから、もう少し詳しい資料をお示しします。以下のグラフはGMO compassという遺伝子組換え食品その他に関する情報サイトのものです。
まずは遺伝子大豆の作付面積ですが、水色のgloabl(全世界)という線を見ると、世界では遺伝子組換え大豆の作付面積は1997年から右肩上がりに上昇しているという事実を認識しておいた方がいいと思います。単位はグラフに示しませんでしたが、百万ヘクタール(=万km2)です。

次に下のグラフは、同じサイトの資料で、遺伝子組換え大豆の作付面積の比率がどう変わってきたのかを示したものです。同じ水色のworldwide(全世界)のグラフが同じように右肩上がりに上がっていて、2009年では77%にもなっています。日本が一番輸入しているアメリカでも、2009年で91%が遺伝子組換え大豆です。

1997年から2009年まで、世界の大豆の作付面積は6700万haから9000万haに増加しただけでしたが、遺伝子組換え大豆は510万haから6900万haにまで12倍以上に伸びています。逆に言うと、非組換え大豆は6190万haから2100万haへと1/3にまで減少しています。

このような変化がなぜ起こったのか、ということについては、また回を改めて書きたいと思います。今回はあくまで事実を知ることが目的ですので、淡々と事実を並べていきたいと思います。
3.遺伝子組換え食品の表示
こうやって遺伝子組換え大豆がいかに多いか、ということを知ると、自分がいつも食べている納豆は、豆腐は、大豆油はどうなの?という疑問が出てくるでしょう。それに対しては、2001年からJAS法及び食品衛生法が改訂されて表示ルールが定められています。
消費者庁が作成した「食品表示に関する共通Q&A(第3集:遺伝子組換え食品に関する表示について)」がわかりやすいと思いますので、そこからいくつか抜き出してみます。これを読めば、おそらく遺伝子組換え食品の表示について疑問に思っていることの多くは解消すると思います。
『表示義務の対象となるのは、大豆、とうもろこし、ばれいしょ、菜種、綿実、アルファルファ及びてん菜の7種類の農産物と、これを原材料とし、加工工程後も組み換えられたDNA又はこれによって生じたたん白質が検出できる加工食品32食品群及び高オレイン酸遺伝子組換え大豆及びこれを原材料として使用した加工食品(大豆油等)等です。』
今回は大豆についてですので、32食品群のうち、大豆に関係するものを示します。

納豆、豆腐、油揚げ、ミソ、枝豆、豆乳、きなこなどが入っていますね。一方で、この中には入らない主なものには、しょう油や大豆油があります。これらには表示義務はありません。『組換えられたDNAやこれによって生じたたん白質が、ひろく認められた最新の技術によっても検出できない』からです。
次に表示義務がある食品についてはどのような表示がされるか、ということなのですが、「遺伝子組換えである」または「遺伝子組換え不分別である旨」の表示が義務づけられています。その一方で、分別生産流通管理を行っていて、遺伝子組換えでない製品については、任意で「遺伝子組換えでない」という表示をする事が出来ます。「遺伝子組換えでない」というのはあくまで任意表示なのです。従って表示しなくてもかまわないのですが、現在は消費者の心理が遺伝子組換え食品はいやだ、という人が多いので、任意表示ですが表示する場合が多いようです。
また、原材料が何成分も使われている食品の場合、『遺伝子組換え農産物が主な原材料(原材料の上位3位以内で、かつ、全重量の5%以上を占める)でない場合は表示義務はありません。』従って、大豆がごく一部に使われているような食品の場合には、遺伝子組換え大豆を利用していても法的な表示義務はないのです。
また、「意図せざる混入」といって、『分別生産流通管理が適切に行われた場合でも、遺伝子組換え農産物の一定の混入は避けられないことから、分別生産流通管理が適切に行われていれば、このような一定の「意図せざる混入」がある場合でも、「遺伝子組換えでない」旨の表示をすることができることとしています。大豆及びとうもろこしについて、5%以下の意図せざる混入が認められて』います。
これは結構現実的な判断だと思います。いずれご紹介することもあるかと思いますが、DNAが検出できるような製品であれば、ごく微量しか含まれていなくても遺伝子組換え大豆が0.1%でも混入しているかどうかはPCRという手法を用いれば簡単に検出できます。生産及び流通段階でしっかりと管理していれば、5%未満までの混入は許します、ということなのです。5%という数字が妥当かどうかは別として、これを認めておかないと、非組換え大豆の輸入など出来なくなってしまうのです。
アメリカの大豆の場合、90%以上が組換え大豆です。日本向けの輸出で契約している非組換え大豆は専用のカントリー・エレベーターや輸出港でのコンテナヤードを使っていると思いますが、日本や欧州向けの輸出以外は基本的に組換え大豆なのです。ですから、アメリカ国内の業者が何万トンも大豆を扱う中で一粒たりとも組換え大豆が混入してはいけない、といったらそれは絶対に不可能です。
それを法律違反だといわれたら、そんな非組換え大豆をわざわざ作ったり輸入してくれる業者はゼロになってしまいます。遺伝子組換え大豆の混入ゼロを要求するのは、食品中の放射性物質が一切検出されてはいけないと要求するのに近い感覚があると思います。心情的には理解できますが、すでに圧倒的多数が遺伝子組換え大豆であるアメリカにおいて、一切遺伝子組換え大豆が入ってはいけないと要求することは、余計なコストがかかり、かえって大豆製品の値段が高くなることにつながると思います。
また、話はそれますが、アメリカのFDA(食品医薬品局)では、食品中にある一定の許容量の虫の断片が入っていたとしても許されているのです。例えば、ピーナッツバターでは100g中に昆虫の破片が30個までは入っていても許容されます。虫をもっと減らすことはできるけど、それをするために農薬を増やすことは賢明ではない、という考えのようです。そういう割り切りをする国で行う分別ですから、100%を求めることは無理があります。
4.今回のまとめ
今回は身の回りの食品と遺伝子組換え その1.として、大豆についてどれくらい多くの大豆製品が輸入で、そして輸出元のアメリカなどではほとんどが遺伝子組換え大豆を作っているという事を学びました。日本向けに輸出する大豆、特に表示義務のある納豆や豆腐に使われる大豆については非遺伝子組換え大豆を作っているようですが、アメリカでは遺伝子組換え大豆が標準になりつつあり、価格も遺伝子組換え大豆の方が安くなっています。日本の大豆消費の2/3を占めるけれども表示義務のない大豆油用の大豆などは、おそらく全てが価格の安い遺伝子組換え大豆を用いていることと思います。
また、飼料用の大豆についても、飼料が遺伝子組換えであってもそれを食べた牛や豚が遺伝子組換えになるわけではありませんので、ほとんどが遺伝子組換え大豆が使われていると思います。飼料についてはトウモロコシのところでまとめたいと思います。
今後、豆腐や納豆を買う時には、今まで気にしなかった方でも是非パッケージの表示を見てみて下さい。きっと『大豆(「遺伝子組換えでない」)』のような表示がされていることと思います。
最後に、参考となるサイトとして、厚労省の「遺伝子組換え食品」と農水省の「食品表示Q&A・ガイドライン等」、「海外食料需給レポート2011」、消費者庁の「食品表示」を挙げておきます。
次回はトウモロコシについて調べる予定です。こんな事も調べて欲しいということがあれば、コメントやツイッター等でご連絡下さい。
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