東京電力が発表した7月分測定の海底土の結果と、海底土セシウムの画期的測定方法に関するニュース
8/24、東京電力は7月分の海底土の測定結果を発表しました。前回が8/17ですから、わずか1週間で7月分までの解析を終了したことになります。
このブログでも6月分の解析は「東京電力が発表した6月分測定の海底土の結果」で8/18にご紹介しています。東京電力はすぐに7月分を発表したのですが、こちらは少し間が空いてしまいました。
もう一つ、東京電力とは関係ありませんが、新しい海底土のセシウム測定方法に関するニュースが発表されましたので、それについてもお伝えします。
1.7月の東京電力海底土のデータ
すでに何度もご紹介しているように、昨年度は海底土の測定方法は湿土で行ってきた東京電力と、乾土で行ってきた文科省や福島県とでデータの比較ができませんでした。今年になってようやく、東京電力も乾土率を測定することにより乾土換算して6月からデータを発表してくれるようになりました(詳細は「東京電力は初めて海底土のデータを乾土に換算した測定結果を発表!」参照)。初めて4月分の乾土でのデータを乾土換算で発表したのが6/22でしたから、2ヶ月遅れになります。その後、5月分、6月分と2ヶ月遅れでの発表が続きましたが、おそらくたまっていたサンプルの乾土率の測定を一気に行う環境が整ったのでしょう。7月分までのデータをまとめて8月後半に発表できるようになりました。
恐らく今後は、8月分を9月後半には発表してくれるものと思います。
さて、7月分のデータです。今月は、5月と同様、2ヶ月に一度の測定もあったため、データの数が多くなっています。相変わらず福島第一原発付近は1000Bq/kgを超えています。他では、今回は詳細を示しませんが、T-⑧など今月急激に上昇した地点がいくつかあり、この1ヶ月に降った雨との関係や海流との関係をチェックする必要があるかもしれません。

過去の発表との比較をアニメーションGIFで示します。5月と7月は測定しているデータポイントが多いので、特に多く見えますが、データの数には惑わされないようにして下さい。6月に比べて原発近くでの海底土の濃度が上がっているのがはっきりとわかると思います。今月一番高かったのは、T-⑧の4500Bq/kgでした。この地点はこれまで1000Bq/kg以下だったのが、今月初めての1000Bq/kg越えです。

今月は、T-B1地点とT-B2地点が廃止され、T-S8地点が新設されました。T-S8地点については正確な緯度経度情報がまだありませんが、「福島第一原子力発電所20km圏内海域における魚介類の測定結果」における地図上の情報から推測しています。下の図で刺8というのがT-S8に当たります。また、底1がT-B1に、底2がT-B2にあたります。詳細情報については東京電力が5月に発表した「当社における海域モニタリングに係る採取位置に関する情報」をご覧下さい。

2.海底土のセシウムデータを連続的に測定する方法
9/6、東京大学生産技術研究所と(独)海上技術安全研究所は共同で記者会見を行い、海底土のCs-134とCs-137のデータを15kmにわたって連続的に測定することに成功したと発表しました。(記者会見の模様を伝えたニュースはこちら(FNN)で見ることができます。)
簡単にいうと、これまで、海底土の放射性セシウム濃度の測定は、数kmごとに地点を決めて、海底の土をサンプル採取していました。上で紹介した東京電力のT-S8等という地点がそうです。従って、得られる情報はあくまで点での情報でしかありませんでした。
9/9:詳細な情報が発表されていることがわかったので一部を書き直しました。
今回発表された技術は、水中放射線計測装置を長距離にわたって海底で引きずることで、細かい濃度の変化をとらえることに成功したというものです。イメージとしてはこんな感じです。

装置は、135kgですが、全長8mもあるようです。衝撃や振動を吸収するために工夫もしているようです。

研究チームが、このシステムを使って8月に茨城県北茨城市で測定したところ、放射性セシウムの濃度は、沖合に向かうほど徐々に減少し、およそ12km進むと、ほぼ半分まで減少していたということです。
具体的には、今回の測定はM-I1地点とM-G0地点の近くです。文科省のHPにあるこの地点です。

いわき市では海岸線に沿って、北茨城市では沖合に向かっての測定でした。

発表者の東大・浦教授のツイッター(@Ura_Tamaki)には詳細なデータのリンクがあったので、画像とその説明を引用します。

『発表した資料の中で最も重要なのは、 上の分布図です。北茨城沖では50Bq/kgぐらい変動しながらも沖合いへいくに従って減少するセシウム137。いわき沖では、距離は短いものの海岸線に沿ってほぼ一定。これらのデータが数時間でとれるのが魅力です。』
(http://p.twipple.jp/2GrAV より)
確かに上の図を見ると、いわき市のM-I1地点付近で水深85mから140mの地点を14kmほど連続して測定していますが、沖合に行くに従って徐々にCs-137の濃度が下がっているのがわかります。一方でM-G0付近では海岸線に沿っての測定を2kmくらい行っていますが、あまり変化がないことがわかります。
測定結果は、文科省が発表している実際のデータとあまり変わらない値が得られたということでした。FNNのニュース画像を見ると、文科省が5月に測定したデータと比較しています。いわき市沖では、M-I1地点のCs:137:280Bq/kg(5/18)とM-I3地点の31Bq/kg(5/19)が文科省のHPにありますが、上の図ではM-I1地点で200-250Bq/kgですので、3ヶ月近くは経っていますが、ほぼ同じ値であることは確かめられました。

しかも記者会見によれば、この測定を約2ノット(3.7km/時)のスピードで測定器を引きずりながら行ったそうです。ですから、14kmにわたる測定でも約4時間程度でデータがとれてしまうのです。
装置がそれほど大きくない(135kg)ので、数トンの漁船に乗せて測定することも可能だということです。これまで点での測定だったものが、線での測定ができるようになったということです。
今後この装置を用いて広範囲の測定が行われるようになると、海底土の汚染状況についてのより詳しい理解も進むと思います。とくに海底でのホットスポットがあるのかどうか、そのあたりについても情報がわかってくるのではないでしょうか。今後に期待したいと思います。
すでに何度もご紹介しているように、昨年度は海底土の測定方法は湿土で行ってきた東京電力と、乾土で行ってきた文科省や福島県とでデータの比較ができませんでした。今年になってようやく、東京電力も乾土率を測定することにより乾土換算して6月からデータを発表してくれるようになりました(詳細は「東京電力は初めて海底土のデータを乾土に換算した測定結果を発表!」参照)。初めて4月分の乾土でのデータを乾土換算で発表したのが6/22でしたから、2ヶ月遅れになります。その後、5月分、6月分と2ヶ月遅れでの発表が続きましたが、おそらくたまっていたサンプルの乾土率の測定を一気に行う環境が整ったのでしょう。7月分までのデータをまとめて8月後半に発表できるようになりました。
恐らく今後は、8月分を9月後半には発表してくれるものと思います。
さて、7月分のデータです。今月は、5月と同様、2ヶ月に一度の測定もあったため、データの数が多くなっています。相変わらず福島第一原発付近は1000Bq/kgを超えています。他では、今回は詳細を示しませんが、T-⑧など今月急激に上昇した地点がいくつかあり、この1ヶ月に降った雨との関係や海流との関係をチェックする必要があるかもしれません。

過去の発表との比較をアニメーションGIFで示します。5月と7月は測定しているデータポイントが多いので、特に多く見えますが、データの数には惑わされないようにして下さい。6月に比べて原発近くでの海底土の濃度が上がっているのがはっきりとわかると思います。今月一番高かったのは、T-⑧の4500Bq/kgでした。この地点はこれまで1000Bq/kg以下だったのが、今月初めての1000Bq/kg越えです。

今月は、T-B1地点とT-B2地点が廃止され、T-S8地点が新設されました。T-S8地点については正確な緯度経度情報がまだありませんが、「福島第一原子力発電所20km圏内海域における魚介類の測定結果」における地図上の情報から推測しています。下の図で刺8というのがT-S8に当たります。また、底1がT-B1に、底2がT-B2にあたります。詳細情報については東京電力が5月に発表した「当社における海域モニタリングに係る採取位置に関する情報」をご覧下さい。

2.海底土のセシウムデータを連続的に測定する方法
9/6、東京大学生産技術研究所と(独)海上技術安全研究所は共同で記者会見を行い、海底土のCs-134とCs-137のデータを15kmにわたって連続的に測定することに成功したと発表しました。(記者会見の模様を伝えたニュースはこちら(FNN)で見ることができます。)
簡単にいうと、これまで、海底土の放射性セシウム濃度の測定は、数kmごとに地点を決めて、海底の土をサンプル採取していました。上で紹介した東京電力のT-S8等という地点がそうです。従って、得られる情報はあくまで点での情報でしかありませんでした。
9/9:詳細な情報が発表されていることがわかったので一部を書き直しました。
今回発表された技術は、水中放射線計測装置を長距離にわたって海底で引きずることで、細かい濃度の変化をとらえることに成功したというものです。イメージとしてはこんな感じです。

装置は、135kgですが、全長8mもあるようです。衝撃や振動を吸収するために工夫もしているようです。

研究チームが、このシステムを使って8月に茨城県北茨城市で測定したところ、放射性セシウムの濃度は、沖合に向かうほど徐々に減少し、およそ12km進むと、ほぼ半分まで減少していたということです。
具体的には、今回の測定はM-I1地点とM-G0地点の近くです。文科省のHPにあるこの地点です。

いわき市では海岸線に沿って、北茨城市では沖合に向かっての測定でした。

発表者の東大・浦教授のツイッター(@Ura_Tamaki)には詳細なデータのリンクがあったので、画像とその説明を引用します。

『発表した資料の中で最も重要なのは、 上の分布図です。北茨城沖では50Bq/kgぐらい変動しながらも沖合いへいくに従って減少するセシウム137。いわき沖では、距離は短いものの海岸線に沿ってほぼ一定。これらのデータが数時間でとれるのが魅力です。』
(http://p.twipple.jp/2GrAV より)
確かに上の図を見ると、いわき市のM-I1地点付近で水深85mから140mの地点を14kmほど連続して測定していますが、沖合に行くに従って徐々にCs-137の濃度が下がっているのがわかります。一方でM-G0付近では海岸線に沿っての測定を2kmくらい行っていますが、あまり変化がないことがわかります。
測定結果は、文科省が発表している実際のデータとあまり変わらない値が得られたということでした。FNNのニュース画像を見ると、文科省が5月に測定したデータと比較しています。いわき市沖では、M-I1地点のCs:137:280Bq/kg(5/18)とM-I3地点の31Bq/kg(5/19)が文科省のHPにありますが、上の図ではM-I1地点で200-250Bq/kgですので、3ヶ月近くは経っていますが、ほぼ同じ値であることは確かめられました。

しかも記者会見によれば、この測定を約2ノット(3.7km/時)のスピードで測定器を引きずりながら行ったそうです。ですから、14kmにわたる測定でも約4時間程度でデータがとれてしまうのです。
装置がそれほど大きくない(135kg)ので、数トンの漁船に乗せて測定することも可能だということです。これまで点での測定だったものが、線での測定ができるようになったということです。
今後この装置を用いて広範囲の測定が行われるようになると、海底土の汚染状況についてのより詳しい理解も進むと思います。とくに海底でのホットスポットがあるのかどうか、そのあたりについても情報がわかってくるのではないでしょうか。今後に期待したいと思います。
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