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12/8 第五回放射能の農畜水産物等への影響についての研究報告会より-米のセシウム汚染の話-

 
本日(12/8)、東京大学で「第五回放射能の農畜水産物等への影響についての研究報告会」が行われました。
この報告会は、昨年11月の第一回以来2-3ヶ月に一回行われています。
第一回の報告会は、私も実際に現地に聴講に行って報告(「11/20 東大農学部主催の放射能の農畜水産物等への影響の研究報告会」)をしています。

その後、USTREAMでの配信も行われたり、動画の配信が行われるようになったため、どこにいても中身を見ることができるようになりました。今回の5回目もUSTREAMで配信されました。

今回は、いくつかある話題の中で、米の放射性セシウムによる汚染のメカニズムについて3回目の報告がされましたので、それについてご紹介します。見逃した方はUSTREAMの録画版を見ていただければいいですが、さっと内容を把握したい方のためにまずは速報としてのご紹介です。(いずれ資料がアップされたら多少書き直すかもしれません。)


私がこのブログで集中的に取り上げている福島での米のセシウム汚染について、「放射性セシウムのイネへの移行(第3報)」というタイトルで、東大農学部の根本先生が講演をしてくれました。根本先生は今年、伊達市の市政アドバイザーとして、昨年暫定規制値(500Bq/kg)を超えるセシウムが検出されたために今年は作付制限がかかっている伊達市小国地区の田んぼを借りて試験作付(市場には出さない研究用の作付)における指導を行いました。

その途中経過の報告は、伊達市のHPにある伊達市農業情報紙『耕』(第1号)(9月27日発行)に掲載されています。
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この時は、7月および8月はじめ(出穂期)の茎や葉の放射性セシウムを測定して、茎葉の放射性セシウムが400Bq/kg以上の田んぼでは基準値超え(100Bq/kg超)の玄米がとれる可能性があるという予想を示していました。この予想がどうなったかはこの後でご紹介します。


今回の東大での報告会では、12/1に伊達市で行われた「稲の試験栽培研究報告会」の内容+αという形での報告だったようです。

事前に資料がWebサイトにアップされていましたので、聞くべきポイントがわかってよかったと思います。司会・HP更新をしていただいている田野井准教授、ありがとうございます。


では、今回の内容です。

昨年暫定規制値超えをしたために今年は作付制限となった福島県の多くの地域では、試験作付としてゼオライトやカリウムを施肥する低減対策を行っています。しかし、伊達市での規制値超え地域でのイネの試験作付では、低減対策を行う「試験作付」だけでなく、あるがままの状態での作付も行っています。これにより、低減対策を行わなくても今年はどれだけ下がったかをチェックすることができるのです。

今年の伊達市では、テストとして41筆60枚の水田を利用しました。そのうち5枚については低減対策としてゼオライトとケイ酸カリを施肥しました。残りの55枚については、通常の施肥を行いました。ただし、55枚のうち39枚については、下図のように田んぼの隅の二坪分だけを波板で区切り、そこにはケイ酸カリをいれて同じ1枚の田んぼの中でカリウムの効果を比較できるようにしました。
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その結果、収穫後にこの60枚の水田で玄米のCs濃度を調べると、8月の茎葉のデータから予想したように、8月の茎葉の放射性セシウムが400Bq/kg以上であった15枚の田んぼのうち14枚では玄米の放射性セシウムの濃度が100Bq/kgを超えました。ほぼ事前に予想したとおりの結果になったわけです。

この事は、8月に茎葉の放射性セシウム濃度を測定することにより、その田んぼの玄米の放射性セシウムがどれくらいになるかの予想が事前に立てられることを意味します。今年作付制限されている所で来年作付けする際に参考になるのではないでしょうか?

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(黄色い14枚の水田で基準値超え)

また、55枚のうち39枚についてはその中の2坪にケイ酸カリ区がありますが、そこでは100Bq/kgを超えたものは1枚もありませんでした。最高でも79Bq/kgでした。つまり、何もしないと100Bq/kgを超えた(最大で約370Bq/kg:この数値は参考資料のグラフより読み取り)田んぼでもカリウムを施肥する事によって100Bq/kg以下に抑えられることが明らかになったわけです。

さらに、通常通りの施肥管理しか行わなかった55枚のうち41枚については100Bq/kg以下になったということから、伊達市小国地区では来年は作付を行っても基準値以下になることが多いだろうということが予想されます。1年経って、放射性セシウムの土壌への吸着が確実に進んでいることを示しています。

また、この14枚の田んぼについて、おそらく場所を特定されたくないからでしょうが詳細は示してくれませんでしたが、小国川の一部の支流に集中しているということがわかりました。そこでは、棚田になっていたり、用水もため池から引いてきていることがわかりました。支流地域では、特に夏の間は渇水対策としてため池の水を利用することが多いそうです。


今回の結果を解析すると、水田中の交換性カリウムの量と玄米の放射性セシウムの濃度にはある程度の相関があることがわかります。これは、昨年に福島県と農水省が渡利・大波地区を中心に解析した時と同じような結果です。

昨年の福島県が発表した資料はこちらの図4です。これについての解説は「1/15 福島県と農水省の規制値越えの中間検討会(12/25)資料その2」をご覧下さい。
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多くの場合、土壌中の交換性K(K2O:mg/100g)が低いと玄米の放射性セシウム濃度が高いという相関がありました。ただし、一部の米(水田)についてはその関係が当てはまらない「はずれ値」がありました。

今回の伊達市小国地区においても55枚の水田について同様の解析を行ったところ、土壌の交換性Kが少ない水田で玄米の放射性セシウムが高い傾向にありましたが、やはり交換性Kが比較的高いにもかかわらず玄米の放射性セシウム濃度が高い「はずれ値」を示す場合がありました。
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この原因を探るべく理由を調べると、「はずれ値」の水田4枚では、ため池から用水を引いていることがわかりました。先ほど述べたように基準値を超えた14枚の水田では小国川の支流で用水もため池から引いていたケースが多かったのです。特にため池Aとため池Bでは水の放射性セシウム濃度が3-4Bq/Lと高いことがわかりました。通常は1Bq/L未満ですから、そこに原因がある可能性が考えられました。

ところで、水中で存在する放射性セシウムには「溶存態」セシウムと「懸濁態」セシウムの2つがあります。一般には懸濁態セシウムは植物に吸収されにくいと考えられています。しかし、問題のため池の水は懸濁態セシウムが多いことがわかりました。そこでため池の水を用いて水耕栽培で実験を行いました。

ため池の水(懸濁態セシウム1.3Bq/Lと溶存態セシウム0.4Bq/Lを含む)を濾紙でろ過します。すると懸濁態セシウムは0になって溶存態セシウム0.4Bq/Lだけになります。このろ過前のため池の水と、ろ過後のため池の水をイネに一ヶ月間与えて茎葉中の放射性セシウム量を測定しました。

すると驚くべき事に、ろ過前の水では茎葉に450Bq/kgのセシウムが検出され、ろ過後の水では約60Bq/kgのセシウムしか検出されませんでした。つまり、このため池にある懸濁態セシウムは、イネに吸収されやすい形のセシウムであるということがわかったわけです。(450Bq/kgというのは完全にイオン化した場合の吸収効率の約50%だったということです。)

さらに、同じため池で月を追って調べると、溶存態セシウム濃度は9月から10月末までほぼ一定で約0.5Bq/Lでしたが、懸濁態セシウム濃度は夏の間は3-4Bq/Lあったものの、10月になると急速に減ってくることがわかりました。この事から、稲作をしている夏の間に調査しないとわからないことがあるということもわかりました。


今回の伊達市での調査結果は、小国地区の1割にも満たない水田を用いての結果です。今回の結果を見てもわかるように、玄米中の放射性セシウムが高くなる要因は多様です。来年以降に実際に作付を復活した水田では、今年の試験作付ではわからなかったような要因で予想外に基準値超えをすることがあるかもしれません。しかし、根本教授の話によれば、「全袋調査で水田を特定し、その水田固有の吸収要因に合った個別の対策をピンポイントで講じることによってセシウム吸収を押さえ込んでいくことは、技術的には十分に可能であろう」ということでした。


用水に用いている一部のため池の懸濁態セシウムがイネに吸収されやすいという話は初めての知見でしたが、こうやって少しずつ対策が確立されている事を実感させる報告会でした。

(本日は速報としてアップします。いずれ多少の修正をするかもしれませんが、予めご了承ください。また、もし記述内容に間違いがありましたらご連絡いただけると幸いです。)

参考:第五回放射能の農畜水産物等への影響についての研究報告会

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